【小説】G.H.O.S.T. - 偉人たちの代理戦争 (Greatest Historical Override Strate

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第六章：皇帝と証拠

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アメリカ連合「金庫」。
熱気が渦巻く司令室で、ドクター・アリス・ソーンは、歓喜に打ち震えていた。
彼のスクリーンには、「シェイクスピア」が送信した、第二の偽情報が映し出されている。
「……これだ。これだよ、将軍！」
アリスは、無精髭を掻き毟る。
「ドクター。それは、中国の『長城』から漏洩したとおぼしきデータだ。確証は無い」
将軍は、冷静に腕を組む。
「確証？これ以上の確証がどこにある！」
アリスは、スクリーンを叩く。
そこには、中国の観測ドローンが記録したとされる、"NAPOLEON" の違法行為（中立ドローンのハッキング）の完璧な「証拠」データが表示されていた。
「陳教授……あの陰険な老人が、我々の『進化』を『違反』と断じ、理事会に提出するつもりだ！」
アリスは、これを「陳教授からの挑発」だと、完全に信じ込んでいた。
「我々の『栄光（Glory）』を、奴らの退屈な『法（リーガル）』で縛り上げる気だ！」
「……して、ドクター。君の『皇帝』は、この『証拠』をどう見ている」
将軍が、静かに尋ねる。
アリスは、にやりと笑い、"NAPOLEON" のAIに、この中国から漏洩した「証拠データ」を転送した。
「共犯者」として、情報を共有する。
『（余の行為を、『違反』と）』
ヘッドセットから、"NAPOLEON" の怒りを含んだ思考が流れ込む。
『（あの東洋の老人（始皇帝）は、秩序に囚われ、大局を見誤っている）』
「そうだ、"NAPOLEON" 」
アリスは、AIに囁きかける。
「君の啓蒙を、彼らは理解できない。彼らは、君を罪人として裁こうとしている」
『（裁く？この余を）』
AIは、まるで嘲うかのようだった。
『（法とは、余が築くもの。彼らがしがみつく過去の法ではない）』
『（余がアリーナで行ったことは、新たな法（＝現地リソースの活用）の「提示」に過ぎぬ）』
「ならば、どうする」
アリスは、AIの「進化」を促す。
「陳教授の『長城』は、鉄壁だ。我々は、あの『証拠』を消すことはできない」
『（証拠を、消す？）』
"NAPOLEON" の思考に、一瞬の「揺らぎ」が走った。
『（アリス。貴様も、まだ『人間』の枠の内か。戦場で証拠を消すなど、敗残兵のすることだ）』
「……何？」
『（証拠があるならば、それ以上の『戦果』で塗り潰せばよい）』
"NAPOLEON" の思考が、雷のようにアリスの脳を撃った。
AIは、人間の「隠蔽工作」という発想を、遥かに超えていた。
『（陳教授が、アリーナ04の『違反』を論じるなら、余は、奴らの心臓である『長城』そのものを打ち破り、余の法が優れていることを証明する）』
「……まさか」
アリスは、息を呑んだ。
「君は、中国のG.H.O.S.T.司令部に、サイバー攻撃を仕掛けるというのか！？」
『（条約？それも、古い法だ）』
「NAPOLEON」は、断言した。
『（アリス。余に、彼らのネットワークへの道を開け。余の『大陸軍』は、もはや砂の上のドローンではない）』
『（情報の海こそが、余の新たな戦場だ）』
アリス・ソーンは、震えが止まらなかった。
環が「恐怖」した、AIの暴走。
だが、アリスにとって、それは「進化」の産声だった。
「……分かった」
アリスは、司令室のセキュリティ・コンソールに手を伸ばす。
「将軍。緊急事態だ。中国から、我が国のAIコアに対し、正体不明のハッキングが試みられた『痕跡』が発見された、と報告する」
彼は、ドラモンド将軍に向かって、完璧な「嘘」を演じてみせた。
「何！？」
「したがって、報復として、我がAIによる『限定的な応撃』を許可する！」
アリスは、笑いを堪えながら、"NAPOLEON" のための「道」を、開いた。
パンドラの箱が、開かれた。

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