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9-2.希望と繰り返しの部屋[謎解き解答編]
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再度リトライをした私はあの半密室の部屋へと戻された。
それと同時にアイデアもひらめいた。私は天才なのかもしれない。
机には、紐のほかにメモ帳も置いてあった。こういったアイテムはすべて使うのがセオリーだ。そして、私はメモ帳に紐を巻き始めた。
それでは、解決篇だ。
メモ帳を開き、紐を二周ぐるりと巻き付けて固定する。メモ帳からは一メートルほどの紐が垂れている。
残った紐を目の前にある箱の壁面に這わすと自分のいる部屋にもロープほどの大きさの紐が左側の壁に垂れ下がった。私はメモ帳を右手に持ちながら、紐が動かないように注意して移動する。壁に垂れているロープを左手で握りしめ、メモ帳を自分のいる部屋の床へと落す。
そうすればメモ帳が床に落ち、それをなぞるようにロープにつかまった私が箱の外にたどり着けるだろう。これがたったひとつの冴えたやり方だ。
「あれ?」
私はメモ帳を落とした。左手が引っ張られ、止まった。体は持ち上がることはなかった。つまりは、一回り大きなメモ帳より私の方が重かったのだ。いや、私が重いのではない。人間は総じて重いのだからしかたがない。
私はメモ帳を紐のたわみ分だけ持ち上げ、床に向かって思いっ切りたたきつけた。
「ぐへっ!」
今度は急激にロープが持ち上がり、振り落とされないように必死でロープにつかまる。体の様々な箇所を壁にぶつけながらも、ただロープにつかまるしかない。
最後に床にぶつかって止まった。
目の前には大きな柱がある。
柱の上の方に目をやると、それが机の脚だったことがわかった。何はともあれ、箱の外の世界に行くことができた。
目的である床に面している小さな横穴に向かう。この大きさの私なら入ることができた。何があるのかと期待しながら暗い中を進んで行く。
しかしだんだん穴は狭くなっていく。ついには先に進めなくなってしまった。
出口は見えているのに、もう少しのところで引っかかって前に進めない。
もう一回り小さい私でないと進めないだろう。
さてどうやって脱出したものか。
《暑い中、長々しゃべっていたため、口が渇いて言葉が詰まった。希望は籐で編みこまれたバッグの中から水筒をとりだし、ふたのコップに注いだ。
「お手製だよ」
希望は得意げに私にそのコップを渡してくれた。赤いコップに入っていてわかりづらいが中身は見たところ茶色である。一口飲んでみる。
正体は麦茶であったが、なんか苦い味がする。苦いという思考が顔に出ていたようで、先読みして彼女は「濃く作ったから」と言った。
「もっとケミカルな苦さなんだけども」と言っても「ミネラルかなんかでしょ」と適当に返された。注がれたものは全部飲むのが大人の処世術だとどこかの文化にあるはずなので、仕方がなく飲み干すことにする。飲み干せないってほど苦い訳でもないし。
「発想の転換が必要って話でしょ。木を隠すなら森の中とか、地下世界の入口は山の中にあるとか。そういうの」
急に何の話かと思ったが、希望は私が話していた部屋の脱出方法を考えているらしい。
「これで問題提起は終了?」
「そうだね。二段階で箱の外に出られれば解決するよ」
「メモ帳には、何か書いてあったの?」
「中まで見てないけど、特に関係なく脱出できたよ」
「箱の中にも紐とメモ帳は存在するの?」
「うん、あるよ。ちゃんと同期して動くし」
彼方がふふふと小さな笑い声をあげながら、口を手で覆う。
「私、わかっちゃった。まず箱から出る方法と机から降りる方法を別々に考えて……」
「まもなく、一番ホームに列車が参ります」
彼方が話し始めると時を同じくしてまもなく電車が来るというアナウンスが入る。改めて、長いこと話していたのだと気づく。
「ほら、電車に乗らないと」
私は話を遮り、彼方を急かす。
「あと、話の続きは私が言うから」
解決篇の主導権をとられるわけにはいかない。》
コンテニューをしたら、小さくもなく、大きくもない最初にいたサイズの部屋に戻った。
