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3.南の領地へ
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「ほら、ここが花畑だよ。
君が気にいるって思ったんだ。」
エミリオは、バスケットを開けて、ウサコが出れるように、置いた。
鼻をヒクヒクさせながら、ウサコは慎重にバスケットから出ると、空を見上げる。
晴天で雲がほとんどない空が広がる。
空気は澄み切って、一面の花畑が広がり、そよそよと優しい風が吹いている。
(わぁ、素敵。
お花の香りでいっぱいね。)
ウサコは、自由にぴょんぴょんと動き回っている。
その様子をエミリオは眺める。
草原にウサコ、めっちゃ絵になる。
後ろ足の蹴りとか、可愛い過ぎる。
「あまり遠くまで行くなよ。」
(大丈夫、私足早いから。)
ウサコは走り回っているかと思ったら、急に立ち止まって、花の香りをクンクン嗅いだりしている。
今日は、領地視察である南の領地に来ていた。
以前通りかかった時、綺麗な草原の野生の花畑が広がっていているなと思っていた場所だった。
だから、ウサコをぜひ連れて来てあげたいと思っていたのだ。
これだけ喜んでくれたら、僕も嬉しい。
何せウサコは、チーズは喜んでくれるけど、他の令嬢のように、ドレスや宝石も嬉しくないだろうし、甘味すら「別に」だそうだ。
ウサコを喜ばすのは、自然の中という王宮暮らしの僕にとっては、簡単ではない場所なのだ。
そのため、王宮の庭園をウサコが好きそうなものに、変えている途中である。
だから、いっそのこと領地視察に連れて来ている。
そのせいで僕は、ウサギ好きだと思われている。
間違いではないけれど、僕が好きなのは、ウサギではなく、ウサコなんだけれど、それを説明することもできない。
モフモフは好きだけど。
この前は、視察先で数十羽のウサギを見せられて、好きなのを献上すると言われた。
その時は違うと叫びたくなったが、よく考えたら他のウサギとも、僕は話せるのかと、好奇心が湧いて話しかけたら、誰も話し返してくれなかった。
僕が話せるのは、ウサコだけなんだと思うと、ますますウサコが愛おしく感じた。
だけど、僕がウサギに話しかけている様子を見た者は、案の定勘違いして、ウサギに話しかけるほど好きなんだと、噂は広まる一方だった。
違うから。
僕は他の動物ならどうだろうと、一応愛馬にも話しかけてみたけれど、愛馬でもダメだった。
やっぱりウサコだけなんだ。
僕のウサコ愛は止まらない。
だから、嫌がるウサコに頼み込んで、僕のエンブレムのついた首輪だけは、してもらっている。
僕には、ウサコと他のウサギを区別することは容易いが、他の者にはわからないから、一緒にされてしまったら困る。
しばらくすると、お花と戯れているウサコを目掛けて、空から、ピィーーと鋭い鳴き声がして、大鷲が低空飛行して来た。
まずい。
「ウサコっ。」
僕はウサコに向かって、叫びながら走った。
その時思わず、剣を抜いて走り寄ったらしい。
大鷲は僕に気づいて、進路を変えると勢いよく飛び去った。
僕が剣を握ったその先で、ウサコがブルブルと震えている。
「大丈夫か?」
僕は剣を鞘に収めると、ウサコを抱き上げて、胸に抱える。
(怖かった。
私足が早いから、何かあっても逃げられると思っていたのに、実際は足がすくんで動けなかった。)
ウサコは僕に掴まりながら、赤い瞳から、涙を流した。
「うん、うん、もう大丈夫だから。」
(あの鷲は私を狙っていたわ。
エミリオの言うことを聞けば良かった。
もう少しで連れ去られるところだったのね。
ウサギって、つらいわ。)
ウサコは、いつ狙われるかも知れないと思うと、もう楽しむ気分ではなくなり、エミリオの腕の中から出ようとはしなかった。
そんな悲しそうなウサコに、エミリオは、花畑に咲いているスミレを一輪取って渡す。
「これで、元気を出して。
僕がそばにいれば大丈夫だから、また来よう。」
(うん、そうね、ありがとう)
ウサコがつらい思いをしているのに、ごめん。
いつもと違って、弱気になっているウサコも可愛い。
僕は背中のモフモフを撫でる。
本当はもっとギュッと抱きしめたいけれど、苦しいだろうから、やめておくよ。
「ウサコは、お花の中で一番何が好き?」
(私と言えば、赤い薔薇よ。
でも、本当はこのスミレが好き。
エミリオの優しさが伝わってくるから。)
「ウサコ好きだよ。」
(うん、私も。)
「あれ?
