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いざ、競技会!
第147話 会いたいから
しおりを挟む「リュウ!! 元気だったか!? ケガはないか!? いじめられてはいなかったか?」
「こ、光太朗……その顔は……」
光太朗の顔には、所々に擦り傷が出来ていた。眉尻には裂傷もある。リーリュイがその傷に触れると、光太朗は照れくさそうに笑う。
「あっはは~。これはさ、乗り物に慣れなくて転んだだけ」
「乗り物? 何に乗ってきた?」
光太朗は馬には乗っておらず、馬の後ろから出てきた。しかしそこには荷車らしき物はない。
説明を求めるように、リーリュイはキースを見上げる。しかし彼はぐったりと馬の背へ突っ伏していた。
疲労困憊といったキースの姿は、なかなか見れるものではない。
「これに乗ってきた」
光太朗は地面に手を付いて、黄金に光る晄露を引き出した。ゆらゆら揺れる晄露に手をかざすと、それが形を変え始める。
晄露が長い板に形を変え、その周りにパーツと車輪がふよふよと浮かぶ。それらが自我を持ったように、空中で組み立っていく。
黄金の光に照らされた光太朗は、組み立った晄露を地面へと置いた。そして板の上へ、足を乗せる。
「スケボーっていう乗り物を参考にして作ってみた。俺はこれに乗って、班長の馬に引っ張られて来たんだ」
「……こ、この、板にか? まさかランパルから?」
馬上にいたキースが、ようやく馬を降りた。いつも気怠げなキースが、輪をかけて怠そうに見える。
「……ランパルの隣村からです……。まじで、死ぬかと思ったっす……」
「では4日も、この移動手段を使ったのか!?」
「え~っと、5日かな?」
目を見開くリーリュイを、光太朗は苦笑しながら見上げた。リーリュイが心配しているのは分かるが、頬が緩むのを止められない。
彼が元気そうで心底ほっとした。やはり顔を見ないと、どうにも落ち着かない。
「最初は荷車みたいな乗り物にしてたんだけど、襲撃者への反撃がし辛くてさ、ケツも痛いし。試行錯誤した結果、スケボーが一番良かったんだ。慣れないうちは転んだけど、もうプロ並みだよ」
光太朗が得意げに言うと、キースが大きくため息を吐いた。
「……引いてるこっちは、気が気じゃなかったわ。コウがたまに転ぶし、障害物にも気を使わねぇといけねぇし……。2ケツの方が、良かったなぁ……」
「……2人乗りは許さん」
「分かってますってぇ、団長……」
リーリュイの鋭い視線を避けるように、キースはがっくりと頭を垂れる。
キースから光太朗へと顔を戻したリーリュイは、険しい顔をしながら大きく息を吸った。
どうやら、リーリュイのいつものお説教が始まるようだ。光太朗は口を引き結び、背筋を正した。
「君は、どれだけ危険なことをしたか分かっているのか!? 騎士団と共に移動しなければ、君が危険な目に会うと分かっているだろう! それにこんな板だけの物に乗って、疲労の蓄積を考えたか? 5日で着くなんて、まさか夜間も走っていたんじゃないだろうな? 加えて、その可愛い顔に傷なんて作って、君は、ほんとうに……!! っ、ほんとうに……」
「……ほんとうに……?」
首を傾げながら光太朗が見上げると、リーリュイが自身の額に手を当てた。彼は肺の中の空気を吐き切るように、大きなため息を吐く。
その耳が赤くなっているのを見て、光太朗はくすりと笑った。
「リュウに、早く会いたかったんだ。心配かけてごめんな」
「!!! ほんとに、君は!!」
リーリュイに抱き寄せられ、その抱擁の強さに喉がぐぅと鳴る。身動き一つも出来ないが、今はその強さが幸せだった。
光太朗の髪に、リーリュイは顔を埋める。
「……会いたかった、光太朗。私の方がずっとずっと強く、君に会いたかった」
「あん? 聞き捨てならねぇな。俺の方がずっと強いわ!」
リーリュイから、更に強く抱きしめられる。まるで力の差を分からせるような抱きしめ方だ。そういう事じゃないと言いたいが、愛おし過ぎて何も言えない。
ちらりと横を見ると、煙草をふかし始めたキースが見えた。彼は口元に薄っすらと笑みを浮かべている。キースの存在を一瞬忘れていた光太朗は、全身を猫のように粟立たせる。
人前でリーリュイと触れ合う事を、光太朗は避けていた。
一気に顔が赤くなるのが自分でも分かる。直属の上司であるキースに見られ、羞恥で顔が爆発しそうだ。
「は、班長ぉ……ご、ごめん。こ、これはですね……」
「あぁ? 何も問題ねぇだろ」
「そうだ。何も問題はない」
「っリュウは黙ってろって……。ってか、離して」
光太朗が言うも、リーリュイの手は緩まない。それどころか光太朗の頭頂部へ唇を落とし、離さないとばかりに首を横に振る。
いたたまれなくなった光太朗は、真っ赤になった顔をリーリュイの胸に埋めた。
満足げに笑いを漏らすリーリュイが憎い。でもやっぱり、怒ることなんて光太朗には出来ないのだ。
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