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南の魔王
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例により、ロイドは勝手にダークの記憶をトレースして、天空の城へ行く祠に転移する。
勿論、今回もユウフェをともに連れてきた。
王都も危険だと理解した勇者は、ならば近くにいた方が守りやすいからと、それについては特に物申す気はないようだ。
「それで、今回はどのようにして倒すの?」
ロイドがユウフェに問いかける。
「えっと・・今回は・・」
ちらりと、マユラと、勇者をそれぞれに目をやり言い淀むが、ポツリポツリと語りだす。
「・・南の魔王は、洞窟の最奥にいるのですが、その間人の精神に干渉してきます。ただ、その精神干渉による〝絶望〟が功を奏して、魔剣グラムが思わぬ急成長を遂げ、その暴走する力で洞窟全体を破壊して、魔王を倒せるのです。
成長しすぎて、勇者様を取り込んで蝕み、次の魔王にしようとしようとします。そして、天空の城は崩壊してゆきます」
勇者はそれを聞いて、ギョッとした。
「え・・それはまずいな。
でも、何か止める方法があるんだろ?」
「・・・・・・はい。
浸食され斬る前に・・
その・・聖なる力を持つ、その・・ヒロインとのキスにより浸食が止まります。そしてーー魔王化が止まったことを確認したロイド様の魔法で転移して、皆地上に戻れます」
〝ヒロイン〟が何なのかわからないマユラをはじめとする勇者一行を見て、説明しようと口を開いたユウフェを遮るように、勇者はユウフェの手を握った。
「ようするに、俺とユウフェが一緒に居たら大丈夫ってことだ」
「え?いえ、私には魔の浄化などーー」
「大丈夫、横に居てくれるだけで良いから」
そのまま手を繋いで歩いていく二人を、マユラは暗い表情で見つめていた。
その姿を見たオルフェは、わざとマユラの気持ちに気付かないふりをして、「早く行こうぜ」と声をかける。
♢♢♢
洞窟の中は、暗がりで、ロイドが明かりをともしながら奥へと進んでゆく。
「案外、何の変哲もないね」
オルフェが欠伸をしながらいう。いつもは此処でマユラが窘めるのだが、先に歩く勇者とユウフェを見ているせいか、何の反応もない。
オルフェは頬をかいてロイドに言った。
「なぁ、最奥まで、後どんくらーー
言葉の途中で、洞窟は強く揺れる。
そして、全員の頭の中に声が響いた。
〝この中で、闇の感情をより多く持つ者よ、我が配下として、敵を駆逐しろ〟
「闇の感情?これか、勇者、おい平気か?」
「・・ぁあ、俺は何とも・・・・」
勇者が言い終わる前に、反応の追い付かない速度で暗い瘴気が鋭さを持ち、勇者を貫こうとしていたが、それまで〝彼女〟を気にしていたユウフェが気付いて間に割り込む。
そして、それはユウフェの胸を刺すように通り抜け、意識を失ったユウフェは崩れ落ちた。
「ユウフェ!」
勇者が悲痛な声を上げて叫ぶ。
瘴気ーー否。
瘴気と思っていたそれは、黒く染まった神聖なる力。
「マユラ?」
オルフェがそう呟いたのは、今勇者を攻撃したのが巫女であるマユラだったからだ。
「ゆう、・・私のほうが、好き・・違う。待って。
私感情のコントロールがーー出来ない」
そう言いながら涙するマユラは、、必死に抵抗している様にも見えた。
その時、床にユウフェを寝かせた勇者は、静かに立ち上がり、マユラへ構える。
「待て、勇者。マユラは操られているだけだ」
「ーー関係ない。俺に・・ユウフェに、攻撃をした。
勇者一行に参加することを自ら決めたんだ。こういう時はどうなるか、覚悟はできているだろう」
ロイドとオルフェは息を呑む。
勇者の顔の一部が、黒い魔力に浸食されている。
魔剣グラムが、未だかつてなく黒い剣気を帯びていた。
「ゆ・・勇者、だめだ、落ち着け。
