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無粋な花火
しおりを挟むこのまま他人に任せて帰ろうとは誰も言わなかった。これから先を任せられる人間なんて幾らでも彼らは呼ぶ事ができたのに。時間がなかったといのもあるが、関係者の顔も割れている。放ったらかしで帰っても良かったのだ。キールは後で頭を抱えていたが、皆んな帰るという選択肢なんて初っ端から完全に失念していた。手落ちというものである。でもその失念は神の思し召しだった。後で思えば。
人数絞った方が良いんじゃないかという、キールとリロイに対し、置いてかれる組に絶対入ってしまう未成年で異世界人の俺とライトが駄々を捏ね、
「結界張れば」
お気楽なグエンの提案で、今度は俺たちに結界が張られた。
キールとヒヨリは残った。後で思えばこれも選択肢としては間違っていたが、この時は六人という人数は結界張ってても流石に多過ぎだろうと皆んな思ったのだ。大人たちの意見では俺とライトは残った方が良いだろうという事だったが前述の通り俺とライトは引かなかった。男の子だと思うな、やっぱり。
でもやっぱり俺たち連れて行って良かったよ、後で思えば。
あの男が中に入ってすぐ灯りの点いた部屋に見当を付け、俺たちは建物の中に侵入した。
結界を張っていても、コソコソしている。ヒソヒソしている。内心はワクワクしている。
「独身者用にしては広くない?」
ライトは言うが、俺は方向音痴の故、空間を上手く測れない。部屋の広さなんて意識を巡らせる事もまずした事なんてない。そんな事思い付きもしない。
「家族いるんじゃないの? あ、そうか。そんなとこでヤバい取り引きしないか」
ヤバい取り引きとも限らないんだけど。
リロイの後を着いて行く。彼はいつも先頭に居る。ライトの後ろに最後尾がグエン。こういうとこが子供扱いで嫌なんだけど、ここは堪えよう。
年代物の建物の階段はギシギシと音を立て
て。見当を付けた部屋に辿り着いた。
ひっそりと中を伺う。
カチャリ。
!!
いきなりドアが開いて、俺たちは固まった。
リズベスト伯爵夫人だった。
俺たちの目の前。結界魔法の為夫人は全く俺たちに気が付いていない。ほんとに際っ際を通って行く。結界の為、華麗に無視される。ドキドキするのと同時に俺は罪悪感を覚えた。彼女は嬉しそうで、それが気持ち悪くて。完全に他人のプライベートを覗き見だもの。
「逢い引きじゃなかったな」
こんな事言うのは王太子殿下に決まっている。
「夫人爆弾買ったの、もしかして」
俺の疑問に、
「いや。また新たに魔法陣手に入れたとも考えられる」
「魔法陣?」
「あそこには溢れている」
リロイの答えに、俺は塔を思い出していた。あの仄暗い空間は人類の叡智なんて代物の宝庫なんだろうな。
「あの女の手先って事か。爆弾もやっぱりそうなのかなぁ。そうだと簡単で良いなぁ」
「王子様ほんと、お軽いよね」
「ありがとう」
「褒めてねーわ」
「遠慮することはないぞ」
「……リシャールさま、早く大きくなって!」
国民の皆さまの為に切に願うよ。
……みゃおぉぉ……。
「猫の声?」
「グエンも聞こえた?」
誰かが飼っているなどという事は思いつかなかった。
前も聞いた事がある。あれはあの時はーー!
飛行船が爆発した時だ!!
俺、良くやったと思う。後でしみじみした。が、この時は夢中だった。
驚いてる皆んなを他所に、俺はぶち当たる様にドアに突っ込む。鍵が掛かってなかったのは幸いだった。
男が居た。図書館司書の背が高く髪の毛の白っぽい茶色の。
手にはダイナマイト、それも導火線に火の点いてるの!!
男は驚いて俺を見たが、ダイナマイトを放り出す事なく逆にしっかり握り込んだ。
え? 自殺志願者なの?!
ドアに続いて男にも突っ込む。
ダイナマイトを奪おうとして、懐に飛び込むが離さない。魔法を使うにしても男も使えるから意味がない。導火線はどんどん短くなる。だが、俺には味方が居た。リロイとグエンが男に跳び付く。男から離れたダイナマイトを奪い取り。
窓を開け放ち!
外へ!
そして、上!
出来るだけ遠くへ!!
美しい冬の夜空に無粋な花火が咲いた。
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