24 / 38
隠したいこと ユウフェside
しおりを挟む魔法使い様からこんな予言を受けました。
『君に、まだ薄く…だけど、死相が出てる』
♢♢♢
夜も更けました。
明日は勇者様達が重要なクエストを攻略する旅へと出立する日です。
彼らはこの旅で発生したクエストを成功させ大幅なスキルアップと、東の魔王へと繋がる重要なヒントを得られます。
それだけに、危険度は高く、怪我をされる可能性は多分にありますので勇者様の婚約者として、必須アイテムのチェックは欠かせません。
そう言う訳で、勇者様の旅立ちに備えることに集中したいのは山々なのですがーー…私はこれから起こる事件の対策も立てなくてはならないのです。
寝ている場合ではありません。
ーー勇者様不在の間に壊される王都の結界。
結界が壊されて、王都に魔物を率いれるなんて、そんな事はさせないーー
そう考えた私は、結界を壊そうとしているダーク様を待ち伏せて、壊す前に待ったをかけ、説得すれば良いのではないかと思い立っていました。
もしも説得が良い方向へ向かえば、物語よりも早く味方になっていただけるのでは?
などと色々安易に考えていました。
だってダーク様は根っからの悪人では無いから、最後は勇者様の仲間になるお方な訳ですから。
けれどーー
『死相が出てる』
魔法使い様がはっきりとそう申されるということは、このまま実行すると私は死ぬと言うことなのでしょう。
つまり、この段階ではまだ、ダーク様を説得するには些か難しい…と言う事でしょうか。
作中のダーク様は、魔王の手下として動いて魔物被害を多発させるけれど、安易に自分の手で人を殺すお方では無いとありましたが…。
作中通りの設定がダーク様の性格だとしたならば、ダーク様が私を殺すとは考えにくいのです。
なら、どうして私の顔に死相が?
ーーコンコン
ノックする音がしたので、ユウフェは手にしていたペンを置いて、ノートを閉じる。
ネグリジェの上からブランケットを羽織り、部屋の扉を開いた。
「はい、何かー…勇者様!」
「夜更けにごめんね、部屋の灯りが見えたから、まだ起きているかと思って」
♢♢♢
「何かございましたか?」
「明日から少し長めの旅に出るからさ、今夜はユウフェと過ごしたくて」
「私と、ですか?」
「うん、当分会えないから」
そう言って、勇者は左手で頭を掻きながらもはにかんだような笑顔を浮かべる。ユウフェの心臓がきゅんと締め付けられ、思わず胸の前で掌を握り込んだ。
ーー私は、勇者様の事が前世から大好きでした。
勇者様は優しくて、普段は自分の痛みを他人に決して悟らせない。
そんな勇者様の健気な姿に、多くの読者が涙を流しながらも応援をしていました。
私は勇者様を応援していた読者の中の1人でしかなくて、そんな私がこの世界に・・ユウフェ・ヴィクレシアとして生まれたことをずっと。
ずっと、幸運だと思って いました。
ユウフェが脳裏に、勇者と巫女が並びあって笑みを浮かべていたことを思い出していたとき、気遣いを滲ませた声が掛けられた。
「ユウフェ?顔色が少し悪くなってきたけど、具合悪い?」
呼びかけられてハッと我に返る。
目の前にある見ている者を安心させるような笑みに胸が高鳴り、動揺したけれど、ようやくユウフェは冷静になってきた。
いけません、ご出立の前の勇者様に、いらぬご心配をおかけしてしまうなんて。
それに今私、何を考えてしまったのでしょう。
いましたなんて、過去形みたいな・・幸運だったと今でも勿論ちゃんと思っているのに。ちょっと本物の勇者様に優しくされて、ヒロインっぽい扱いを享受出来ただけで、いつの間にか調子に乗ってしまったのでしょうか。
直接この世界に関与出来て、勇者様の手助けをするためにはユウフェ以上に良いポジションのキャラクターはありませんのに・・。
気合を入れなおすために、両手で己の頬をぺちんと打つと、勇者は戸惑いをみせる。
「ゆ、ユウフェ?」
「大丈夫です!申し訳ございません、先程まで少し考え事をしていたものですから。ぼんやりしていました」
ユウフェは何も悟らせないように「えへへ・・」と砕けた笑みを浮かべた。
私はユウフェとして転生したこと、この上ない幸運であったと、本当に。今でも心から思っています。
何故なら、前世で見た小説の知識を一番有効に使える力を持っている者が、ユウフェ・ヴィクレシア以外ありえないからです。
小説の中身を見ていた私は、この先に起こることがわかっています。変えてはいけないこと、変えても差し支えの無いもの全てが。
今回の旅の果てに見るものが、勇者様にとって絶望に等しいものだと私は既に知っています。
それなのに、世界の平和のために私は此処で何もせず、ただ勇者様を送り出すことしか出来ない。
そんな私が、自分の運命だけは変えたいなんて微塵も思いません。
私はただ、この先自身がどのようになろうとも、この世界と勇者様のダメージを少ない状態で、皆がハッピーエンドを迎えられるために、手助けしたいのです。
ーーこの物語のサブヒロインは、物語の鍵を握る1人。決してヒロインにならないからこそ、私は勇者様の危機を必ず救えます。
これ以上に幸せなことなんて、ないのです。
「・・・ユウフェ、俺に話たいことはない?」
「??…話しておきたいことですか?
そう言えば!お荷物にいれたポーションの中に、珍しい効能の物がございまして、使い方は「うん、そう言うことじゃなくてさ」
じっと見つめてくるターコイズの真っ直ぐな瞳にドキドキしている事を悟られないよう、視線を晒さず見つめ返えしたユウフェだったが、次に紡がれた勇者の言葉に目を見開いた。
「ダークと会ってからずっと。
無理をして笑っているだろう?」
42
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~
水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。
彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。
失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった!
しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!?
絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。
一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる