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いざ、競技会!
第158話 キース大先輩の教え
しおりを挟むリーリュイの対戦相手は、第1騎士団の隊長トラバートだった。彼の強さは騎士団の中でもトップクラスだ。
トラバートは、リーリュイが対戦相手だった場合に備えて、色んな策を練ってきたのだろう。
属性を秘匿させたシールドを何重も張り、トラバートはリーリュイに立ち向かった。属性が複雑になると、それを打ち破るのは難しい。
しかしリーリュイはそれを一蹴した。剣を抜き放ったと思ったら、重なったシールドを一閃、叩き切ったのだ。
通常、魔法シールドに物理は効かない。リーリュイの剣には雷系の強力な属性が宿っていたのだ。しかしそれを、誰も気付かなかった。
「雷魔法は全ての属性に有効だが、習得が相当難しい。団長のように武器に属性を持たせられる者など、ほんの一握りだろうなぁ。しかも相手が警戒しないように、属性を秘匿するとはなぁ……えぐいわ」
「リュウって、本当に強いんだな……。いつもあんな感じで、とことん打ち負かすのか?」
リーリュイに即完敗し、トラバートは状況が掴めない様子で唖然としていた。リーリュイの勝ち方は、騎士のプライドをねじ伏せる、ある意味残酷なものだっただろう。
キースが煙草を咥えながら、少し笑う。
「いやぁ、普段はあんなんじゃないなぁ。多少の打ち合いはしないと、競技会の意味がねぇ。親善試合の意味も兼ねてるからなぁ。……今回は惚れた相手がいるから、いつもより力が入ったのかもなぁ?」
「……惚れた、相手……」
「……お前の事だかんな?」
「分かってるけど……」
伏目がちに言う光太朗の顔を、キースは覗き込んだ。彼は照れている表情でもなく、どことなく悩んでいるように見える。
キースが煙草を咥えたまま首を捻ると、光太朗が口を開いた。
「班長。俺、リュウとセックスしてないんすよ」
「……あぁ?」
ぽっかりと開いたキースの口から、煙草がぽろりと落ちた。光太朗はしゃがみこむと、その煙草をぐりぐりと地面に押し付ける。
「ばっきばきに勃起してるのに、リュウは俺に突っ込もうとしないんだけど……。それって俺を抱きたくないって事なんかな?」
「……」
キースは頭を掻いて、光太朗の横にしゃがみ込んだ。光太朗と共に、潰れた煙草を見つめる。
「……つまり、突っ込む手前までは進んでるのに、最後までしてねぇって事かぁ?」
「うん。俺の身体、もう準備万端のはずなんだけどなぁ。突っ込まねぇとさ、リュウは気持ちよくないだろ? なんでなんだろう……。好きな相手とは、繋がりたいもんなんだよな?」
「……コウ、お前はどうなんだ?」
「リュウには抱かれても良いって、ちゃんと思ってる」
力強く頷く光太朗を見て、キースは「なるほどぉ」と呟いた。そして眉頭をがしがしと掻く。
「コウ。俺はなぁ、男女どっちでもいける口だが……男相手だと、抱かれる方なんだよ」
「お……おぉ……、そ、そう、なんすか……」
「……オイ、今更照れんなよ」
顔を真っ赤にする光太朗の頭を、キースは荒々しく撫でた。
「いいかぁ? 愛のあるセックスってのは、熱に浮かされてやるもんなんだ。繋がりてぇ、一緒になりてぇ、相手の全部をむしり取るつもりで、やるもんだ。相手が抱きたいと思ってるからっていう理由で、やるもんじゃねぇ」
「……な、なるほど……」
「抱かれても良いじゃなくて、心底繋がりたいって思ってるか? 思っていたとしても、伝わってるかぁ? 団長は優しいとこあるからな、我慢してるんじゃねぇかな。自分の熱量と、コウの熱量が、違うの気付いてんじゃないか?」
「そ、そんな……俺……。リュウの事、ちゃんと好きだ」
光太朗は頭を抱えて「でもなぁ」と唸った。
キースは笑いながら、煙草に火を付ける。リーリュイと光太朗の清い関係は、微笑ましい事この上ない。頬を緩ませていると、光太朗が呟いた。
「でも俺、愛あるセックスが分かんねぇから……。求めるの、難しいな……」
「……そうだなぁ……。確かに初めては、良く分かんねぇか」
「リュウは……今までどうだったんだろ? こんなに準備に力を入れるもんなのか?」
「……あ~……いや、そうでもねぇなぁ。戦帰りはムラムラするんだが、狙ったかのように側室候補が待ち構えてたりしたからなぁ。ヤりたい時に据え膳があったら、コウだって喰うだろ?」
光太朗が素直に頷く。同時に拗ねたような表情になった。
「なんで側室候補は喰えるのに、俺は喰わねぇんだ?」
「……そりゃお前……大事だからだろ。団長もそう言ってんじゃねぇか?」
「言ってる、けど……」
「何なら、抱く方の意見も聞いてみたらどうだ? 副団長とかは、抱く方だと思うがなぁ……」
光太朗がなるほどと顔を輝かせ、観覧席の方を振り返った。観覧席にいる魔導騎士団は、緊張の面持ちで光太朗とキースを見ている。
光太朗は立ち上がると、ウルフェイルに手を振った。
「ウルフ! 後から恋愛相談、ある!!」
「はぁ!? 良いけど、それ今言うか! ってか、キースと何話してたんだ! 戦略じゃねぇのか!?」
ウルフェイルの叫びと共に、試合開始前の鐘が鳴る。光太朗は入場門へと移動しなければならない。
「おっと、じゃあ行ってくる!」
「おう。気をぬくなよぉ」
魔導騎士団が固唾を呑んで見守る中、光太朗には緊張の色が一切見えない。驚くほど肝の据わった男だ。
キースは思わず笑いを漏らし、光太朗を見送った。
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