【完結】年下王子のお嫁様 

マロン株式

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お嫁様は口付けを受け入れる1



 

 マーガレットは現在、王宮の一角にある人気もなく、1番高い場所に位置するバルコニーにいた。

 そして 明日の華祭り前夜祭への思いを馳せる。
 

 華祭り前夜祭は王族による儀式が行われる。翌日である華祭り当日は皆が屋台やダンス等で心置きなく祭りの雰囲気を楽しむ日だ。

 まず前夜祭当日、王が演説して華祭りの始まりを告げる。城下で歓声をあげる民達に向かい、王族は手を振って答える。

 この後の役割と言えば、王子は他国からきた王侯貴族や、国内の有力貴族達に挨拶をしに行く。

 私も途中までは一緒に行くのだけれど、途中からは恒例の華園廻りをしなければならない。

 華園廻りとは、その名の通り王城の周りにある数多の華園を廻るのだ。

 それを本来王妃が華園に咲く花を一本ずつ手折って籠に入れて廻り、最後に今年の代表華が咲く華園を廻り終えると、次は清らかな聖水の流れるセルス川に行く。華園はこのセルス川に沿って作られているので何処の華園が最後でも直ぐにつく。

 平和の祈りを込めながら、籠に入れた花々を川へ流すのだ。

 そして川の周囲には抽選で当たった民がいて、それぞれ持ち寄った代表華である花を今年1年素晴らしい年であるようにと願いをのせて、今度は民が川に花を流す。
 儀式が完了してから、その報告が王宮に届いてすぐに上がる花火もまた、大輪の華のようで、王宮の周辺には多くの民が見物にくる。


 そして王妃不在の現在は、マーガレットが代理として華園を廻事になっている。



(今年の代表華はペチュニアか……)



 この儀式は亡くなられた王妃様が決めた手順で行われる。

 まず、道中は洋燈が夜道を照らす中、一本道を1人で歩く事になる。

 警護面の異論については、王妃であり神聖な力を持っていた亡き王妃がヒロイン力を行使しながら「神聖な儀式ですから。心配いりません」と、説き伏せたそうだ。

 実際今までは何ともなかった。故に儀式中は神の御加護があると言われている。

 各華園は荒らされないよう儀式中は特に、前夜祭での出入りは基本的に許されていない。

 それでも警護面を強化したかった陛下の願いを亡き王妃が承諾した事により、護衛騎士がそれぞれの華園につき1人だけ存在する事を許されている。

 これは、爵位を持つ騎士がボランティアも同然でやってくれているが、王家に信頼されている証拠として名誉な事だから皆やりたがる。



 そこで先日の辺境伯様の言葉を思い出した。


『我人生において、この上なき誉となりましょう。アネモネの咲く華園にてお待ちしております。』


(辺境伯様はアネモネの華園の護衛騎士として参加されるのね…儀式の終わった後に待ってると言う意味よね。きっと。)


 儀式が終わった後、民達は終わったモードに入るけれど、王妃は元来た道をなぞりながら帰るのだ。その道中も1人だけになる。


 亡き王妃は、その1人になる時間を大切にしていた。
 好きな花々だけに囲まれて、王妃の義務から解放される安らぎの時間と言っていたと陛下が話してくれた事がある。

 陛下は付け加えてこう言った。
〝だから、帰り道はゆっくり鑑賞してきなさい〟と。私を労るように。

 儀式から帰ると再び賓客への挨拶回りの支度をしなければならない私に、少し休んでからおいでと言うわけだ。

 

 遠く高い所からでも分かる程、華祭りに向けて、民がその日の為懸命に華やかに飾り付けた街並みと、王城を囲う一部の華園が見え、それを眺めながら感傷に浸った。


 どこも、思い出の詰まった華園ばかりだ。王子が幼い頃は、ほぼ毎日のように何処かしらの華園に出掛けては、花冠を作ってやったり。手遊びをしたり、隠れんぼをしたり、花の蜜を吸ったりして遊んでいた。

(金髪碧眼の整った顔をした幼い王子に被せた花冠は、本当に似合っいて可愛かった…天使の輪みいだったわ。)


『マーガレット、この花、やっぱり君に1番似合うね。僕のお嫁さんはこの世で1番綺麗だ。』


 この季節になると、そう言って私の頭に一輪の花を飾ってくれた王子を思い出す。

 その花のもつ意味も知らない小さな子供がやった事。だけど私の中では大切で、それからその華園は一等特別で宝物みたいに思っていた。


 だから今まで儀式をおこなった帰りには、その花が咲き乱れる華園で、ゆっくりと花を鑑賞して過ごしていた。

 


『変えられたのは他者の心ではなく。



〝自分の気持ちだけ〟だった』
  



    先日のナーディアの言葉が、頭を離れなくて、マーガレットは静かに目を閉じた。




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