いちいちやらかす僕の妻

月山 歩

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4.薬草の理由

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 ナイジェル様のお顔が怖い。
 何かわからないけど、盛大に怒ってる。
 また、失敗したの私?

「このお茶を見てくれ?
 もしかしたら、このお茶をサネルマ叔母にプレゼントしたのは、君かい?」

「はい、そうです。」

「やはり君か。」

 ナイジェルは、違うお茶を間違って渡すなんていかにも、コーデリアがやりそうだとすぐに勘づいた。

 何せ出会ってから、失敗している彼女にしか会っていないのだから。

 ナイジェルは新しく買って来た元気が出るお茶をテーブルに置く。

「これはお腹の調子が良くなるお茶ですね。
 サネルマ様のために新しく買っていらしたの?」

「そうだ。
 でも、これはお腹の調子が良くなるお茶ではない。
 こちらが、お腹の調子が良くなるお茶だ。」

 そう言って、ナイジェルはもう一つの方のお茶も並べる。

「えっ、そんな。」

「後ろに説明書きがあるから、読んでみるといい。」

 コーデリアはお茶の後ろの説明書きをしげしげと読む。

「本当ですね。
 すみません。
 間違えました。」

 そう言って、コーデリアは目に見えてしょんぼりする。

 ナイジェルは、その姿を見ると腹を立てていたことも忘れ、

「いや、でもサネルマ叔母はお腹の調子が良くなったって喜んでいたし、君も悪気があった訳ではないのだろうから、いいんだ。

 それに、この前王都の外れにいたのは、サネルマ叔母のために、このお茶を買いに行ったから?」

「はい、そうです。
 つらいっておっしゃっていて。

 あのお茶のことを聞いたものですから、ちょっと遠いですけど、買いに行ったんです。
 少しでも楽にならないかなぁと期待して。」

「それは、どうもありがとう。
 僕がもっとこちらに来て、サネルマ叔母が具合が悪いことに気づけば良かった。

 ところで、何故あんなところまで、歩きで行ったんだ?
 外れだから、結構、遠いだろう?」

「私の家は貧乏男爵家で、馬車なんてないんです。

 乗り合い馬車もあの辺りは走ってなくて。
 なので歩いて行ったら、迷子になってしまいました。」

 恥ずかしそうに話すコーデリアを見てナイジェルは母親の友人と言うだけで、こんなにも親切にする女性と初めて出会った気がした。

 そう言えば、コーデリアは会うたびにやらかしているけど、どれも人に親切にしようとして、失敗している。

 コーデリアは僕が今まで出会った人の中にはいないタイプで、皆に親切にできる女性なんだ。

 彼女が助けようとする時、何か見返りを求めて動いた様子は、僕が知っている限りでは、まるでなかった。

 コーデリアは親切心を持つ、本当にいい人なんだ。

 今まで僕が出会った貴族の女性は、口ばかりの噂好きや、侯爵家の地位を欲しがる野心溢れる女性ばかりで、見返りも求めず、人に親切にしようと行動するような女性とは、会ったことがなかった。

 そこに行きつくと、ナイジェルはもうコーデリアが気になって仕方がなかった。

 コーデリアのことがもっと知りたい。

「ところで、さっき僕は君にフラれたようだけど、理由を教えてもらっても?」

「ああ、それはウチがとても貧乏で、侯爵子息様とは釣り合いがとれないからです。

 私と結婚しても何のメリットもありませんから。」

「それは、大丈夫さ。
 僕の家系は侯爵の中でも、豊かな方でね。
 結婚にわざわざメリットなんていらないんだよ。

 だから、そこは気にしなくていい。
 後気になることは?」

 コーデリアはもじもじしながら、

「ナイジェル様は素晴らしい方だと思うのですが、時々お顔が怖い時があって。」

 なるほど、いつもやらかしているから、空気の読めない女性なのかと思ったら、ちゃんと僕が怒っている時は伝わっているんだね。

 わかった。
 なら、あらためよう。

 僕はやる気になったら、できる男なのだ。
 君に必ずや好かれて見せよう。

「そうか、なるべく優しく接するように努力する。
 だから、今度、僕とデートしてみるのはどう?」

「はあ、機会があれば。」

 コーデリアはこの前まで硬い表情で、自分に嫌々付き合っているように見えたナイジェルが、急に積極的にコーデリアを誘っていることに驚いて、ややポカンとしている。

 反対にナイジェルは、俄然やる気に満ちている。
 大丈夫、機会など僕がいくらでも作る。

「では、明後日、とても綺麗なお花が見事な公園があるんだ。
 昼過ぎに迎えに行くよ。」

「わ、わかりました。」

 そして、ナイジェルは、気がついたらコーデリアと再び会いたくて、たまらなくなっていた。
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