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出立の朝
朝早くに、東へと旅立つ勇者達を、ユウフェは邸宅の使用人と共に見送るため、外に出て、最上級の見送りの挨拶として、服をつまみ国王陛下に行うようなカーテシーをしてみせた。
「皆様がご無事でお戻りになられるよう、心からお祈りしております」
勇者はその姿見て眩しそうに目を細め、お辞儀の姿勢から身を起こしたユウフェの近くへと寄ると、ニコっと爽やかな笑みを浮かべる。
「行ってくるね」
その笑顔にポっと頬を赤らめて、嬉しそうに口元を緩ませたユウフェは改めて「はい。いってらっしゃいませ、勇者様」と元気よく返事を返した。
そんなユウフェの左手をとって、勇者は自らの掌に載せ、問いかける。
「指輪は・・つけてくれないの?」
「あ・・指輪は、その。無くしてはいけないと思い、ネックレスとして持ち歩くことにしたのです」
ユウフェは慌てて首元の紐を引いて、服の内側にしまっていたネックレスを外へ出して、勇者へと見せた。
(左手の薬指に指輪をしていたら、巫女に誤解を与えてしまうと思うんです)
「ほら、ここに。
勇者様のご助言のとおり、肌身離さず持っています!」
「・・うん。指につけてくれるともっと嬉しいな」
「ですが、その・・指につけると・・(本当に今後、結婚するのではないかと言う勘違いと、錯覚を起こしてしまうんです)」
惑い、躊躇しているユウフェを見ている勇者が、悲し気に眉尻を下げた。
(ぁあっ、私としたことが。勇者様に悲しい顔をさせてしまいました。
せっかく、虫よけ?のご利益もあると配慮して買ってくださったのに。指につけないとご利益が無いのかもしれません。昨日も、この指輪が私を守ってくれるからつけて欲しいとおっしゃっておりましたし・・)
ユウフェは慌ててネックレスから指輪を取り外して、右手の薬指に付け直した。それをみて見る間に笑みを浮かべる勇者に、ホッと胸を撫でおろす。
「おーい、もう行くぞ」
オルフェに呼ばれた勇者は、「ぁあ、今行く」と返事をして、身を翻して、歩いて行く。その後ろ姿を、ユウフェはじっと見つめた。
(暫くの間はお会い出来ないですね。勇者様。きっとこの旅は勇者様にとって辛いものとなるでしょう。ですから私も、王都で頑張ります。勇者様が帰って来た時に傷ついたお心を労われるように。平穏な王都を守ります。
だから、どうか。無事に帰ってきてくださいませ)
祈るように、両手を胸元で握る。
勇者がユウフェから遠ざかり、ふと、視界の端に見えた魔法使いと目が合った。
『死相がでてる』
魔法使いが言うことは、当たると小説の作中に書かれていた。
その言葉を受けて、私なりに一晩、作戦を練り直してみたけれど。その結果、私の死相は消えたのだろうか。
自分の疑問に答えてくれるのではないだろうかと期待をこめた視線を、魔法使いへやるけれど、相変わらずぼんやりとした表情で首を縦に振ることも、横に振ることも無ない。
大人しくしていれば、私は助かる。けれど・・結界を壊された王都は陥落してしまう。沢山の人が、死んでしまう。
それを知ってしまったからにはじっとしていられるわけがないーーそれは、今世で公女として生まれたユウフェの矜持だった。
(もしも、私の試すことが失敗に終わってしまったら、これが勇者様と会う最後になってしまうのだろうか。でも、そうなったら私が最後、南の魔王に嫁げなくなるから・・)
ーー勇者様、私本当は心細くてたまりません。
ヒロインの様に結界が張れる訳でも無くて、魔法使いのように魔法も使えません。弓使いのように戦うことも出来なくて。
魔王の討伐に協力は出来ないのです。でも、こんな私にも一応今作のサブヒロインですから、物語のキーとして、実は特殊な力が・・出来ることが、あります。
けれど、今の段階で、それが成功するか分からないんです。
失敗してしまったら・・そうなったらーー
ギュッ
「!?」
気が付けば、ユウフェは勇者の背中に抱き着いていた。
「え、ユウフェ?」
勇者が戸惑っているのが分かる。
ユウフェも自分の行動に一瞬、内心驚いていたけれど、その背中に頬をくっつけて人よりも体温の高い暖かさを感じながら、目を閉じた。
