転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

文字の大きさ
8 / 43
第1章 最底辺

第8話 試合開始

しおりを挟む
 その場で動けなくなったザンガスさんをスミトフさんと部屋まで運んだあと、部屋の外でスミトフさんが口を開く。
「10年前に準決勝に行った時のの中心選手は、ザンガスだよ、セルゲイに毒まで飲まされて、あいつは完全に心が折れた、まあ剣士として剣の練習は欠かさなかったようだが、俺からあいつの代わりに礼をいうよ」
「はい、なんとなくはきづいてました」
「やっぱり?俺嘘下手だからな」
 スミトフさんは笑いながら髪ない頭を掻きながら部屋に戻り、私はそれを見届け、部屋に戻り、ベッドに横なる。

「いよ、いよ明日だ、すべてがうまくいきますように」
「うるせーねむれねーだろうが」
「すいません」
 私はそのまま眠りについた。

 ーー大会当日の朝

「おはようございます、長い一日の始まりですねぇ今日で勝負がきまりますね」

 自室で朝の挨拶をしいたあと、驚きの表情をみせた、ミルゲイさん

「おまえ、なんにも知らないの?」
「なにがですか?」
「この大会は3日間かけて、行われるの」
「えっ!」

 ミゲイルさんは、私が大会の概要をほとんどしらないのを知ってか呆れたそぶりをする

「だれも言ってくれませんでしたので」
「そりゃ、優勝狙ってるやつが知らないなんてだれも思わねーよ」
「それもそうですね」
 どうやら、参加ギルドが多いため、1日では終わらない、そのため3日間に分けておこなわれているらしい決勝は3日目正午に行われ、凄い人気があるという

 食堂に向かう。

 ミルゲイさんとクソ硬いパンとクソまずいスープを口に入れる。
「こんな時ぐらい、もっとましなもくわせろっつーの」
「セルゲイさん、いわくどうせ1回戦で負けるから、いつもと一緒でいいってことらしいですよ」
「あいつらしいわ、しかもどうせ負けたらすぐに仕事場につれていかれるんだろうな」
「そうでしょうね、まあでも仕事は昨日が最後になりますよ」
「そうなったらいいけどな」

 食堂のドアが開き、目をやると、ザンガスさんが普通に歩いて食堂に入ってきた、見た限り昨日のダメージはないように見える。

「ザンガスさん体は大丈夫ですか」
「そんなやわな鍛え方してないから心配無用だ」
「よかった、じゃあ今日の試合でてもらえますね」
「もちろんだ、あとスミトフの奴が余計なこといってただろ」
 ちらっとスミトフさんの方を見ると、顔を横に背けそしらぬ顔をしている。
「いえ、言ってないと思います」
「おもいますだ?そりゃ言ってるってことだな」
「はい」
「まあ、気にしないでくれ」
「はい」
 そういうとザンガスさんはクソ硬いパンとまずいスープを手に取り席に着く

 食堂に全員集まっている、するとミルゲイさんが手を叩き立ち上がる
「注目、今からレクシアが話します」
「え?なにもきいてないけれど?」
「こういう時は、発起人が一言言うもんなの」
 強引に立たされ
「今日から大会が始まります、2日後にまたここで祝杯をあげましょう」
 食堂にいる全員が立ち上がり右手を上げ
「おーーー」
 全員で勝どきをあげた。

 大会の会場である、闘技場に向かう。
 セルゲイさんは当然馬車などは出してくれるはずもなく、徒歩で闘技場に向かう。
 昼間に街にいくことは、今までなかったため、街並みが新鮮にうつる。

 ガレオンの街並みとは違い、緑が多く建物も木をふんだんにつかっているものが多く、そのせいだろうか、ガレオンより暖かく見える。

 石畳を真っすぐに歩いていくと10分ほどで闘技場の外壁が見えてくる、ガレオンのように円形で岩を切り出されて作られており、すり鉢状で観客席が周囲を囲むようになっており、構造的にはガレオンのそれと大差ない。
 ただ国力の力を反映してか、大きさはガレオンの半分程度であった。

 ザナビルの闘技場を初めて見る私にミルゲイさんが声をかけてくる。
「ここがザナビルの闘技場だ、でかいだろ?」
「あ、はい、でかいですね」
「あれ?あんまり驚いてないなー」
 それをみてザンガスさんが口を挟む
「レクシアの剣はガレオンの流派だ、ガレオンの闘技場を知っていればなぁ、ザナビルの闘技場など」
「へぇぇガレオンの闘技場はこれよりもでかいのか?」
「ええ、まあ、倍ぐらいに」
「ほえええ、そりゃでかいな」

 闘技場の外にトーナメント表が張られており、皆で確認する
 レギオンの位置を確認し
「レギオンとは決勝までなしか」
 私がつぶやく
 するとスミトフさんが口を開く
「そりゃよかった、セルゲイの妨害が最後までねーわ」

「おい、おい、最初の相手はどこだ?」
 ミルゲイさんが釘を刺した。
「あーそうですね初戦は大事ですね、えっとボレリアンズと書かれていますね知ってます?」
「まあ中堅どころギルドだな」
「へえ、底辺ギルドは私たちぐらいのものですか」
「まあな」

 私達のような最底辺ギルドには控室すら与えられないため、闘技場の外で、試合開始まで待機をする。
 時折歓声が上がったり、怒号が上がったりするのを耳にする。

「ヘブンズワークスさん、ヘブンズワークスさんどこですー」
 係員が私達を探しているようだ
「はい」
 手を挙げてそれにこたえる
「次の試合なので準備をおねがいします」

