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第3章
27 誓い。(最終話)
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大聖堂でのお披露目の後、レックスとフィオレは王城の中庭のサクラの木の前に立っていた。
その場にいるのは国王と宰相、フィオレの父親であるグルーク公爵という、王家の秘匿事項を知る者だけである。
フィオレはひとりサクラの木の前に進み出ると、胸の前で手を組み神に祈りを捧げる様に跪いた。
すると天から国全体に光が降り注ぎ、次々とサクラの木から花芽が出てきたのだ。そのまま時間を早めるかのように花芽が膨らむと次々にピンク色の可愛らしい花が咲き乱れた。
王太子の婚姻でお祭り騒ぎだった国民の誰もが言葉を発せずその光景に見入っていた。
100年前、桜の枝の植樹の際にサクラ王妃殿下が使った魔法がこれだった。
使い手が、国を守る立場である王族となった事により使うことが出来るようになる神聖魔法『豊穣』。
サクラだけではない。この国に在るすべての生きとし生けるものが健やかに過ごせるように。
効果は100年以上。
国にもたらす影響が大きく、一生に一度しか使えないという。
その力を持った令嬢が命を脅かされないため、また他国から狙われないため、国王にのみ口伝で伝えられる国王と今回に限り一部の者にしか伝えられていない秘匿事項であった。
王太子の婚姻という慶事があったその日、再び国民の前に姿を表したピンク色の花弁の下で、国民のお祭り騒ぎは一週間続いたのだという。
今回のサクラの木の変化はサクラ・センエンティ王妃殿下が施した『豊穣』の神聖魔法の効果が切れたことによるものだった。フィオレが生まれたことにより、いずれサクラの木が休眠期に入ることは分かっていたのだ。
サクラの木には王族になった『豊穣』の神聖魔法の使い手にしか影響を及ぼすことができない。
そのことを知らない元第二王子派の面々は数ヵ月ぶりに咲き乱れたサクラの花を見上げ、安堵の涙を流したという。
国王のあの落ち着きようにも何があろうと王太子は変えないという頑なさも全てこの事が分かっていたに違いない。
家臣たちは改めて王族への忠誠を誓った。
なぜフィオレが『豊穣』の神聖魔法の使い手だと分かっていたのか──それについては王家の秘匿事項であるため、ここに記すことは控えておく。
我が子かわいさに第二王子派に加担し、次期王太子妃であるフィオレに危害を加えようとしたフォッセン公爵は隠居となり、プレッサの兄が新たな当主となった。
これは150年続く公爵家を潰す訳には行かないという政治的な理由が大きい。その結果、フォッセン公爵家は中立派から第一王子派となり、レックスの即位は確実なものとなった。
プレッサは実際に犯罪を起こしたわけではなく、動機や口にした内容も過去生という立証し難いものだったため、表だっての罰は与えられないことになった。
しかし、その美しさと過去生の記憶の中にある「他の世界の知識」──特にゲームという遊具で得たという魔法に関する知識が、ジャザ・フォレストの琴線に触れてしまった。
「どうせ嫁入り先もないんだろう?君は僕の隣に立っても見劣りしないからね。僕がその知識と引き換えに面倒を見てあげるよ。
なに、心配は要らないさ。僕は次男だけど跡継ぎのいない親戚の家に養子に入って侯爵になる予定なんだ。王太子の側近でもあるし将来は安泰だよ」
有無を言わさない、なんとも色気のないプロポーズであった。
カイエはレックスとフィオレが結婚し、更にその日に二人を祝うかのように花をつけたサクラを見て、やっと諦めがついたらしい。
そんなカイエをそばで見守るフリンツは、今必死に彼女を口説いている最中なのだという──。
学園の卒業式が終わり、卒業生と在校生がそれぞれ別れの時を過ごしていた。
生徒会の仕事は既に次代に引き継いでいる。
前庭には卒業式を終えた元生徒会役員がおり、その周囲にはその姿を至近距離で目にすることのできる最後のチャンスをものにしようとする生徒たちで溢れかえっていた。
特に王太子殿下は今後、公務以外で人前に出ることなど無いだろうからこの現状も仕方がないのかもしれない。
魔法無しで未知の力に抗う──もう終わったとはいえ、なかなかハードな一年だったなとレックスは思う。
レックスを試していたらしい世界も自分を認めてくれたと言うことか・・・そんなことを考えながらサクラの花を見上げていた。
未知の力も消え、めでたしめでたしと言いたいところではあったが、ただひとつ、レックス以外──フィオレにも分からないことがあった。
「レックス様。なぜわざわざ学生結婚にこだわっておられましたの?
