9 / 43
第1章 最底辺
第9話 強欲
しおりを挟む
「おまえ、なにもんだよ」
びっくした顔でミルゲイさんが聞いてくる。
「今回の案の成否は、彼にかかってました、上手くいってよかったです」
「とんでもないやつと知り合いなんだな」
「なんとか会えたのは、一昨日ですよ」
「どんな話を持ち掛けたんだよ?」
「それはまだ秘密です、決勝にいったら分かるのでお楽しみにしてください」
二回戦からは、ミルゲイさんやエビリさんの緊張も解け、私が出る幕もなく終わった。
ーーその夜
食堂に全員集まり、硬いパン、まずいスープの晩御飯で軽い祝杯を挙げる
エビリさんがボソッと口を開く
「まさか、ここまでいけるとはおもいませんでした、僕も2回勝ってしまいましたし」
「うん、でもそれはエビリさんの実力だよ、強いんだよエビリさんは自信をもって」
「はい」
ガツガツと不機嫌そうな足音が響き、ドーンという音ともに食堂のドアが開く
セルゲイさんが勢いよくはいってきて不機嫌そうに開口一番
「何、勝ってんだよ!明日の仕事にも穴あけることになるじゃねーか」
「私達は優勝します」
「なにふざけたこと言ってるわけ?優勝なんてぜったいにさせないからな」
ザンガスさんがセルゲイさんの胸元をつかむ
「今度ふざけ真似をしたら、俺がお前を殺すからな!」
「なんか私が前に、したみたいな言い方じゃないか、失礼だぞ、雇い主に向かって、今ここで首にしてやってもいいんだぞ」
ザンガスさんがつかんでいる腕をつかんで声をかける。
「ザンガスさん、落ち着いてください、私たちは卑怯な妨害工作の影響はうけませんから」
「あ、ああ」
納得したのか、セルゲイさんをつかんでいた腕を離す。
「何があっても優勝だけはさせないからな、覚えてろよ」
捨て台詞をはいてセルゲイさんは去っていった。
そうして順々決勝、準決勝も危なげなく、勝つことができた。
ーー決勝前夜
セルゲイさんが赤い顔をして、食堂に怒鳴り込んできた
「おい、お前らどうなってやがるんだ!明日は決勝だぞ決勝、分かっていると思うが決勝のあいてはあのレギオンだぞ」
「ええ、知っていますよ、それがなにか?」
「わかってるよな?」
「ええ、優勝を狙って頑張ります」
「馬鹿かお前は、レギオンに勝たせるの、お前ら負けるの、わかってる?」
ミルゲイさんが面白がっているようでニヤニヤしながら会話に加わる。
「まああの大手ギルドのレギオン様が俺たちのような最底辺ギルドに負けるなんてありえないからねぇそうでしょ団長」
「ま、まあその通りではあるのだが万が一ということもあるからなその辺わかっとけよ」
セルゲイさんはドアを思いっきり閉め去っていった。
ザンガスさんがやけに真剣な表情で話し始めた。
「これからのことだが、明日までは何も口にしないほうがいい、とくにセルゲイが用意するものは」
「はい、わかっています、でも明日の朝になったら態度が急に変わるかもしれませんよ」
「なんでだ?」
「私の秘策です」
まだ夜も明けず、東の空がうっすらと白くなり始めるような時間
「ミルゲイさん、起きてますか?」
「おう、いつも起きる時間だからな」
「今日で私たちの運命は大きく変わります、新しい人生を歩むためにも今日1日頑張りましょう」
「ああ、わかってるよ」
いつも通りに過ごし、食堂に向かう。
皆も同じように食堂に集まっている。
すると昨日とはうって変わって、軽い足取りでドアを開けるセルゲイさんがいた。
「昨日はすまなかった、私も考え方を変えてね、君たちにどうしても優勝をしてほしいとおもってね」
手には柔らかそうなパンが入ったバスケットと、湯気がでている鍋を手にしている。
「美味しそうですね」
「ああ、君たちには今日の戦いにぜひ勝ってもらいたいとおもって奮発してきたのさ」
「ありがとうございます」
私がパンに手を伸ばすと
「やめろ!」
ザンガスさんが引き留める
「大丈夫ですよ、柔らかそうで美味しそうなパンですよ」
ザンガスさんの静止も聞かず、私はパンを取り口の中に放り込んだ
「スープもあるぞ」
「ありがたくいただきます」
セルゲイさん、自らスープをさらに入れてくれテーブルに置いてくれる
「だからやめろって」
ザンガスさんはスープの入った皿を奪い取ろうとする。
間一髪のところで皿をとり、そのまま口にした。
頭を抱えるザンガスさん、他のメンバーも唖然とした顔をしている。
