転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

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第1章 最底辺

第7話 最後の剣士

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 3人での練習が始まり1週間が過ぎたころ
 いつも通り、夜に集まり外に出る。
 すると
「お前ら、疲れてんのによくやるわ」
 額が広いスミトフさんを中心して6人が私たちが練習をしてる場所で木剣をふっていた
「ザンガスと食堂でやりあっただろ?」
「はい」
「その時に、先を変えるのは今しかないって言葉がひっかかってな」
 ミルゲイさんが口を挟む
「優勝したら未来が変わる、負ければ今より悪くなることはない、なら賭けるしかないよな」
「ああ、ミルゲイの言う通りだ、俺たちはお前に賭けようと思う」

「……ありがとうごじゃいます」
「おい、何泣いてるんだ、泣くのは優勝してからだろ」
「ええ、そうです、それじゃみんなで練習しましょう」

 ーー1時間が経過


「ちょっと、休憩しましょうか」
「おう」
 地面に座り、思い思いにみんな休んでいる
 スミトフさんがこっちにきて口を開いた

「ありがとよ、こんなギルドにいるとさ、性根まで腐っていっちまう」
「まだ、取り返せますよ。スミトフさん普通に強いんじゃないですか?」

 練習を見た限り、このギルド内でスミトフさんには私に次ぐ強さを感じた

「まあな、準決勝まで残った時のメンバーの一人だしな」
「やっぱり…」
「ザンガスは俺よりも強いぞ、あいつにも声はかけたんだけどな」

 ギルドメンバーはザンガスさんを除く全員が練習に参加していた、おそらく食堂での一件のせいだろう

「そんなに強いんですか?」
「ああ、あいつは騎士団に所属してたからな」
「なにがあったんです?」
「あいつの嫁さんが病気になってな、借金までして治そうとしたらしいんだが、結局治せず、借金と自暴自棄になって騎士団を追われて、ここにきたってわけさ」
「それは…」
「それとな、あいつ準決勝までいったときの中心人物と仲が良くてな、あいつが死んでからは…」
「じゃあ、なおさら優勝しないと、ザンガスさんや亡くなったその人のためにも、セルゲイさんを見返してやりましょう」
「そうだな、あと3週間」
「はい」

 ーー大会1週間前

 仕事帰りの馬車の中で私はミルゲイさんに話をする
「ちょっと用事があるので今晩は練習にいきません」
「何の用事なんだ?言えよ」

「私のアイデアの実現のためです、しばらく練習には参加できないかもしれません」
「まあ、大丈夫だろ、スミトフさんもいるし、ところで大会に出るメンバーはきめたのか?」

「それなんですが、私とスミトフさん、ミルゲイさん、エビリさんは確定してるんですけどあと一人が…」
「エビリもこの3週間ですごく伸びたからなぁ」
「ええ、彼のセンスは凄いですよ」

「そうはいっても俺にはまだまだ及ばないがな」
「どうでしょうね、大会当日には勝てなくなってるかもしれませんよ」

「あと一人かぁ」
「ええ、みなさんほぼ同じレベルなんですよね…」

「たしかにそうだな、ザンガスの野郎がはいってくれればな」
 ミルゲイさんはそういってザンガスさんの方チラリとみた。
 当のザンガスさんは我関せずといったかんじで、腕を組み目をつむり、寝ているようにみえた。

ーー大会前日

仕事が終わり馬車に揺られている。
ミルゲイさんが心配そうに話しかけてきた。

「今日の練習はでられるんだろうな?」
「はい、もう仕込みは終わりました」
「で、うまくいったのか?五分五分といったところでしょうか」
「まあ、何を企んでるかは知らんけど」
「任せてください」
「ああ」
馬車が長屋につくあたりは暗くなっておりセルゲイは帰宅する、私たちもいったん部屋に戻り、いつもの練習場所にみんなで集まる。
「明日から大会なので、今日の練習は、実戦形式でわたしと一対一で戦いましょう、最後の仕上げです」
「1週間練習さぼってたお前になら、俺、勝っちゃうかもな」
「ミルゲイさんにはまだまだ、負けませんよ」

お互いに、木剣を構えミルゲイさんと対峙する。

じり、じりとミルゲイさんが間合いを詰めてくる。
1か月前のようにむやみやたらに打ち込んでくる感じではない。

「はぁはぁはぁ」

ミルゲイさんの息が荒くなってくる。

「ああああもう俺の負けだ」
ミルゲイさんは一撃も打ち込まず負けを宣言し、構えをとく

「だめだだめ、お前強すぎる、隙があるようでなくて、全部が罠に見える」
「あちゃーばれちゃいまいしたか、これをただの隙にみせて撃たせないとダメなんですけどね」
「いやあ、前の俺だったら打ち込んでたわ」
「まあそれだけ、ミルゲイさんが腕を上げたということじゃないんですかね」
「だといいけど」

