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死相は回避します
しおりを挟む勇者が東の魔王の討伐入って一週間がたちました。
その間・私、ユウフェ・ヴィクレシアは魔法使い様からいただいた予言ーー本来物語でも死なない私に死相が浮かんでいる状態をどうにかするべく、対策をたてました。
どうして、本来死ぬ予定がないのに死相が浮かんでしまうのか、理由は明白です。
私がこれからおこる事件を事前に防ぐべく、物語と違う行動を取るせいです。それしか思いあたりません。
魔法使い様は、私がそうならないよう、余計なことをしない方が良いと諭してくださったのだと思われます……が。
そんな訳にもいかないのです。
この事件での死傷者は、公爵領のみならず王都全体をも巻き込むのですからーー
そういう訳で。
「お父様!
〝武器転移の護符〟をいただけませんか?」
〝武器転移の護符〟とは武器に貼り付けると、使用者が思い浮かべた場所まで武器を転移させるというものです。
武器は時として人の命を奪います。
故に、テロ行為を防ぐためにも、市場での販売は固く禁止されています。
なので、武器を転移出来る護符を扱える者は国の総司令官レベルに権力を持った人しか入手出来ないのです。
ですが、なんと。
私の父は幸いにもこの国の宰相をしており、総司令官レベルに権力を持っていると言っても過言ではありません。
ヴィクレシア公爵は(はぁ…またか)という様に深い小さくため息をついた。
「また何を思いついたかしらんが、やりたいことがあるなら、別の方法にしなさい。
身内だからと、無闇矢鱈に配れる物ではないんだよ」
「そ、そうなんですね…」
(そっか、でも、色んな人に配ったら危険な物ですものね。好きなところに爆弾おけたり、戦車をおけたり…別の方法を考えるしましょう)
ユウフェはしゅんと項垂れて、落ち込んだ顔で書斎から出て行こうとする。
そんな娘の姿を見たヴィクレシア公爵は、オホンと咳払いした。
「簡易的な物なら、渡せんこともないが…
例えば、剣や銃弾などはむりだが、棒状の武器…魔法の杖を転移させるとか…」
それを聞いて、ユウフェは表情を明るくした。
「流石お父様!
大好きです!」
♢♢♢
ーーさて、死相を回避する準備は整いました。
あとは、事件を起こさない為に行動あるのみです。
事件が起きるのは、明日の朝。
いつの間にやら、王都を囲っていた賢者の結界が消えて、夜眠っていた魔物が目を覚まして王都目掛けて押し寄せる。
その原因は、今日の夜。
王都の結界をくぐり抜けた魔王の手先が、結界を維持している紫水晶を破壊するからだ。
紫水晶は王宮の地下にある〝禁絶聖廟〟に、厳重な保管をされている。
そして、そんな予定を迎えた前日の夜ーー王宮に忍び込んでこそこそしているのは、そう。
前夜である今からが勝負だから。
魔王の手先を説得して、全ては水晶を破壊するのをやめて貰えばすむのだ。
一応父には魔物に警戒する様伝えてあるけれど、娘の諫言でどこまで魔物対策されるかはわかりません。
因みに、今王宮にいるのは、父に秘密です。この日のために、本に書いてた秘密通路を探し当てておいたのですが、そんなことを父に伝えたら宰相の立場から通路の場所を変えられてしまう可能性があるからです。
それと、夜間に外出しているのがバレても怒られてしまいます。
総合的に、身動きが取りづらくなるので、こういう時は父には殆ど内緒にしてます。
ーーただ、魔法使い様から死相の指摘をされるまで私は楽観的でした。
何故なら、魔王の手先と言っても、相手は先日勇者様といた時に出会った男ーーそう。
後々勇者様の仲間となる、光落ち男ダークだから。
彼にはきちんと説明すれば、如何に自分がやろうとしてることが無意味かわかってくれるはずです。
(それにしても、巡回の衛兵すら見かけないなんて…
何か違和感を感じるような…)
禁絶聖廟へ行く階段を降りながら、考え事をしていると不意に声をかけられた。
「こんばんわお嬢さん。また会ったね」
(この声はーー)
大きく肩をびくつかせて、そろりと後ろへと振り向く。
甲冑を着た衛兵を予想していたけれど、すぐに衛兵ではないことに気付く。
タレ目がちな赤い瞳に、目の下に小さな黒子。
白金の長い髪を緩く横に束ねている端正な顔をした男の人が立っていた。
後ろの小さな穴から差し込む月明かりが、妖艶さに翳りをつけている。
(やっぱり、北の魔王さん)
「こ、こんばんわ…」
挨拶を返すと、男はふっと笑った。
「ずっと見てたけど。
君ーーなかなか、面白いね」
「ーー」
この台詞。
もう少し先になるのですが、勇者様の力の成長、魔物討伐の件数が本来よりも多く、速いせいでしょうか。
サブヒロインが、物語の南の魔王討伐後に言われる台詞だ。
まだこれから、東の魔王を討伐しに行くのに、はやすぎます。
「安心して。〝今〟どうにかしようなんて思ってない。
君がやりたいことを終えたら、改めて迎えに来るよーーじゃあね、お嬢さん」
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