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鬼姫の始まり

二十七話

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ミコトは目覚めると最初に目に映ったのは、毛の塊だった。
ここは何処だ?と一瞬思ったが、次第に夢の中でのことを思い出すと、寝ぼけた目を擦りながら起き上がった。

「…また」

呟いて周囲を見回すミコト。
外はまだ薄暗い、水平線の向こうにはゆっくりと太陽が登り始めていた。
下の方から誰かが上がってくる音がする。

ミコトは毛の塊達をどかすと、ゆっくりと見晴らしのいい方にいった。

少しひんやりした風を感じながら下の方を見ると、港から主発する漁船や通りを行き交う人の姿が目にはいる、しかもちょうどいい具合に、綺麗な日の出が見える。

ミコトは下の方から誰かが上がってくる気配を感じとると素早く自分の荷物をもって、一気に外に飛び出した。

ミコトが灯台を飛び降りた、数秒あとになにか悲鳴が聞こえたが気にしないでおいた。
そのままミコトは海上に着地して、そのまま海の上を走っていった、そのさいミコトの髪の毛に一匹の毛の塊が何故か絡まっていたが。

ちなみに何人かの漁師達が目を見開いて海の上を走るミコトを目撃していた。

それとミコトがのっていた、バンバー号の見張り台で今日の見張り当番であろう船員がミコトに手をふっていたので、ミコトも【崩月】で振り替えしてみた。

ミコトは陸に足をつくと、そのまま倉庫の屋根の上に飛び上がり屋根づたいを、街の中央の方に向かっていった。

朝早くの時間帯だと言うのに、まだ少ないがだんだんとこの街の住民達が活気付いていくのがわかった。

ミコトは早めに寝たからかすでに眠気はなく、頭はスッキリしている。
ミコトが立ち並ぶ建物の屋根の上からゆっくりと太陽が上っていく様子を眺めていた。
ついでに言うとその時にやっと自分の髪の毛に絡まっている毛の塊に気が付いた。

「……寝てる。」
毛の塊は絡まっているのではなく、何故か自分から絡み付いているようになっていて、どうにも無理やりでは、はなれそうになかった。これでもそれなりにこの毛の塊を起こそうとしてみたが、全然起きないので諦めた。

薄暗かった街がだんだんと暖かな朝日に包まれていく。

しばらくすると辺りはすっかり明るくなり、外を出歩く人達も増えてきた。
それに少ないが露店や出店が出始めてきた。

「…そろそろかな?」

ミコトは屋根の上から飛びをりると何事もなかったかのように着地して歩き出した。

朝ごはんにはその辺の出店で美味しそうなのを見つけては食べるというのを繰り返していた。

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