私だって、一日も早くレックス様と──とは思っておりましたが、一週間くらいなら我慢できましてよ?」
満足そうにサクラを見上げるレックスの隣に立ち、フィオレが疑問に思っていたことを口にした。
その声を聞き、レックスがサクラを見ていた視線をフィオレに移す。すると、小首をかしげるという、珍しくも可愛らし仕草のフィオレがレックスを見上げていた。
「サクラの花は入学式から私たちを見守ってくれていたし、フィオレの一番好きな花でもあるからね」
微笑みながらフィオレを眩しそうに見てレックスは言った。
「卒業式にそのサクラの花が無いなんて、そんな淋しい思いを私がフィオレにさせるわけがないだろう」
まさか、自分のために──フィオレはそれを聞き、頬を紅潮させ、とても嬉しそうに微笑んだ。
レックスがフィオレに手を差し出し、その手を頬を染めたフィオレがとる。
周囲を囲む在校生がその光景にほうと、ため息をつく。
神聖魔法は使えないから私の声が神に届くことはないだろう。だから──
「私はフィオレと共に歩み、国と民を守ると、君とサクラの木に誓おう」
その時一陣の風が吹き、二人の周囲にピンクの花弁を舞い上げた。
これからの二人を祝福するように──
(おしまい)
----------
最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^-^)
その場にいるのは国王と宰相、フィオレの父親であるグルーク公爵という、王家の秘匿事項を知る者だけである。
フィオレはひとりサクラの木の前に進み出ると、胸の前で手を組み神に祈りを捧げる様に跪いた。
すると天から国全体に光が降り注ぎ、次々とサクラの木から花芽が出てきたのだ。そのまま時間を早めるかのように花芽が膨らむと次々にピンク色の可愛らしい花が咲き乱れた。
王太子の婚姻でお祭り騒ぎだった国民の誰もが言葉を発せずその光景に見入っていた。
100年前、桜の枝の植樹の際にサクラ王妃殿下が使った魔法がこれだった。
使い手が、国を守る立場である王族となった事により使うことが出来るようになる神聖魔法『豊穣』。
サクラだけではない。この国に在るすべての生きとし生けるものが健やかに過ごせるように。
効果は100年以上。
国にもたらす影響が大きく、一生に一度しか使えないという。
その力を持った令嬢が命を脅かされないため、また他国から狙われないため、国王にのみ口伝で伝えられる国王と今回に限り一部の者にしか伝えられていない秘匿事項であった。
王太子の婚姻という慶事があったその日、再び国民の前に姿を表したピンク色の花弁の下で、国民のお祭り騒ぎは一週間続いたのだという。
今回のサクラの木の変化はサクラ・センエンティ王妃殿下が施した『豊穣』の神聖魔法の効果が切れたことによるものだった。フィオレが生まれたことにより、いずれサクラの木が休眠期に入ることは分かっていたのだ。
サクラの木には王族になった『豊穣』の神聖魔法の使い手にしか影響を及ぼすことができない。
そのことを知らない元第二王子派の面々は数ヵ月ぶりに咲き乱れたサクラの花を見上げ、安堵の涙を流したという。
国王のあの落ち着きようにも何があろうと王太子は変えないという頑なさも全てこの事が分かっていたに違いない。
家臣たちは改めて王族への忠誠を誓った。
なぜフィオレが『豊穣』の神聖魔法の使い手だと分かっていたのか──それについては王家の秘匿事項であるため、ここに記すことは控えておく。
我が子かわいさに第二王子派に加担し、次期王太子妃であるフィオレに危害を加えようとしたフォッセン公爵は隠居となり、プレッサの兄が新たな当主となった。
これは150年続く公爵家を潰す訳には行かないという政治的な理由が大きい。その結果、フォッセン公爵家は中立派から第一王子派となり、レックスの即位は確実なものとなった。
プレッサは実際に犯罪を起こしたわけではなく、動機や口にした内容も過去生という立証し難いものだったため、表だっての罰は与えられないことになった。
しかし、その美しさと過去生の記憶の中にある「他の世界の知識」──特にゲームという遊具で得たという魔法に関する知識が、ジャザ・フォレストの琴線に触れてしまった。
「どうせ嫁入り先もないんだろう?君は僕の隣に立っても見劣りしないからね。僕がその知識と引き換えに面倒を見てあげるよ。