「美味しいですよこのスープも」
「ああ、どうせ毒がはいってるからな、決勝はこのアホ抜きで戦わなきゃならない…」
「そんなことセルゲイさんがするわけないじゃないですか?ねセルゲイさん」
「あ、当たり前だ毒なんか入れたら金貨4、いや優勝できなくなるじゃないか」
それを聞いたミルゲイさんが問い詰める
「金貨4?それなんだなんのことだ?」
「いいや、なんでもない、お前たちは決勝の事さえ考えていればいい」
「ですよねー、優勝目指してがんばりましょう」
ーー正午前
闘技場の控室に全員あつまり、思い思いの姿勢で時が来るのを待つ。
私は石でできたベンチの端に座っている。
するとザンガスさんが近寄ってきて、半信半疑といった表情で話しかけてきた。
「ほんとに体はなんともないんだな?」
「はい、みなさんも食べればよかったのに」
「信じられん、あのセルゲイが本当に毒をいれてないとは」
「まあ、セルゲイさんも心変わりしたんでしょ、優勝したほうが実が多いっと思ったんじゃないですかね?」
「あいつは目先の損得で動く男だ、優勝してどうのこうのっていう計算は働かないと思うんだが」
係員がやってきて声をかける
「ヘブンズワークスさん出番ですよ」
「はい」
全員で立ち上がり、決勝の舞台へ望む。
会場が割れんばかりの大歓声に包まれる、もう他の試合は行われておらず、満員の観客は自分達とレギオンの試合を観戦にきているのだ。
どうも私たちは最底辺ギルドの奇跡として、人気が高くなっており、私達が入場するとレギオンの連中よりも歓声が大きいように感じた。
レギオンのメンバーと顔を合わせる、その服装は全員おそろいの黒い服を纏っており、全員が全員筋骨隆々で、鍛え抜かれているという感じを受ける。
隣にいるミゲイルさんに話しかける。
「流石ですね、強そうだ」
「ああ、レギオンの連中は3大会連続で優勝しているからな」
「じゃあ私たちが止めるということですね」
「まあそういうことだな」
先鋒のミゲイルさんが位置につき、相手選手も位置についた。
結果から言うとミゲイルさんの圧勝だった。
首をかしげながらミゲイルさんが戻ってきた
「なんかおかしい、あいつら手を抜いてる?」
「そんなぁ4連覇がかかった決勝ですよ」
エビリさんが続いて、位置に着く
初戦のような緊張は見られず、これもあっけなく試合終了
審判はエビリさんの勝利を宣言した。
スミトフさんも同様にあっけなく片が付き、拍子抜けする決勝戦であった。
いままでの大会で3-0で勝敗がきまることなどなかったとのことで、会場がざわついていた。
セルゲイさんがうれしそうに跳ねるよう駆け寄ってきて
「お前らよくやった、すごいさすがだ」
と褒めちぎったあとに
「ちょっと話があるから、レクシアと、スミトフ、あとで俺のところにきてくれ」
そういうと足早にさっていった。
ミルゲイさんが不思議そうな顔をして
「ほんとに優勝して喜んでたな、あいつ」
「ええ、そうですね、話があるみたいなので私とスミトフさんは行きますね、祝勝会は帰ってきてからで」
「ああ」
表彰式などが終わり、ひと段落つき、スミトフさんに声をかける
「それじゃ、セルゲイさんのところにいきましょうかね」
「そうだな」
これで3度目になるセルゲイさんの家に向かう。
部屋に入り、いつもの部屋に向かう
すると中には、リディムさんとお付きの人がおり、お付きの人の手には大きな旅行鞄が握られている。
私たちの姿をみてリディムさんが声をかけてくれた
「優勝おめでとう、感動したよ」
「ありがとうございます、ただ最後の試合はちょっと拍子抜けしましたね」
「ああ、レギオンがあそこまで弱かったとは」
セルゲイさんが口を挟む
「まあ、その話はもういいだろう、本題に入ろう」
リディムさんがうなづく
「ええ」
「この方はホフナー商会の会長リディム・ホフナーさんだ」
「はい、知ってます」
「ほう、知っているなら話は早い、この方がヘブンズワークスを買い取ってくれることになった」
スミトフさんは目を丸くしている。
セルゲイさんは権利書と思わしき書類を机の上に置いている
リディムさんが手で合図をすると、お付きの人が旅行鞄を机の上に置く。
「さすがに金貨4000枚重そうですなぁ」
「ホフナー商会の1年間の売り上げの半分ですからな」
「おお、さすがホフナー商会」
セルゲイさんは、旅行鞄を開ける、すると中に金貨はなく紙切れ一枚が入っている。
