【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式

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隠したいこと ユウフェside

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 魔法使いロイド様からこんな予言を受けました。



『君に、まだ薄く…だけど、死相が出てる』








♢♢♢





 夜も更けました。

 明日は勇者様達が重要なクエストを攻略する旅へと出立する日です。
 
 彼らはこの旅で発生したクエストを成功させ大幅なスキルアップと、東の魔王へと繋がる重要なヒントを得られます。

 それだけに、危険度は高く、怪我をされる可能性は多分にありますので勇者様の婚約者として、必須アイテムのチェックは欠かせません。
 
 そう言う訳で、勇者様の旅立ちに備えることに集中したいのは山々なのですがーー…私はこれから起こる事件の対策も立てなくてはならないのです。

 寝ている場合ではありません。

ーー勇者様不在の間に壊される王都の結界。

 結界が壊されて、王都に魔物を率いれるなんて、そんな事はさせないーー

 そう考えた私は、結界を壊そうとしているダーク様を待ち伏せて、壊す前に待ったをかけ、説得すれば良いのではないかと思い立っていました。
   
 もしも説得が良い方向へ向かえば、物語よりも早く味方になっていただけるのでは?

 などと色々安易に考えていました。

 だってダーク様は根っからの悪人では無いから、最後は勇者様の仲間になるお方な訳ですから。



 けれどーー


『死相が出てる』

 魔法使いロイド様がはっきりとそう申されるということは、このまま実行すると私は死ぬと言うことなのでしょう。


 つまり、この段階ではまだ、ダーク様を説得するには些か難しい…と言う事でしょうか。

 作中のダーク様は、魔王の手下として動いて魔物被害を多発させるけれど、安易に自分の手で人を殺すお方では無いとありましたが…。

 作中通りの設定がダーク様の性格だとしたならば、ダーク様が私を殺すとは考えにくいのです。

 なら、どうして私の顔に死相が?





ーーコンコン


 ノックする音がしたので、ユウフェは手にしていたペンを置いて、ノートを閉じる。

 ネグリジェの上からブランケットを羽織り、部屋の扉を開いた。

「はい、何かー…勇者様!」

「夜更けにごめんね、部屋の灯りが見えたから、まだ起きているかと思って」



♢♢♢ 




「何かございましたか?」
「明日から少し長めの旅に出るからさ、今夜はユウフェと過ごしたくて」
「私と、ですか?」
「うん、当分会えないから」

 そう言って、勇者は左手で頭を掻きながらもはにかんだような笑顔を浮かべる。ユウフェの心臓がきゅんと締め付けられ、思わず胸の前で掌を握り込んだ。

 ーー私は、勇者様の事が前世から大好きでした。

 勇者様は優しくて、普段は自分の痛みを他人に決して悟らせない。

 そんな勇者様の健気な姿に、多くの読者が涙を流しながらも応援をしていました。

 私は勇者様を応援していた読者の中の1人でしかなくて、そんな私がこの世界に・・ユウフェ・ヴィクレシアとして生まれたことをずっと。

 ずっと、幸運だと思って いました・・・・

 

 ユウフェが脳裏に、勇者と巫女ヒロインが並びあって笑みを浮かべていたことを思い出していたとき、気遣いを滲ませた声が掛けられた。
 


「ユウフェ?顔色が少し悪くなってきたけど、具合悪い?」


 呼びかけられてハッと我に返る。
 目の前にある見ている者を安心させるような笑みに胸が高鳴り、動揺したけれど、ようやくユウフェは冷静になってきた。

 いけません、ご出立の前の勇者様に、いらぬご心配をおかけしてしまうなんて。

 それに今私、何を考えてしまったのでしょう。

  いました・・・・なんて、過去形みたいな・・幸運だったと今でも勿論ちゃんと思っているのに。ちょっと本物の勇者様に優しくされて、ヒロインっぽい扱いを享受出来ただけで、いつの間にか調子に乗ってしまったのでしょうか。

 直接この世界に関与出来て、勇者様の手助けをするためにはユウフェ以上に良いポジションのキャラクターはありませんのに・・。

 気合を入れなおすために、両手で己の頬をぺちんと打つと、勇者は戸惑いをみせる。

「ゆ、ユウフェ?」


「大丈夫です!申し訳ございません、先程まで少し考え事をしていたものですから。ぼんやりしていました」

 ユウフェは何も悟らせないように「えへへ・・」と砕けた笑みを浮かべた。

 私はユウフェとして転生したこと、この上ない幸運であったと、本当に。今でも心から思っています。

 何故なら、前世で見た小説の知識を一番有効に使える力を持っている者が、ユウフェ・ヴィクレシア以外ありえないからです。

 小説の中身を見ていた私は、この先に起こることがわかっています。変えてはいけないこと、変えても差し支えの無いもの全てが。


 
 今回の旅の果てに見るものが、勇者様にとって絶望に等しいものだと私は既に知っています。

 それなのに、世界の平和のために私は此処で何もせず、ただ勇者様を送り出すことしか出来ない。

 そんな私が、自分の運命だけは変えたいなんて微塵も思いません。

 私はただ、この先自身がどのようになろうとも、この世界と勇者様のダメージを少ない状態で、皆がハッピーエンドを迎えられるために、手助けしたいのです。


ーーこの物語のサブヒロインは、物語の鍵を握る1人。決してヒロインにならないからこそ、私は勇者様の危機を必ず救えます。

 これ以上に幸せなことなんて、ないのです。


「・・・ユウフェ、俺に話たいことはない?」

「??…話しておきたいことですか?
そう言えば!お荷物にいれたポーションの中に、珍しい効能の物がございまして、使い方は「うん、そう言うことじゃなくてさ」
 
 じっと見つめてくるターコイズの真っ直ぐな瞳にドキドキしている事を悟られないよう、視線を晒さず見つめ返えしたユウフェだったが、次に紡がれた勇者の言葉に目を見開いた。



「ダークと会ってからずっと。
無理をして笑っているだろう?」



 

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