32 / 41
新しい恋
1 新しい職場
オリーブのその後のお話です
全10話 12時と20時更新 予約投稿済みです。よろしくお願いいたします(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★★★
「メイズ伯爵令嬢、色々手配して頂きありがとうございました」
「いいえ。お礼ならキャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢にお願いします。私は頼まれただけですから」
学園生の時に住んでいたとはいえ王都は辺境より雑多な印象で、正直オリーブは不安でいっぱいだった。
しかし王都に着いた途端、このクラレット・メイズ伯爵令嬢が現れ、宿の手配に仕事先の手配と、あれよあれよと言う間に整えてくれたのだ。
「あぁ、でもキャナ様はブラッシュ辺境伯令嬢に頼まれただけなので礼は不要だと申しておりました」
世話になったのにこう言っては何だが、オリーブはこのメイズ伯爵令嬢のお堅いところが少々苦手だなと思っていた。
かなり年下のはずなのに、海千山千の古狸と対峙している気分だ。
ウィスタリア侯爵令嬢の話題になった時だけみせる表情の柔らかさがなければ、オリーブは緊張で満足に会話が出来なかったかもしれない。
これで将来この国一番の規模を誇る商会の跡取り娘と言うのだから分からない。あのエボニーも商会の娘だと言っていたが、この様に無表情で客商売が成り立つのだろうかと心配になる。
しかし、たとえ礼は不要だと言われても、そういうわけにはいかない。
これから住み込みで働くことになるオリーブは自由が利かないし、このクラレットもキャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢も学園の三年生であるため、会うことはほとんどないだろう。
レィディアンスにお礼の手紙を出す勇気はまだ持てないが、キャナリィには落ち着いたらすぐにお礼状をしたためようとオリーブは思った。
*--*--*
「ここが新しい私の職場・・・」
メイズ伯爵令嬢に手配してもらった馬車から降りたオリーブは、高い塀に囲まれた目の前の大きな建物を見上げ、思わず呟いた。
王国騎士宿舎──主に貴族出身の戦術や剣術などに長けた者が集う王国騎士団の、その中でもまだ若い独身の騎士が生活を共にしている宿舎である。
基本的に貴族の後継は騎士にはならない。その為、王国騎士団に所属する者は“貴族”と言っても二子や三子が占める。
彼らは継ぐ爵位は無いものの、高給取りで将来的に騎士爵を賜る可能性があるため独身の女性にそれなりに人気がある。
そんな彼らの生活の補助──とはいっても家事や洗濯は下働きがするため、騎士の利用する共用スペースの掃除や、お茶の提供が主な役割だ──をするために雇われる「侍女」という職業はかなり人気がある就職口だ。
しかし「王国」の名を冠するだけあって、宿舎の中とはいえ機密情報が全くないとは言えない。その為宿舎で働く者の中でも騎士と直接接触する職種の者は、皆身元の確かな貴族でなければならないと決められている。
もちろん働き手も貴族家の二子や三子が多く、良縁を求めて就職する者も少なくない。
休憩中なのだろうか、ちょうど騎士たちと飲み物やタオルを持つ令嬢らが語らっている姿が遠目に見えた。
「──細いわね」
それに若い。
エボニーに言われた「新しい恋」。
適齢期は過ぎようとしているが、オリーブだって未婚の令嬢だ。王都での就職口が王国騎士宿舎の侍女に決まったと聞き、少しも期待していなかったと言えば嘘になる。
しかし、辺境の騎士に比べ王都の騎士は──市井で流行っている小説の言葉を借りれば『細マッチョ』だ。筋肉隆々の男性を好んでいるわけではないが、オリーブは抱きしめられたら守られているのだという安心感を持てる程度には大きな身体の男性を好んでいる。
──そう、ちょうどヴェルトのような・・・。
そう思い、自嘲気味に笑う。
「こんにちは。新しく採用になった方ですか」
もう手が届かなくなってしまったヴェルトの幻影を振り切り、オリーブが宿舎に向かって歩き出そうとしたとき、後ろから声を掛けられた。
「え?」
振り返ると、そこには騎士服に身を包んだ少ね──いや、青年が満面の笑みを浮かべて姿勢よく立っていた。
オリーブよりは背は高いが、ヴェルトのように見上げるほどではない、辺境の男たちに比べると随分小柄な、端正な容姿含め、可愛いという言葉がぴったりな男だった。
とても笑顔を返せるような心境ではなかったが、これから長い時をここで過ごさなければならない。折角声を掛けてくれたこの青年に嫌な思いをさせてはならないと、オリーブは無理やり笑みを作った。
「はい、今日から侍女としてこちらでお世話になります」
「はは、お世話になるのは俺たちの方ですよ。オレ、シトロンって言います。あなたのお名前をお聞きしても?」
「──オリーブ・マルーンと申します」
「かわいい名前ですね?オリーブって、呼んでいいですか?」
突然そのようなことを言われ、オリーブは驚いてしまった。
(初対面なのに名前で呼ぼうとするなんて!)