「あれ金貨は?」
「その紙をよくお読みください」
「これは契約書じゃないか、ほらここにも今日金貨4000枚支払うとかいてあるじゃないか」
私がボソッとつぶやく
「本当に4000枚って書いてますか?本当に」
「え?」
はっとした表情で、セルゲイさんは4000枚と書かれた部分を爪ではいだ。
「ただで譲渡するだと!」
リディムさんが冷たく話す
「ええタダでいただきます、その契約の通りにね」
「ばかばかしい、こんなものは無効だよ、無効、金貨4000だ4000渡さない限り権利書は渡さないからな」
私はセルゲイさんにあえて聞こえるようにリディムさんに話しかける。
「無効かどうかは、その契約書が判断をするんじゃないですかねリディムさん」
「ああ、そうだな、その契約書が判断するだろう」
セルゲイさんの顔は一気に青ざめ、脂汗をながしている。
「そんなまさか、深淵の…まさかあれは、そう簡単に手に入る代物では…」
リディムさんは表情を変えずに続ける。
「まあ疑うのならば、その契約書を破り捨てればわかると思うが…」
「わかった!!わかった!!ギルドはただで譲る」
そういうと、セルゲイさんは、権利書をリディムさんに渡し床に力なく座り込んだ。
権利書を受けったリディムさんは、私に権利書を渡し
「この権利書は、優勝賞品です、どうぞ受け取ってください」
「いいんですか?」
「もちろんです。今度はホフナー商会からあなた達に仕事を頼みます」
「はい、ぜひお願いします」
そういうとリディムさんはお付きの人を従え、颯爽と帰っていった。
私もスミトフさんと祝勝会を心待ちにしているメンバーのもとに向かった。
帰る道すがら
スミトフさんが話しかけてくる
「セルゲイの奴はどうして、あんな無茶な契約を受けたんだ?」
「どうしてでしょうね?強欲すぎて契約書に書かれてたことよく見なかったんじゃないでしょうか」
そういって私は契約書を取り出す。
「あっそれ」
「これはもういりません」
私は契約書を破り捨てた。
「破って大丈夫なのか?深淵がどうとかいってたが」
「どうでしょうね、でも私の身に降り注ぐことじゃないですから」
無邪気に笑って見せた。
びっくした顔でミルゲイさんが聞いてくる。
「今回の案の成否は、彼にかかってました、上手くいってよかったです」
「とんでもないやつと知り合いなんだな」
「なんとか会えたのは、一昨日ですよ」
「どんな話を持ち掛けたんだよ?」
「それはまだ秘密です、決勝にいったら分かるのでお楽しみにしてください」
二回戦からは、ミルゲイさんやエビリさんの緊張も解け、私が出る幕もなく終わった。
ーーその夜
食堂に全員集まり、硬いパン、まずいスープの晩御飯で軽い祝杯を挙げる
エビリさんがボソッと口を開く
「まさか、ここまでいけるとはおもいませんでした、僕も2回勝ってしまいましたし」
「うん、でもそれはエビリさんの実力だよ、強いんだよエビリさんは自信をもって」
「はい」
ガツガツと不機嫌そうな足音が響き、ドーンという音ともに食堂のドアが開く
セルゲイさんが勢いよくはいってきて不機嫌そうに開口一番
「何、勝ってんだよ!明日の仕事にも穴あけることになるじゃねーか」
「私達は優勝します」
「なにふざけたこと言ってるわけ?優勝なんてぜったいにさせないからな」
ザンガスさんがセルゲイさんの胸元をつかむ
「今度ふざけ真似をしたら、俺がお前を殺すからな!」
「なんか私が前に、したみたいな言い方じゃないか、失礼だぞ、雇い主に向かって、今ここで首にしてやってもいいんだぞ」
ザンガスさんがつかんでいる腕をつかんで声をかける。
「ザンガスさん、落ち着いてください、私たちは卑怯な妨害工作の影響はうけませんから」
「あ、ああ」
納得したのか、セルゲイさんをつかんでいた腕を離す。
「何があっても優勝だけはさせないからな、覚えてろよ」
捨て台詞をはいてセルゲイさんは去っていった。
そうして順々決勝、準決勝も危なげなく、勝つことができた。
ーー決勝前夜
セルゲイさんが赤い顔をして、食堂に怒鳴り込んできた
「おい、お前らどうなってやがるんだ!明日は決勝だぞ決勝、分かっていると思うが決勝のあいてはあのレギオンだぞ」
「ええ、知っていますよ、それがなにか?」
「わかってるよな?」
「ええ、優勝を狙って頑張ります」
「馬鹿かお前は、レギオンに勝たせるの、お前ら負けるの、わかってる?」