出口は小さな横穴だけ。部屋にあるものは机、メモ帳、長いの紐、箱。箱の中には私がいて、私が動くと箱の中の私も同じように動く。箱の中にある机の上にも箱があり、もっと小さな私がいた。先ほどと変わらない。
またはじめからやり直しだ。今度はどうしたものか。
状況を整理すると、二段階小さくならないと行けないということ。つまり二回も外にあるの部屋に移動しなければならない。
小さくなってしまえば先ほどの紐に捕まっていく方法も使えない。今回は、外の部屋に出る手段が固定されていなければならないということだ。
そうかそうか、なるほどなるほど。
箱から出る方法と机から降りる方法を別々に考えてみると。
さてさて今度こそ、解決篇のスタートだ。
紐を机の中央に固定された箱にぐるりと回し、結びつける。余った長いの方の紐の端を床まで垂らせば机から床までの経路の完成だ。
次は箱を出る方法の算段だ。
メモ帳を真ん中らへんの適当なページで開いて箱の側面に被せる。そうすると目の前にスロープができた。
ひとつ大きな部屋の私が被せたメモ帳が箱の中の床と箱の外の机を結ぶスロープになったのだ。
でも、これじゃあ登るのは大変そうだ。私はメモ帳の表紙の厚紙を蛇腹状に折り曲げ始めた。片面だけ蛇腹にしたら、蛇腹面を手前にしてまた箱の壁に被せる。
そして、目の前にできた階段を上っていく。わりと疲れるが、頂上まで登れば下りは簡単だ。滑り台の要領で下ればいい。そうやって、外の世界の机までたどり着くと先ほど仕込んでおいたロープを伝って床まで降りる。
降りてきた部屋には雄大な山があった。
いや、山ではないメモ帳だ。二段階小さくなった私にはあの小さかったはずのメモ帳も今の私にとっては山だった。
しかし、登るしかない。登るしかないのだ。
くっ、つらい。階段状でもつらいじゃないかよ。やっぱり、エスカレータがいい。風情なんてなくていい。
しかし、クライマーズハイではなく四つん這いになることで、なんとか登ることはできる。つらいけど。
下りは滑り台だ。それさえ思えばなんとか登れる。
やっと、頂上までついた。
しかし、見えた景色は直下降。ここを滑り降りる恐怖で足元も震えている。
階段を登って疲れたから震えているわけでは無い。スキージャンパーの気分だ。そういえば、スキージャンパーのジレンマと聞いたのを思い出した。
あるスキージャンパーが世界最長記録を目指していた。その男は世界記録を出したノルウェーの大会よりも赤道に近づくほど遠心力で重力が減り飛びやすくなることに目を付けた。しかし、赤道に近づくほど暑くなり雪が溶けてしまうというジレンマだった。
そんなことを考えていてもどうにもならない。意を決して滑り落ちるしかない。現実逃避は終わりだ。やい。
怖い、怖い。早い、早い。
手を地面につけてブレーキをかけるが、摩擦で直ぐに手が熱くなって、手を離さざるを得ない。
やばい、やばい、やばい。
「ぎゃい」
メモ帳の切れ目で躓いて、転がって、気づいたら机の端。落ちる一歩手前。危うく落下するところだった。
落ちなかったことを良かったとして、ロープにむかう。
あったのはロープでない、大綱だった。大神宮の大しめ縄ぐらいある。両腕がギリギリ回らない。大綱の中の繊維を掴みながら、辛うじて床まで降りることができた。
部屋の横穴に向かって歩いて行く。これでゴールだ。どんどん小さくなっていた横穴を抜けると、ひとつのなにもかかれていない看板があった。裏に回ってみると「↑入口」と書いてあり、矢印は今来た穴の方を向いていた。
「なるほどね、すごいじゃない」
彼方は脱出方法がわかっていたのかわからないが褒めてくれる。
「ありがとう」
とりあえずお礼は言っておこう。
「やっと愛が一人の時の話をしてくれたね。今までは他の女の子がちらついていたけど」
なんて言い方だ。
「別に愛が楽しいなら他の女の子がいてもいいんだけどね」
「ありがとう?」
とりあえずお礼は言っておこう。
「今日がその女の子たちといる時より愛が楽しんでくれたら良いだけだよ」
それはどうなのだろうか。
「ほら」
「わーい。たのしー」
希望は満足気だった。うれしー。
「他になんか話はないの?」
「えっ」