一体どういうつもりなのか。その後も初対面だというのに、この青年はグイグイ話しかけてくるのだ。
長くヴェルトに片思いしており、あまり男性と接した経験の無いオリーブはこのあり得ない提案に目を白黒させた。
「だっ、駄目に決まっています!!初対面の女性になんてことを──!失礼しますっ!」
オリーブはそう答えるとトランクを抱え、建物へ逃げ込もうとした。
が──
「ここでお会いしたのも何かの縁。お手伝いしましょう」
気が付いた時にはオリーブの重いトランクは、既にシトロンの手の中だった。
*—*—*
目をギラギラさせ、まるで肉食獣──。
シトロンが宿舎勤めの侍女に持っている印象がそれだ。
騎士はその業務内容から婚期を逃す者が多い。
その為独身者の集まる宿舎に婚約者のいない貴族令嬢を侍女として雇い入れるのは、騎士の婚姻率を上げるための苦肉の策だということは理解している。
そんな背景から、はじめから騎士に見初められることを目的としてやってくる令嬢がほとんどであるということも、分かってはいるのだ。
その日も自分たちの仕事を放置し、暇さえあればお目当ての騎士の訓練を見学している令嬢たちに辟易し、休憩時間になった途端に訓練場を離れたシトロンは、重そうなトランクを抱えて宿舎に向かう令嬢を見つけた。
小柄で華奢な彼女は、どこか心細そうな瞳を伏せ、トボトボと歩いていた。
これまでやって来た侍女志望の令嬢の誰とも違う。
そんな彼女がふと視線を休憩中の騎士とそれに集る侍女たちに移した。
(あぁ、彼女も婚約者探しの令嬢か・・・)
シトロンがそう思って立ち去ろうとした。
しかし彼女は何かを呟くと、諦めたような表情で再び宿舎に向かって歩き出したのだ。
これまで宿舎に侍女希望でやって来た令嬢とは何かが違う。
胸に湧き起こるのは淡い期待。
(彼女はこれまでオレが出会ってきた令嬢とは違うのかもしれない──)
だけどそんな想いとは裏腹に、「彼女だって騎士に声を掛けられれば媚びるような笑みを浮かべるのではないか」。そんな、落胆を恐れるが故の予防線を準備している自分もいる。
シトロンはそれをはっきりさせるために彼女に声を掛けることにした。
全10話 12時と20時更新 予約投稿済みです。よろしくお願いいたします(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★★★
「メイズ伯爵令嬢、色々手配して頂きありがとうございました」
「いいえ。お礼ならキャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢にお願いします。私は頼まれただけですから」
学園生の時に住んでいたとはいえ王都は辺境より雑多な印象で、正直オリーブは不安でいっぱいだった。
しかし王都に着いた途端、このクラレット・メイズ伯爵令嬢が現れ、宿の手配に仕事先の手配と、あれよあれよと言う間に整えてくれたのだ。
「あぁ、でもキャナ様はブラッシュ辺境伯令嬢に頼まれただけなので礼は不要だと申しておりました」
世話になったのにこう言っては何だが、オリーブはこのメイズ伯爵令嬢のお堅いところが少々苦手だなと思っていた。
かなり年下のはずなのに、海千山千の古狸と対峙している気分だ。
ウィスタリア侯爵令嬢の話題になった時だけみせる表情の柔らかさがなければ、オリーブは緊張で満足に会話が出来なかったかもしれない。
これで将来この国一番の規模を誇る商会の跡取り娘と言うのだから分からない。あのエボニーも商会の娘だと言っていたが、この様に無表情で客商売が成り立つのだろうかと心配になる。
