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第1章 最底辺
第3話 ヘブンズワークス
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外はまだ薄暗く、東の空がかすかに色づき始める。
板張りの狭い部屋に、人ひとりなんとか横になれる2段になったベッドが置かれ、薄い布団にくるまって、下のベッドで寝ていた私は飛び起きた。
日付が変わる頃に仕事を終え、そのままベッドに倒れ込んだため、私が身にまとっている服は、元々は白い色をしていたのだろうが、汗がにじみところどころ茶色く変色している。
部屋の扉を静かに開け、洗面所に向かう、洗面所に向かう廊下には綿ぼこりが落ち、むき出しの木の壁は隙間風がふきぬけている。
廊下の角をまがると洗面所だ。
すでに洗面所には先客がいる。
「おはようございます……」
「ああ、おはよう」
「となりいいですか」
「どうぞ」
洗面台は2つあるため、私は軽く挨拶をし隣の洗面台を使う。
木できたバケツが置かれており、そこには濁った水がはってある。
自分の鏡に映った姿を改めて確認する、うっすら金髪がみえる坊主頭に、充血した青い目の下にはっきりと黒いクマがみえる。
ああ、なんてひどい私の顔……
隣の洗面台を使っている、赤毛の髪を短く切った男が話しかけてくる
「おい、レクシア、今日の仕事も警備だってよ」
男は洗顔を終え顔あげる、死んだ魚のように濁った赤い目をしているその男性の目の下のクマは私よりも濃い
この男の名は、ミルゲイ・ジプレ、私の1年先輩にあたる人で仕事のことをいろいろと教えてくれる
「また土嚢を積む仕事ですか」
建前上は、王宮の警備となってはいるが私たちの仕事は騎士団か仕事がしやすいように道の整備をしたりするというものである。
「ああ、今月休みなしだなぁ……」
「そうですね……」
「じゃあ先に行ってる」
ミルゲイさんは洗顔を終え、洗面所を後にした。
私はレクシアと名乗りあの一件から、この最底辺ギルドヘブンズワークスで1年間限定の約束で働いている。
このことはギルドのメンバーには秘密にしており、自分の生まれや育ちについても他言はしていない。
今日1日働けば、約束の1年となる。
濁った水で顔を洗い、汚れたシャツで顔を拭き、食堂に向かう、シーンと静まり返った食堂には、10人ほどの人間がテーブルについており、みんな一様に疲れた表情で黙々とパンとスープを口に運んでいる
1年先輩のミルゲイさんもテーブルにつき、パンを口にいれている。
食堂の隅に雑多におかれたパンと、大きなバケツに入ったスープを皿にいれ、ミルゲイさんの隣に座る。
このパンはというとレンガのような硬さで、このパンで殴れば人も殺せそうなほどである。
スープはスープで全く味がしないうえに具はなく、冷め切っており、水を飲んだほうがましと言われるようなものである。
みんな無口にひたすら、食事を取ると、ぼさぼさの赤い髪にたるんだ顎に酒樽のようにでっぷりとし腹をした中年の男が食堂にやってきた。
この男の目には生気が宿っており、十二分に休養がとれているという印象を受ける。
「さあ、今日も仕事にいくぞ」
「……はい」
全員で返事をする
「声が小さいなぁおまえら働ける喜びだろ? 」
「はい! 」
「そうそうやればできる、それじゃ行くぞ」
男の合図で全員が木造の寄宿舎をでて、まだ夜も明けきらないうちに、ヘルメットと呼ばれる鉄製の丸い兜を被って、仕事に向かう馬車に乗り込んだ。
ーー1年前
深淵の誓約書にサインをした、私の目の前に現れた男は、自分をセルゲイ・ドミノフスク、ギルド、ヘブンズワークスのオーナーであり、団長と呼ばれていると名乗った。
「お前は今日からレクシアだ。わかってるとは思うがお前がガレオンの貴族であることを言いふらしたらその時点でおまえは深淵に落ちるからな」
「なんでそのことを…」
セルゲイが持ってた紙をヒラヒラと私にみせる。
「それは深淵の誓約書…」