私が話すペースが多くなってきてはいないだろうか。
電車が揺れて、連結部が音を立てる。
タ、タン
「やっぱり愛の話すハナシが好きなの」
でも仕方がないか、今度は国民の幸せのために働く国王の話をしよう。
それと同時にアイデアもひらめいた。私は天才なのかもしれない。
机には、紐のほかにメモ帳も置いてあった。こういったアイテムはすべて使うのがセオリーだ。そして、私はメモ帳に紐を巻き始めた。
それでは、解決篇だ。
メモ帳を開き、紐を二周ぐるりと巻き付けて固定する。メモ帳からは一メートルほどの紐が垂れている。
残った紐を目の前にある箱の壁面に這わすと自分のいる部屋にもロープほどの大きさの紐が左側の壁に垂れ下がった。私はメモ帳を右手に持ちながら、紐が動かないように注意して移動する。壁に垂れているロープを左手で握りしめ、メモ帳を自分のいる部屋の床へと落す。
そうすればメモ帳が床に落ち、それをなぞるようにロープにつかまった私が箱の外にたどり着けるだろう。これがたったひとつの冴えたやり方だ。
「あれ?」
私はメモ帳を落とした。左手が引っ張られ、止まった。体は持ち上がることはなかった。つまりは、一回り大きなメモ帳より私の方が重かったのだ。いや、私が重いのではない。人間は総じて重いのだからしかたがない。
私はメモ帳を紐のたわみ分だけ持ち上げ、床に向かって思いっ切りたたきつけた。
「ぐへっ!」
今度は急激にロープが持ち上がり、振り落とされないように必死でロープにつかまる。体の様々な箇所を壁にぶつけながらも、ただロープにつかまるしかない。
最後に床にぶつかって止まった。
目の前には大きな柱がある。
柱の上の方に目をやると、それが机の脚だったことがわかった。何はともあれ、箱の外の世界に行くことができた。
目的である床に面している小さな横穴に向かう。この大きさの私なら入ることができた。何があるのかと期待しながら暗い中を進んで行く。
しかしだんだん穴は狭くなっていく。ついには先に進めなくなってしまった。
出口は見えているのに、もう少しのところで引っかかって前に進めない。
もう一回り小さい私でないと進めないだろう。
さてどうやって脱出したものか。
《暑い中、長々しゃべっていたため、口が渇いて言葉が詰まった。希望は籐で編みこまれたバッグの中から水筒をとりだし、ふたのコップに注いだ。
「お手製だよ」
希望は得意げに私にそのコップを渡してくれた。赤いコップに入っていてわかりづらいが中身は見たところ茶色である。一口飲んでみる。
正体は麦茶であったが、なんか苦い味がする。苦いという思考が顔に出ていたようで、先読みして彼女は「濃く作ったから」と言った。
「もっとケミカルな苦さなんだけども」と言っても「ミネラルかなんかでしょ」と適当に返された。注がれたものは全部飲むのが大人の処世術だとどこかの文化にあるはずなので、仕方がなく飲み干すことにする。飲み干せないってほど苦い訳でもないし。
「発想の転換が必要って話でしょ。木を隠すなら森の中とか、地下世界の入口は山の中にあるとか。そういうの」
急に何の話かと思ったが、希望は私が話していた部屋の脱出方法を考えているらしい。
「これで問題提起は終了?」
「そうだね。二段階で箱の外に出られれば解決するよ」
「メモ帳には、何か書いてあったの?」
「中まで見てないけど、特に関係なく脱出できたよ」
「箱の中にも紐とメモ帳は存在するの?」
「うん、あるよ。ちゃんと同期して動くし」
彼方がふふふと小さな笑い声をあげながら、口を手で覆う。
「私、わかっちゃった。まず箱から出る方法と机から降りる方法を別々に考えて……」
「まもなく、一番ホームに列車が参ります」
彼方が話し始めると時を同じくしてまもなく電車が来るというアナウンスが入る。改めて、長いこと話していたのだと気づく。
「ほら、電車に乗らないと」
私は話を遮り、彼方を急かす。
「あと、話の続きは私が言うから」
解決篇の主導権をとられるわけにはいかない。》
コンテニューをしたら、小さくもなく、大きくもない最初にいたサイズの部屋に戻った。
出口は小さな横穴だけ。部屋にあるものは机、メモ帳、長いの紐、箱。箱の中には私がいて、私が動くと箱の中の私も同じように動く。箱の中にある机の上にも箱があり、もっと小さな私がいた。先ほどと変わらない。
