【完結】異世界で出会った戦友が、ゼロ距離まで迫ってくる! ~異世界の堅物皇子は、不具合転移者を手放せない~

墨尽(ぼくじん)

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いざ、競技会!

第176話 新たな影

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(あれは多分、ソワイル花の香りだ。大量に食べると直ぐに酩酊し、身体が痺れ出す。……そうか、人間相手じゃないからソワイルを使ったんだな)

 ソワイル花はどこにでもある花で、少し食べただけでは何の害もない。しかし大量に摂取すると毒になるのだ。手軽に取れる花なので毒として重宝しそうなものだが、かなり匂いがきつい。
 毒として調合するには大量の花が必要で、そうなると更に香りが強くなる。暗殺には不向きな毒花だ。

 魔獣には、ソワイルを好んで食べる種もいる。少量なら薬草がわりになるのかもしれない。
 エイバもフキミスウルフも、食べているのを見かけたことがある。魔獣には毒として認識されていないのだ。

「班長。あの子を助けられるかもしれない。このまま放っておいたら、死んでしまう可能性が高い」
「……あいつ、生きてんのかぁ?」
「生きている。まだ体温があった」

 アゲハが答え、レレイアの方を振り返った。
 子ドラゴンは、今度は白いレレイアの手に抱かれている。もしかすると、白いレレイアが母体なのかもしれない。
 
 キースが身体を起こし、胸元を押さえ込んだ。痛みに顔を顰めているが、レレイアの方を鋭い目線で見据える。

「アゲハぁ、戦えるかぁ?」
「お前よりはな」
「よぉし。……コウ、あの白いのを戦闘不能にさせるぞ。長はひとまず、団長たちに任せちまおう」
「了解」

 光太朗は立ち上がると、アゲハの長い髪をまとめ、紐でしばりつけた。雨で重くなっていた髪が軽くなったのか、アゲハは顔を輝かせる。

「コタロ、これは良い」
「だろ? アゲハは笑うと可愛いなぁ。ねぇ班長?」
「……呑気にしてんじゃねぇ。来るぞぉ」

 キースが殺気を放つと、白いレレイアが直ぐに反応した。こちらへ身体を向けると翼を大きくはためかせる。

 一瞬で間を詰めるレレイアに向かって、アゲハは駆けだした。
 繰り出してきた鋭い爪を避け、アゲハはレレイアの背後へと回る。そして翼の付け根にぶら下がり、体重を掛けて捻り上げた。
 レレイアが唸り声を上げ、暴れ始める。

「痛いよな? 我も付け根は嫌いだ」
「アゲハぁ! そのまま待ってろ!」

 キースは胸を押さえたまま、氷の魔法を放つ。光太朗は地面に手を付いた。キースの魔法がレレイアの足元を凍らせた所で、鎮静剤を包んだ晄露を放つ。

 1発、2発と放つごとに、レレイアの動きが緩慢になっていく。
 その身体が崩れ落ちるのに時間は掛からなかった。その場に伏せたレレイアに、光太朗は駆け寄る。
 白いレレイアはまだ子ドラゴンを抱えたままだ。光太朗は膝をついて、レレイアの顔を覗き込んだ。

「抱っこしたまんまで良いから。……ちょっと治療させてくれな?」

 レレイアの瞳から殺気は消えない。しかし身体は動かせないようだ。光太朗は「ごめんな」と謝って、子ドラゴンに近づいた。

(やっぱり、息はある。外傷も大したことないな)

 晄露を使って解毒剤を身体へと埋め込み、身体に薬草を塗りつける。
 ドラゴンは自己再生能力に長けると聞く。外傷はこれで良くなるだろう。最後に柔らかい布で包んで、白いレレイアの身体へと近付けた。

「もう大丈夫だよ。……父ちゃんにも、大丈夫だと伝えたいけど……。まだかなり怒ってるみたいだな。そりゃそうだよなぁ、自分の子どもだもん……」

 光太朗は立ち上がり、リーリュイの方を見た。ウルフェイルと共に、怒り狂う長へと立ち向かっている。
 怪我を負わせないように気を使っている分、戦い方が制限されているようだ。早いところ加勢しないと、2人の体力が持たない。

 キースを振り返ると、彼も加勢するつもりだったのか、こちらに歩み寄って来るのが見えた。
 しかし次の瞬間、その身体が突き飛ばされたように跳ね上がった。

 キースは数メートル吹き飛ばされ、崖のほうへと転がって行く。

「キース!!」

 先に反応したのはアゲハだった。駆けていくアゲハの後を追いながら、光太朗は周囲を警戒した。
 また何かが迫ってくる気配がする。光太朗は走りながら地面に手を付き、晄露の盾を引き出した。
 盾に何かがぶち当たったかのような、鋭い衝撃音が響く。周りに飛び散ったのは白い光だ。ドラゴンからの攻撃ではない。放たれたのは魔法だ。

 攻撃が来た方向に人影が見える。光太朗はそちらを注視しながら、キースの脇へと滑り込んだ。
 アゲハがキースを抱き込んでいる。腹部に当てた手からは、大量の血が流れ出していた。

 ひゅっと喉を鳴らしながら、光太朗は膝を折った。キースの顔は真っ青で、アゲハにぐったりと寄りかかっていた。
 キースの腹部に当てられたアゲハの手は、少しだけ震えている。光太朗はその手を退けて、傷の状態を確認した。

「……っ急所は外れてる。止血すれば、きっと大丈夫だ。……アゲハ、あっちの方向を警戒してくれ」
「誰だ? 誰が攻撃を?」
「分からない。でもそこにいる」

 何者かは分からないが、殺気は消えていない。晄露の盾を出したまま、光太朗はポーチから薬を取り出した。

 止血剤を塗りこんで包帯をきつく巻くと、キースからうめき声が漏れる。痛みに反応があった事に、光太朗は胸を撫でおろした。

(班長はもう戦えない。どこか安全な場所に移動しないと……)

 周囲を見回すが、それらしい場所はない。後方には崖が迫っている。

 人影があった方向を睨み、光太朗はアゲハとキースを庇うように立つ。すると雨で霞んだ向こうから、人影が近付いてきた。
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