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第2章
27話
しおりを挟む「イシス様っ!」
宮殿の廊下の端から、ススススッと…歩いているのが信じられないほどの速さで…タチアナ様がこちらへ近付いて来る。
「タチアナ様、本日はお招きいただきまして…ありがとうございます」
「お待ちしておりましたわ。こちらへ!」
今日は、婚約披露パーティーでのお礼がしたいと…殿下とタチアナ様からのお誘いを受け、宮殿までやって来た。
「後ほど、殿下とフェルナンド様もお見えになりますのよ」
どうやら、お2人ワンセットのようです。
「パーティーでは、イシス様が側にいてくださってとても心強かったわ…本当に感謝しております」
タチアナ様は私の手を握りながら、何だかキラキラした目をされています。
何がどう…とは“2人の秘密”なので、はっきりとは仰いませんが、令嬢たちを追い払ったことやドレスのことよね。
「お力になれてよかったですわ。どうか、あの日のことはもうお気になさらず、お忘れになって」
「忘れるだなんて…。私、お恥ずかしいことに社交が苦手で…お友達もいないのです。
イシス様は…私のお友達に…なってくださいますか?」
何かしらっ!この可愛い生き物は!
モジモジしながら上目遣いで“お友達”だなんて、YESしか答えの選択肢がないでしょう?
「わ…私でよろしければ、喜んで」
タチアナ様のお顔がパアッと明るく花開きました。本当に…可愛いお方だこと…。
「今は、こちらで教育を受けていらっしゃるとお聞きしたのですが…お時間はよろしいのですか?」
「あ…皇族についての特別な授業ですね。1週間というのが決まりなので滞在はしておりますが、教育自体は昨日で終えましたの。ご心配なさらないで」
えぇ!昨日ってことは…3日で終わった?
「そ…そうでしたのね」
「ゆっくりお喋りができますわ!」
─────────
婚約披露パーティーの翌日、令嬢たちから嫌がらせを受けていたタチアナ様のことが心配になり、フェルナンド様にご相談したのだけれど…
『まぁ、タチアナ嬢が苦手なのは社交くらいだからな』と、何ともあっさりした返答だった。
タチアナ様は秀才。
その頭の良さは超有名で、アカデミーでは飛び級していて…同年齢の子たちより1年早く卒業するそうです。
問題は、タチアナ様が“公の場”の社交に限って上手く立ち回れない…という一点のみ。
帝国の外交に携われないようでは困る…ということで、お妃候補としては外れたとか。
第三皇子殿下の婚約者であれば、将来公爵夫人として領地経営で手腕を発揮できる。
社交界で公爵夫人という立場なら、ただ座っているだけでも周りが気遣って当然。社交もさほど難しくはない…というところだろうか。
パーティーって独特の緊張感があるし、タチアナ様は頭がいいからこそ…情報過多になって大変なのかも。
…もしくは…社交が苦手なフリをしているとか…?
────────
「イシス様は、いつフェルナンド様とご婚約をなさるの?」
「…え…?」
タチアナ様ったら、突然何を?
お紅茶を吹き出さなかった私、偉いと思う。
「私とフェルナンド様は…兄妹みたいなものですのよ?婚約だなんて…」
「なぜかしら?ご兄妹のように仲良しということなら…結婚相手としても悪くないわ?」
「…仲良し…、あれ?…そうなる…の?」
コテンと私が首を傾げると、タチアナ様も同じように首を傾げ…何か考えているご様子。
「パーティーで、フェルナンド様とイシス様は恋人同士みたいで素敵でしたわ。
ダンスを何曲もご一緒されていましたし…周りの私たちはお2人に見惚れていましたのよ?」
「それは…私の社交界デビューをパートナーとして支えてくださったからですわ。
フェルナンド様は注目の的でしたわよね…ふふっ」
あれ?
可愛いタチアナ様が、急に真顔になりました。
「…イシス様って…もしかして、ご自分がお美しいことをご存知ありませんの?」
…え…?…お…お美しい?
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