「行ってらっしゃいませ。勇者様」
「皆様がご無事でお戻りになられるよう、心からお祈りしております」
勇者はその姿見て眩しそうに目を細め、お辞儀の姿勢から身を起こしたユウフェの近くへと寄ると、ニコっと爽やかな笑みを浮かべる。
「行ってくるね」
その笑顔にポっと頬を赤らめて、嬉しそうに口元を緩ませたユウフェは改めて「はい。いってらっしゃいませ、勇者様」と元気よく返事を返した。
そんなユウフェの左手をとって、勇者は自らの掌に載せ、問いかける。
「指輪は・・つけてくれないの?」
「あ・・指輪は、その。無くしてはいけないと思い、ネックレスとして持ち歩くことにしたのです」
ユウフェは慌てて首元の紐を引いて、服の内側にしまっていたネックレスを外へ出して、勇者へと見せた。
(左手の薬指に指輪をしていたら、巫女に誤解を与えてしまうと思うんです)
「ほら、ここに。
勇者様のご助言のとおり、肌身離さず持っています!」
「・・うん。指につけてくれるともっと嬉しいな」
「ですが、その・・指につけると・・(本当に今後、結婚するのではないかと言う勘違いと、錯覚を起こしてしまうんです)」
惑い、躊躇しているユウフェを見ている勇者が、悲し気に眉尻を下げた。
(ぁあっ、私としたことが。勇者様に悲しい顔をさせてしまいました。
せっかく、虫よけ?のご利益もあると配慮して買ってくださったのに。指につけないとご利益が無いのかもしれません。昨日も、この指輪が私を守ってくれるからつけて欲しいとおっしゃっておりましたし・・)
ユウフェは慌ててネックレスから指輪を取り外して、右手の薬指に付け直した。それをみて見る間に笑みを浮かべる勇者に、ホッと胸を撫でおろす。
「おーい、もう行くぞ」
オルフェに呼ばれた勇者は、「ぁあ、今行く」と返事をして、身を翻して、歩いて行く。その後ろ姿を、ユウフェはじっと見つめた。
(暫くの間はお会い出来ないですね。勇者様。きっとこの旅は勇者様にとって辛いものとなるでしょう。ですから私も、王都で頑張ります。勇者様が帰って来た時に傷ついたお心を労われるように。平穏な王都を守ります。
だから、どうか。無事に帰ってきてくださいませ)
祈るように、両手を胸元で握る。
勇者がユウフェから遠ざかり、ふと、視界の端に見えた魔法使いと目が合った。
『死相がでてる』
魔法使いが言うことは、当たると小説の作中に書かれていた。
その言葉を受けて、私なりに一晩、作戦を練り直してみたけれど。その結果、私の死相は消えたのだろうか。
自分の疑問に答えてくれるのではないだろうかと期待をこめた視線を、魔法使いへやるけれど、相変わらずぼんやりとした表情で首を縦に振ることも、横に振ることも無ない。
大人しくしていれば、私は助かる。けれど・・結界を壊された王都は陥落してしまう。沢山の人が、死んでしまう。
それを知ってしまったからにはじっとしていられるわけがないーーそれは、今世で公女として生まれたユウフェの矜持だった。
(もしも、私の試すことが失敗に終わってしまったら、これが勇者様と会う最後になってしまうのだろうか。でも、そうなったら私が最後、南の魔王に嫁げなくなるから・・)
ーー勇者様、私本当は心細くてたまりません。
ヒロインの様に結界が張れる訳でも無くて、魔法使いのように魔法も使えません。弓使いのように戦うことも出来なくて。
魔王の討伐に協力は出来ないのです。でも、こんな私にも一応今作のサブヒロインですから、物語のキーとして、実は特殊な力が・・出来ることが、あります。
けれど、今の段階で、それが成功するか分からないんです。
失敗してしまったら・・そうなったらーー
ギュッ
「!?」
気が付けば、ユウフェは勇者の背中に抱き着いていた。
「え、ユウフェ?」
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ユウフェも自分の行動に一瞬、内心驚いていたけれど、その背中に頬をくっつけて人よりも体温の高い暖かさを感じながら、目を閉じた。
「行ってらっしゃいませ。勇者様」
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