なに、心配は要らないさ。僕は次男だけど跡継ぎのいない親戚の家に養子に入って侯爵になる予定なんだ。王太子の側近でもあるし将来は安泰だよ」
有無を言わさない、なんとも色気のないプロポーズであった。
カイエはレックスとフィオレが結婚し、更にその日に二人を祝うかのように花をつけたサクラを見て、やっと諦めがついたらしい。
そんなカイエをそばで見守るフリンツは、今必死に彼女を口説いている最中なのだという──。
学園の卒業式が終わり、卒業生と在校生がそれぞれ別れの時を過ごしていた。
生徒会の仕事は既に次代に引き継いでいる。
前庭には卒業式を終えた元生徒会役員がおり、その周囲にはその姿を至近距離で目にすることのできる最後のチャンスをものにしようとする生徒たちで溢れかえっていた。
特に王太子殿下は今後、公務以外で人前に出ることなど無いだろうからこの現状も仕方がないのかもしれない。
魔法無しで未知の力に抗う──もう終わったとはいえ、なかなかハードな一年だったなとレックスは思う。
レックスを試していたらしい世界も自分を認めてくれたと言うことか・・・そんなことを考えながらサクラの花を見上げていた。
未知の力も消え、めでたしめでたしと言いたいところではあったが、ただひとつ、レックス以外──フィオレにも分からないことがあった。
「レックス様。なぜわざわざ学生結婚にこだわっておられましたの?
私だって、一日も早くレックス様と──とは思っておりましたが、一週間くらいなら我慢できましてよ?」
満足そうにサクラを見上げるレックスの隣に立ち、フィオレが疑問に思っていたことを口にした。
その声を聞き、レックスがサクラを見ていた視線をフィオレに移す。すると、小首をかしげるという、珍しくも可愛らし仕草のフィオレがレックスを見上げていた。
「サクラの花は入学式から私たちを見守ってくれていたし、フィオレの一番好きな花でもあるからね」
微笑みながらフィオレを眩しそうに見てレックスは言った。
「卒業式にそのサクラの花が無いなんて、そんな淋しい思いを私がフィオレにさせるわけがないだろう」
まさか、自分のために──フィオレはそれを聞き、頬を紅潮させ、とても嬉しそうに微笑んだ。
レックスがフィオレに手を差し出し、その手を頬を染めたフィオレがとる。
周囲を囲む在校生がその光景にほうと、ため息をつく。
神聖魔法は使えないから私の声が神に届くことはないだろう。だから──
「私はフィオレと共に歩み、国と民を守ると、君とサクラの木に誓おう」
その時一陣の風が吹き、二人の周囲にピンクの花弁を舞い上げた。
これからの二人を祝福するように──
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^-^)
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完結ありがとうございました。
フィオレ、やればできる子!
それとプレッサやカイエに大きな「ざまぁ」なくてよかったです。
おばちゃんなので、子どもに取り返しつかない罰が与えられるのってフィクションでも辛い年頃なので。
華々しい活躍の陰には地道な作業してる人たちがいる、というのは本当にそうで、上に立つ人間がそれをわかってるのはいいこと。
レックスは試練に打ち勝って、タイトルは見事に回収されたんだと思いました。
他の作品も読みたいので、作者様でお気に入り登録しましたー。
最後までお付き合いくださりありがとうございます(*´▽`人)アリガトウ
タイトルは気になっていたのでそういって頂けるとひと安心です。
私も過度なざまぁは苦手なので、その点はとれも安心して楽しんでいただけるかと思います(笑)(初期のは書き直す予定です)
今日から新しいお話も投稿しはじめたので、よろしければまたお付き合いお願いします(♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾←こんなところで宣伝σ( ̄∇ ̄; )
このタイトル、とてもいいと思います。
よかったです!ありがとうございます(*´▽`人)アリガトウ
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