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第1章 追放からの

第9話 飛び級

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「ふー…危なかった」
 と一息ついてエイルさんがこちらにやってくる。

「助かったよニーナ」
 とニーナに声を掛ける。

 出っ張りのない胸を張ってニーナは自身満々に答える。
「私だって努力してるんですからね」

「さっすがリーダー」
 と僕が持ち上げると「いやあ」と照れて頭を掻いている。

「ゴブリンキングはたしか銅ランク相当のレアモンスターだったはずだよ……それを二人で倒すなんて凄いよ!!」
「いやみんなの力ですよ。ブッザスさんが荷物を運んでくれているから力が本来の力が出せるんです」
 ニーナはそう言って僕に笑いかけてくれた。」

「あ! そうだニーナ、パーティカードを見てみて」
 レアな魔物を討伐するとパーティカードに自動的に記入された……と思う。

 ニーナがパーティカードを取り出して裏面をみると

 ☆ゴブリンキング撃破

 と書かれている。

 やっぱりあれはゴブリンキングだったんだ……レアなモンスターはその強さによって☆が付く。☆一つは銅ランク相当のレアモンスター、☆二つになると銀ランクのレアモンスターとなっている。

 しかし、底辺ランクの錫で星付きレアモンスター倒せるなんて……二人は凄い……ニーナはああ言ってくれたが、僕は……何にもできないしやっぱり足手まとい……場違いのような気がする……

 二人は自身のステータスカードも確認をしている。
「やった。さっきのでステータスちょっと上がってる」
 エイルそう言うと
「どれどれ」
 とニーナが覗き込む。するとエイルさんが
「あんたも上がってるでしょ」
 二人でじゃれ合っている。

 僕は自分のステータスカードを確認する……

 何のステータスも変化してない……

 前もそうだった。どんなに強敵を倒しても僕のステータスは何の変化もしない。戦闘には直接参加していないけどパーティに参加しているだけで多少なりの経験は得ることができるし……そのことでステータスが変化してもいいはずなのに……

「ブッザスさんはどうでした?なにか上がってました?」
 ひとしきりエイルと絡んだニーナが僕に絡んでくる。

 僕はステータスカードをさっと隠して
「う、うん。ちょっとだけね」
 と嘘を付いた。

「そうですか! それは良かったですねぇぇ」
 ニーナとエイルは自分のことのように喜んでくれていた。

 それを聞いて少しの罪悪感を覚えた……


 ギルドに帰ってクエスト達成を報告すると受付のお姉さんが丸い目をして奥に飛んでいった。しばらくすると支配人のタナカスさんがやってきて、また応接室のような部屋に案内される。

「ゴブリンキングが生息しているとはこちらの完全にこちらのミスです……申し訳ありません」

 そう言ってタナトスさんは頭を下げる。そして頭を上げると……力強い眼で僕たちを見つめて切り出す。

「ですが!! まさかあのゴブリンキングを倒すとは……しかも錫ランクで……鉛を通り越して銅ランクへの昇級を本部に掛け合って見る価値があります! 」

 僕達はその言葉にぽかんとしてニーナがタナカスさんに聞き返す。
「え……銅ランク?」

「ええ、そうです。ゴブリンキングを倒したということであれば、最早、銅ランクへの昇級を考えてもいいでしょう……ただ今まで飛び級をしたパーティはおりませんので……」

「私達が銅ランクなんて……」
「あなた達はそれだけのことをやってのけたのです胸を張って下さい。結果が出るのは1週間後です。それまでは鉄ランクとしてクエストを受注していただいて結構ですので」

 返されたパーティカードには鉄ランクという文字が書かれている。

「分かりました。1週間後楽しみにしてます! 」
 ニーナがそう答えて応接室を後にする。

 応接室をでるとギルド内がザワザワとしており、その話が僕たちのパーティのことを話しているというのが聞こえてくる。

「まさか……あいつら錫だろ……錫でゴブキンとかありえんの?」
「ありえねーから応接室で支配人と話をしてんだろうが! こりゃデモ涙に続いて銅ランクあるんじゃね?」
「流石に錫から銅はないだろ」
「わかんねぇぇぞ。ゴブキンだぜゴブキン。銅ランクのモンスターしかも☆付きだぜ? 」
「まあ確かにな」

 みんなも僕たちの銅ランクへの昇格を噂している。

「うふふ……私達のこと話しますねぇぇ」
 ニーナが機嫌良さそうに話をする。

「こういうのはあんまり慣れないな……」
 エイルは顔を赤くして俯きがちだ。
「別に恥ずかしいことじゃないんだから胸を張ればいいんですよ! エイルさん」
「そうだよ。エイル、エイルとニーナは胸を張ってもいいよ」
「何言ってるんですか! ブッザスさんも胸を張ってください! 」

 こうして僕たちは3人で胸を張ってギルドを後にした。

 ――1週間後

 ギルドに行くと、とある話題で持ちきりだった。デーモンの目にも涙が2回連続クエストに失敗して後がないということ。

 そして僕たちは応接室に通されると既に支配人が待っていた。
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