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観覧車2
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「皆で一緒に乗る?どうする?」
「いや、暑いしー。ほらせっかくだから二人で乗りなよー。」
「え、いや…」
俺の返事を聞かずに、サキは俺の耳元でお前まだ渡してないだろ。と言ってきた。やっぱり、サキはよく人のことを見ている。気が利く奴で、こいつがもし女だったら惚れていたかもしれないと、ふと思った。
「じゃあ、お二人さん楽しんでねー。」
「え、サキ!ちょっと、どこ行くんだよ!!」
振り返って、サキは白い歯を見せて爽やかに笑った。
「僕、高所恐怖症だからさー。観覧車はパスね!!飲み物でも買ってくるよー。」
聞いていない。何だよそれ!!時限爆弾だけ、仕掛けやがって。この男は。
「よかったのかな?」
まあ、よかったのだろうと思うけど。サキは空気を読もうとする奴だ。高所恐怖症が、果たして本当に事実なのかは疑わしい。今は感謝しよう。今日1日渡せなかった、このプレゼントを渡さなくてはならない。
沈黙。何か話さなくてはならないのはわかっているのだが、いつものような雑学が全く頭に浮かばない。サキがいなくなってから、まだ2、3分しか経っていないはずなのだが、この待っている時間がとても長く感じる。
「あのさ。」
沈黙を破ったのは郁の方だった。
「今日は楽しかったね。ありがとう。」
「そういうのは、サキに言えよ。俺はなにも。」
なんていう返し方だ。我ながらそう思った。他に返し方があったはずだ。
そしてまた沈黙。気がつけば、順番がまわってきた。
二人っきり。簡単には降りることのできない密室。しかし今渡さなくては、サキになんて言われるかわかったもんじゃない。今しかない。今しかないのだ。
「郁。」
「ん?なに?」
鞄のポッケに入っている包みを、出した。
「これ、誕生日プレゼント。いつもは渡してないけど、たまには悪くないと思って。」
郁は俺からプレゼントを受け取ると、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。あのね、実はね。」
そう言うと、今度は郁の方が鞄をあさった。その可能性は考えていなかった。
「はい。これお返し。」
「あ、ありがとう。」
「カップケーキ、焼いてきたの。帰ったら、食べてね。」
「うん。嬉しいよ、郁」
いつも料理なんて全然しない私が、カップケーキを焼いた。誕生日プレゼントなんて、今まで渡したことなかったけど、サキちゃんがこっそりと私に彼が用意していることを教えてくれたから作ってみた。
喜んでくれるか不安だったけど、ちゃんと渡せた。ちゃんとと言っても、すごくたどたどしくって、その前もろくに会話もできなかった。彼と同じ空間にこれから、入るんだと思うと気が気でなかった。心臓が鳴り止まなかった。サキちゃんも急にいなくなってしまうし、今日に限って、彼も全然話さないし、考えれば考えるほど、ドキドキした。彼に名前を呼ばれるのが、いつも以上に嬉しかった。彼の声がくすぐたかった。
「開けてみてもいい?」
そう聞いてから、すぐに包みを開けた。
かわいい。それは綺麗な髪留めだった。
「綺麗!せっかくだからつけてみようかな」
「ちょっと待って。」
え?彼は私の手から髪留めをとると、抱きしめるようにして、髪留めをつけようとした。彼の匂いがした。柔らかくて、温かくて、優しい香り。気がつかなかった。声と同じ匂いがする。でも、ちょっと近すぎる。
「あの、ちょっと近いんですけど…」
「ん?ごめん、今何か言った?ちょっと待ってね。もう少しでつけられそうだから。」
やっぱり、もう少しこのままがいいなと思った。このまま。あともう少しだけ、この密室で、この距離で一緒にいたい。
「ついた。うん。似合ってるよ、郁。」
「あ、ありがとう。」
「そう言えば、中学の頃、郁、言ってたよね。赤いカゴのどこかにハートがあるって。確か赤だったよね。探してみよっか。」
覚えていてくれたのだと思うと嬉しかった。素直に嬉しかった。
「あった?」
「うーん、なさそう。」
「そっか、残念だなー。せっかく赤だったのにな」
「俺は赤じゃなくても、ハートが見つからなくても、十分ラッキーだったよ。郁と二人で乗れて。…郁、俺また二人で郁と一緒に乗りたい。郁と二人で…」