ミルゲイさんが面白がっているようでニヤニヤしながら会話に加わる。
「まああの大手ギルドのレギオン様が俺たちのような最底辺ギルドに負けるなんてありえないからねぇそうでしょ団長」
「ま、まあその通りではあるのだが万が一ということもあるからなその辺わかっとけよ」
セルゲイさんはドアを思いっきり閉め去っていった。
ザンガスさんがやけに真剣な表情で話し始めた。
「これからのことだが、明日までは何も口にしないほうがいい、とくにセルゲイが用意するものは」
「はい、わかっています、でも明日の朝になったら態度が急に変わるかもしれませんよ」
「なんでだ?」
「私の秘策です」
まだ夜も明けず、東の空がうっすらと白くなり始めるような時間
「ミルゲイさん、起きてますか?」
「おう、いつも起きる時間だからな」
「今日で私たちの運命は大きく変わります、新しい人生を歩むためにも今日1日頑張りましょう」
「ああ、わかってるよ」
いつも通りに過ごし、食堂に向かう。
皆も同じように食堂に集まっている。
すると昨日とはうって変わって、軽い足取りでドアを開けるセルゲイさんがいた。
「昨日はすまなかった、私も考え方を変えてね、君たちにどうしても優勝をしてほしいとおもってね」
手には柔らかそうなパンが入ったバスケットと、湯気がでている鍋を手にしている。
「美味しそうですね」
「ああ、君たちには今日の戦いにぜひ勝ってもらいたいとおもって奮発してきたのさ」
「ありがとうございます」
私がパンに手を伸ばすと
「やめろ!」
ザンガスさんが引き留める
「大丈夫ですよ、柔らかそうで美味しそうなパンですよ」
ザンガスさんの静止も聞かず、私はパンを取り口の中に放り込んだ
「スープもあるぞ」
「ありがたくいただきます」
セルゲイさん、自らスープをさらに入れてくれテーブルに置いてくれる
「だからやめろって」
ザンガスさんはスープの入った皿を奪い取ろうとする。
間一髪のところで皿をとり、そのまま口にした。
頭を抱えるザンガスさん、他のメンバーも唖然とした顔をしている。
「美味しいですよこのスープも」
「ああ、どうせ毒がはいってるからな、決勝はこのアホ抜きで戦わなきゃならない…」
「そんなことセルゲイさんがするわけないじゃないですか?ねセルゲイさん」
「あ、当たり前だ毒なんか入れたら金貨4、いや優勝できなくなるじゃないか」
それを聞いたミルゲイさんが問い詰める
「金貨4?それなんだなんのことだ?」
「いいや、なんでもない、お前たちは決勝の事さえ考えていればいい」
「ですよねー、優勝目指してがんばりましょう」
ーー正午前
闘技場の控室に全員あつまり、思い思いの姿勢で時が来るのを待つ。
私は石でできたベンチの端に座っている。
するとザンガスさんが近寄ってきて、半信半疑といった表情で話しかけてきた。
「ほんとに体はなんともないんだな?」
「はい、みなさんも食べればよかったのに」
「信じられん、あのセルゲイが本当に毒をいれてないとは」
「まあ、セルゲイさんも心変わりしたんでしょ、優勝したほうが実が多いっと思ったんじゃないですかね?」
「あいつは目先の損得で動く男だ、優勝してどうのこうのっていう計算は働かないと思うんだが」
係員がやってきて声をかける
「ヘブンズワークスさん出番ですよ」
「はい」
全員で立ち上がり、決勝の舞台へ望む。
会場が割れんばかりの大歓声に包まれる、もう他の試合は行われておらず、満員の観客は自分達とレギオンの試合を観戦にきているのだ。
どうも私たちは最底辺ギルドの奇跡として、人気が高くなっており、私達が入場するとレギオンの連中よりも歓声が大きいように感じた。
レギオンのメンバーと顔を合わせる、その服装は全員おそろいの黒い服を纏っており、全員が全員筋骨隆々で、鍛え抜かれているという感じを受ける。
隣にいるミゲイルさんに話しかける。
「流石ですね、強そうだ」
「ああ、レギオンの連中は3大会連続で優勝しているからな」
「じゃあ私たちが止めるということですね」
「まあそういうことだな」
先鋒のミゲイルさんが位置につき、相手選手も位置についた。
結果から言うとミゲイルさんの圧勝だった。
首をかしげながらミゲイルさんが戻ってきた
「なんかおかしい、あいつら手を抜いてる?」
「そんなぁ4連覇がかかった決勝ですよ」
エビリさんが続いて、位置に着く
初戦のような緊張は見られず、これもあっけなく試合終了
