初恋は永遠に

夜桜 春

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第1章 再会

(6)初恋とは

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 ――私は恋をまだしたことがない。
 
 そんな私は既に恋をしている彼に興味があった。


 「ねぇ、柿沢…好きになるってどういう感じ?」

 「えっ?突然なんだよ」

 私の家で二人っきりで勉強会を行っている際に聞いたもんだから、照れた表情でこっちを向いてきた彼。

 「バカ!何赤くなってんのよ!あんたがここまで頑張って勉強に取り組んでるからちょっと疑問に思っただけ。いつも教えてあげてるんだからちょっとぐらい質問に答えてくれても良いんじゃない?」

 「別に赤くなってないし…まぁでも好きってこう胸がザワザワするって言うか…」

 「ザワザワ?」
 
 2人とも胸に手を当てて感じ取ろうとしてみた。

 「そうそう…こう胸にって…」

 そう彼が言うと私の胸に向かう彼の視線を感じた。

 「ねぇ…柿沢くん?今どこをガン見してたのかなー?」

 「いや、見てない見てない!絶対風岡なんかの見るわけないって」

 「はぁっ!私なんかって何よ!これでも高校生にも負けないぐらいはあるはずなんだから」

 そう私はスタイルには少し自信があった。

 彼がどんな子に恋をしたのかは知らないが、スタイルの良さなら対抗出来るのじゃないかと思っている。
 まぁ、別に対抗する必要はないのだけど…。

 「まぁ、あんたが貧乳好きなのはともかく…」

 「おい!勝手に――」

 「今でもその人のこと見ると胸がザワザワするもんなの?」

 「うん、直視出来ないって言うかなんと言うか…」

 「ふーん…そうなんだ」

 まぁ、彼にとってその子はそれほど特別だと言うことなんだろう。

 興味本位でこうやって勉強を教えることになった彼だが、こうやって家に招き入れて弟や妹たちと共に夕食も食べてもらうようになった相手としては、その初恋と言うものを叶えさせてあげたいと親のように思うようになっていた。

 「でも小学5年生の時からずっと片想い貫いてるって本当に凄いよね」

 「そうかな?初恋って何歳になっても永遠なんだよ…多分大人になってもね…」

 そう彼が話している表情を見ていると言葉にずっしりと重みがあるのを感じていた。

 彼は何かを隠している…。
 その理由と何か関係あるのだろうと私は察していた。

 「でも小中って同じ学校でも何も出来なかったあんたに、初恋の人と一緒の高校に行けたとして何か出来るものなの?」


 「どうなんだろうね…でもやらなきゃいけないから。てか風岡が言ったんだろ。今やらなきゃ変わらないって」

 「うん言った。じゃあ私も言った責任があるってもんだから柿沢のこと応援しないとね。フレーフレー柿沢ー」

 「応援はいいから今まで通り勉強を教えてくれ」

 そうやって私たちは恋についての彼の経験談を聞くと言う恋ばなを時に挟みつつ、猛勉強の日々を乗り越えていった。


 ――そして運命の合格発表の日がやってくる。

 まだ寒いこの時期。
 みんなはコートやマフラー手袋を着けて発表場所にいた。
 私はもちろんバリバリのミニスカ素足で勝負だけどね。

 こういう日こそ普段通りにするのが一番だ。

 柿沢からは一緒に合格発表を見ようかって誘いは無かった。

 多分私と一緒に居るところを例の初恋相手に見られたく無いんだと思う。

 受験の日も周りを見てソワソワしていたし。

 これまでの勉強でも私の家に来て一緒にやるぐらいで学校では彼とほとんど関わる事がなかった。

 私はずっとそれで良いと思っていった。

 ――この時までは。

 合格番号を順番に見ていった。

 まずはもちろん私の番号から。

 「…あった」

 合格ラインが余裕であったとは言え、やっぱり万が一のことを考えると気が気ではなかった。
 そんな私の重い心が一気に軽くなった瞬間だった。

 次はもちろん彼の番号を見る番だ。
 さすがに勉強を教えていただけあって、彼の番号は予め教えてもらっていた。
 
 なぜか自分の番号を見るよりも緊張した。

 それもそのはず。
 模試の結果ではギリギリのラインだと聞いていたからだ。

 彼が受からなくて自分だけが受かったという状況なのは当然素直には喜べない。

 気持ちよく高校に進学するためにも彼の結果も私にとってとても大事なものになっていた。


 緊張の面持ちで彼の番号のある場所を追っていく…。

 ………。



 「…あっ…た」

 そう。

 彼の教えてくれた番号は掲示板に書いてあったのだ。

 

 私は嬉しくなって一刻も早く彼に会いたいと思って連絡を入れた。

 『今どこ?結果みた??』

 私は居ても立っても居られなくなって、メッセージの返事が返ってくる前に彼を探しに向かった。

 大勢の受験生を掻き分けて探していった。

 この時はそんな大勢の中でも彼を見つけられるとそう信じていた。

 そして少し人混みを外れた場所に彼らしき後ろ姿が見えてきた。

 「柿――」

 私が彼の名前を呼ぼうとした時、私とは正反対の容姿であり、また違ったスタイルの良い可愛らしい女の子が彼の目の前に佇んでいた。

 私は彼と彼女が何かを話している様子を見て確信をした。

 彼の初恋の相手とはこの人のことなんだと。

 彼の特別はこの人なんだと。


 ――私は胸がザワザワとする感覚に陥っていた。

 ただ、この時の私はこの感覚があの感覚であるとは認めようとしていなかった。
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