魔剣に支配されたら、おまえ、魔王になっちまうだろ」
そう述べるが、勇者の魔の浸食は止まらずーー
ロイドはオルフェとマユラをシールドで囲うと、次の瞬間には洞窟が爆発したように周りの壁が吹き飛んでゆく。
「ロ・・ロイド、公女は・・」
「公女は大丈夫だ。勇者がこうなっている原因だからな」
「ど、どゆうこと?」
「勇者は公女だけは傷つけないということだよ」
地面の割れてゆく音が響き、ユウフェが言っていたように勇者の絶望で崩落が始まった。洞窟から外に投げ出されて正気を取り戻したマユラは、「ご、ごめんなさい、私」と頭を抱える。
「あとはーー」
ロイドは、勇者の方へと顔を向けた。
♢♢♢
勇者の魔王化が始まっていた時、ユウフェは目を覚ました。
「勇者、様?」
ユウフェが声をかけると、表情をなくして、黒く浸食の進む勇者が見えた。
天空の城が崩落して、地面がないことに気が付いたユウフェは、自分が勇者に姫抱きにされていることに気付く。
(た・・大変。マユラ様に・・っ)
ユウフェが勇者の肩越しにマユラの姿を探そうとした時、胸元にあった聖剣が光る。
〝兄さんを、頼んだよ〟
頭の中に響いた声に、手を額に当てた。聖剣が、マユラの瘴気から守ってくれたのだと気が付く。
(もし、光の力が聖剣のものでも良いならば・・)
どうか、お願いです。魔王にならないでください、勇者様ーー
ユウフェは、勇者の肩に手をかけて、頬に手を添えると。
そっと、唇に口づけをする。
その瞬間ーー胸元の聖剣が光を増した。
胸元にあった十字架は、勇者の中に取り込まれてゆく。
「勇者様」
光に包まれると、魔王化の黒ずみは止まって、勇者はユウフェをぎゅうっと抱きしめたあと、ユウフェの肩に頭を預けるように気絶して、力が抜ける。
二人は地上に落下しているが、魔法使いが杖をこちらに向けているのが見えてほっと胸を撫でおろす。
そして、ロイドが転移魔法を行使して、勇者一行は勇者の邸宅に転移を成功させた。
♢♢♢
皆を転移させたロイドは、辺りを見渡して、頭を抱えた。
「公女がーーいない」
勿論、今回もユウフェをともに連れてきた。
王都も危険だと理解した勇者は、ならば近くにいた方が守りやすいからと、それについては特に物申す気はないようだ。
「それで、今回はどのようにして倒すの?」
ロイドがユウフェに問いかける。
「えっと・・今回は・・」
ちらりと、マユラと、勇者をそれぞれに目をやり言い淀むが、ポツリポツリと語りだす。
「・・南の魔王は、洞窟の最奥にいるのですが、その間人の精神に干渉してきます。ただ、その精神干渉による〝絶望〟が功を奏して、魔剣グラムが思わぬ急成長を遂げ、その暴走する力で洞窟全体を破壊して、魔王を倒せるのです。
成長しすぎて、勇者様を取り込んで蝕み、次の魔王にしようとしようとします。そして、天空の城は崩壊してゆきます」
勇者はそれを聞いて、ギョッとした。
「え・・それはまずいな。
でも、何か止める方法があるんだろ?」
「・・・・・・はい。
浸食され斬る前に・・
その・・聖なる力を持つ、その・・ヒロインとのキスにより浸食が止まります。そしてーー魔王化が止まったことを確認したロイド様の魔法で転移して、皆地上に戻れます」
〝ヒロイン〟が何なのかわからないマユラをはじめとする勇者一行を見て、説明しようと口を開いたユウフェを遮るように、勇者はユウフェの手を握った。
「ようするに、俺とユウフェが一緒に居たら大丈夫ってことだ」
「え?いえ、私には魔の浄化などーー」
「大丈夫、横に居てくれるだけで良いから」
そのまま手を繋いで歩いていく二人を、マユラは暗い表情で見つめていた。
その姿を見たオルフェは、わざとマユラの気持ちに気付かないふりをして、「早く行こうぜ」と声をかける。
♢♢♢
洞窟の中は、暗がりで、ロイドが明かりをともしながら奥へと進んでゆく。
「案外、何の変哲もないね」
オルフェが欠伸をしながらいう。いつもは此処でマユラが窘めるのだが、先に歩く勇者とユウフェを見ているせいか、何の反応もない。
オルフェは頬をかいてロイドに言った。
「なぁ、最奥まで、後どんくらーー
言葉の途中で、洞窟は強く揺れる。
そして、全員の頭の中に声が響いた。
〝この中で、闇の感情をより多く持つ者よ、我が配下として、敵を駆逐しろ〟
「闇の感情?これか、勇者、おい平気か?」
「・・ぁあ、俺は何とも・・・・」
勇者が言い終わる前に、反応の追い付かない速度で暗い瘴気が鋭さを持ち、勇者を貫こうとしていたが、それまで〝彼女〟を気にしていたユウフェが気付いて間に割り込む。
そして、それはユウフェの胸を刺すように通り抜け、意識を失ったユウフェは崩れ落ちた。
「ユウフェ!」
勇者が悲痛な声を上げて叫ぶ。
瘴気ーー否。
瘴気と思っていたそれは、黒く染まった神聖なる力。
「マユラ?」
オルフェがそう呟いたのは、今勇者を攻撃したのが巫女であるマユラだったからだ。
「ゆう、・・私のほうが、好き・・違う。待って。
私感情のコントロールがーー出来ない」
そう言いながら涙するマユラは、、必死に抵抗している様にも見えた。
その時、床にユウフェを寝かせた勇者は、静かに立ち上がり、マユラへ構える。
「待て、勇者。マユラは操られているだけだ」
「ーー関係ない。俺に・・ユウフェに、攻撃をした。
勇者一行に参加することを自ら決めたんだ。こういう時はどうなるか、覚悟はできているだろう」
ロイドとオルフェは息を呑む。
勇者の顔の一部が、黒い魔力に浸食されている。
魔剣グラムが、未だかつてなく黒い剣気を帯びていた。
「ゆ・・勇者、だめだ、落ち着け。
魔剣に支配されたら、おまえ、魔王になっちまうだろ」
そう述べるが、勇者の魔の浸食は止まらずーー
ロイドはオルフェとマユラをシールドで囲うと、次の瞬間には洞窟が爆発したように周りの壁が吹き飛んでゆく。
「ロ・・ロイド、公女は・・」
「公女は大丈夫だ。勇者がこうなっている原因だからな」
「ど、どゆうこと?」
「勇者は公女だけは傷つけないということだよ」
地面の割れてゆく音が響き、ユウフェが言っていたように勇者の絶望で崩落が始まった。洞窟から外に投げ出されて正気を取り戻したマユラは、「ご、ごめんなさい、私」と頭を抱える。
「あとはーー」
ロイドは、勇者の方へと顔を向けた。
♢♢♢
勇者の魔王化が始まっていた時、ユウフェは目を覚ました。
「勇者、様?」
ユウフェが声をかけると、表情をなくして、黒く浸食の進む勇者が見えた。
天空の城が崩落して、地面がないことに気が付いたユウフェは、自分が勇者に姫抱きにされていることに気付く。
(た・・大変。マユラ様に・・っ)
ユウフェが勇者の肩越しにマユラの姿を探そうとした時、胸元にあった聖剣が光る。
〝兄さんを、頼んだよ〟
頭の中に響いた声に、手を額に当てた。聖剣が、マユラの瘴気から守ってくれたのだと気が付く。
(もし、光の力が聖剣のものでも良いならば・・)
どうか、お願いです。魔王にならないでください、勇者様ーー
ユウフェは、勇者の肩に手をかけて、頬に手を添えると。
そっと、唇に口づけをする。
その瞬間ーー胸元の聖剣が光を増した。
胸元にあった十字架は、勇者の中に取り込まれてゆく。
「勇者様」
光に包まれると、魔王化の黒ずみは止まって、勇者はユウフェをぎゅうっと抱きしめたあと、ユウフェの肩に頭を預けるように気絶して、力が抜ける。
二人は地上に落下しているが、魔法使いが杖をこちらに向けているのが見えてほっと胸を撫でおろす。
そして、ロイドが転移魔法を行使して、勇者一行は勇者の邸宅に転移を成功させた。
♢♢♢
皆を転移させたロイドは、辺りを見渡して、頭を抱えた。
「公女がーーいない」
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