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10 百点満点の造形美
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エリトを助けてくれた魔族は、数日目を覚まさなかった。毎日顔を合わせているため、自分の寝台の下に魔族が寝ていることにも慣れてしまった。
エリトは眠っている魔族を見て、ほうと息を吐く。
(う~ん、不謹慎だけど……本当に、この魔族……かっこいいな……)
顔の右に走る裂傷があっても、文句がないほどの整い方だ。男らしさを発揮しながら、造形は繊細で美しい。
エリトは捌き屋として仕事をしているためか、筋肉のつき方や皮膚の張り方に造詣が深い。この顔は完璧なほど整っている。
(し、しかも、この、身体……)
清拭する度に見てしまう肉体も、驚くほど整っていた。どこをどう鍛えれば、こんなに完璧な肉体になるのか、エリトは不思議でならない。
(清拭する度にどきどきする僕って、本当に変態だ……)
男同士なのに、とエリトは思う。ガーランデでは、同性婚は禁止されていない。しかし少数派であることは否めない。
エリトも恋愛対象は異性だとずっと思っていた。同性に心を動かすなど、思ってもみなかったのだ。だからこそ、戸惑ってしまう。
(……とはいえ……あれから数日。流石に水分くらい摂らないと……)
倒れてから魔族は、何も口にしていない。水を含ませた綿を口に押し当てるものの、彼はなぜか吐き戻してしまうのだ。
水分を摂らないと衰弱していく一方だ。エリトは焦ったが、不思議と魔族の状態が悪化することは無かった。
(水分を摂ってないのに、唇だってこんなにぷるぷるで……)
エリトはそっと手を伸ばし、魔族の唇に触れた。柔らかくて程よい弾力がある唇を、ぷにぷにと押す。
エリトが夢中になって感触を楽しんでいると、自分を見つめる視線にはたと気付いた。
先ほどまで閉じていた魔族の瞳が開いている。彼は驚いたように目を見開き、エリトを凝視していた。
この場合、狼狽えるべきは唇に触れていたエリトだ。しかし魔族のあまりに驚く様に、エリトはつい吹き出した。
「はは、ごめんなさい。あまりに綺麗な唇だったから」
「……」
「……お水、飲めますか? あなたはずっと何も口にしてないんですよ?」
「……」
「……言葉、分かりますか? ああ、こないだ普通に話してたから分かりますよね! ああ、あの時は本当にありがとうございました! あなたがいなければ僕はきっと死んでたでしょうね……」
エリトが一気に捲し立てても、魔族は返事をする様子がない。それどころか、目も合わせてくれなかった。しかしその表情に、不思議と嫌悪感は浮かんでいない。
エリトは人の表情を読むのが得意だった。生物の身体を熟知しているお陰か、筋肉の繊細な動きも見逃さない。
魔族が目を逸らしているのを良いことに、エリトはその顔をまじまじと観察した。
(……なんて綺麗な瞳だろう)
魔族の瞳は、ほとんど金と言ってもいいほど美しい。
エリトは眠っている魔族を見て、ほうと息を吐く。
(う~ん、不謹慎だけど……本当に、この魔族……かっこいいな……)
顔の右に走る裂傷があっても、文句がないほどの整い方だ。男らしさを発揮しながら、造形は繊細で美しい。
エリトは捌き屋として仕事をしているためか、筋肉のつき方や皮膚の張り方に造詣が深い。この顔は完璧なほど整っている。
(し、しかも、この、身体……)
清拭する度に見てしまう肉体も、驚くほど整っていた。どこをどう鍛えれば、こんなに完璧な肉体になるのか、エリトは不思議でならない。
(清拭する度にどきどきする僕って、本当に変態だ……)
男同士なのに、とエリトは思う。ガーランデでは、同性婚は禁止されていない。しかし少数派であることは否めない。
エリトも恋愛対象は異性だとずっと思っていた。同性に心を動かすなど、思ってもみなかったのだ。だからこそ、戸惑ってしまう。
(……とはいえ……あれから数日。流石に水分くらい摂らないと……)
倒れてから魔族は、何も口にしていない。水を含ませた綿を口に押し当てるものの、彼はなぜか吐き戻してしまうのだ。
水分を摂らないと衰弱していく一方だ。エリトは焦ったが、不思議と魔族の状態が悪化することは無かった。
(水分を摂ってないのに、唇だってこんなにぷるぷるで……)
エリトはそっと手を伸ばし、魔族の唇に触れた。柔らかくて程よい弾力がある唇を、ぷにぷにと押す。
エリトが夢中になって感触を楽しんでいると、自分を見つめる視線にはたと気付いた。
先ほどまで閉じていた魔族の瞳が開いている。彼は驚いたように目を見開き、エリトを凝視していた。
この場合、狼狽えるべきは唇に触れていたエリトだ。しかし魔族のあまりに驚く様に、エリトはつい吹き出した。
「はは、ごめんなさい。あまりに綺麗な唇だったから」
「……」
「……お水、飲めますか? あなたはずっと何も口にしてないんですよ?」
「……」
「……言葉、分かりますか? ああ、こないだ普通に話してたから分かりますよね! ああ、あの時は本当にありがとうございました! あなたがいなければ僕はきっと死んでたでしょうね……」
エリトが一気に捲し立てても、魔族は返事をする様子がない。それどころか、目も合わせてくれなかった。しかしその表情に、不思議と嫌悪感は浮かんでいない。
エリトは人の表情を読むのが得意だった。生物の身体を熟知しているお陰か、筋肉の繊細な動きも見逃さない。
魔族が目を逸らしているのを良いことに、エリトはその顔をまじまじと観察した。
(……なんて綺麗な瞳だろう)
魔族の瞳は、ほとんど金と言ってもいいほど美しい。
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