いつか、あなたを

夕時 蒼衣

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教室③

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 放課後、まひろ君が私と蛍君に「じゃあね」と言った後、前でまだ帰りの支度をしている蛍君が話しかけてきた。
「三島ちゃん、まひろちゃんに懐かれてるね。」
 懐かれているというより、隣の席だからという感覚が強い私は、おでこにしわを寄せて蛍君を見上げた。
「いやいやいや。ほんとうだよ。まひろちゃんは、そぎゃあ、天然たらしなところはあるよ?でも、仲良いやつにしか、まひろはあんなに話しかけないよ。女子とかは、よく話しかけてるけど、あいつは聞き役が多いっていうか。ああやって、まひろから、何度も話しかけることって、今までになかったからさ。なんか意外っていうか。なんていうか。」
 まひろ君の仲良しの蛍君からそんなことを言われて、私は驚いた。そんなことを考えていたなんて。確かにまひろ君は私によく話しかけてくれた。でも、それは隣の席だからと、勝手にそう思っていた。まひろ君は人懐っこいし、それに、近くには蛍君がいたから3人で話すことが多かったからだ。
「俺にはなんとなく、そういうのわかるんだよ。なあ、三島。まひろのことどう思ってるんだ?」
「何言ってるの急に!」
 気が付けば、教室には私たち二人しかいなかった。こういう時に限って、恋ばなで盛り上がっている女の子たちは、帰るのが早い。
「俺は真面目だよ。まひろは俺の大切な友達だからさ。聞いときたくて。」
 そんなこと言われても、私だって困るのだ。なんで、そんな話になってるんだろう。でも、たしかに蛍君は一番のまひろ君の友達であり、理解者だ。でも、急にそんこと聞かれても、返事にこまるよ。だって、そんな風にまひろ君を見ていたわけじゃないし。
 沈黙が数秒続いた。その数秒すらも、その時の私にはとても長く感じた。その沈黙を破ったのは蛍君だった。いつものすこしふざけた感じのあの話し方で。
「ごめんごめん。ちょっとからかいすぎたよw三島ちゃんたら、照れちゃってー。気にしなくていいよ。俺の考えすぎだよね。」
 蛍君はそう言って、笑ってまた立ち上がると、じゃあ、また明日。と言って教室を後にした。私はというと、その場でしばらく固まっていた。
 このふたり、一緒にいると心臓に結構悪い。そんなことに、今更になって気が付いたのであった。教室は私の心臓とは対照的に、静まり返っていた。
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