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第2章
第11話 王都の門、託された意志
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(エリアナ視点・王都近郊)
王都の城壁が見えてきた。ループ前、エリアナが絶望と屈辱の中で見上げた、高く無機質な石の壁だ。
街道を埋め尽くした請願団は、王都の門から一定の距離を保ったところで、一斉に停止した。数千人の集団が、誰に命じられるでもなく整然と足を止める。
城壁の上で身構えていた守備兵たちが、その異様な規律正しさに困惑しているのが、遠目にも分かった。
「……ここまでだな」
請願団の先頭にいた若者が、馬上のエリアナを見上げた。ループ前、悲壮感に包まれ、エリアナの声が届かなかった彼らの目は、今は澄み渡り、一途な期待を宿している。
「ここから先は、アンタたちの戦いだ。……俺たちが一緒に行けば、また『反乱』だと騒ぐ口実をあいつらに与えるだけだからな」
若者は一度、王都の重厚な門を睨み、それからエリアナへと視線を戻した。
「任せたぜ、お嬢様。……いや、エリアナ様。俺たちの命も、この国の明日も、あんたに預ける。……逃げんなよ?」
その言葉は、祈りに似た重さを持っていた。
エリアナは深く、一度だけ頷いた。
「ええ、逃げません。皆さんの声は、私が必ず届けます」
◇◇◇
エリアナは馬を降り、アレクシスと共に歩き出した。背後には数千人の民。前方には、自分を断頭台へ送った者たちが待ち構える王都。
エリアナの隣を歩くアレクシスは、帯剣こそしているものの、剣を抜く気配はない。彼はあくまで一歩下がり、エリアナの歩みを邪魔しない位置を保っている。
「緊張しているかい?」
アレクシスの静かな問いに、エリアナは正面を見据えたまま答えた。
「不思議と……怖くはありません。お父様が中で道を整え、殿下が隣にいてくださる。そして、後ろにはあんなにたくさんの方々がいるのですから」
門の前に近づくと、重厚な鉄の扉がゆっくりと開き始めた。そこには、武装した衛兵たちが壁のように並んでいた。
「――道を開けろ。未来の王と、その伴侶が通る」
アレクシスの宣言が、門の通路に反響する。彼が前に出ると、彼らはその威圧感に気圧されたように、左右へと分かれた。
衛兵たちの間を抜けるエリアナの正装は、薄暗い通路の中でも白く輝いていた。その背中に、請願団の民衆から、静かだが地響きのような歓声が送られる。
「エリアナ、君が語るべきを語りなさい。……誰にも君を遮らせはしない。王太子としての私の権威は、すべて君が真実を語るための盾として使う」
「ありがとうございます、アレクシス殿下」
通路を抜けた先には、夕日に照らされた王都の目抜き通りが広がっていた。その突き当たりにそびえる王宮。そこには、ループ前の世界で、彼女を葬り去った宰相オルフェンが待っているはずだ。
託された意志の重さを、エリアナは心地よい責任として受け止めていた。独りで歩いたあの日の終わりを塗り替えるために。二人、そして数千の心と共に、エリアナは王宮への階段を昇り始めた。
王都の城壁が見えてきた。ループ前、エリアナが絶望と屈辱の中で見上げた、高く無機質な石の壁だ。
街道を埋め尽くした請願団は、王都の門から一定の距離を保ったところで、一斉に停止した。数千人の集団が、誰に命じられるでもなく整然と足を止める。
城壁の上で身構えていた守備兵たちが、その異様な規律正しさに困惑しているのが、遠目にも分かった。
「……ここまでだな」
請願団の先頭にいた若者が、馬上のエリアナを見上げた。ループ前、悲壮感に包まれ、エリアナの声が届かなかった彼らの目は、今は澄み渡り、一途な期待を宿している。
「ここから先は、アンタたちの戦いだ。……俺たちが一緒に行けば、また『反乱』だと騒ぐ口実をあいつらに与えるだけだからな」
若者は一度、王都の重厚な門を睨み、それからエリアナへと視線を戻した。
「任せたぜ、お嬢様。……いや、エリアナ様。俺たちの命も、この国の明日も、あんたに預ける。……逃げんなよ?」
その言葉は、祈りに似た重さを持っていた。
エリアナは深く、一度だけ頷いた。
「ええ、逃げません。皆さんの声は、私が必ず届けます」
◇◇◇
エリアナは馬を降り、アレクシスと共に歩き出した。背後には数千人の民。前方には、自分を断頭台へ送った者たちが待ち構える王都。
エリアナの隣を歩くアレクシスは、帯剣こそしているものの、剣を抜く気配はない。彼はあくまで一歩下がり、エリアナの歩みを邪魔しない位置を保っている。
「緊張しているかい?」
アレクシスの静かな問いに、エリアナは正面を見据えたまま答えた。
「不思議と……怖くはありません。お父様が中で道を整え、殿下が隣にいてくださる。そして、後ろにはあんなにたくさんの方々がいるのですから」
門の前に近づくと、重厚な鉄の扉がゆっくりと開き始めた。そこには、武装した衛兵たちが壁のように並んでいた。
「――道を開けろ。未来の王と、その伴侶が通る」
アレクシスの宣言が、門の通路に反響する。彼が前に出ると、彼らはその威圧感に気圧されたように、左右へと分かれた。
衛兵たちの間を抜けるエリアナの正装は、薄暗い通路の中でも白く輝いていた。その背中に、請願団の民衆から、静かだが地響きのような歓声が送られる。
「エリアナ、君が語るべきを語りなさい。……誰にも君を遮らせはしない。王太子としての私の権威は、すべて君が真実を語るための盾として使う」
「ありがとうございます、アレクシス殿下」
通路を抜けた先には、夕日に照らされた王都の目抜き通りが広がっていた。その突き当たりにそびえる王宮。そこには、ループ前の世界で、彼女を葬り去った宰相オルフェンが待っているはずだ。
託された意志の重さを、エリアナは心地よい責任として受け止めていた。独りで歩いたあの日の終わりを塗り替えるために。二人、そして数千の心と共に、エリアナは王宮への階段を昇り始めた。
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