2 / 12
2.王都の外れで
しおりを挟む
ナイジェルは今日は王都にある怪しい店の見張りに来ていた。
そこは、王都と言っても大分外れの方に位置し、もう夕方なため、人通りもほとんどない場所であった。
仕事内容は店に悪い輩が出入りしていないか、向かえの食堂の窓から、交代で見張ると言うものだ。
でも、本来ならナイジェルは文官でそんなことは業務にない。
ただ単に、なかなか尻尾を掴ませない悪い輩の見張りが長引き、役人だけでは手が回らず、文官でも見張りぐらいはできるだろうと駆り出されただけだ。
だが、今日も店に怪しい動きはない。
すでに交代要員が来て、同僚が申し送りをしている。
これが終われば、今日の仕事から、やっと解放される。
相変わらず、面倒なことばかりだ。
ナイジェルは役人達の申し送りが終わるまで、手を抜くことなく、窓から街を見張っている。
すると泣いている小さな男の子が、一人でトコトコと道を歩いて来た。
こんな辺鄙な場所で、迷子か?
子供が一人で道にいるのは、大変危険とは思うが、まだ、申し送り中だから、怪しい店から目を離せないので、ナイジェルが、駆けつけることはできない。
その子に何かあったら困るので、早く駆けつけたくて、ジリジリしていると、ドレスを来た女性がやって来て、その男の子に声をかけ、手を引いた。
ナイジェルは、これで安心と怪しい店の見張りを続けるが、助けたはずのその女性は男の子を連れたまま、通りを行ったり来たり繰り返す。
女性は、何をしているんだろう。
まさか、女性まで迷子になったのか?
もうガッカリな展開に、申し送りが済んで任務が完了した瞬間に、ナイジェルは、その二人の元に駆けつけた。
「すみません。
当局はどちらですか?」
コーデリアは、やっと見つけた通行人に声をかける。
「アッ、あなたでしたか?」
そこにいたのは、この前、王宮で枝から落ちそうになった時、助けてくれた男性だった。
「君はあの時の?」
「あのぅ、すみません。
私、道がわからなくなってしまって。
迷子のこの子を助けようとして、自分もどこにいるのかわからなくなって。」
コーデリアは再び困っているところを見られて、恥ずかしいような、助けられて嬉しいような複雑な思いで、モジモジする。
「とりあえず、二人を当局にお連れします。」
コーデリアのようすにも、ナイジェルは無表情で、返す。
三人は、ナイジェルの先導で、その先の当局にたどり着いた。
そこには、男の子の母親が不安気に男の子の無事を願っており、二人のおかげで再会できたことに、何度も礼をして帰って行った。
親子を見送ると、
「今度こそ、お礼をさせてください。」
とコーデリアは強く言う。
ナイジェルは、迷っているようだったが、コーデリアにジッと見つめられ、渋々ついてきた。
二人は近くの食堂に入り、お茶を飲んでいた。
「重ね重ねありがとうございました。
いつもピンチを救ってくれるなんて、あなたは、私にとってヒーローです。
私はコーデリア・スノウと申します。
お名前を伺っても?」
「僕はナイジェル・トルクです。」
「まぁ、ナイジェル様とおっしゃるのですか、ありがとうございました。
私はそそっかしいところがありまして。」
「そのようですね。」
「いつもナイジェル様のような方に会えたら、幸せですわ。」
「僕もたまたまですから。」
「そうですよね、ふふ。」
お茶が飲み終わるとコーデリアはナイジェルの分も払い、何度も礼を言いながら、帰って行った。
貴族でありながら、供もつけず歩き、挙げ句に迷子になる。
コーデリアは、信じられないほどに型破りな令嬢だった。
彼女と別れ、ナイジェルは、帰りの馬車の道筋で思う。
あれっ?
なんか変だぞ。
この流れはいつもと違う。
僕は、コーデリアが擦り寄って、上目遣いに媚を売り、今後も二人で会いたいなどと言って来ると思っていた。
だか、実際は僕の爵位を聞いてくるようすもなく、コーデリアは本当にお礼だけして帰って行った。
前回お礼がしたいと言った時だって、実は僕個人になど興味もなく、ただお礼がしたかっただけだったのか?
これでも、どんな女性にも、有望と思われている侯爵子息だぞ。
顔だって、整っているし、モテる方なんだぞ。
そんな僕に興味を示さない女性がいるだなんて。
何か癪に触る。
ナイジェルは自分に靡かないコーデリアに、逆に自分が気になり出したことに気づいていなかった。
そこは、王都と言っても大分外れの方に位置し、もう夕方なため、人通りもほとんどない場所であった。
仕事内容は店に悪い輩が出入りしていないか、向かえの食堂の窓から、交代で見張ると言うものだ。
でも、本来ならナイジェルは文官でそんなことは業務にない。
ただ単に、なかなか尻尾を掴ませない悪い輩の見張りが長引き、役人だけでは手が回らず、文官でも見張りぐらいはできるだろうと駆り出されただけだ。
だが、今日も店に怪しい動きはない。
すでに交代要員が来て、同僚が申し送りをしている。
これが終われば、今日の仕事から、やっと解放される。
相変わらず、面倒なことばかりだ。
ナイジェルは役人達の申し送りが終わるまで、手を抜くことなく、窓から街を見張っている。
すると泣いている小さな男の子が、一人でトコトコと道を歩いて来た。
こんな辺鄙な場所で、迷子か?