いつものように否定しないんだ。」
(そう言う時もあるの。)
「そっか、可愛いね、ウサコ。」
僕はウサコの背中のモフモフに、頬をすりすりする。
でも、もうウサコはいつものように、嫌だと言わなかった。
その様子を遠くから見ているナイセルは、エミリオ王子が絶対にこの先結婚しないと諦めた。
だって、もうウサギと好き合っちゃっているじゃないか。
僕は王に何て言えばいいんだ。
ナイセルは頭を抱えた。
エミリオ様に内緒で、王に秘密裏に呼ばれて、結婚の可能性などを報告させられている。
三男であるエミリオ様は、政略結婚のせいで、殺伐とした上の二人の息子達夫婦とは違った、愛のある結婚をしてほしいと思われているのだ。
でも、現実は難しい。
王にエミリオ様はウサギが好きだから、結婚をしないとは、僕の口からは言えないよ。
君が気にいるって思ったんだ。」
エミリオは、バスケットを開けて、ウサコが出れるように、置いた。
鼻をヒクヒクさせながら、ウサコは慎重にバスケットから出ると、空を見上げる。
晴天で雲がほとんどない空が広がる。
空気は澄み切って、一面の花畑が広がり、そよそよと優しい風が吹いている。
(わぁ、素敵。
お花の香りでいっぱいね。)
ウサコは、自由にぴょんぴょんと動き回っている。
その様子をエミリオは眺める。
草原にウサコ、めっちゃ絵になる。
後ろ足の蹴りとか、可愛い過ぎる。
「あまり遠くまで行くなよ。」
(大丈夫、私足早いから。)
ウサコは走り回っているかと思ったら、急に立ち止まって、花の香りをクンクン嗅いだりしている。
今日は、領地視察である南の領地に来ていた。
以前通りかかった時、綺麗な草原の野生の花畑が広がっていているなと思っていた場所だった。
だから、ウサコをぜひ連れて来てあげたいと思っていたのだ。
これだけ喜んでくれたら、僕も嬉しい。
何せウサコは、チーズは喜んでくれるけど、他の令嬢のように、ドレスや宝石も嬉しくないだろうし、甘味すら「別に」だそうだ。
ウサコを喜ばすのは、自然の中という王宮暮らしの僕にとっては、簡単ではない場所なのだ。
そのため、王宮の庭園をウサコが好きそうなものに、変えている途中である。
だから、いっそのこと領地視察に連れて来ている。
そのせいで僕は、ウサギ好きだと思われている。
間違いではないけれど、僕が好きなのは、ウサギではなく、ウサコなんだけれど、それを説明することもできない。
モフモフは好きだけど。
この前は、視察先で数十羽のウサギを見せられて、好きなのを献上すると言われた。
その時は違うと叫びたくなったが、よく考えたら他のウサギとも、僕は話せるのかと、好奇心が湧いて話しかけたら、誰も話し返してくれなかった。
僕が話せるのは、ウサコだけなんだと思うと、ますますウサコが愛おしく感じた。
だけど、僕がウサギに話しかけている様子を見た者は、案の定勘違いして、ウサギに話しかけるほど好きなんだと、噂は広まる一方だった。
違うから。
僕は他の動物ならどうだろうと、一応愛馬にも話しかけてみたけれど、愛馬でもダメだった。
やっぱりウサコだけなんだ。
僕のウサコ愛は止まらない。
だから、嫌がるウサコに頼み込んで、僕のエンブレムのついた首輪だけは、してもらっている。
僕には、ウサコと他のウサギを区別することは容易いが、他の者にはわからないから、一緒にされてしまったら困る。
しばらくすると、お花と戯れているウサコを目掛けて、空から、ピィーーと鋭い鳴き声がして、大鷲が低空飛行して来た。
まずい。
「ウサコっ。」
僕はウサコに向かって、叫びながら走った。
その時思わず、剣を抜いて走り寄ったらしい。
大鷲は僕に気づいて、進路を変えると勢いよく飛び去った。
僕が剣を握ったその先で、ウサコがブルブルと震えている。
「大丈夫か?」
僕は剣を鞘に収めると、ウサコを抱き上げて、胸に抱える。
(怖かった。
私足が早いから、何かあっても逃げられると思っていたのに、実際は足がすくんで動けなかった。)
ウサコは僕に掴まりながら、赤い瞳から、涙を流した。
「うん、うん、もう大丈夫だから。」
(あの鷲は私を狙っていたわ。
エミリオの言うことを聞けば良かった。
もう少しで連れ去られるところだったのね。
ウサギって、つらいわ。)
ウサコは、いつ狙われるかも知れないと思うと、もう楽しむ気分ではなくなり、エミリオの腕の中から出ようとはしなかった。
そんな悲しそうなウサコに、エミリオは、花畑に咲いているスミレを一輪取って渡す。
「これで、元気を出して。
僕がそばにいれば大丈夫だから、また来よう。」
(うん、そうね、ありがとう)
ウサコがつらい思いをしているのに、ごめん。
いつもと違って、弱気になっているウサコも可愛い。
僕は背中のモフモフを撫でる。
本当はもっとギュッと抱きしめたいけれど、苦しいだろうから、やめておくよ。
「ウサコは、お花の中で一番何が好き?」
(私と言えば、赤い薔薇よ。
でも、本当はこのスミレが好き。
エミリオの優しさが伝わってくるから。)
「ウサコ好きだよ。」
(うん、私も。)
「あれ?
いつものように否定しないんだ。」
(そう言う時もあるの。)
「そっか、可愛いね、ウサコ。」
僕はウサコの背中のモフモフに、頬をすりすりする。
でも、もうウサコはいつものように、嫌だと言わなかった。
その様子を遠くから見ているナイセルは、エミリオ王子が絶対にこの先結婚しないと諦めた。
だって、もうウサギと好き合っちゃっているじゃないか。
僕は王に何て言えばいいんだ。
ナイセルは頭を抱えた。
エミリオ様に内緒で、王に秘密裏に呼ばれて、結婚の可能性などを報告させられている。
三男であるエミリオ様は、政略結婚のせいで、殺伐とした上の二人の息子達夫婦とは違った、愛のある結婚をしてほしいと思われているのだ。
でも、現実は難しい。
王にエミリオ様はウサギが好きだから、結婚をしないとは、僕の口からは言えないよ。
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