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僕だけのモノ
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失意のエボニーが教師に連れられて退場した後も、卒業祝賀パーティーは継続された。平民一人が退場しても何の差し障りも無いためだ。
今後エボニーの姿を学園で見ることはないだろう。彼女と実家の商会がどうなるのかを気にする者はここにはいない。
学園での出来事とはいえフロスティ公爵家をはじめウィスタリア侯爵、メイズ伯爵家が動かないのだ。
特別クラスの生徒もあらかじめキャナリィとクラレットから根回しがされていたし、王太子すら傍観者に徹していたのだ。
他の貴族家はエボニーの実家にも手出し無用、静観するしか無い。
「先ほどは、ありがとうございました」
キャナリィはシアンとダンスを踊りながら言った。
「何が?」
「クラレットに任せてくれたことですわ」
「ああ」
先ほどあったばかりの出来事なのに忘れていたと言わんばかりのシアンにキャナリィは微笑んだ。
「あの平民は許せないが、アレは兄さんの策略に巻き込まれただけだろう。クラレットにも利用されていた様だし・・・そもそも二人の婚約に傷をつけたら本末転倒だからな」
まぁそのおかげで私は家を継ぐことが出来、キャナを迎えることが出来るのだが──シアンはキャナリィにも聞こえない声でそうつぶやいた。
「そんなことより──何か言い忘れてない?」
なにか言いたげなシアンの視線にキャナリィはクスリと笑った。
「お帰りなさい。会いたかったわ──シアン様」
「キャナ、ただいま」
シアンはダンスをしながらキャナリィの手を取り口づける。
キャー! 立っているだけでも絵になる美男美女の久しぶりの邂逅に周囲の令嬢から黄色い歓声が上がった。
「ちょっと意外だったよ」
女生徒達の黄色い歓声がホールに響く頃、クラレットを中庭のベンチにエスコートしたジェードは開口一番そう言った。
「何のお話でしよう?」
いつもあまり感情が出ないクラレットが滅多に見せることのないキョトンとした表情に、ジェードはにっこり笑って言った。
「君は僕の能力にだけ興味があるのであって僕自身には興味がないと思っていたからね」
そう言われてクラレットは得心がいく。
「ああ、私はジェード様と将来の伴侶として過ごさなければならない以上、余計な揉め事は好まないだけですわ。
それをキャナ様まで巻き込んで・・・少しは反省してください」
クラレットはジェードを睨み付けたが、頭一つ分高いジェードを睨み付けてもかわいらしい上目使いにしかならないことを知るのはジェードだけである。
「いや、僕は思ったより君に好かれていたのかな?って話だよ」
──今回はやり過ぎたけど、長年の努力の甲斐があったかな。
両親も知らない、シアンだけにしか言っていない努力だけれど。
クスリと笑いながら、そしてとても嬉しそうにジェードはつぶやいた。
「はい?何のお話でしょう?」
今日は表情がよく変わるなぁと、いぶかしげな顔のクラレットをジェードは愛おしそうに見下ろした。
「僕は君のモノなんだろう?」
流石に二度も言われたら僕も意識してしまうよ──
周囲には誰もいないのだが、自分にしか聞こえないように耳元で発せられた声にクラレットは焦る。
「は!?──なっ!」
顔を真っ赤に染めてそんなことは言ってません!と必死になるクラレットを見てジェードは笑みを深めた。
これからも彼女の見せる表情はジェードだけのモノである。
----------
読んでいただいてありがとうございました(*^-^*)
今後エボニーの姿を学園で見ることはないだろう。彼女と実家の商会がどうなるのかを気にする者はここにはいない。
学園での出来事とはいえフロスティ公爵家をはじめウィスタリア侯爵、メイズ伯爵家が動かないのだ。
特別クラスの生徒もあらかじめキャナリィとクラレットから根回しがされていたし、王太子すら傍観者に徹していたのだ。
他の貴族家はエボニーの実家にも手出し無用、静観するしか無い。
「先ほどは、ありがとうございました」
キャナリィはシアンとダンスを踊りながら言った。
「何が?」
「クラレットに任せてくれたことですわ」
「ああ」
先ほどあったばかりの出来事なのに忘れていたと言わんばかりのシアンにキャナリィは微笑んだ。
「あの平民は許せないが、アレは兄さんの策略に巻き込まれただけだろう。クラレットにも利用されていた様だし・・・そもそも二人の婚約に傷をつけたら本末転倒だからな」
まぁそのおかげで私は家を継ぐことが出来、キャナを迎えることが出来るのだが──シアンはキャナリィにも聞こえない声でそうつぶやいた。
「そんなことより──何か言い忘れてない?」
なにか言いたげなシアンの視線にキャナリィはクスリと笑った。
「お帰りなさい。会いたかったわ──シアン様」
「キャナ、ただいま」
シアンはダンスをしながらキャナリィの手を取り口づける。
キャー! 立っているだけでも絵になる美男美女の久しぶりの邂逅に周囲の令嬢から黄色い歓声が上がった。
「ちょっと意外だったよ」
女生徒達の黄色い歓声がホールに響く頃、クラレットを中庭のベンチにエスコートしたジェードは開口一番そう言った。
「何のお話でしよう?」
いつもあまり感情が出ないクラレットが滅多に見せることのないキョトンとした表情に、ジェードはにっこり笑って言った。
「君は僕の能力にだけ興味があるのであって僕自身には興味がないと思っていたからね」
そう言われてクラレットは得心がいく。
「ああ、私はジェード様と将来の伴侶として過ごさなければならない以上、余計な揉め事は好まないだけですわ。
それをキャナ様まで巻き込んで・・・少しは反省してください」
クラレットはジェードを睨み付けたが、頭一つ分高いジェードを睨み付けてもかわいらしい上目使いにしかならないことを知るのはジェードだけである。
「いや、僕は思ったより君に好かれていたのかな?って話だよ」
──今回はやり過ぎたけど、長年の努力の甲斐があったかな。
両親も知らない、シアンだけにしか言っていない努力だけれど。
クスリと笑いながら、そしてとても嬉しそうにジェードはつぶやいた。
「はい?何のお話でしょう?」
今日は表情がよく変わるなぁと、いぶかしげな顔のクラレットをジェードは愛おしそうに見下ろした。
「僕は君のモノなんだろう?」
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周囲には誰もいないのだが、自分にしか聞こえないように耳元で発せられた声にクラレットは焦る。
「は!?──なっ!」
顔を真っ赤に染めてそんなことは言ってません!と必死になるクラレットを見てジェードは笑みを深めた。
これからも彼女の見せる表情はジェードだけのモノである。
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読んでいただいてありがとうございました(*^-^*)
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