彼にも内緒の月の聖女様

月山 歩

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5.生活を取り戻す

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 ニコラスが家に来てくれて、ご飯を食べた日を境に、シアナの体調はしだいに回復していった。

 聖女の役割を果たしている時、患者の病いの状態が深刻で、聖力を大量に奪われることがたまにあり、そうなると、しばらく私の体調が悪くなる。

 だからといって、薬草を採取する仕事を休んでいては、お金が足りず、家代を払えないし、食事を食べることもできない。

 だから、少しでも調子が良い時は、何としても働かなくてはならない。

 それに、月の半分は月の力が弱く、聖女の役割を担うことがない。

 その期間は、聖女の力を使わないため、体への負担がなくなる。

 せめてその間は、体調が良いから、今のうちに薬草採取へ行って、金銭を稼ごう。



「シアナ、久しぶり。
 ちょっと元気になって来たな。」

 ニコラスは、心配そうに私の顔を覗き込む。

「うん、ニコラス、心配かけてごめんね。
 それに、この前は食事も持ってきてくれてありがとう。
 今はもう大丈夫よ。

 さすがに休んでばがりで働かないと、お金がなくなってきて、生活がきつくなって来たの。
 だから、薬草摂取を頑張るわ。」

「おう。
 そしたらできるだけ短時間で、量は多くだな。」

「無理を言って、ごめんね。」

「いいよ。
 一緒に頑張ろうぜ。」

 次に薬草採取の護衛をニコラスに依頼した時、ニコラスは、何故か私の体調が悪くなる理由について、追及して来なかった。

 そのことに安堵した私はずるい。

 でも、体調不良の理由や聖女になることについて何も語らないまま、できるだけ長くニコラスと一緒にいたいと思ってしまう。

 二人は手を繋いで、所々日差しが差し込む森の中を歩く。
 時々牙をむいた魔獣と遭遇するが、ニコラスがすぐにそれを剣で倒していく。

「ありがとう、ニコラスは本当に強いのね。
 頼りにしているわ。

 ニコラスがいるから、森の奥に行かなければ手に入らない薬草が、たくさん採れたわ。
 どれも貴重なものばかりだから、本当に助かる。
 ありがとう。」

「ああ、任せておけ。」

 それから、二人はたくさんの薬草を摂取して、帰路についた。

「今日は俺の家に泊まっていく?」

 ニコラスがさりげなく聞いてきた。

「ううん、帰る。」

「やっぱりか。
 そこは変わらないんだな。
 でも、俺の作ったご飯を食べたら、もっと元気が出るぞ。」

「うん、ごめん。」

「まあ、いいよ。
 俺はシアナのことが好きだから、そのことだけは覚えておいて。
 俺の家に来るのはその内だね。

 あのさぁ、ところで、質問があるんだけど、シアナは最近教会に行ったことある?」

「えっ、ないよ。」

 シアナは背中に冷たい汗が流れて、ニコラスの顔を見られない。

「俺の仲間が、教会の近くでシアナを見かけたって言ってるんだけど?」

 ニコラスはシアナの反応を伺うように顔を覗き込んだ。

「知らない。」

「そうか、それならいいんだ。」

 そう言って、ニコラスは少し考えているようだが、深く追及することなく帰って行った。

 もしかして、私が教会に行ってるのをニコラスは知ってるの?

 それだけでなく、ニコラスは私が聖女だと気づいているの?

 でも、知っているとしたら、さすがに私に何か言って来るはずだわ。

 今日のニコラスはいつも通りだった。
 だから、聖女のことがバレる心配をしなくても大丈夫よ。
 きっとニコラスは気づいていない。

 まだ、彼から離れなくても大丈夫。
 今はまだ。
 そう自分に言い聞かせる。
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