冷酷非道な魔神様は、捌き屋に全てを捧げる

墨尽(ぼくじん)

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後編

第44話 渇望 ※※

 まるで壊れものを扱うような手つきで、エリトの肌の上を宗主の手が滑る。触れられた部分が熱を持ち、じわじわと全身に広がっていく。
 
 宗主の瞳は、エリトの瞳をずっと捉えていた。穏やかな瞳の奥に宿る情欲の色に、ぞくぞくと背中が焙られる。

 エリトの中心を、宗主は大きな手で包む。優しく上下に擦ると、にゅちゅりと淫猥な音が響く。
 先ほどから何度も達しているエリトは、いやいやと頭を振った。

「っ、も……いきたくない……」
「……どうしてだ? 何度でも達したらいい」

 宗主の手を掴んで、エリトは責めるような表情を浮かべる。
 先ほどからエリトの快楽ばかりを優先している宗主に、エリトは焦りを感じ始めた。

「……っそ、宗主」
「……なんだ」
「あんた、俺を抱かない気か?」

 エリトの言葉を聞いた宗主は、困ったように眉を下げる。そして宥める様にエリトの前髪を掬って、そこに唇を落とした。

「……少し……恐い」
「? こわい?」
「そう……恐い。……抱いたら消えてしまいそうで……恐い」

 そう呟く宗主の眉根は、苦し気に寄っている。エリトはその顔を両手で挟んで、双眸を覗き込んだ。

「……『ある人』は……いなくなってしまったのか?」
「……そうだ」

 それは静かな声で、そして悲痛な声だった。

 『俺が傍にいる』と言えたらどんなに良いか。そうエリトは思った。しかし穢れの子は短命で、エリトもあと何年生きられるか分からない。

(この人を……俺もきっと置いて行ってしまう……)

 胸が痛くて、その痛みを治めるように、エリトは宗主の唇に吸いついた。貪るように食むと、宗主も応えるように深く口付ける。

 唇と唇の隙間から「抱いて」という言葉を漏らすと、宗主がエリトの髪を梳く。労わるように撫でられて、また涙がぼろりと零れた。


 宗主がエリトの額に、労わるように唇を落とした。
 香油でぬるついた宗主の指が、エリトの後孔に沈んでいく。その圧迫感にエリトは息をつめるものの、痛みは一切ない。

 ずりずりと抜き差しされ、指がある一点を掠める。未知な感覚に、エリトの内腿が引くついた。

 最初から知っていたかのようにそこを責め立てられ、じわじわと快感が膨れ上がってくる。嬌声が漏れるのが恥ずかしくて、エリトは手で口を覆った。

 宗主は尚も責め立てながら、少しだけ首を傾げる。

「……どうして声を抑える?」
「っっ! ぁ、はずか、しい……、俺の声……へんだ……」
「変じゃない。綺麗だ。エリトの声は、いつも美しい」

 甘い言葉を紡いだと思えば、宗主はエリトの後孔へもう一本指を増やした。突然の刺激に、エリトはひゅっと息を飲み込む。
 二本の指で一点を擦られ、エリトは堪らず声を上げた。

「っ! ああぁ! やめ、だめっ」

 くぽくぽと音を鳴らし、宗主の長い指が出入りするのを感じる。強烈な快感が駆け巡り、エリトの背中が弓なりに反った。

「っ、! あぁああ!」

 達した、と確かに感じた。しかし出し過ぎたせいか、エリトの先端からはこぽりと蜜が零れるのみだった。しかし身体はびくびくと痙攣し、波が引いて行かない。
 息つく暇もないまま、三本目が体内へと潜り込んでくる。もう口を抑える余裕などなく、エリトはシーツを鷲掴んだ。

「だめっ! イって、る……! イってるからぁッ!」
「……達していい。可愛い声も、我慢するな」
「っ!? ッあぁああ!!」

 激しく責め立てられ、エリトはまた果てた。しかし未だ体内で、熱が燻ったままだ。エリトは腰をくねらせて、宗主を潤んだ目で見つめる。
 この快感をどうにかして欲しくて見つめた瞳は、宗主を煽るものでしかなかった。

 指がゆっくり引き抜かれ、替わりに熱いものが押し当てられた。その昂りが宗主のものであると認識した瞬間、エリトの喉がごくりと鳴る。

 欲しい、と本能が叫んでいる。抗えない感情が湧き出してくる。
 ほとんど無意識に、エリトは懇願していた。

「い、れて……! おれの、中に……」
「……エリト……、煽るな。……大事に、出来なくなる」

 ぐ、と中に入り込んできた昂りは、指とは比べ物にならないほど大きい。しかし圧迫感より、歓喜が勝るのをエリトは感じた。
 まるで前から知ってたかのように、それを受け入れる自分がいる。

 歓喜と共に快感も襲い、エリトは抗えない涙を流した。

「っつ……宗主……! もっと、おく……っあああぁ!」

 エリトの言葉に煽られた宗主は、奥まで腰を突き入れた。エリトの目尻に口付けながら、ゆっくりと腰を引く。
 ずるっと引き抜かれる快感にエリトの背筋が粟立ち、また突き入れられて嬌声を上げる。
 激しい律動に翻弄され、エリトはガタガタと身体を揺らした。

「ああっ! だめッ、あ、そう、しゅっ!」
「可愛いエリト。……俺の、エリト……」

 涙で濡れたエリトの目尻に、宗主は優しく唇を落とす。しかし一方では、エリトを責め立てるように腰を打ち付けた。
 与えられる相反した刺激に、思考も何もかもが掠め取られていく。

 先ほどから何度も達している筈なのに、高みから降りてこられない。身体も力が入らない。エリトはそれでも、宗主の顔を見つめ続けた。

「……そ、う、しゅ……っ、き……すき……!」
「……っ!」

 宗主が声を詰め、エリトの中で熱いものが弾けた。身体の中を染め上げるような熱く激しい流れに、エリトは身を打ち震わせる。

 荒い息を吐きながら、宗主はエリトの髪を労わるように撫でる。その心地よさと脱力感に、エリトの意識は薄れていった。
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