1 / 12
1.変わった女性
しおりを挟む
ナイジェル・トルクは仕事中にも関わらず、退屈していた。
ここテイス王国の文官として、王宮で働いていたが、トルク家はよくある侯爵家であり、組織の一員としての執務しか求められていない。
だか、ナイジェルは元々頭の回転が速く、与えられた執務なんて、昼までに終わってしまう。
でも、誰よりも多い仕事を易々と終わらせると、午後はただ、ぼうっとして皆が執務を終わらせるまで時間を潰す。
そうそうに終わらせたと知られるとできないやつらが、嫌味を言って来てうるさいのだ。
そのため、今日もやることなく窓から、ぼんやりと外を眺めている。
すると、庭園の端の方で、ドレスを着た令嬢と思われる女性が危なっかしく木に登り、先に登って動けなくなってニャーニャー鳴いている猫を助けようとしているようだ。
人の背丈の二倍以上の木の高さがあるのに、女性は幹から、猫のいる細い枝先に手を伸ばしている。
すぐにも落ちそうで、見ているこっちがヒヤヒヤする。
そして、ただでさえ登りにくい細い枝の木なのに、令嬢特有の長いドレスの裾が木登りを完全に邪魔している。
もう少しで手が届くと言うところで、猫はサッと枝からジャンプし、幹をつたって、降りて逃げて行った。
猫が無事に地上に降りて安堵したようすのその女性も、降りようと動いた瞬間につかまっていた枝がバキっと折れ、女性は掴んでいたものを失い、バランスを崩し落ちそうになる。
「アッ」
と窓から見ていたナイジェルは、思わず声が出てしまった。
周りの人達が一斉にこちらを見る。
だか、ナイジェルにゆっくりとしている時間はない。
女性は、かろうじて、たまたま掴んだ細い枝にぶら下がった状態なのだ。
いつ枝から手が離れ、地面に降ちるかわからないし、細い枝だって折れかねない。
ナイジェルは女性を助けるために慌てて、走り出した。
きつっ、もう枝を掴んでいた腕が痺れて来て、力が入らない。
コーデリアは諦めて、最悪骨折しても仕方がないけれど、手を離そうと思った時、下から声がした。
「もう大丈夫だ。
その枝から手を離してごらん。」
下から声がする。
よくわからないけれど、もう枝を掴む腕の力は残っていない。
私は、その言葉を信じていいのかわからないけれど、そっと手を離した。
それと同時に落ちるが、下から支えられて間一髪のところで、男性に抱き抱えられたのがわかった。
私は落下の衝撃を免れ、下にゆっくりおろされた。
助かった。
「どなたか知りませんが、ありがとうございます。」
振り返ってみると、そこには黄色い瞳の顔の綺麗な男性がいる。
親切な人がいて良かった。
私は嬉しくて、笑顔で笑いかけた。
するとその男性は、
「いえ、たいしたことではないです。」
と硬い表情のまま、ほとんど視線も合わせずに、立ち去ろうとする。
「待ってください。
お礼もちゃんとしてませんし、この後、お時間いただけませんか?」
するとその男性は、眉間に皺を寄せ、さっきより明らかに表情を硬くし、今度こそ振り向かずに去って行った。
女性に誘われたナイジェルは、ウンザリしていた。
ちょっと親切にすると、女ってものは何でもすぐ出会いの場に変えて、しつこく騒ぎ立てる。
そして、大したことないのに、恋だの愛だの運命の出会いなどと騒ぎ立てようとする面倒なやつらだ。
ここは、これ以上関わらないのが、一番だ。
ナイジェルは端正な顔と、冴えた頭脳、そして侯爵子息という身分のため、女性にモテるのを面倒に感じる拗れた考えを持つ男だった。
ここテイス王国の文官として、王宮で働いていたが、トルク家はよくある侯爵家であり、組織の一員としての執務しか求められていない。
だか、ナイジェルは元々頭の回転が速く、与えられた執務なんて、昼までに終わってしまう。
でも、誰よりも多い仕事を易々と終わらせると、午後はただ、ぼうっとして皆が執務を終わらせるまで時間を潰す。
そうそうに終わらせたと知られるとできないやつらが、嫌味を言って来てうるさいのだ。
そのため、今日もやることなく窓から、ぼんやりと外を眺めている。
すると、庭園の端の方で、ドレスを着た令嬢と思われる女性が危なっかしく木に登り、先に登って動けなくなってニャーニャー鳴いている猫を助けようとしているようだ。
人の背丈の二倍以上の木の高さがあるのに、女性は幹から、猫のいる細い枝先に手を伸ばしている。