「ああ、お前がサインしているなぁ」
「1年間の約束だ」
「ああわかってるよ、当然わかってる」
「ああそれとな、その髪じゃ仕事にならん、いますぐ刈れ」
そういって団長は、持っていたナイフを板張りの床に放り投げた。
刃の部分が木製の床にすっと刺さる。
髪を切れ?今までそんなことなどいわれたこともない、金よりも価値があるといわれた私の髪を切れというのか、この醜いウシガエルは。
「嫌だ」
「ふん、それならばお前はクビだ、クビ」
そうだそれでいい、クビになれば私は無罪放免晴れてガレオンに帰れるというもの。
「ああ、それでいい」
ウシガエルは誓約書を広げ読みだす
「私、アレクシア・ノーベルは1年間にわたって、ここヘブンズワークスで働きますと書いてあるな」
「ああ」
「それなら貴族のバカな頭でも分かるだろ?」
……そうか、そういうことか1年間私はこのギルドで働く必要があると…働くことができなくなれば、深淵に落ちてしまうのだ…
つまり、1年間このウシガエルの言いなりになる必要があるということ…
1年間だ1年間辛抱すればいいだけの話、髪はまた生えてくる。
「……これでいいんだな」
私はナイフを手し自らの頭に刃をあてる、金より価値があるとよばれた金色の髪の束が音をたてて床に落ちていく
「おお、いい頭になったな」
団長は上機嫌に話す。
「まあ、これでおまえがアレクシアということはばれないだろうもっともこの国に、お前を見たことがあるやつがどれだけいるかは知らんが」
「さあこっちだ、お前が1年間暮らす部屋を案内してやる、ただ、ほかのメンバーにはお前が一年間でやめることを言ったらだめだからな、士気がさがる」
「わかりました」
私はセルゲイのあとをついていく。あたりは真っ暗で、もうすっかり夜のとばりが降りている。
石造りの建物が並び、石畳で整備された道を歩いていく、等間隔に松明がたかれており、それほど暗さはかんじることはなかった。
5分程歩いた
「ここだ」
セルゲイに案内された先には、古い木造の2階建ての長屋で、窓には一応ガラスははいっているところもあるが、木の板でふさがれている箇所もある。
これが家なのか?こんな家などみたことがないぞ、こんなところに人間が住めるのか?
「流石貴族様、こんなところには住めませんと顔に書いてあるぞ」
「住むしかないんだろ…」
「当たり前だ」
セルゲイがドアを開けなかにはいり、同じようなドアが何個かあり、そのうちの一つの前で止まる。
「ここが、お前の部屋だ、レクシア」
そういって通された部屋は、隅に人ひとりが横になれるベッドが2段重ねにされており、そのベッドしかおかれていない殺風景な部屋であった。
「ん?どうした不服そうな顔だが」
なんだこの部屋はウサギ小屋か?ノーベル家の長男をウサギ小屋に閉じ込めるなど…
「私をこんなウサギ小屋に閉じ込めるなど、あり得ない」
「なにを言ってるんだ。ウサギなんかいないだろここにいるのは人間、お前の部屋」
「ありえない、私をこんな部屋に閉じ込めるなど」
「あーあ、お前自分の立場分かっていってるよな?」
く、こいつ私が逆らえないことを知った上で
「な、慣れたら住めます」
「だろ?住めば都ってな」
「ミルゲイ、ミルゲイ」
セルゲイが人の名前をよんでいる。
すると2段ベッドの上からみじかく切りそろえた赤い髪の男がのそっと起き上がる。
セルゲイが赤毛の男に話しかける
「ミルゲイ、ルームメイトができたぞ、レクシアだ」
「よろしくお願いします」
私が挨拶をすると
「よろしく」
そういうとすぐに赤毛のミルゲイという男は横になった。
「まあそういことだレクシア、朝仕事の迎えにくるからな」
セルゲイはそう言い残し、建物から去っていた。
「……ミルゲイさん、風呂に入りたいのですが」
ミルゲイは起き上がろうともせず、ねたままぶっきらぼうな感じで答える。
「…風呂は週3回今日は風呂の日じゃねーよ」
毎日風呂に入れない?私の日課である入浴マッサージができないだと、どうやって1日の疲れをいやせばいいのだ、無理だ、私にこんな生活はできない!
