小説とセックスにまつわる衝動

亜蘭圭

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7 今夜起きるかもしれないこと

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初めて会った男性と頻繁に一回だけのセックスをするようになったのは二十五歳の頃。
 おあずけをするのは「明日」があると思えるから。
 私は毎日「今日で人生が終わるかも」って思って生きている。誰だって数秒後に心臓がいきなり止まる可能性はゼロでなはい(現に私のいとこは二十代後半で突然死した)。
 今日死なないとしてもいつかは死ぬ。
 今日生まれた人も、いま九十歳の人も、いつかは必ず死ぬ。

 些細な事で気分がダウン気味の時に長時間ひとりでいると、死に対するなんとも言えない恐怖がみぞおちのあたりから湧いてくる。
 無理に眠ると、浅い眠りで、自殺した芸能人や、既に死んでいる親戚や知人が笑顔で登場する夢を見て真夜中に目が覚めて、みぞおちの違和感で呼吸が苦しくなる。
 その感覚を放っておくと、この恐怖から逃れる為には死ぬしかない、という考えに飛躍しかねない気がしてくる。

 毎日のように友達とつるんでいた学生時代はそんな気分になる事は稀で、たまにそうなりかけても、酒を飲んで好きなマンガを読んでいれば、たいてい大丈夫だったのだが、二十五歳になって(二十五で四捨五入すれば三十だ。私も本当の本当にいつかは三十歳になるんだ)と、明確に意識したら、酒とマンガはあまり効かなくなり、セックスに頼るようになった。
 愛なんかひとかけらもない、その場限りの、一回だけのセックスに没頭していると、高確率で〈例の瞬間〉が訪れる。
 快楽があるポイントを超えて、意識が半ば飛んで、何が何だか判らなくなっている瞬間、過去も未来も今も私も溶けて、宇宙と融合するような気分になって、死の恐怖も生の確かさも等価に散る。
 その瞬間は一秒のようにも、一時間のようにも感じられる。
 私はその瞬間を求めて、今夜も今宵限りの相手をマッチングアプリで探す。

 いろんな人とセックスするうちに、ワンナイトなら許容範囲はどんどんひろがってきた。
 どんな人が相手のワンナイトでも、終わった時に、少しだけ、せつなくなる。
 また会いたい、という気持ちとは違う。
 もうこれっきり会わないんだろうな、と思うから、その瞬間だけ、せつなくなり、このほんのひとときだけ、やさしく肩を抱いてあげたくなる。
 こんな生活は、いまの若さとこのルックスと身体だから、成立するのかも、とは思う。
 いつまでも、未来永劫にこんな生活は続けられない。
 どうやったら抜け出す事ができるのか?
 本当に死ぬほど本気で好きになれる人に出会うしかないのだろうか?
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