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1.素敵な男性と知り合う
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イザベラ・サイアーズには最近知り合い、結婚したい男性がいる。
彼はマーカス・ギルマン卿。
金髪に紫の輝く瞳、美しい顔立ちだから、わかりやすいほどに彼はよくモテる。
いつも沢山の令嬢に囲まれて、夜会に行っても彼の姿は一際目立つ。
上品な佇まいで、次期侯爵当主になることを約束されている上に、王子の一番の側近である彼は、王国の次の世代を背負っている。
そんな煌びやかなマーカスが、イザベラに目を止めたのは、たまたまだった。
幼馴染のヨアネスに、夜会の陰で無理矢理キスされそうになっているところを助けられたのだ。
「やめて、ヨアネス、私あなたとは、結婚しないわ。」
「男爵家の六番目のお前なんかが、俺以外と結婚できるわけがないだろ?
さっさと結婚しようぜ。」
「やめて、本当に嫌。
ヨアネスは急に大きい声を出して怒ったりするでしょう?
私、そう言うの、怖いのよ。
驚いちゃうし。」
「いいから、イザベラのくせに俺に逆らうな。」
「イヤ、やめて。」
私は必死にキスを迫るヨアネスの口から逃れようと顔を背けるが、夜会の端にいる私達に気づくものは誰もいない。
逞しいヨアネスは力強く、私の弱い力では、彼の腕から逃れることができなかった。
「そんな格好悪いことはやめなよ。
ここ僕の友人の夜会なんだけど。」
突然声をかけられ、ヨアネスが力を緩めた隙に、私はその人の後ろに走り、素早く身を隠した。
「ギルマン卿、俺達の間に入って来ないで頂きたい。」
「彼女は嫌がっているよね。」
「こいつは純情ぶってるだけですから。」
「そうとは思えないな。
ちゃんと聞いてみようか。
どうなの君は、キスされたいの?嫌なの?」
「嫌です。」
私は助けてくれたギルマン卿の陰から、答えた。
「そう言っているから、やめてあげて。」
「イザベラ、本当にいいのか?
俺と結婚できなかったら、売れ残るぞ。」
「それでもいいわ。」
「そう言っているみたいだし、他をあたってあげて。
さあ、君は僕ととりあえずダンスでもしに行こうか?」
「はい。」
「そう言うことだから、彼女にもうしつこくしないでやって。」
「イザベラ、後で後悔するなよ。」
ヨアネスはそう言い残すと立ち去った。
「ありがとうございました。
おかげで助かりました。」
「いやいいんだよ。
さあ、踊りに行こうか?」
「えっ、さっきのは本気だったんですか?」
「もちろん。」
ギルマン卿が私達のところに来たことで、気がついたら、周りには人だかりができていた。
ヨアネスに迫られていた時は、誰も周りに人などいなかったのに、ギルマン卿が動くと人も動く。
私は皆の視線を集めながら、ギルマン卿にエスコートされてダンスホールへ向かい、踊り始める。
上品な物腰のギルマン卿のリードは、とても洗練されていて踊りやすい。
ダンスがあまり上手ではない私でさえ、一緒に躍ると華麗に見える。
侯爵令息として、多く踊り慣れているからなのか、元々の才能によるものか、ギルマン卿のダンスは見事だった。
私は気がつくと、ダンスは楽しいし、彼は素敵だし、有頂天になってしまっていた。
「疲れたら言ってね、すぐにやめるから。」
ギルマン卿が耳元で囁く。
踊りの間でも、彼の気遣いは続いている。
「大丈夫です。
踊り易くて、とても楽しいです。
もう少しこのまま踊ってもいいですか?」
「君がいいなら、いつまでも付き合うよ。」
「ありがとうございます。」
ダンスの間中、ギルマン卿は私を見つめて、時折ふわりと笑ってくれている。
私の人生でこんな素敵な人が、私に注目してくれて、優しく気遣ってくれることなんてなかった。
この方が何故あれほど人気があり、令嬢達に囲まれているのか、初めて理解できた。
こんなにモテているのに、それでも決して偉そうな態度を取ることは一切ない。
それどころか、一緒にいるだけで、私まで周りの人から羨望の眼差しで見られているようなそんな気分にさせてもらえるのだ。
この時、私はすっかりギルマン卿のことが好きになってしまった。
「ちょっと疲れて来たようだね。
ワインを飲んで休もうか。」
そう言って、エスコートされながらカウンター席に座ると、ワインを差し出され、そのまま二人でグラスを合わせる。
「よく考えたら、僕達自己紹介がまだだったね。
僕はマーカス・ギルマンだよ。
マーカスって呼んでね。
君は?」
「私はイザベラ・サイアーズと申します。」
「もしかして、サイアーズ男爵の娘さんかい?」
「お父様をご存知ですか?」
「もちろんだよ。
王宮でも彼は子沢山で有名だからね。」
「私はその六人目なんです。
だから、さっきのヨアネスが私は彼しか結婚できないと言うのも本当なのです。
お父様は頑張って働いているけれど、六番目の私は持参金の額も見込めないから。」
「なるほど、そう言うわけか。
僕の家では、結婚するのに持参金などあってもなくてもどっちでもいいけれど、他の貴族からしたら、必要だろうね。」
「はい、そうなんです。」
「じゃあ、他に誰もいないなら、僕と時々出かけてみるかい?」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、僕は君に興味が沸いたよ。
君はこんなに可愛いからね。」
彼は、笑顔で私を見つめながら微笑む。
「嬉しいわ。」
私は彼に誘われて二人でデートを重ねて、楽しい時間を過ごすようになった。
「彼と結婚したい。」そんな思いを秘めながら。
彼はマーカス・ギルマン卿。
金髪に紫の輝く瞳、美しい顔立ちだから、わかりやすいほどに彼はよくモテる。
いつも沢山の令嬢に囲まれて、夜会に行っても彼の姿は一際目立つ。
上品な佇まいで、次期侯爵当主になることを約束されている上に、王子の一番の側近である彼は、王国の次の世代を背負っている。
そんな煌びやかなマーカスが、イザベラに目を止めたのは、たまたまだった。
幼馴染のヨアネスに、夜会の陰で無理矢理キスされそうになっているところを助けられたのだ。
「やめて、ヨアネス、私あなたとは、結婚しないわ。」
「男爵家の六番目のお前なんかが、俺以外と結婚できるわけがないだろ?
さっさと結婚しようぜ。」
「やめて、本当に嫌。
ヨアネスは急に大きい声を出して怒ったりするでしょう?
私、そう言うの、怖いのよ。
驚いちゃうし。」
「いいから、イザベラのくせに俺に逆らうな。」
「イヤ、やめて。」
私は必死にキスを迫るヨアネスの口から逃れようと顔を背けるが、夜会の端にいる私達に気づくものは誰もいない。
逞しいヨアネスは力強く、私の弱い力では、彼の腕から逃れることができなかった。
「そんな格好悪いことはやめなよ。
ここ僕の友人の夜会なんだけど。」
突然声をかけられ、ヨアネスが力を緩めた隙に、私はその人の後ろに走り、素早く身を隠した。
「ギルマン卿、俺達の間に入って来ないで頂きたい。」
「彼女は嫌がっているよね。」
「こいつは純情ぶってるだけですから。」
「そうとは思えないな。
ちゃんと聞いてみようか。
どうなの君は、キスされたいの?嫌なの?」
「嫌です。」
私は助けてくれたギルマン卿の陰から、答えた。
「そう言っているから、やめてあげて。」
「イザベラ、本当にいいのか?
俺と結婚できなかったら、売れ残るぞ。」
「それでもいいわ。」
「そう言っているみたいだし、他をあたってあげて。
さあ、君は僕ととりあえずダンスでもしに行こうか?」
「はい。」
「そう言うことだから、彼女にもうしつこくしないでやって。」
「イザベラ、後で後悔するなよ。」
ヨアネスはそう言い残すと立ち去った。
「ありがとうございました。
おかげで助かりました。」
「いやいいんだよ。
さあ、踊りに行こうか?」
「えっ、さっきのは本気だったんですか?」
「もちろん。」
ギルマン卿が私達のところに来たことで、気がついたら、周りには人だかりができていた。
ヨアネスに迫られていた時は、誰も周りに人などいなかったのに、ギルマン卿が動くと人も動く。
私は皆の視線を集めながら、ギルマン卿にエスコートされてダンスホールへ向かい、踊り始める。
上品な物腰のギルマン卿のリードは、とても洗練されていて踊りやすい。
ダンスがあまり上手ではない私でさえ、一緒に躍ると華麗に見える。
侯爵令息として、多く踊り慣れているからなのか、元々の才能によるものか、ギルマン卿のダンスは見事だった。
私は気がつくと、ダンスは楽しいし、彼は素敵だし、有頂天になってしまっていた。
「疲れたら言ってね、すぐにやめるから。」
ギルマン卿が耳元で囁く。
踊りの間でも、彼の気遣いは続いている。
「大丈夫です。
踊り易くて、とても楽しいです。
もう少しこのまま踊ってもいいですか?」
「君がいいなら、いつまでも付き合うよ。」
「ありがとうございます。」
ダンスの間中、ギルマン卿は私を見つめて、時折ふわりと笑ってくれている。
私の人生でこんな素敵な人が、私に注目してくれて、優しく気遣ってくれることなんてなかった。
この方が何故あれほど人気があり、令嬢達に囲まれているのか、初めて理解できた。
こんなにモテているのに、それでも決して偉そうな態度を取ることは一切ない。
それどころか、一緒にいるだけで、私まで周りの人から羨望の眼差しで見られているようなそんな気分にさせてもらえるのだ。
この時、私はすっかりギルマン卿のことが好きになってしまった。
「ちょっと疲れて来たようだね。
ワインを飲んで休もうか。」
そう言って、エスコートされながらカウンター席に座ると、ワインを差し出され、そのまま二人でグラスを合わせる。
「よく考えたら、僕達自己紹介がまだだったね。
僕はマーカス・ギルマンだよ。
マーカスって呼んでね。
君は?」
「私はイザベラ・サイアーズと申します。」
「もしかして、サイアーズ男爵の娘さんかい?」
「お父様をご存知ですか?」
「もちろんだよ。
王宮でも彼は子沢山で有名だからね。」
「私はその六人目なんです。
だから、さっきのヨアネスが私は彼しか結婚できないと言うのも本当なのです。
お父様は頑張って働いているけれど、六番目の私は持参金の額も見込めないから。」
「なるほど、そう言うわけか。
僕の家では、結婚するのに持参金などあってもなくてもどっちでもいいけれど、他の貴族からしたら、必要だろうね。」
「はい、そうなんです。」
「じゃあ、他に誰もいないなら、僕と時々出かけてみるかい?」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、僕は君に興味が沸いたよ。
君はこんなに可愛いからね。」
彼は、笑顔で私を見つめながら微笑む。
「嬉しいわ。」
私は彼に誘われて二人でデートを重ねて、楽しい時間を過ごすようになった。
「彼と結婚したい。」そんな思いを秘めながら。
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