……駄目だ、冷静になれ、アレクシアたった1年だ1年その間耐え忍ぶそれだけでいい。
そうだ食事だ、今朝から私はなにも食べていない、腹が減っているから熱くなるのだ。
「そうでしたか、それなら夕飯は?」
「夕飯はもう終わった、お前の分はなし、以上」
なんだと、私の食事が無い…この人、ミルゲイという人は私に嫌がらせをしているのか?そうだ、そうに違いない。私との身分の違いを感じ嫌がらせをしているのだろう。
……
ま、まて、私は今日急に来たのだ食事の準備などされていなくて当然なことだ。
諦めよう、もう寝よう全てを忘れて夢の世界へ行こう。
「わかりました、それなら寝るしかなさそうですね」
「ああ、早く寝ないと明日の仕事にさわるぞ」
紙のように薄い毛布にくるまり、レンガのように硬い布団の上でしかたなく横になった。
こんな布団で眠れる人間などいるの…か…
「起きろ、仕事だぞ、起きろ」
目を開けるとミルゲイさんのベッドを蹴りながら起こしている。
窓から外をみるが、うっすらと空が白むていどでまだ夜も明けていない。
「まだ夜明け前じゃないですか…」
「俺たちは今から仕事なの、お前が遅刻すると俺も連帯責任で怒られるから早く支度しろ」
「は、はい」
私はベッドから起き上がる。
「なんだよ、その恰好騎士さまかよ」
「これは…」
剣術用の白く体に沿ったデザインの道着を着用している。
「いいから、これに着替えな」
ベッドしかないと思われた部屋であったが、部屋の隅にちいさな四角のタンスがあり、ミルゲイはタンスから白いシャツと、穴の開いた青いズボンを取り出し、私に放り投げた。
なんだこの服は、ほのかに汗の匂いもしているぞ、こんな不潔な服を着るなど、貴族の私に……。
1年たてば、清潔な服にみを包み、華麗な生活に戻れるたった1年だ…
「ありがとうございます」
「そんな恰好で仕事されたらこっちが迷惑ってもんだ」
「すいません」
着替えを終え、ミルゲイの後に続く、テーブルが並ぶ部屋に着くとすでに10人ほどがいた。
「朝食ですか?」
「飯なんかもうとっくに終わってる」
セルゲイがやってくるなり口を開く
「全員、そろってるな」
1人の男が返事をする
「はい!」
「よろしい、それじゃ行くぞ」
全員がセルゲイの後をついていく。
馬車が2つほど用意されており、それぞれの馬車に乗り込む。
「新入り、ヘルメットだ」
ミルゲイにそういって渡されたのは、頭のみを隠すことができる、丸い兜であった。
板張りの狭い部屋に、人ひとりなんとか横になれる2段になったベッドが置かれ、薄い布団にくるまって、下のベッドで寝ていた私は飛び起きた。
日付が変わる頃に仕事を終え、そのままベッドに倒れ込んだため、私が身にまとっている服は、元々は白い色をしていたのだろうが、汗がにじみところどころ茶色く変色している。
部屋の扉を静かに開け、洗面所に向かう、洗面所に向かう廊下には綿ぼこりが落ち、むき出しの木の壁は隙間風がふきぬけている。
廊下の角をまがると洗面所だ。
すでに洗面所には先客がいる。
「おはようございます……」
「ああ、おはよう」
「となりいいですか」
「どうぞ」
洗面台は2つあるため、私は軽く挨拶をし隣の洗面台を使う。
木できたバケツが置かれており、そこには濁った水がはってある。
自分の鏡に映った姿を改めて確認する、うっすら金髪がみえる坊主頭に、充血した青い目の下にはっきりと黒いクマがみえる。
ああ、なんてひどい私の顔……
隣の洗面台を使っている、赤毛の髪を短く切った男が話しかけてくる
「おい、レクシア、今日の仕事も警備だってよ」
男は洗顔を終え顔あげる、死んだ魚のように濁った赤い目をしているその男性の目の下のクマは私よりも濃い
この男の名は、ミルゲイ・ジプレ、私の1年先輩にあたる人で仕事のことをいろいろと教えてくれる
「また土嚢を積む仕事ですか」
建前上は、王宮の警備となってはいるが私たちの仕事は騎士団か仕事がしやすいように道の整備をしたりするというものである。
「ああ、今月休みなしだなぁ……」
「そうですね……」
「じゃあ先に行ってる」
ミルゲイさんは洗顔を終え、洗面所を後にした。
