愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

月山 歩

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結婚後

18.侍女頭の憂鬱

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 アリスとレイモンドの結婚から、2日が経っていた。

 侍女頭アーシャは休み明けで、アリスに初めてあった。
 早速、面倒事をアーシャに押し付けたみんなに、怒りさえ覚える。

「どうしたの?」

「申し上げないといけなかったのですが、誰が伝えるかで、報告が遅れました。」

 アーシャがおずおずとアリスに話し出す。

「実はアリス様のネックレスや指輪が、掃除担当の者に、盗まれそうになっていました。

 すぐに、捕まえて役人に連行されました。
 だとしても、私どもの不手際です。
 申し訳ありませんでした。

 ネックレスと指輪は回収して、クローゼットに戻しております。」

 アーシャは叱責を覚悟して、待つ。

 すると、アリスは以外なことを口にする。

「その人と会いたいの。
 どうすれば良いかしら?」

 アーシャは迷う。
 もう、役人に引き渡してしまったので、もうどこにいるのか、わからない。

 それでも、アリス様は直接怒りをぶつけたいのかもしれないから、やはり、侍女達は私を待たずに先にアリス様に話すべきだったのだ。
 結局、それも私の落ち度である。

「申し訳ありません。
 その者はもう当局に引き渡したので、今どこにいるのか、私どもはわかりかねます。」

「そうよね。
 レイに相談するわ。」

 アーシャは思う。
 やっぱり小さくおさめようと思っていたけど、無理だ。

 レイモンド様にまで、話が行ってしまったら、アリス様の周りの侍女達は何人解雇になるかわからない。

 レイモンド様はアリス様に昔から、せっせと身の回りの物をプレゼントしており、もらったアリス様は、壊すことも処分することもせずに、そのまま保管していたため、今やおそろしい数の宝石がこのクローゼットに眠っている。

 その中の数個の宝石が無くなったとしても、アリス様は気づかないだろうと思う。

 ネックレスと指輪を回収できたのだから、大事にしないと執事頭の方が約束してくれて、内々で、おさめるはずだった。

 でも、アリス様の持ち物だから、ちらっと話だけはしなければいけないと思ったら、このありさまだ。

 ごめんなさい、みなさん、解雇になるのは、この場を治めれない私のせいもあるかも。

 そこに、レイモンド様が帰って来た。

「レイおかえり。」

「ああ、ただいま。」

「今日は一日何してたの?」

 帰って来たレイモンドは、アリスに手を伸ばして、抱きしめる。

「それよりもね。
 気になることがあるの。」

「えっ、何か悪い予感がするね。」

 アーシャは血の気が引いた。

「あのね、私の宝石が盗まれそうになったんですって。

 それで、その人はもう当局に引き渡されてしまったそうなの。
 それで、私その人に会いたいの。」

 そう言って、アリスはレイモンドをじっと見つめる。

「わかったよ、アリス。
アーシャ、そう言うことは今後は、アリスじゃなく、僕に言って。
 アリスに知れたら、面倒になるんだよ。」

「すみませんでした。」

 もうアーシャは失神して、この場から、去りたい、と思った。

 アリス様は普段は貴族と思えないほどに優しいと皆が言っている。
 でも、裏の顔はあるのだろう。

 もう、嫌。
 私のせいじゃないのに。

「じゃ、行くか?」

「やった。
 それでこそ、レイね。」

 アリス様は嬉しそうに、レイモンドと手を繋いで、出て行こうとする。

「もう、わかったから。
 これ、クッキー案件だよ。」

「もちろんよ、明日作るわ。」

 新婚の二人はイチャイチャしながら、寝室を後にした。

 何だこれ、私の想像と違う甘い展開は。

 全員クビだ、と冷たい目で、私達を叱責するんではないの?

 結婚する前のレイモンド様は美しい顔だちと冷たい眼差しで、容赦なく、執務をこなし、
 私達には、ほぼ話しかけることもなかった。

 なのに、さっき、私の名前言ったよね?
 今まで名前呼ばれたことなんてなかった。

 先にアリス様に言うな、と言った時のレイモンド様は、言いながらも、全く怒ってなかった。
 むしろ、嬉しそうにアリス様を見つめてた。

 あれ?
 私、何か私勘違いしてる?


 アーシャがアリスの人柄を理解するのは、もう少し先のことである。

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