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第2章
最終話 新しい朝、変わらぬ誓い
(エリアナ視点・王都近郊)
王都の門が再び開いたとき、外を埋め尽くしていた数千の民は、一斉に固唾を呑んでその行方を見守った。夕闇が迫る中、門の奥から現れたのは、松明の炎に照らされた二人の姿だった。
正装を纏ったエリアナと、その隣で彼女に歩調を合わせるアレクシス。二人が請願団の前に立ち止まると、重い静寂が広がった。
「……皆さま、お待たせいたしました」
エリアナの声は、夜の冷気に溶け込み、けれど隅々まで明瞭に届いた。
「皆さまの願いは、正しく聞き届けられました。物流の復旧、そして地方の再建…… これらはすべて、王太子殿下と宰相閣下の名において、最優先事項として約束されました」
一瞬の静寂の後、それは起きた。歓声というにはあまりに重く、嗚咽というにはあまりに力強い、数千人の安堵が夜の空気を震わせたのだ。
先頭にいたあの若者が、信じられないものを見るような目でエリアナを見つめ、それから力なく笑った。
「……本当に、やりやがったんだな。」
彼は一歩前へ出ると、エリアナの前に膝をついた。それは貴族への儀礼ではなく、自分たちを救った「象徴」への、心からの敬意だった。
「……私たちと共に最後まで歩んでくださったこと、心より感謝いたします、エリアナ様」
ループ前、彼らの言葉は絶望で象られていた。けれど今は、その言葉が揺るぎない絆の証となった。
エリアナは微笑み、彼の手を優しく取った。
「ええ。約束しましたもの。……私はこれからも、皆さまが愛するこの国を、皆さまと共に守り続けると」
アレクシスもまた、民衆に向けて宣言した。
「皆の勇気に感謝する。……明日からは、武器の代わりに希望を持って、それぞれの町へ戻ってほしい。君たちが作りたい未来を、今度は私が、王宮から支えよう」
その夜、王都の門の外には、温かい焚き火がいくつも灯った。それはかつての「反乱の火」ではなく、新しい時代を祝う「希望の灯火」だった。
◇◇◇
数日後。王宮の喧騒から離れた公爵家の庭園で、エリアナは一人、風に吹かれていた。お茶会の準備が整い、いつものようにミレーヌが静かに歩み寄る。
「エリアナ様、殿下がお見えになりました」
振り返ると、そこにはダニエルを伴ったアレクシスがいた。ループ前には決して見ることのできなかった、身分も立場も超えて一つの目的を成し遂げた「チーム」の姿がそこにあった。
「お父様は?」
「閣下は今、宰相閣下と新しい物流網の図面を囲んでおられます。……お二人とも、随分と熱くなっておいででしたよ」
ダニエルが少し愉快そうに報告する。エリアナは、ようやく心からの安らぎを感じていた。
父・ルーカスは、公爵としての重圧を分かち合う「共闘者」を得て、ミレーヌとダニエルは、暗殺や消息不明という運命を回避して、今ここにいる。
そして、
「エリアナ。……改めて、礼を言わせてほしい」
アレクシスが彼女の前に立ち、その手を取った。
「君が私を、そしてこの国を信じてくれたから、私は今日ここに立っていられる。 ……これから先、険しい道もあるだろう。だが、君がいれば、どんな苦難だって越えていける」
「……ふふ、お上手ですわね、殿下」
エリアナは微笑み、彼に寄り添った。
ふと、視線の先に赤いバラの花が咲いているのが見えた。ループ前の最後に見た、あの断頭台に咲いた「血の花」を思い出す。
けれど今の彼女にとって、その色はもう恐怖の象徴ではなかった。それは、夜明けを告げる太陽の色であり、情熱を持って生きる人々の鼓動の色だ。
「……さあ、行きましょうか」
空は高く、どこまでも澄み渡っていた。
ーーfin.
王都の門が再び開いたとき、外を埋め尽くしていた数千の民は、一斉に固唾を呑んでその行方を見守った。夕闇が迫る中、門の奥から現れたのは、松明の炎に照らされた二人の姿だった。
正装を纏ったエリアナと、その隣で彼女に歩調を合わせるアレクシス。二人が請願団の前に立ち止まると、重い静寂が広がった。
「……皆さま、お待たせいたしました」
エリアナの声は、夜の冷気に溶け込み、けれど隅々まで明瞭に届いた。
「皆さまの願いは、正しく聞き届けられました。物流の復旧、そして地方の再建…… これらはすべて、王太子殿下と宰相閣下の名において、最優先事項として約束されました」
一瞬の静寂の後、それは起きた。歓声というにはあまりに重く、嗚咽というにはあまりに力強い、数千人の安堵が夜の空気を震わせたのだ。
先頭にいたあの若者が、信じられないものを見るような目でエリアナを見つめ、それから力なく笑った。
「……本当に、やりやがったんだな。」
彼は一歩前へ出ると、エリアナの前に膝をついた。それは貴族への儀礼ではなく、自分たちを救った「象徴」への、心からの敬意だった。
「……私たちと共に最後まで歩んでくださったこと、心より感謝いたします、エリアナ様」
ループ前、彼らの言葉は絶望で象られていた。けれど今は、その言葉が揺るぎない絆の証となった。
エリアナは微笑み、彼の手を優しく取った。
「ええ。約束しましたもの。……私はこれからも、皆さまが愛するこの国を、皆さまと共に守り続けると」
アレクシスもまた、民衆に向けて宣言した。
「皆の勇気に感謝する。……明日からは、武器の代わりに希望を持って、それぞれの町へ戻ってほしい。君たちが作りたい未来を、今度は私が、王宮から支えよう」
その夜、王都の門の外には、温かい焚き火がいくつも灯った。それはかつての「反乱の火」ではなく、新しい時代を祝う「希望の灯火」だった。
◇◇◇
数日後。王宮の喧騒から離れた公爵家の庭園で、エリアナは一人、風に吹かれていた。お茶会の準備が整い、いつものようにミレーヌが静かに歩み寄る。
「エリアナ様、殿下がお見えになりました」
振り返ると、そこにはダニエルを伴ったアレクシスがいた。ループ前には決して見ることのできなかった、身分も立場も超えて一つの目的を成し遂げた「チーム」の姿がそこにあった。
「お父様は?」
「閣下は今、宰相閣下と新しい物流網の図面を囲んでおられます。……お二人とも、随分と熱くなっておいででしたよ」
ダニエルが少し愉快そうに報告する。エリアナは、ようやく心からの安らぎを感じていた。
父・ルーカスは、公爵としての重圧を分かち合う「共闘者」を得て、ミレーヌとダニエルは、暗殺や消息不明という運命を回避して、今ここにいる。
そして、
「エリアナ。……改めて、礼を言わせてほしい」
アレクシスが彼女の前に立ち、その手を取った。
「君が私を、そしてこの国を信じてくれたから、私は今日ここに立っていられる。 ……これから先、険しい道もあるだろう。だが、君がいれば、どんな苦難だって越えていける」
「……ふふ、お上手ですわね、殿下」
エリアナは微笑み、彼に寄り添った。
ふと、視線の先に赤いバラの花が咲いているのが見えた。ループ前の最後に見た、あの断頭台に咲いた「血の花」を思い出す。
けれど今の彼女にとって、その色はもう恐怖の象徴ではなかった。それは、夜明けを告げる太陽の色であり、情熱を持って生きる人々の鼓動の色だ。
「……さあ、行きましょうか」
空は高く、どこまでも澄み渡っていた。
ーーfin.
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