私はレクシアと名乗りあの一件から、この最底辺ギルドヘブンズワークスで1年間限定の約束で働いている。
このことはギルドのメンバーには秘密にしており、自分の生まれや育ちについても他言はしていない。
今日1日働けば、約束の1年となる。
濁った水で顔を洗い、汚れたシャツで顔を拭き、食堂に向かう、シーンと静まり返った食堂には、10人ほどの人間がテーブルについており、みんな一様に疲れた表情で黙々とパンとスープを口に運んでいる
1年先輩のミルゲイさんもテーブルにつき、パンを口にいれている。
食堂の隅に雑多におかれたパンと、大きなバケツに入ったスープを皿にいれ、ミルゲイさんの隣に座る。
このパンはというとレンガのような硬さで、このパンで殴れば人も殺せそうなほどである。
スープはスープで全く味がしないうえに具はなく、冷め切っており、水を飲んだほうがましと言われるようなものである。
みんな無口にひたすら、食事を取ると、ぼさぼさの赤い髪にたるんだ顎に酒樽のようにでっぷりとし腹をした中年の男が食堂にやってきた。
この男の目には生気が宿っており、十二分に休養がとれているという印象を受ける。
「さあ、今日も仕事にいくぞ」
「……はい」
全員で返事をする
「声が小さいなぁおまえら働ける喜びだろ? 」
「はい! 」
「そうそうやればできる、それじゃ行くぞ」
男の合図で全員が木造の寄宿舎をでて、まだ夜も明けきらないうちに、ヘルメットと呼ばれる鉄製の丸い兜を被って、仕事に向かう馬車に乗り込んだ。
ーー1年前
深淵の誓約書にサインをした、私の目の前に現れた男は、自分をセルゲイ・ドミノフスク、ギルド、ヘブンズワークスのオーナーであり、団長と呼ばれていると名乗った。
「お前は今日からレクシアだ。わかってるとは思うがお前がガレオンの貴族であることを言いふらしたらその時点でおまえは深淵に落ちるからな」
「なんでそのことを…」
セルゲイが持ってた紙をヒラヒラと私にみせる。
「それは深淵の誓約書…」
「ああ、お前がサインしているなぁ」
「1年間の約束だ」
「ああわかってるよ、当然わかってる」
「ああそれとな、その髪じゃ仕事にならん、いますぐ刈れ」
そういって団長は、持っていたナイフを板張りの床に放り投げた。
刃の部分が木製の床にすっと刺さる。
髪を切れ?今までそんなことなどいわれたこともない、金よりも価値があるといわれた私の髪を切れというのか、この醜いウシガエルは。
「嫌だ」
「ふん、それならばお前はクビだ、クビ」
そうだそれでいい、クビになれば私は無罪放免晴れてガレオンに帰れるというもの。
「ああ、それでいい」
ウシガエルは誓約書を広げ読みだす
「私、アレクシア・ノーベルは1年間にわたって、ここヘブンズワークスで働きますと書いてあるな」
「ああ」
「それなら貴族のバカな頭でも分かるだろ?」
……そうか、そういうことか1年間私はこのギルドで働く必要があると…働くことができなくなれば、深淵に落ちてしまうのだ…
つまり、1年間このウシガエルの言いなりになる必要があるということ…
1年間だ1年間辛抱すればいいだけの話、髪はまた生えてくる。
「……これでいいんだな」
私はナイフを手し自らの頭に刃をあてる、金より価値があるとよばれた金色の髪の束が音をたてて床に落ちていく
「おお、いい頭になったな」
団長は上機嫌に話す。
「まあ、これでおまえがアレクシアということはばれないだろうもっともこの国に、お前を見たことがあるやつがどれだけいるかは知らんが」
「さあこっちだ、お前が1年間暮らす部屋を案内してやる、ただ、ほかのメンバーにはお前が一年間でやめることを言ったらだめだからな、士気がさがる」
「わかりました」
私はセルゲイのあとをついていく。あたりは真っ暗で、もうすっかり夜のとばりが降りている。
石造りの建物が並び、石畳で整備された道を歩いていく、等間隔に松明がたかれており、それほど暗さはかんじることはなかった。
5分程歩いた
「ここだ」
セルゲイに案内された先には、古い木造の2階建ての長屋で、窓には一応ガラスははいっているところもあるが、木の板でふさがれている箇所もある。
これが家なのか?こんな家などみたことがないぞ、こんなところに人間が住めるのか?