審判はエビリさんの勝利を宣言した。
スミトフさんも同様にあっけなく片が付き、拍子抜けする決勝戦であった。
いままでの大会で3-0で勝敗がきまることなどなかったとのことで、会場がざわついていた。
セルゲイさんがうれしそうに跳ねるよう駆け寄ってきて
「お前らよくやった、すごいさすがだ」
と褒めちぎったあとに
「ちょっと話があるから、レクシアと、スミトフ、あとで俺のところにきてくれ」
そういうと足早にさっていった。
ミルゲイさんが不思議そうな顔をして
「ほんとに優勝して喜んでたな、あいつ」
「ええ、そうですね、話があるみたいなので私とスミトフさんは行きますね、祝勝会は帰ってきてからで」
「ああ」
表彰式などが終わり、ひと段落つき、スミトフさんに声をかける
「それじゃ、セルゲイさんのところにいきましょうかね」
「そうだな」
これで3度目になるセルゲイさんの家に向かう。
部屋に入り、いつもの部屋に向かう
すると中には、リディムさんとお付きの人がおり、お付きの人の手には大きな旅行鞄が握られている。
私たちの姿をみてリディムさんが声をかけてくれた
「優勝おめでとう、感動したよ」
「ありがとうございます、ただ最後の試合はちょっと拍子抜けしましたね」
「ああ、レギオンがあそこまで弱かったとは」
セルゲイさんが口を挟む
「まあ、その話はもういいだろう、本題に入ろう」
リディムさんがうなづく
「ええ」
「この方はホフナー商会の会長リディム・ホフナーさんだ」
「はい、知ってます」
「ほう、知っているなら話は早い、この方がヘブンズワークスを買い取ってくれることになった」
スミトフさんは目を丸くしている。
セルゲイさんは権利書と思わしき書類を机の上に置いている
リディムさんが手で合図をすると、お付きの人が旅行鞄を机の上に置く。
「さすがに金貨4000枚重そうですなぁ」
「ホフナー商会の1年間の売り上げの半分ですからな」
「おお、さすがホフナー商会」
セルゲイさんは、旅行鞄を開ける、すると中に金貨はなく紙切れ一枚が入っている。
「あれ金貨は?」
「その紙をよくお読みください」
「これは契約書じゃないか、ほらここにも今日金貨4000枚支払うとかいてあるじゃないか」
私がボソッとつぶやく
「本当に4000枚って書いてますか?本当に」
「え?」
はっとした表情で、セルゲイさんは4000枚と書かれた部分を爪ではいだ。
「ただで譲渡するだと!」
リディムさんが冷たく話す
「ええタダでいただきます、その契約の通りにね」
「ばかばかしい、こんなものは無効だよ、無効、金貨4000だ4000渡さない限り権利書は渡さないからな」
私はセルゲイさんにあえて聞こえるようにリディムさんに話しかける。
「無効かどうかは、その契約書が判断をするんじゃないですかねリディムさん」
「ああ、そうだな、その契約書が判断するだろう」
セルゲイさんの顔は一気に青ざめ、脂汗をながしている。
「そんなまさか、深淵の…まさかあれは、そう簡単に手に入る代物では…」
リディムさんは表情を変えずに続ける。
「まあ疑うのならば、その契約書を破り捨てればわかると思うが…」
「わかった!!わかった!!ギルドはただで譲る」
そういうと、セルゲイさんは、権利書をリディムさんに渡し床に力なく座り込んだ。
権利書を受けったリディムさんは、私に権利書を渡し
「この権利書は、優勝賞品です、どうぞ受け取ってください」
「いいんですか?」
「もちろんです。今度はホフナー商会からあなた達に仕事を頼みます」
「はい、ぜひお願いします」
そういうとリディムさんはお付きの人を従え、颯爽と帰っていった。
私もスミトフさんと祝勝会を心待ちにしているメンバーのもとに向かった。
帰る道すがら
スミトフさんが話しかけてくる
「セルゲイの奴はどうして、あんな無茶な契約を受けたんだ?」
「どうしてでしょうね?強欲すぎて契約書に書かれてたことよく見なかったんじゃないでしょうか」
そういって私は契約書を取り出す。
「あっそれ」
「これはもういりません」
私は契約書を破り捨てた。
「破って大丈夫なのか?深淵がどうとかいってたが」
「どうでしょうね、でも私の身に降り注ぐことじゃないですから」
無邪気に笑って見せた。
13
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる