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いざ、競技会!
第153話 喧嘩共闘
光太朗だって分かっている。自分は体格的に見ても圧倒的に抱かれる側だ。
しかし男から欲情されるという事実には未だ慣れることはないし、そういう経験も無かったように思う。
光太朗は騎士らの攻撃を避けながら、気まずそうに口を引き結んだ。反して、リーリュイの口は開く。
「こいつらの顔を見てみろ。妄想の中で君を3回は犯しているぞ! ……とても許容できない!」
「お、落ち着けって。ごめん、リュウ。俺が悪かった」
「……正直、とても腹が立っている。君を見ることが出来ないよう、騎士ら全員の目を潰してしまいたい!」
「うぉお!? おいおい、冗談だよな!? あんたも冗談言うよな!?」
いつも堅物なリーリュイが言うと、冗談に聞こえない。
2人で騎士らを薙ぎ倒しながら、リーリュイと光太朗は問答を繰り返す。
隊長クラスも参戦すると聞いたが、光太朗には脅威に感じなかった。普段キースと手合わせをしているからだろう。騎士らの動きが愚鈍に見える。
一緒に戦っているリーリュイは、言わずもがな驚異の強さだ。彼は怒っているが、光太朗に合わせて動くのを忘れてはいない。
共闘の楽しさを思い出し、光太朗はぞくぞくと肚の底が騒ぐ感触を味わった。しかしその楽しさも、リーリュイの一言で霧散することなる。
背中合わせになった所で、リーリュイが声を落とした。
「今晩、お仕置きだ。光太朗」
「……っ!? お、お、お仕置きって……!」
「あれから練習も碌に出来ていない。お仕置きも兼ねて、今晩は練習しよう」
顔を真っ赤に染めて、光太朗はリーリュイを振り返った。ランパルでの一夜が一瞬で頭を過っていく。
「お、おい。冗談だよな? 競技会期間中だぞ! あれやられると、俺が生まれたての小鹿みたいになるの知ってるよな!?」
「……こじか、とは?」
「小鹿はいるだろう! 知ってるぞ、俺はぁ!!」
とぼけるリーリュイの胸元を掴むと、彼は僅かに口元を緩ませた。緑色の瞳も緩く弧を描いている。
今度は光太朗が拗ねる番だった。口元を膨らませ、リーリュイをきっと睨みつける。
「……大体な、俺ばっかりっていうのが、くっそ悔しいんだよ! いっそ最後までしてくれよ!」
「駄目だ。君には少しも痛みを与えたく無い」
「何でだよ……。俺一人で翻弄されて、翌日もぐでぐでになって……男の矜持というものがさ……」
リーリュイを睨みつけるものの、彼はもう完全に顔を緩ませている。どこで機嫌が治ったのか、光太朗にはさっぱり分からない。
「なに笑ってんだよ! 怒ってたんじゃないのか!?」
「君が可愛すぎるのが、全部悪い」
「なんか腹立つ!!」
リーリュイから離れて、光太朗は苛立ち紛れに騎士らに突っ込んだ。彼らの剣をかいくぐって、急所を的確に攻撃していく。
多くの騎士の中にディーロの姿も見えたが、光太朗は特に構わず短剣を振るった。
加減なんて頭に浮かばないまま暴れ倒していると、腕を掴まれる。
「光太朗。もう良い」
「何でだよ!」
「周りを見てみろ」
怪訝な顔をしながら、光太朗は周りを見渡した。倒れ込んだ騎士たちの奥には、まだ無傷の騎士らもいる。
しかし光太朗と目が合うと、くるりと向きを変え、違う騎士と戦い始めた。
「んん?」
「戦意喪失だ。もう私たちを狙ってくる者はいない」
「うっそ。……こっちから行くか?」
「もう十分なくらい腕章は獲得している。圧勝だ、さすが光太朗」
リーリュイは光太朗に向けて微笑むと、ちらりと審判を見遣った。審判が慌てて駆け寄ってくる。
リーリュイは腕章の束を、審判へと突きつけた。
「過半数の腕章が我らの手の中にある。勝負はついたと思うが?」
「は、はいっ! 確かに!」
審判が手を挙げ、試合終了の合図が鳴り響く。同時に歓声が辺りを覆いつくした。
『剣技会、優勝は魔導騎士団!!』
見守っていた魔導騎士団も観戦席から飛び出し、光太朗とリーリュイを囲む。
闘技場が一体になったかのような熱気に包まれる。聴覚が駄目になってしまいそうな声援に、眩暈がしそうだった。
そんな時、ふとリーリュイが光太朗を振り向いた。彼は徐に光太朗の外套へと手を突っ込む。そしてそこに潜んでいたアゲハを引きずり出した。
リーリュイはアゲハの首根っこを掴み、キースへと押し付ける。
『あにすんだ! てめぇ!』
「光太朗にベタベタするなと何度も言っているだろう。彼好みの姿になって媚びを売るな」
『主にくっついて、何がわるい!』
「主を護れない従者など、側にいる価値もない」
黒柴犬のアゲハが放つ言葉は、光太朗にしか聞こえないはずだ。しかしリーリュイとアゲハは何故か会話しているように感じる。
アゲハをがっちりと捕まえたキースが、苦笑いを浮かべる。
「お前は何度引き剥がしても、いつの間にかコウにくっついてやがるからなぁ。今日は俺と一緒に過ごすかぁ? 黒いの」
『くろいの、言うな! アゲハだ!!』
リーリュイは「後は頼んだ」と静かに言うと、光太朗の手を掴んだ。そのまま闘技場を突っ切って、外へと向かう。
「リュウ? どこ行くんだ?」
「……先ほど、言ったはずだが?」
「あん?」
光太朗は記憶を辿り『お仕置き』というワードへと行きつく。途端に顔が熱くなり、心臓がばくばくと暴れ出した。しかし頭の中では、危険信号が点滅を繰り返している。
はくはくと言葉を紡げないまま口だけが動く。競技中あれほど俊敏に動いていた身体も、リーリュイの怪しげな笑みの前にすると、動かなくなってしまった。
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