しかし、たとえ礼は不要だと言われても、そういうわけにはいかない。
これから住み込みで働くことになるオリーブは自由が利かないし、このクラレットもキャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢も学園の三年生であるため、会うことはほとんどないだろう。
レィディアンスにお礼の手紙を出す勇気はまだ持てないが、キャナリィには落ち着いたらすぐにお礼状をしたためようとオリーブは思った。
*--*--*
「ここが新しい私の職場・・・」
メイズ伯爵令嬢に手配してもらった馬車から降りたオリーブは、高い塀に囲まれた目の前の大きな建物を見上げ、思わず呟いた。
王国騎士宿舎──主に貴族出身の戦術や剣術などに長けた者が集う王国騎士団の、その中でもまだ若い独身の騎士が生活を共にしている宿舎である。
基本的に貴族の後継は騎士にはならない。その為、王国騎士団に所属する者は“貴族”と言っても二子や三子が占める。
彼らは継ぐ爵位は無いものの、高給取りで将来的に騎士爵を賜る可能性があるため独身の女性にそれなりに人気がある。
そんな彼らの生活の補助──とはいっても家事や洗濯は下働きがするため、騎士の利用する共用スペースの掃除や、お茶の提供が主な役割だ──をするために雇われる「侍女」という職業はかなり人気がある就職口だ。
しかし「王国」の名を冠するだけあって、宿舎の中とはいえ機密情報が全くないとは言えない。その為宿舎で働く者の中でも騎士と直接接触する職種の者は、皆身元の確かな貴族でなければならないと決められている。
もちろん働き手も貴族家の二子や三子が多く、良縁を求めて就職する者も少なくない。
休憩中なのだろうか、ちょうど騎士たちと飲み物やタオルを持つ令嬢らが語らっている姿が遠目に見えた。
「──細いわね」
それに若い。
エボニーに言われた「新しい恋」。
適齢期は過ぎようとしているが、オリーブだって未婚の令嬢だ。王都での就職口が王国騎士宿舎の侍女に決まったと聞き、少しも期待していなかったと言えば嘘になる。
しかし、辺境の騎士に比べ王都の騎士は──市井で流行っている小説の言葉を借りれば『細マッチョ』だ。筋肉隆々の男性を好んでいるわけではないが、オリーブは抱きしめられたら守られているのだという安心感を持てる程度には大きな身体の男性を好んでいる。
──そう、ちょうどヴェルトのような・・・。
そう思い、自嘲気味に笑う。
「こんにちは。新しく採用になった方ですか」
もう手が届かなくなってしまったヴェルトの幻影を振り切り、オリーブが宿舎に向かって歩き出そうとしたとき、後ろから声を掛けられた。
「え?」
振り返ると、そこには騎士服に身を包んだ少ね──いや、青年が満面の笑みを浮かべて姿勢よく立っていた。
オリーブよりは背は高いが、ヴェルトのように見上げるほどではない、辺境の男たちに比べると随分小柄な、端正な容姿含め、可愛いという言葉がぴったりな男だった。
とても笑顔を返せるような心境ではなかったが、これから長い時をここで過ごさなければならない。折角声を掛けてくれたこの青年に嫌な思いをさせてはならないと、オリーブは無理やり笑みを作った。
「はい、今日から侍女としてこちらでお世話になります」
「はは、お世話になるのは俺たちの方ですよ。オレ、シトロンって言います。あなたのお名前をお聞きしても?」
「──オリーブ・マルーンと申します」
「かわいい名前ですね?オリーブって、呼んでいいですか?」
突然そのようなことを言われ、オリーブは驚いてしまった。
(初対面なのに名前で呼ぼうとするなんて!)