またはじめからやり直しだ。今度はどうしたものか。
状況を整理すると、二段階小さくならないと行けないということ。つまり二回も外にあるの部屋に移動しなければならない。
小さくなってしまえば先ほどの紐に捕まっていく方法も使えない。今回は、外の部屋に出る手段が固定されていなければならないということだ。
そうかそうか、なるほどなるほど。
箱から出る方法と机から降りる方法を別々に考えてみると。
さてさて今度こそ、解決篇のスタートだ。
紐を机の中央に固定された箱にぐるりと回し、結びつける。余った長いの方の紐の端を床まで垂らせば机から床までの経路の完成だ。
次は箱を出る方法の算段だ。
メモ帳を真ん中らへんの適当なページで開いて箱の側面に被せる。そうすると目の前にスロープができた。
ひとつ大きな部屋の私が被せたメモ帳が箱の中の床と箱の外の机を結ぶスロープになったのだ。
でも、これじゃあ登るのは大変そうだ。私はメモ帳の表紙の厚紙を蛇腹状に折り曲げ始めた。片面だけ蛇腹にしたら、蛇腹面を手前にしてまた箱の壁に被せる。
そして、目の前にできた階段を上っていく。わりと疲れるが、頂上まで登れば下りは簡単だ。滑り台の要領で下ればいい。そうやって、外の世界の机までたどり着くと先ほど仕込んでおいたロープを伝って床まで降りる。
降りてきた部屋には雄大な山があった。
いや、山ではないメモ帳だ。二段階小さくなった私にはあの小さかったはずのメモ帳も今の私にとっては山だった。
しかし、登るしかない。登るしかないのだ。
くっ、つらい。階段状でもつらいじゃないかよ。やっぱり、エスカレータがいい。風情なんてなくていい。
しかし、クライマーズハイではなく四つん這いになることで、なんとか登ることはできる。つらいけど。
下りは滑り台だ。それさえ思えばなんとか登れる。
やっと、頂上までついた。
しかし、見えた景色は直下降。ここを滑り降りる恐怖で足元も震えている。
階段を登って疲れたから震えているわけでは無い。スキージャンパーの気分だ。そういえば、スキージャンパーのジレンマと聞いたのを思い出した。
あるスキージャンパーが世界最長記録を目指していた。その男は世界記録を出したノルウェーの大会よりも赤道に近づくほど遠心力で重力が減り飛びやすくなることに目を付けた。しかし、赤道に近づくほど暑くなり雪が溶けてしまうというジレンマだった。
そんなことを考えていてもどうにもならない。意を決して滑り落ちるしかない。現実逃避は終わりだ。やい。
怖い、怖い。早い、早い。
手を地面につけてブレーキをかけるが、摩擦で直ぐに手が熱くなって、手を離さざるを得ない。
やばい、やばい、やばい。
「ぎゃい」
メモ帳の切れ目で躓いて、転がって、気づいたら机の端。落ちる一歩手前。危うく落下するところだった。
落ちなかったことを良かったとして、ロープにむかう。
あったのはロープでない、大綱だった。大神宮の大しめ縄ぐらいある。両腕がギリギリ回らない。大綱の中の繊維を掴みながら、辛うじて床まで降りることができた。
部屋の横穴に向かって歩いて行く。これでゴールだ。どんどん小さくなっていた横穴を抜けると、ひとつのなにもかかれていない看板があった。裏に回ってみると「↑入口」と書いてあり、矢印は今来た穴の方を向いていた。
「なるほどね、すごいじゃない」
彼方は脱出方法がわかっていたのかわからないが褒めてくれる。
「ありがとう」
とりあえずお礼は言っておこう。
「やっと愛が一人の時の話をしてくれたね。今までは他の女の子がちらついていたけど」
なんて言い方だ。
「別に愛が楽しいなら他の女の子がいてもいいんだけどね」
「ありがとう?」
とりあえずお礼は言っておこう。
「今日がその女の子たちといる時より愛が楽しんでくれたら良いだけだよ」
それはどうなのだろうか。
「ほら」
「わーい。たのしー」
希望は満足気だった。うれしー。
「他になんか話はないの?」
「えっ」
私が話すペースが多くなってきてはいないだろうか。
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