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彼
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反応はすぐに返ってきた。しかも何人も何人も、あとからあとから友達追加される。ちょっとした、スターになった気分である。みんながみんな、私を求めているような錯覚にさえ陥る。ただ、そんな幻想はすぐに打ち消された。
「はじめまして。掲示板から友達追加しました‼今から会えませんか?」
こんなくだらない返信内容ばっかりだ。どこ住み?写真交換しませんか。そんな内容である。仕舞には今日の下着の色を聞かれる始末である。頭は小学生のガキばっか。でも私もそのガキの一員であり、仲間なのだ。彼らと何ら変わりはない。実際にほとんどは、学生で中には中学生さえいた。
そんなガキの中に、彼はいた。彼は社会人だった。社会人は他にもいたけれども、彼はそのなかでもとりわけ、まともな職に就いている、ごく一般的な人だった。常識的人と言えば聞こえは良いが彼もまた、しょうもないガキの1人だった。これはあとになって、しみじみとわかるようになる。それでも、第一印象は完ぺきだった。
「はじめまして。掲示板からきました。よかったら話し相手になっていただけませんか。掲示板使っている時点でまともでではないかもですけど、一応社会人ですw」
まとも、真面目。そんな言葉がぴったりな人だった。日野悟。それが彼の名前。年は37歳で、営業部長をしている。短大卒の私でも知っている大学を卒業していて、それなりの会社に勤めている。そんなこともあって、最初は返信内容はどこか事務的なところもあったが、話がうまく、他の人と連絡が途切れたころにも彼とは頻繁に連絡をとりあっていた。
あとになって分かったことだが、日野さんは既婚者で子供がいる。そんな人がなぜ、あんなガキのたまり場にいたのか不思議だった。まあ、彼が言っていた通り、あんな掲示板を使っている時点で、まともではないのかもしれないが、まとも、真面目とそんな言葉が似合う日野さんから連絡があったことが私には疑問でしかなかった。
話が上手かったのもあるが、連絡がこんなにも続いた、1番の理由は共通の趣味だった。その共通の趣味というのが読書である。私は学生時代から、Mという作家が好きでその作家をきっかけに、本を読むのが好きになった。
「私、Mさんの作品がすごく好きなんです。」
「本当ですか?!実は僕も、Mさんの大ファンなんです!Mさんの作品はほとんど全部読みましたよ。なかでも『忘れられた人』という作品が好きなんです!!」
「私もその作品、読みましたよ!主人公が最後に叫ぶシーンに鳥肌がたちました!今度、この作品を原作に映画がはじまりますよね。」
「そうなんですか!最近仕事が忙しくてチェックしてませんでした。しらなかったです。鈴村さんさえ良ければですけど、時間がある日に一緒にどうですか?やっぱり、だめですかね。」
返信するのにためらった。日野さんに会いたいと思ってしまった。出合い充を馬鹿にしていたはずなのに、会いたくてたまらなかった。日野さんだからかもしれない。相手は妻子持ちだ。それでも会いたい気持ちの方が勝っていた。結局私は、着信のあった2分後には「いいですよ。楽しみにしています」と返事をしていた。これが私が彼に溺れるきっかけであり、原因になった。
「はじめまして。掲示板から友達追加しました‼今から会えませんか?」
こんなくだらない返信内容ばっかりだ。どこ住み?写真交換しませんか。そんな内容である。仕舞には今日の下着の色を聞かれる始末である。頭は小学生のガキばっか。でも私もそのガキの一員であり、仲間なのだ。彼らと何ら変わりはない。実際にほとんどは、学生で中には中学生さえいた。
そんなガキの中に、彼はいた。彼は社会人だった。社会人は他にもいたけれども、彼はそのなかでもとりわけ、まともな職に就いている、ごく一般的な人だった。常識的人と言えば聞こえは良いが彼もまた、しょうもないガキの1人だった。これはあとになって、しみじみとわかるようになる。それでも、第一印象は完ぺきだった。
「はじめまして。掲示板からきました。よかったら話し相手になっていただけませんか。掲示板使っている時点でまともでではないかもですけど、一応社会人ですw」
まとも、真面目。そんな言葉がぴったりな人だった。日野悟。それが彼の名前。年は37歳で、営業部長をしている。短大卒の私でも知っている大学を卒業していて、それなりの会社に勤めている。そんなこともあって、最初は返信内容はどこか事務的なところもあったが、話がうまく、他の人と連絡が途切れたころにも彼とは頻繁に連絡をとりあっていた。
あとになって分かったことだが、日野さんは既婚者で子供がいる。そんな人がなぜ、あんなガキのたまり場にいたのか不思議だった。まあ、彼が言っていた通り、あんな掲示板を使っている時点で、まともではないのかもしれないが、まとも、真面目とそんな言葉が似合う日野さんから連絡があったことが私には疑問でしかなかった。
話が上手かったのもあるが、連絡がこんなにも続いた、1番の理由は共通の趣味だった。その共通の趣味というのが読書である。私は学生時代から、Mという作家が好きでその作家をきっかけに、本を読むのが好きになった。
「私、Mさんの作品がすごく好きなんです。」
「本当ですか?!実は僕も、Mさんの大ファンなんです!Mさんの作品はほとんど全部読みましたよ。なかでも『忘れられた人』という作品が好きなんです!!」
「私もその作品、読みましたよ!主人公が最後に叫ぶシーンに鳥肌がたちました!今度、この作品を原作に映画がはじまりますよね。」
「そうなんですか!最近仕事が忙しくてチェックしてませんでした。しらなかったです。鈴村さんさえ良ければですけど、時間がある日に一緒にどうですか?やっぱり、だめですかね。」
返信するのにためらった。日野さんに会いたいと思ってしまった。出合い充を馬鹿にしていたはずなのに、会いたくてたまらなかった。日野さんだからかもしれない。相手は妻子持ちだ。それでも会いたい気持ちの方が勝っていた。結局私は、着信のあった2分後には「いいですよ。楽しみにしています」と返事をしていた。これが私が彼に溺れるきっかけであり、原因になった。
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