すぐにも落ちそうで、見ているこっちがヒヤヒヤする。
そして、ただでさえ登りにくい細い枝の木なのに、令嬢特有の長いドレスの裾が木登りを完全に邪魔している。
もう少しで手が届くと言うところで、猫はサッと枝からジャンプし、幹をつたって、降りて逃げて行った。
猫が無事に地上に降りて安堵したようすのその女性も、降りようと動いた瞬間につかまっていた枝がバキっと折れ、女性は掴んでいたものを失い、バランスを崩し落ちそうになる。
「アッ」
と窓から見ていたナイジェルは、思わず声が出てしまった。
周りの人達が一斉にこちらを見る。
だか、ナイジェルにゆっくりとしている時間はない。
女性は、かろうじて、たまたま掴んだ細い枝にぶら下がった状態なのだ。
いつ枝から手が離れ、地面に降ちるかわからないし、細い枝だって折れかねない。
ナイジェルは女性を助けるために慌てて、走り出した。
きつっ、もう枝を掴んでいた腕が痺れて来て、力が入らない。
コーデリアは諦めて、最悪骨折しても仕方がないけれど、手を離そうと思った時、下から声がした。
「もう大丈夫だ。
その枝から手を離してごらん。」
下から声がする。
よくわからないけれど、もう枝を掴む腕の力は残っていない。
私は、その言葉を信じていいのかわからないけれど、そっと手を離した。
それと同時に落ちるが、下から支えられて間一髪のところで、男性に抱き抱えられたのがわかった。
私は落下の衝撃を免れ、下にゆっくりおろされた。
助かった。
「どなたか知りませんが、ありがとうございます。」
振り返ってみると、そこには黄色い瞳の顔の綺麗な男性がいる。
親切な人がいて良かった。
私は嬉しくて、笑顔で笑いかけた。
するとその男性は、
「いえ、たいしたことではないです。」
と硬い表情のまま、ほとんど視線も合わせずに、立ち去ろうとする。
「待ってください。
お礼もちゃんとしてませんし、この後、お時間いただけませんか?」
するとその男性は、眉間に皺を寄せ、さっきより明らかに表情を硬くし、今度こそ振り向かずに去って行った。
女性に誘われたナイジェルは、ウンザリしていた。
ちょっと親切にすると、女ってものは何でもすぐ出会いの場に変えて、しつこく騒ぎ立てる。
そして、大したことないのに、恋だの愛だの運命の出会いなどと騒ぎ立てようとする面倒なやつらだ。
ここは、これ以上関わらないのが、一番だ。
ナイジェルは端正な顔と、冴えた頭脳、そして侯爵子息という身分のため、女性にモテるのを面倒に感じる拗れた考えを持つ男だった。
71
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました
鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。
第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。
いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。
自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。
両片思いからのハッピーエンドです。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
氷の公爵の婚姻試験
潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
【完結】没落令嬢の結婚前夜
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢アンジェリーヌは、裕福な家で愛されて育ったが、
十八歳のある日、突如、不幸に見舞われた。
馬車事故で家族を失い、その上、財産の全てを叔父家族に奪われ、
叔父の決めた相手と結婚させられる事になってしまったのだ。
相手は顔に恐ろしい傷を持つ辺境伯___
不幸を嘆くも、生きる為には仕方が無いと諦める。
だが、結婚式の前夜、従兄に襲われそうになり、誤ってテラスから落ちてしまう。
目が覚めると、そこは見知らぬ場所で、見知らぬ少年が覗き込んでいた___
異世界恋愛:短編(全8話)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる