【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式

文字の大きさ
37 / 38

結婚式

しおりを挟む

 花嫁衣装に身を包んで、魔王城に備え付けられた祭壇の間に足を踏み入れる。


「ぁあ。私の花嫁はとても美しい。
長い時の中で、君を待っていたんだ」

 白い手であげられたヴェールの下には、無表情で佇むユウフェがいた。

「・・・・」
「さぁ、誓いの口付けを交わせば、婚姻が成立して、君と私は永遠の時を生きられる」

(永遠の、時・・・・)


 勇者との思い出は、永遠の時の中で、色あせることなく、この心に居座り続けるのだろうか。

 そんな考えが過ったとき、ユウフェの頬に、涙がつたいおちた。

 北の魔王は構うことなく、唇に口付けをしようと、涙でぬれる頬の上から手を添えて、顔を近づけた。

 刹那ーー一陣の風が吹き荒れて、花嫁が目の前から消えた。

 
 ユウフェは、廊下を走りながら自分を姫抱きにしている人物に驚いて声を上げる。

「勇者様!どうやってここへ・・」

「・・ロイドに、通信から逆探知してもらった」

 
 もう二度と会えないと思っていた勇者に会えて、表情が緩んだ時、〝また〟周りの気配が止まり、勇者の歩みも止まる。

 〝北の魔王〟の時間停止だ。

「困るんだよ。邪魔されるとさ。
面倒なことするなら、殺すよ?
って、聞こえてないか」

 ユウフェは、勇者の肩にしがみつき、上空で見下ろす〝北の魔王〟に懇願した。

「・・・、待ってください!
私ちゃんと、お嫁になりますから、勇者様はーー」

 言葉を途切れさせたのは、その唇に、勇者の指をあてがわれたからだった。

 時間停止で動けないはずの勇者が、優しく笑みを向けた後、ユウフェを地面におろして、魔王を見上げる。

「あれ?何故動いてるんだ?」

「・・答える義務はない」

 勇者が剣を抜いた時、ユウフェはその剣がさらに進化を遂げていることに気が付く。以前の、数倍に・・そこではっとした。

(これはーー本来壊したはずの聖剣を、取り込んだからだわ。
それに、勇者様は先日魔王化をしかけてレベルが跳ね上がった。相乗効果があったんだわ)


ユウフェの腰に手を添えて、勇者は剣を一振り薙ぎ払う。

すると、一陣の風は魔王城を切り伏せて、倒壊させていく。


「なるほど、これは、楽しむどころか、面倒くさい勇者を誕生させてしまったようだね・・」

「北の魔王は人に被害をもたらしたことはないと聞いたからこの程度で済ませているんだよ。

でもーーユウフェをどうしても連れていくなら、続きもするけど」

「・・・・・」


 初めて、〝北の魔王〟が片眉をピクリと動かした。
 次の瞬間には、二人の前から姿を消していた。






♢♢♢




 それから半年の時が流れーー

 ユウフェ・ヴィクレシア公爵令嬢と勇者であるレイヴン・ボランハルトの結婚式が行われたのは、また別のお話であるーー











fin
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

処理中です...