 私達が手を挙げると、別の係員が、私たちの対戦相手を名を呼び、中に誘導をする、私たちも闘技場の中へ通される。

 中では3試合が一斉におこなれており、満員の観客席から怒号と歓声が外よりも大きな渦になって聞こえる
「次、ヘブンズワークス対ボレリアンズ」
 審判員によばれ、中央の会場にむかう
 対戦相手を見ると、私たちとは違い、真新しいシャツに、パリッとしたズボン、鋭気のある目に、手には真新しい木剣をもった5人が並んでいる。

 審判から呼ばれ中央に向かう。
 互いに正面の選手と握手をし、再び元の位置にもどる。

 先鋒のミゲイルさんとその相手だけがその場に残り、審判が試合開始の合図を出す。

 ミゲイルさんはゆっくりと間合いを詰めていく
 表情が硬い…緊張しているのだろうか、動きも硬くなければいいのだが…


 案の定、敵が先に動く、それに反応ができないミゲイルさん、あっという間に、打たれ審判が相手の手を取り勝利を宣言する。
 うなだれながら帰ってきたミゲイルさん
「すまねぇ、柄にもなく緊張しちまった」
「まだ大丈夫ですよ、まだ」

 続く次鋒のエビリさん
 彼もカチコチに緊張していたようで、思い切って振りぬいたはいいが、あまりに大振りでみえみえだったためかわされ、打たれてしまった。
 負けが2つ続いた。
「すいません…」
「しょうがない初めての試合だから、キチンと剣は鋭いんだから基本を忘れずに」
「はい!」

 そうはいったものの、もう後がない、スミトフさんがつないでくれないことには

 ーー中堅戦
 スミトフさんは余裕のあるような表情にみえる。
 審判が開始の合図をだす。

 スミトフさんは開始の合図と同時に、相手の間合いまで踏み込み、乱打を浴びせる、それにけおされ、相手がじりじりと後退をしていく。

 相手の足がすこしひるんだ

 スミトフさんはその隙を見逃さず、胴に打ち込む
 審判がスミトフさんの手をあげ勝利を宣言する。

「おおおおおお」
 初勝利に全員で歓声を上げる

「よっしゃ次につないだ」
 スミトフさんがガッツポーズをとりながら戻ってくる。

「ザンガスさん、お願いします」
「任せろ」
 ザンガスさんは長剣を持ち、指定の位置に着いた

 ーー副将戦
 昨日ダメージが心配ではあるが、ザンガスさんレベルの猛者でなければ影響はないだろう
 審判が開始の合図を出した瞬間

 スミトフさんの時よりも圧倒的に早く、一瞬にして間合い詰める、相手にしてみれば、巨大な壁が一瞬でせまってきているようにも思えるであろう。

 ザンガスさんの剣は相手の頭の上ですっと止まっている。
 審判がザンガスさんの手をとった。

 当たり前という表情でザンガスさんは帰ってくきた
「さすがですね」
「当たり前だろ、こんなところで躓いてたまるか」
「そうですね」
「お前も足元をすくわれるなよ」
「もちろん」

 指定の位置につき、相手の姿を見る。
 眼の奥の光は乏しく、おびえているようにすら見える。

 審判が合図を出す。
「はじめ!」
 ふーっと一息吐く、相手はさっきと同じように『はじめ』の合図で、斬りかかってくるものとおもっていたのか、間合いを詰めてこない私の姿を見て、拍子抜けしたようで、ホッとしているようにすらみえる。

 相手から先に動いた、どうやら私の隙に引っかかったようだ。半身をひいて剣をかわし、相手の首元に自分の剣を当てる。

 審判の顔をちらりとみると、よってきて私の手をあげた。

 みんながいる方をみると、両手を挙げて喜んでいる。
 ミルゲイさんが走ってきて私に抱き上げ
「よっしゃーーまずは一勝」
 と雄たけびをあげる
 スミトフさんがミルゲイさんに一言いった。
「おいおい、お前は負けただろ、次はもっと楽させてくれや」
「へいへい」

 中央に集合しお互いに握手を交わし、健闘をたたえた後、闘技場をあとにする

 闘技場の外は、負けたギルドの人間や観戦客などでごった返してきている。

 そのなかに、1人、やせ型であるが身につけているものは高価で、シワひとつ無い、貴族調の洋服に、その装飾品は、とても一般庶民のそれとは、到底思えない身なりの初老の男性が立っている。
「レクシア!」
 その男性に声を掛けられ私はその男性のもとに近寄る
「リディムさん!来てくれたんですね」
「ああ、君たちの1試合目を見たよ、私は君に賭けてみようと思う」

「そうですか!ありがとうございます」
「それじゃ、約束通りに」
「はい、ありがとうございます」
 リディムさんと別れ、皆の方をみると、みんなはきょとんしたような顔をしている。
 ミルゲイさんが開口一番
「あれ誰?」
「リディムさん」
「おまえ、あんな貴族みたいなやつと知り合いなわけ?」
「いえ、彼は貴族じゃありませんよ、ホフナー商会のリディム・ホフナーさん」

 私が名前をいうとギルドメンバー全員が驚き、ミルゲイさんが恐る恐る口を開く。

「お、おい、そいつはこの国で一二を争う豪商だぞ」
「ええ、知ってますよ」



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

処理中です...