転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん

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終章 復讐の果て

第32話 晩餐会

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 暗殺?しかしどうやって?
 自宅にしている空き家に戻り、思案を巡らせる。
 直接的に殺す?しかしそれをすると、疑いをかけられてしまう。エイルのことだ、必ず自分に火の粉がかからない方法をとるはずである。

 思い出せあの時の会話を…
 明後日、確かにあの時そう言っていた!予定通りともあの老人は言っていた、明日、あいつは明日なにかをするつもりなのか…

 味付けの濃い、酒場仕立ての腸詰を手に取り口に放り込み、古い鏡の前に立つ、ナイフを使い器用に髭を剃り落とし、蝋と油でできた整髪料を使い髪をオールバックにする。
 鏡をみながらほほを指で触り、最終確認をする。
 鏡の中に映る顔はどうみても場末の酒場で用心棒をしているそれではない。

 胸にナイフを仕込み、いつものくたびれた革の上着に麻のズボン、革のブーツを履き、剣は壁にかけたまま、扉からいつものように出かける、ただいつもの時間ではなく、陽はまだ高い。

 大通りから宮殿の近くまでいくが、騎士たちが右往左往しており、宮殿に近づくことすらできない。
 近くで騎士たちが話をしているのに耳を傾ける。

「今回の警備計画、皇国親衛隊の副隊長エイル様じきじきにつくられたらしいぜ」
「なるほど、だから穴がないのか」
「ああ、そのせいで俺たちにしわ寄せがきているがな」
「今回が副隊長になってからの大仕事だ、必ず成功させたいんだろうよ」
「ああ、奴の出世の道具になるのは癪だけどな」
「なにいってんだ、俺達みたいな下っ端は道具にもなってねーよ」
「そりゃそうだな」
「やべ、あそこ」
 皇国親衛隊の制服を着た男がだべっている騎士たちをギロリとみた。

 私はふと疑問に感じた、エイルが警備計画を…?だとすれば暗殺などが起これば逆に汚点になるのではないか?いや、あいつが警備計画を考えたからこそ暗殺が容易になる?

 いや、今はとにかく宮殿に侵入することだけを考えなければ…しかしこの警備だどこから…
 しかし、穴はすぐにあった。
 夕方になり、警備が交代を始める。

 交代の隙を縫って宮殿の東側にある壁に手をかける、この5年間何度も侵入するための練習を繰り返してきたその時がきたらいつでも侵入できるように。
 宮殿の外を守る塀は外敵からの侵入を予想し、切り出された岩がすきまなく積まれ、手をかけて登ったりすることが困難なつくりになっている。
 しかし、ここの塀には手で掴める傷がある、その傷を手でつかみ一瞬で壁を駆け上がる。
 まさか人の身長の3人分はあるような塀を駆け上がるとは思いにもよるまい。
 私は塀を駆け上がりその場で伏せ、様子を見る

 なにかに気付いたのか騎士の一人が走ってきてそのあとをもう一人の騎士が追いかけてきている。
「あれ?壁を登ってる人がいたきがするが…」
「気のせいだろ?こんな塀登れるわけないから」
「それもそうだな、忙しくて疲れてるわ」
「これが終わったら飲みにいこう」
「おう、お前のおごりな」
「馬鹿言うな安月給なんだぞ」
 騎士は塀を見上げ、持ち場に帰っていく。

 塀から降り中庭は外より警備の人数は少ないが、いないわけではないため、この辺りは昔来た時となにも変わっていない。
 灰色の切り出された岩が詰まれた宮殿の外壁、一定間隔に開けられた窓。
 私は窓を外から開け宮殿の内部に侵入する。

 そして宮殿のトイレに身を隠す。

 だれかが鼻歌を歌いながらやってくる。
 個室の戸を開き確認する。

 燕尾服をきた侍従の一人がトイレにやってきたのだ。
 その背格好を確認する。
 ーーこれだったらいけるか。
 私が個室から飛び出す、その瞬間、侍従は何が起こったのか分かっておらず
「すいません!」
 となぜか謝っていた。
 そのまま顔を殴り気絶させ服を脱がし手足を縛り個室に押し込む。
 燕尾服を着用し、鏡で確認する。

 よしどこからどうみても、一級品の侍従だ。
 私は堂々とトイレをあとにした。

 侍従のポケットの中に予定表と書かれたメモが入っており、それをみて今日の予定を確認する。
 これから皇帝と王を交えた晩餐会が行われ、そのあと舞踏会が行われると書いてあった。
 明日の予定が欲しいところであるが…とりあえず今日は情報収集に徹するか…

 廊下をあるいていると侍従の偉い人に呼び止められる。
「おい、こんなところでなに油を売っている、仕事をせんか、仕事を」
「はい、失礼します」
 とりあえず、給仕部屋にいき晩餐会の準備でも手伝うとするか、どやされるのもまずいからな
 私は過去の記憶を頼りに給仕部屋に向かう、給仕部屋の扉を開くと中は
「この料理終わったらそれ運んで」
「ちょっとあそこのテーブルお酒きれてるわよ!」
「だからそこ、その料理早くもっていって」
 戦場のような忙しさで、皆が右往左往している。

「ほらそこ突っ立ってないで、これ持って行って」
 私は色鮮やかな飲み物が入ったグラスをお盆ごと渡された。
「これをソルフィン陛下にお持ちして!」
 メイドにそういわれ、晩餐会が行われている、ホールへ向かった。

 ホールの中央部には巨大なシャンデリアがつるされ、壁には躍動感ある絵が描かれている、置かれている調度品の数々はガレオンの力を誇示しているかのようである。
 円卓が数多くならび、そこにはガレオンの有力貴族たちが座っている、皇帝陛下と国王陛下の挨拶が終わり貴族たちはその料理に舌鼓をうっている。
 ホールの端の一段上がった舞台のテーブルに皇帝陛下とソルフィン陛下が並んで座わり談笑をしながら食事をしている。
 5年ぶりにソルフィン陛下の顔をみた、その顔にかつての幼さはなく、一国の王としての風格が漂っている。
 私はホールの隅を歩いていき、陛下の後ろからグラスを差し出す。
 陛下は皇帝陛下の方を向き談笑をされこちらを振り返らずにグラスを受け取る。
「ありがとう」
 礼だけを述べられ視線は皇帝陛下に向けられている。

 私が一礼をしその場から去ろうとしたとき、ソルフィン陛下はこちらを向かれた。
 その表情を昔の幼さが残る笑顔で
「レクシア、会いたかった」
 一言述べられた。

 私は表情を変えず、そのまま再度一礼をしその場を立ち去った。


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