一体どういうつもりなのか。その後も初対面だというのに、この青年はグイグイ話しかけてくるのだ。
長くヴェルトに片思いしており、あまり男性と接した経験の無いオリーブはこのあり得ない提案に目を白黒させた。
「だっ、駄目に決まっています!!初対面の女性になんてことを──!失礼しますっ!」
オリーブはそう答えるとトランクを抱え、建物へ逃げ込もうとした。
が──
「ここでお会いしたのも何かの縁。お手伝いしましょう」
気が付いた時にはオリーブの重いトランクは、既にシトロンの手の中だった。
*—*—*
目をギラギラさせ、まるで肉食獣──。
シトロンが宿舎勤めの侍女に持っている印象がそれだ。
騎士はその業務内容から婚期を逃す者が多い。
その為独身者の集まる宿舎に婚約者のいない貴族令嬢を侍女として雇い入れるのは、騎士の婚姻率を上げるための苦肉の策だということは理解している。
そんな背景から、はじめから騎士に見初められることを目的としてやってくる令嬢がほとんどであるということも、分かってはいるのだ。
その日も自分たちの仕事を放置し、暇さえあればお目当ての騎士の訓練を見学している令嬢たちに辟易し、休憩時間になった途端に訓練場を離れたシトロンは、重そうなトランクを抱えて宿舎に向かう令嬢を見つけた。
小柄で華奢な彼女は、どこか心細そうな瞳を伏せ、トボトボと歩いていた。
これまでやって来た侍女志望の令嬢の誰とも違う。
そんな彼女がふと視線を休憩中の騎士とそれに集る侍女たちに移した。
(あぁ、彼女も婚約者探しの令嬢か・・・)
シトロンがそう思って立ち去ろうとした。
しかし彼女は何かを呟くと、諦めたような表情で再び宿舎に向かって歩き出したのだ。
これまで宿舎に侍女希望でやって来た令嬢とは何かが違う。
胸に湧き起こるのは淡い期待。
(彼女はこれまでオレが出会ってきた令嬢とは違うのかもしれない──)
だけどそんな想いとは裏腹に、「彼女だって騎士に声を掛けられれば媚びるような笑みを浮かべるのではないか」。そんな、落胆を恐れるが故の予防線を準備している自分もいる。
シトロンはそれをはっきりさせるために彼女に声を掛けることにした。
あなたにおすすめの小説
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版
まほりろ
恋愛
公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。
公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。
アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。
腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。
本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。
学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。
そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。
実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。
アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。
神に去られた国は徐々に荒廃していき……。
一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。
「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」
・人外×人間、竜×人間。
・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。
・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。
「Copyright(C)2025-まほりろ」
※タイトル変更しました(2025/05/06)
✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」
✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」
◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」
・2025年5月16日HOTランキング2位!
ありがとうございます!
※表紙イラストは猫様からお借りしています。
「愛があれば十分だ」と私を捨てた婚約者へ――では、その婚約破棄の条件から確認いたしましょう
師走
恋愛
伯爵令嬢リディア・エーヴェルは、貴族たちの婚約や離縁、持参金や相続に関わる条件調整を陰でまとめてきた実務家だった。
だがある夜会で、婚約者である王太子側近ユリウス・グランツから「君は条件ばかりで冷たい。愛があれば契約などいらない」と一方的に婚約破棄されてしまう。
静かに婚約破棄を受理したリディアは、その場で持参金返還、贈与品、名誉回復の文言など必要事項の確認を始めるが、誰もその意味を理解しない。
けれど彼女が婚約から外れた直後から、王都では縁談、婚約、離縁の調整が次々と滞り始める。今まで多くの案件を陰でまとめていたのは、ほかでもないリディアだったのだ。
そんな中、法務局の裁定官補佐セオドア・ヴァレントから、王女ヘレナの婚姻条件を見直してほしいと依頼が舞い込む。
北方大公家との政略結婚。けれど提示された条件は、婚姻ではなく人質の引き渡しに等しいものだった。
「条件は愛の代わりではありません。ですが、愛が壊れたときに人を守ることはできます」
傷つきながらも再び交渉の場に立つリディアは、王女の未来を守るため、そして自分自身の人生を取り戻すため、契約と誠意を武器に王都最大の婚姻交渉へ挑む。
一方、自分を支えていたものの大きさに気づいた元婚約者は、今更になって復縁を望み始めるが――。
小説家になろう様でも掲載中
婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります
たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。
リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。
「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。
リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。
元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。