愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

月山 歩

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結婚後

19.窃盗犯

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 アリスはレイモンドと当局を訪れていた。

「私の邸の窃盗犯と話がしたいんだ。
 悪いが、話ができる場所を提供して欲しい。
 無理なら、その者を私達で、引き取る。」

「小公爵様、私どもはどちらでも構いません。
 とりあえず、個室で話をしますか?」

「ああ、無理を言って悪いね。
 頼む。」

「わかりました。
 お待ち下さい。」



 二人が会議室のソファでくつろいでいると、窃盗犯のカーラが連れられて来た。

「ヒッっ、すみません。」

 カーラは、床に頭を擦り付けるように謝った。

「頭を上げて、まずは座って。」

 そう言われたカーラはおずおずとアリス達の向かえの椅子に腰かけた。

「なるほど、あなたなのね。
 宝石をどうしようと思っていたの?」

 アリスは、カーラの全身をくまなく見ている。

「どうかしようと思ったわけでは、ありません。
 私はただ、クローゼットの中に手入れされていない宝石を見つけて、どうしても気になって、磨いていただけです。
 盗もうとしたわけではありません。

 ただ、見つかった時、思わず宝石を背中に隠してしまって、それで、盗んだと判断されたのです。
 申し訳ありませんでした。」

「あなたは、私の宝石が磨かれていないことが気になったの?」

「はい、あれほど素晴らしい宝石なのに、手入れされぬまま、ただ、仕舞われていることがどうしても、気になったのです。

 宝石は磨かれて、身につけられて、やっと本来の輝きができるのに。

 あれほどのサファイアを見るのは、生まれて初めてでした。

 多分、この王国でこんなにも、色々なサファイアを持っているのはアリス様と思われます。 

 まさに、国宝レベルです。
 宝石達が可哀想です。」 

「あなたの言う通りね、ごめんなさい。
 そして、レイにもごめんなさい。

 私が手入れをきちんとしないばかりに、せっかくあなたのくれたプレゼントが悲しい思いをしていたわ。」

「アリスは必要な時はちゃんとつけていたし、捨てることもなく、すべて保管してくれていたじゃないか、僕はアリスを責めないよ。」

「ありがとう。
 ところで、あなたの名前は?」

「私はカーラと申します。
 掃除係をしています。」

「そう、カーラ、あなたは宝石がとっても好きなのね。」

「はい、大好きです。
 見ているだけで、幸せな気分になります。

 なので、貴族の方のお茶会などで、宝石を身につけた方を遠くから、眺めているのが、幸せなひとときなのです。
 私には到底買えませんので。」

「盗もうと思ったことはないのね。」

「もちろんです。
 宝石は眺めても素晴らしいですが、私のような者が持っていたら、盗んだと思われて捕まるか、逆に強盗に襲われるかの二択ですから。」

「確かにそうね。
 私も今でこそ、公爵家の者だから、それだけの宝石を持っていても、周りの人達が守ってくれるから、大丈夫だけど、男爵家時代はレイがくれてたから、気にしないで、身につけていたけど、大変なことだったのね。」

「アリス、大丈夫だったんだよ。
 アリスにはずっと、僕の影がついていたから。

 それに僕が宝石をプレゼントしていたことはもちろんカーティア男爵もご存知だったから、邸の警護も僕に自由にさせてくれていたんだ。」

「そうなのね。」

「だから、君は何も気にしないで、自由にしていて。」

「ありがとう。
 あっごめんなさい。
 いつの間にか、カーラを置き去りにお話ししていたわ。」

「いえ、お二人はとてもお似合いです。
 アリス様が宝石を仕舞われていた理由がわかって、納得しました。
 ほとんど、サファイアである理由も。」

 そう言って、カーラはレイモンドの瞳をじっと見る。
 レイモンドは素知らぬふりをする。

「で、本題なんだけど、カーラは宝石店で働いてみない?」
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