ドアが開いた。開いてしまった。もう少し、あとほんの少しだけで良かったから、あの空間を味わっていたかった。
「いや、暑いしー。ほらせっかくだから二人で乗りなよー。」
「え、いや…」
俺の返事を聞かずに、サキは俺の耳元でお前まだ渡してないだろ。と言ってきた。やっぱり、サキはよく人のことを見ている。気が利く奴で、こいつがもし女だったら惚れていたかもしれないと、ふと思った。
「じゃあ、お二人さん楽しんでねー。」
「え、サキ!ちょっと、どこ行くんだよ!!」
振り返って、サキは白い歯を見せて爽やかに笑った。
「僕、高所恐怖症だからさー。観覧車はパスね!!飲み物でも買ってくるよー。」
聞いていない。何だよそれ!!時限爆弾だけ、仕掛けやがって。この男は。
「よかったのかな?」
まあ、よかったのだろうと思うけど。サキは空気を読もうとする奴だ。高所恐怖症が、果たして本当に事実なのかは疑わしい。今は感謝しよう。今日1日渡せなかった、このプレゼントを渡さなくてはならない。
沈黙。何か話さなくてはならないのはわかっているのだが、いつものような雑学が全く頭に浮かばない。サキがいなくなってから、まだ2、3分しか経っていないはずなのだが、この待っている時間がとても長く感じる。
「あのさ。」
沈黙を破ったのは郁の方だった。
「今日は楽しかったね。ありがとう。」
「そういうのは、サキに言えよ。俺はなにも。」
なんていう返し方だ。我ながらそう思った。他に返し方があったはずだ。
そしてまた沈黙。気がつけば、順番がまわってきた。
二人っきり。簡単には降りることのできない密室。しかし今渡さなくては、サキになんて言われるかわかったもんじゃない。今しかない。今しかないのだ。
「郁。」
「ん?なに?」
鞄のポッケに入っている包みを、出した。
「これ、誕生日プレゼント。いつもは渡してないけど、たまには悪くないと思って。」
郁は俺からプレゼントを受け取ると、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。あのね、実はね。」
そう言うと、今度は郁の方が鞄をあさった。その可能性は考えていなかった。
「はい。これお返し。」
「あ、ありがとう。」
「カップケーキ、焼いてきたの。帰ったら、食べてね。」
「うん。嬉しいよ、郁」
いつも料理なんて全然しない私が、カップケーキを焼いた。誕生日プレゼントなんて、今まで渡したことなかったけど、サキちゃんがこっそりと私に彼が用意していることを教えてくれたから作ってみた。
喜んでくれるか不安だったけど、ちゃんと渡せた。ちゃんとと言っても、すごくたどたどしくって、その前もろくに会話もできなかった。彼と同じ空間にこれから、入るんだと思うと気が気でなかった。心臓が鳴り止まなかった。サキちゃんも急にいなくなってしまうし、今日に限って、彼も全然話さないし、考えれば考えるほど、ドキドキした。彼に名前を呼ばれるのが、いつも以上に嬉しかった。彼の声がくすぐたかった。
「開けてみてもいい?」
そう聞いてから、すぐに包みを開けた。
かわいい。それは綺麗な髪留めだった。
「綺麗!せっかくだからつけてみようかな」
「ちょっと待って。」
え?彼は私の手から髪留めをとると、抱きしめるようにして、髪留めをつけようとした。彼の匂いがした。柔らかくて、温かくて、優しい香り。気がつかなかった。声と同じ匂いがする。でも、ちょっと近すぎる。
「あの、ちょっと近いんですけど…」
「ん?ごめん、今何か言った?ちょっと待ってね。もう少しでつけられそうだから。」
やっぱり、もう少しこのままがいいなと思った。このまま。あともう少しだけ、この密室で、この距離で一緒にいたい。
「ついた。うん。似合ってるよ、郁。」
「あ、ありがとう。」
「そう言えば、中学の頃、郁、言ってたよね。赤いカゴのどこかにハートがあるって。確か赤だったよね。探してみよっか。」
覚えていてくれたのだと思うと嬉しかった。素直に嬉しかった。
「あった?」
「うーん、なさそう。」
「そっか、残念だなー。せっかく赤だったのにな」
「俺は赤じゃなくても、ハートが見つからなくても、十分ラッキーだったよ。郁と二人で乗れて。…郁、俺また二人で郁と一緒に乗りたい。郁と二人で…」
ドアが開いた。開いてしまった。もう少し、あとほんの少しだけで良かったから、あの空間を味わっていたかった。
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