「流石貴族様、こんなところには住めませんと顔に書いてあるぞ」
「住むしかないんだろ…」
「当たり前だ」
セルゲイがドアを開けなかにはいり、同じようなドアが何個かあり、そのうちの一つの前で止まる。
「ここが、お前の部屋だ、レクシア」
そういって通された部屋は、隅に人ひとりが横になれるベッドが2段重ねにされており、そのベッドしかおかれていない殺風景な部屋であった。
「ん?どうした不服そうな顔だが」
なんだこの部屋はウサギ小屋か?ノーベル家の長男をウサギ小屋に閉じ込めるなど…
「私をこんなウサギ小屋に閉じ込めるなど、あり得ない」
「なにを言ってるんだ。ウサギなんかいないだろここにいるのは人間、お前の部屋」
「ありえない、私をこんな部屋に閉じ込めるなど」
「あーあ、お前自分の立場分かっていってるよな?」
く、こいつ私が逆らえないことを知った上で
「な、慣れたら住めます」
「だろ?住めば都ってな」
「ミルゲイ、ミルゲイ」
セルゲイが人の名前をよんでいる。
すると2段ベッドの上からみじかく切りそろえた赤い髪の男がのそっと起き上がる。
セルゲイが赤毛の男に話しかける
「ミルゲイ、ルームメイトができたぞ、レクシアだ」
「よろしくお願いします」
私が挨拶をすると
「よろしく」
そういうとすぐに赤毛のミルゲイという男は横になった。
「まあそういことだレクシア、朝仕事の迎えにくるからな」
セルゲイはそう言い残し、建物から去っていた。
「……ミルゲイさん、風呂に入りたいのですが」
ミルゲイは起き上がろうともせず、ねたままぶっきらぼうな感じで答える。
「…風呂は週3回今日は風呂の日じゃねーよ」
毎日風呂に入れない?私の日課である入浴マッサージができないだと、どうやって1日の疲れをいやせばいいのだ、無理だ、私にこんな生活はできない!
……駄目だ、冷静になれ、アレクシアたった1年だ1年その間耐え忍ぶそれだけでいい。
そうだ食事だ、今朝から私はなにも食べていない、腹が減っているから熱くなるのだ。
「そうでしたか、それなら夕飯は?」
「夕飯はもう終わった、お前の分はなし、以上」
なんだと、私の食事が無い…この人、ミルゲイという人は私に嫌がらせをしているのか?そうだ、そうに違いない。私との身分の違いを感じ嫌がらせをしているのだろう。
……
ま、まて、私は今日急に来たのだ食事の準備などされていなくて当然なことだ。
諦めよう、もう寝よう全てを忘れて夢の世界へ行こう。
「わかりました、それなら寝るしかなさそうですね」
「ああ、早く寝ないと明日の仕事にさわるぞ」
紙のように薄い毛布にくるまり、レンガのように硬い布団の上でしかたなく横になった。
こんな布団で眠れる人間などいるの…か…
「起きろ、仕事だぞ、起きろ」
目を開けるとミルゲイさんのベッドを蹴りながら起こしている。
窓から外をみるが、うっすらと空が白むていどでまだ夜も明けていない。
「まだ夜明け前じゃないですか…」
「俺たちは今から仕事なの、お前が遅刻すると俺も連帯責任で怒られるから早く支度しろ」
「は、はい」
私はベッドから起き上がる。
「なんだよ、その恰好騎士さまかよ」
「これは…」
剣術用の白く体に沿ったデザインの道着を着用している。
「いいから、これに着替えな」
ベッドしかないと思われた部屋であったが、部屋の隅にちいさな四角のタンスがあり、ミルゲイはタンスから白いシャツと、穴の開いた青いズボンを取り出し、私に放り投げた。
なんだこの服は、ほのかに汗の匂いもしているぞ、こんな不潔な服を着るなど、貴族の私に……。
1年たてば、清潔な服にみを包み、華麗な生活に戻れるたった1年だ…
「ありがとうございます」
「そんな恰好で仕事されたらこっちが迷惑ってもんだ」
「すいません」
着替えを終え、ミルゲイの後に続く、テーブルが並ぶ部屋に着くとすでに10人ほどがいた。
「朝食ですか?」
「飯なんかもうとっくに終わってる」
セルゲイがやってくるなり口を開く
「全員、そろってるな」
1人の男が返事をする
「はい!」
「よろしい、それじゃ行くぞ」
全員がセルゲイの後をついていく。
馬車が2つほど用意されており、それぞれの馬車に乗り込む。
「新入り、ヘルメットだ」
ミルゲイにそういって渡されたのは、頭のみを隠すことができる、丸い兜であった。
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