子供が一人で道にいるのは、大変危険とは思うが、まだ、申し送り中だから、怪しい店から目を離せないので、ナイジェルが、駆けつけることはできない。
その子に何かあったら困るので、早く駆けつけたくて、ジリジリしていると、ドレスを来た女性がやって来て、その男の子に声をかけ、手を引いた。
ナイジェルは、これで安心と怪しい店の見張りを続けるが、助けたはずのその女性は男の子を連れたまま、通りを行ったり来たり繰り返す。
女性は、何をしているんだろう。
まさか、女性まで迷子になったのか?
もうガッカリな展開に、申し送りが済んで任務が完了した瞬間に、ナイジェルは、その二人の元に駆けつけた。
「すみません。
当局はどちらですか?」
コーデリアは、やっと見つけた通行人に声をかける。
「アッ、あなたでしたか?」
そこにいたのは、この前、王宮で枝から落ちそうになった時、助けてくれた男性だった。
「君はあの時の?」
「あのぅ、すみません。
私、道がわからなくなってしまって。
迷子のこの子を助けようとして、自分もどこにいるのかわからなくなって。」
コーデリアは再び困っているところを見られて、恥ずかしいような、助けられて嬉しいような複雑な思いで、モジモジする。
「とりあえず、二人を当局にお連れします。」
コーデリアのようすにも、ナイジェルは無表情で、返す。
三人は、ナイジェルの先導で、その先の当局にたどり着いた。
そこには、男の子の母親が不安気に男の子の無事を願っており、二人のおかげで再会できたことに、何度も礼をして帰って行った。
親子を見送ると、
「今度こそ、お礼をさせてください。」
とコーデリアは強く言う。
ナイジェルは、迷っているようだったが、コーデリアにジッと見つめられ、渋々ついてきた。
二人は近くの食堂に入り、お茶を飲んでいた。
「重ね重ねありがとうございました。
いつもピンチを救ってくれるなんて、あなたは、私にとってヒーローです。
私はコーデリア・スノウと申します。
お名前を伺っても?」
「僕はナイジェル・トルクです。」
「まぁ、ナイジェル様とおっしゃるのですか、ありがとうございました。
私はそそっかしいところがありまして。」
「そのようですね。」
「いつもナイジェル様のような方に会えたら、幸せですわ。」
「僕もたまたまですから。」
「そうですよね、ふふ。」
お茶が飲み終わるとコーデリアはナイジェルの分も払い、何度も礼を言いながら、帰って行った。
貴族でありながら、供もつけず歩き、挙げ句に迷子になる。
コーデリアは、信じられないほどに型破りな令嬢だった。
彼女と別れ、ナイジェルは、帰りの馬車の道筋で思う。
あれっ?
なんか変だぞ。
この流れはいつもと違う。
僕は、コーデリアが擦り寄って、上目遣いに媚を売り、今後も二人で会いたいなどと言って来ると思っていた。
だか、実際は僕の爵位を聞いてくるようすもなく、コーデリアは本当にお礼だけして帰って行った。
前回お礼がしたいと言った時だって、実は僕個人になど興味もなく、ただお礼がしたかっただけだったのか?
これでも、どんな女性にも、有望と思われている侯爵子息だぞ。
顔だって、整っているし、モテる方なんだぞ。
そんな僕に興味を示さない女性がいるだなんて。
何か癪に触る。
ナイジェルは自分に靡かないコーデリアに、逆に自分が気になり出したことに気づいていなかった。
71
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました
鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。
第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。
いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。
自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。
両片思いからのハッピーエンドです。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
若き英雄はわがまま令嬢に愛を乞う
鈴元 香奈
恋愛
王太子のために公爵令嬢を篭絡せよと兄に命じられた若き英雄は、任務としてエリーサに近づいた。しかし、いつしか本気で惚れてしまい、罪悪感に苦しむことになる。
7話くらい。20000文字未満の短めの予定です。
「小説家になろう」さんにも投稿しています。
【完結】没落令嬢の結婚前夜
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢アンジェリーヌは、裕福な家で愛されて育ったが、
十八歳のある日、突如、不幸に見舞われた。
馬車事故で家族を失い、その上、財産の全てを叔父家族に奪われ、
叔父の決めた相手と結婚させられる事になってしまったのだ。
相手は顔に恐ろしい傷を持つ辺境伯___
不幸を嘆くも、生きる為には仕方が無いと諦める。
だが、結婚式の前夜、従兄に襲われそうになり、誤ってテラスから落ちてしまう。
目が覚めると、そこは見知らぬ場所で、見知らぬ少年が覗き込んでいた___
異世界恋愛:短編(全8話)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
私を愛してくれない婚約者の日記を読んでしまいました〜実は溺愛されていたようです〜
侑子
恋愛
成人間近の伯爵令嬢、セレナには悩みがあった。
デビュタントの日に一目惚れした公爵令息のカインと、家同士の取り決めですぐに婚約でき、喜んでいたのもつかの間。
「こんなふうに婚約することになり残念に思っている」と、婚約初日に言われてしまい、それから三年経った今も全く彼と上手くいっていないのだ。
色々と努力を重ねてみるも、会話は事務的なことばかりで、会うのは決まって月に一度だけ。
目も合わせてくれないし、誘いはことごとく断られてしまう。
有能な騎士であるたくましい彼には、十歳も年下で体も小さめな自分は恋愛対象にならないのかもしれないと落ち込む日々だが、ある日当主に招待された彼の公爵邸で、不思議な本を発見して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる