前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy

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最終章

217 結婚2



「……ぅ…ん……」

「…ごめん、起こしてしまったか…」


背中にアシュリーの体温ぬくもりを感じたレティシアは、暗がりの中でうっすらと目を開ける。
耳元で静かに囁く声や肩に触れる髪がこそばゆい。ノロノロと毛布を手繰り寄せて身体を丸めると、硬くなった雄茎がコツンと臀部に当たった。


(…あれ?…裸?)


同じベッドで寝ているからといって毎日睦み合うわけではない。揃いの紋様を持つ二人は軽いスキンシップでも満足度が高く、刻印の効果は絶大だ。生活時間にすれ違いが生じても、一晩寄り添って眠れば幸福感で満たされる。

結婚の儀式当日を含め三日間は祝日扱い。今宵は王宮泊りという安心感もあって、祝い酒を飲んだレティシアはほろ酔い気分で部屋へ戻りアシュリーに抱かれたはず…の記憶がなかった。お互い夜着どころか下着も身に着けていない状況で、昂ぶる熱を持て余す彼の心情を察する。アシュリーは微睡むレティシアの首筋へそっと舌を這わせて口付け、豊かな乳房をやわやわと揉み始めた。


「…っ…私、寝てた…?」

「少しね…まだ夜中だよ」


優しい口調で眠りを誘うのかと思いきや、次第に存在感を増す胸の頂を慣れた手つきで弄ぶ。閨事は大体一週間に一度。レティシアの身体の反応で覚醒を確信する彼は、就寝中にこうした悪戯を楽しむ常習犯なのかもしれない。尤も、普段は起こさないよう加減しているに違いなかった。


「…あぁ…もうこんなに濡れてる…」

「…アシュリー様…っ…奥は…触っちゃだめ…」

「…………」


無防備な秘部の合いへスルスルと指先を伸ばしたアシュリーは、恥ずかしさのあまり侵入を防ごうと股を擦り合わせて抵抗するレティシアが可愛くて堪らない。とはいえ、今夜は既に一度お預けを食らっている。攻めの姿勢を緩める気は毛頭なく、撫で上げれば物欲しそうに蠢く湿った肉襞の奥底へ膨らんだ欲望の塊を突き入れたい衝動を抑え込むなど不可能だった。


「……ぁ……ンんっ…!!」


アシュリーはレティシアの膝裏を掴んで左右に大きく広げると、泥濘んだ蜜壺の最奥を目指して腰を押し進める。時折前後に揺すっては凶暴な雄の切先で隘路を抉り、溢れ出る蜜に塗れた敏感な陰核を指の腹で執拗に捏ね回した。


「アッ!…そこは……いゃぁ…っ!!」

「…レティシア……好きだよ…」


切ない声色で甘い言葉を繰り返し、弱いところばかりを的確に狙う刺激的で容赦ない愛撫にレティシアは翻弄される。繋がった下半身がジンジンと痺れて、どうしようもなく子宮が疼く。息も絶え絶えに喘ぎながら、熱を帯びた全身から深い愛情を感じて求められる悦びに身震いした。


(…私も…大好き…)


快楽に悶え淫靡な香りを放つレティシアが、艶めいた表情で碧い瞳を潤ませる。弱々しく乱れた姿でありながら、破裂寸前の男根を力強く締め付ける魔性の肉体を前に理性が崩壊したアシュリーは、半開きの小さな唇にむしゃぶりついて無我夢中で腰を振り続けた。




──────────
──────────




「今日もよく晴れているな」

「本当ね」

「さぁ、ガウンを羽織って」

「ふふっ…優しい」

「こっちで髪を乾かそう、おいで」

「はい」


アシュリーは窓の向こう側に広がる青い空を眺めると、入浴後のレティシアを膝の上に乗せて甲斐甲斐しく世話を焼く。これは、夜中の行為で無理をさせた云々…ではなく、部屋付きの侍女たちに休日を与えたためである。


「兄上は、夫婦でいい夜を過ごせただろうか」

「きっと、素敵な朝を迎えていらっしゃるわ。私、アフィラム殿下と妃殿下はお似合いだと思うの」

「そうだな。最初は『妃になりたくない』と聞いて心配していたが、上手く行って本当によかった」

「ある意味、妃殿下の芯の強さがうかがえるエピソードよね。でも…アフィラム殿下は、本音で語り合える伴侶が側にいてくれて心強いと仰っていたわ」


アフィラムの妃となったのは、元々婚約者の筆頭候補だと言われていたディルカ・メロパヌス伯爵令嬢。以前、飼育されている銀狼を誤って攻撃した勇ましい女性だ。
自身が得意とする火属性の魔法を極めたいと願う彼女は、両親が望む王弟妃の地位に魅力を感じられず、顔合わせの茶会では積極的な自己アピールを一切しなかった。騒動が起きたあの日、父親に付いてアフィラムの宮殿へ行ったのも“嫌われるための行動”だったと…一ヶ月の謹慎期間の後に謝罪へ訪れた本人の告白によって判明する。

きっかけがどうであれ、アフィラムにとってはディルカの本心と人となりを知れたという事実が非常に大きかった。一方、これで婚約者候補から外れる!と期待した彼女には真逆の結果が待っていたことは言うまでもない。


「初めて相談を受けた時は、正直…貴族生活を嫌う君を婚約者にした自分と重なった」

「…アシュリー様…」

「私たち兄弟は、生涯共に生きると誓いを立ててくれた伴侶を愛し、守り、尊厳を尊重し“正しい選択をした”と思って貰えるよう一生努力する」

「私は…私も努力します。アシュリー様を愛して、一生支えて行けるように頑張ります」


そう言って逞しい胸にしがみつくと、アシュリーは黄金色の瞳を細めて微笑んだ。



    ♢



レティシアの前世“有栖川瑠璃”は、28歳で人生を終えた平凡な日本人。この世界への転生によって、聖女サオリと同等の言語理解能力を持ち、エルフと神獣の加護を受け、アシュリーの魔力を香りで認識できている。
現在の身分は公爵令嬢。他にも聖女の妹や大公の婚約者など、貴族社会を生き抜くための後ろ盾は申し分ない。日々護衛に守られ、強力な加護の恩恵と厄除け付与の指輪のお陰で災いを寄せ付けず、至って健康。礼儀作法を学んで妃教育も終え、アシュリーと結婚する準備は整った。


(…魔力はないけれど、きっと大丈夫…)


王家の絶対的権威は子孫繁栄を礎に成り立っている。そのため、魔法大国において、魔力を持たない女性を妃に据えることに異を唱える貴族は昔から一定数存在していた。平たく言えば“魔力量の多い男性王族は、子を宿す母体に相応しい伴侶を娶るべきである”という話だ。
王国の人間には政略結婚と大差なく思えるこの思想は、子供のいなかった義父母を酷く苦しめた。

現大公のアシュリーにも魔力を持つ妃を望む声は高く、女性との交流が可能になった彼へ別の婚約者をあてがおうとする動きがあったとも聞いている。

まだトゥーリ国王女エクレールが王国へ遊学する前だっただろうか、国王クライスとアシュリーは高位貴族数人を王宮へ招いた。集まった貴族たちは、ラスティア国に再び後継者問題が起きたと議論をする者、魔力のないレティシアを婚約者として承認した王家の真意を問う者、二代続いて君主が王族から離脱する最悪の未来を危惧する者など…貴族社会へ多大な影響を与える家門の当主ばかり。


『婚約者のユティス公爵令嬢は、私のつがいである。よって、大公妃として王家へ迎え入れる。この決定を不服とする者、またつがいの真偽を疑う者は今すぐ申し出よ』


不穏分子を一掃するかのようなアシュリーの堂々たる宣言に、室内は一瞬静まり返った。
つがいの真偽を疑うとは、刻印後にイルム医師が王国へ提出した報告書の開示を求めることと同義で、神聖な儀式、ひいては紋様に関する王家の機密を暴く大それた行為。これは、臣下の立場を逸脱せず正しく忠義を尽くして欲しいと願う、アシュリーからの強いメッセージでもある。

ある者は俯いて口を噤み、ある者は納得の表情で肯き、またある者は静かに手を叩く。アシュリーは、彼らが魔力の有無を理由にレティシアの存在を否定することは二度とないと確信した。なぜなら、先例となる前国王夫妻をよく知る老獪な貴族たちは、自らが大きく掲げた“子孫繁栄”を成し得る大公妃はレティシア唯一人だと…十分過ぎるほど理解していたからだ。

この出来事の背景には、アフィラムが婚約した辺りからレティシアと魔力を持つディルカが事あるごとに比較されるようになった…という事情がある。ほぼ同時期に妃教育を受けていたため、短期間で習得を進めるディルカと比べられるのはある程度仕方がない。しかし、王国側では想像以上に批判を受けていたらしい。

アシュリーはレティシアがつがいであると公にする必要がなければ一番よかったと言うが、切り札として使いどころを冷静に見極めた彼は流石であった。将来義理の姉となるディルカとの関係も、アフィラムの口添えによって拗れずに済んでいる。


(…私を守ってくれる全ての人に感謝を…)



    ♢



「そうだ…今の私たちはお互い気兼ねなく会話をする仲だろう?そろそろ、君を愛称で呼びたいと思う」

「…え?」


エクレールが付けた愛称を気に入ったアシュリーは、この日からレティシアを『シア』と呼ぶようになった。









────────── next 218 結婚3

公開予定よりも遅くなり申し訳ありません。心よりお詫び申し上げます。
今年も宜しくお願い致します。



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