ミルゲイさんはそのまま下がり、次の相手エビリさんが立つ。

「エビリさんどうぞお手柔らかに」
彼が一番この中で伸びた、一撃の鋭さに関して言えば、ミルゲイさん以上とも感じる
「はい…頑張ります…」

お互いに面と向かう。
緊張しているのかエビリさんの顔は引きつり、眼鏡の奥の眼には生気がない。

背格好は近いため、おそらく、間合いも同じ

彼が私の間合いに入った瞬間

ブスン

エビリさんから繰り出された剣が空気を切る

ーー速い

その一撃は、私の想像を越えるもので、

カーンという木と木がぶつかる音がする。
交わす間がなかった…受けるのが精一杯で、私はエビリさんの剣を私の剣で受け止め、そのまま上にはじき、エビリさんの剣は中を舞った。

「エビリさん凄いよ、あの一撃は」
「でも受け止められました…」
「いや避けて打ち込むつもりだったんだけど、あまりの速さに避けることができなくて、あのレベルの速さの打ち込みなら、並の人はとめられませんよ、自信を持ってください」
その言葉をきいてか、エビリさんの緊張はとけ、表情は幾分明るくなったように思えた。

「じゃあ次はスミトフさんでいいですか」
「ああ、じゃあやろうか」

「せいっ」
構えるなり、首の横からたたきつけるように、剣が伸びてくる。
その一撃を交わすやいなや、次の攻撃に移っている

やっぱりこの人はできるな
ちょっと本気をださないと、負けそうだ

スミトフさんの斬撃は10秒ほど続く、紙一重ですべてを交わす。さっきの10秒のうちに15発は打ち込んできている。
これほどの腕をもっているのにこんなところにいるなんて惜しい人だ。
「じゃあ、そろそろこっちから行きますね」

スミトフさんには何が起こったかわからないだろうが、私の剣はスミトフさんの頭の上で止まっている
「なにをしたんだ」
「ちょっと本気を出しました」
「事前動作がなかったぞ」
「はい、突きに近い感じです」
「お前にはかなわないな」
「いえ、本気近くの力をだしたのはここ1年ではじめてですよ」

こうしてあとの6人と実戦形式で練習を行った

「ふーさすがに8人を相手にするのは疲れますね」
「明日の試合参加メンバーはきまってるのか?」
ミルゲイさんが心配そうに聞いてくる
「ええ、まあ」
遠くから月明かりに照らされる、普通の剣の倍の長さがある剣を持って歩きている人物がいた。

スミトフさんが驚いたような表情で口を開く

「ザンガス!!」
ザンガスさんがわたしの前に立ち、表情を変えず声を出す。
「レクシア、俺と勝負しろ」
「いいですよ、いっときますけど私強いですよ」
「ああ、さっきの練習をみて知ってる」

ザンガスさんの前に立つ、長い剣で間合いを見誤りそうになる、ザンガスさんの大きな体が更に大きく見える。

スミトフさんとミルゲイさんの会話が耳に入ってくる。

「ザンガスの野郎本気だぜ」
「ザンガスが強いってのは前にきいたけど、そんなにか?」
「ああ、あいつは長剣のザンガスってザナビル騎士団でも5本の指に入る手練れだったんだよ」
「まじか…」
「スミトフさんは、どっちが強いと思う?」
「わからん、レクシアも底をみせていないとはいえ、あいつの剣はまだ若い、ザンガスの清濁を飲み込む剣に対抗できるか」

「でもザンガスは10年以上剣握ってないんだろ?」
「あの体つきで剣を握ってないっておもえるか?」
「い、いや…」
「おそらくあいつは10年以上ずっと練習をしてたはずだ」
「…おっとはじまるか」


凄いプレッシャーを感じる、確かに10年以上剣を握っていない人のプレッシャーではない

間合いも向こうのほうが有利…

空気を裂く音がする、長剣を振り下ろしてくる、私はとっさに身をかわす、受けていれば腕が折れかねない渾身の一撃だ。

さらに蛇が獲物を狙うかのように、私に剣がまとわりつくような動きをみせる。
すんでのところでかわしてはいる、いるのだが、木剣なのにほほをかすった後は鋭利な刃物で切られたような、傷が残る。

凄い人だ、まるでエイルを相手にしているようにすら感じる。

内心ワクワクしている自分がいる、この強敵に対してどうすれば勝てるのか。

ザンガスさんの攻撃は烈火のごとく激しくなる、防戦するに精いっぱいとなる。

すっとザンガスさんが間合いをとる。
「まだ本気出してないんだろ?おれは木剣ごときじゃ死にはしないぞ」
「ばれちゃいましたか、本気出したら寸止めできないので」
「本気でこい」
「ならば、本気で行きますね」

すーっと剣と一体になる感覚を覚え、私とザンガスさんは波のない湖の湖面に立っている。

ザンガスさんがピクリと動く、すると湖面に波紋が起きる。

私は波紋ごとザンガスさんを切り抜ける。

すーっと現実に戻る、私の後ろにザンガスさんの体がある
ザンガスさんは片膝をつき
「おまえは化け物だよ、おまえらだったら優勝できるな」
「はい、勝ちます、ザンガスさんも協力してくれますか?」
ザンガスさんはこわばっていた表情を緩め口を開く
「ああ、勝ちに行こう」

その場にいた私とザンガスさん以外は歓声を上げた。

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