転生王子の常識は非常識らしいです!

四六くま

文字の大きさ
14 / 14
第一章 転生者、ルーク・グランバート

11 葛藤

しおりを挟む
『筋萎縮性側索硬化症(ALS)』

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気のこと。 しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をけるため、神経が治れば病気も治るため、前世では薬などで回復させることができるようになってきた。──ウィキ〇ディアより引用


しかしここは異世界。
そんな薬なんてない。
もしかかった場合は絶望的であることは明白である。
しかし幸運な事に僕はこの病気について詳しく知っている。
その知識だけでベルさんを治すことが出来るかどうか·····

え?なんでそんなに詳しいのかって?
それは前世では名門大学の医学部に所属してたからね。不本意ながら。
その理由は、いつかまたの時ということで。
とにかく、どうやってこの異世界という地で治すかだけど······

「ベルさん。今から僕の指示の通りに体を動かしてください」
うまく状況が飲み込めていない様子だったが仮にも国の王子から言われたことであるため素直に肯首する。

「寝た状態で構いません。足の先から順番に動かしたり、力を入れたりして特に違和感を感じるところや感覚が無くなっている部分があるか確認してください。自分で確認しにくい部分があれば言ってください。手で抑えたりしてこちらから確認するので。とりあえず頭以外を動かして確認してみてください」
何をするつもりなのかわかっていない様子のベルさんだったが、とりあえず、と言われた通りに身体の至るところを動かして確認する。
「あ·····あの、腰を······力···入らなくて·····」

「わかりました。ちょっと失礼しますね」

指圧で腰の部分を確認する。
一般的な腰と比べて、ベルさんの腰は明らかに硬さにムラがあった。凸凹という程ではないが、やはり神経が部分的に固まっている。
「腰の部分はわかりました。胸元や肩はどうですか?」
「あ·····はい。凝っている、ような感覚は····でも、腰ほどでは······」
ふむふむ。
「足はどうでしたか?」
「足をつっているような感じは·····はい」
足の太ももを確認してみる。
確かに、まるで太ももをつるように筋肉が強ばっている。
ただ、これに関してはALSが原因と言うよりかは、ALSによる二次被害──無理に歩こうとして足の変な部分に力が加わってしまった結果──であるように思える。
肩も同じだと思う。
つまり、根源は足や肩ではないということだ。
だとすると、『腰』か『脳』か。


待てよ?先程から舌の動きが鈍くなっている気がする。つまり、脳(もしくは頭の何処か)にALSが絡んできてるということ。
つまり


「腰と脳にALSが潜んでいます」



これは厄介なことになった。

腰と脳の両方を魔法で治療すればいいのでは
と思う人がいるかもしれない。
だが、出来ることならそれは避けたいのが僕の本音である。
というのも、魔法はイメージが最重要だからだ。兄様の怪我を治すことが出来たのは、僕に知識があっただけではなく『外傷』があったからでもある。外から見て具体的な治療場所、一番最初の治す前の状態のイメージが付けやすいことが難なく成功した理由と言えよう。
しかし、今回は違う。
外傷は無く、怪我じゃない病気である。
病気は「再生する」ことで治る訳では無いため、もっと具体的なイメージが必要であると予想出来る。
もし脳に大元の根源があるなら、イメージが困難であることは容易であろう。
ただでさえ脳は超精密機械であり、脳に少しでも異常があれば手術となる。それほどに腰や足と違って難しい。

より強いイメージで魔法を使うとなると、いくら僕でも未知の世界であり、
魔力が足りなくなる可能性が───





「お母さん·····治るよね·····?」




ハッとして僕は振り返った。
今にも泣きそうなのを祈るように固く握った手で必死に堪えるシャルルの姿が目に映った。


「こら!に急に話しかけてはダメだぞ!」

クロロが妹に小さく指摘する声がした。

ただ、僕にはそれよりも彼の言った
「ルーク王子」の部分が引っかかった。ただ、いつもなら王子なんて付けなくても···、と思うのだが気になったのはそれではなかった。



(そうだよ)

(僕はもう一般人じゃない)

  (じゃあなんだ?)

             (僕は一国の王子なんだ)

 (王子はなんのために存在するのか)

(無論───······)





「国民を守るためだろうが····!」




声には出さなかったが、全力で叫んだあとのように、心の中のモヤモヤしたものは完全になくなっていた。

「キーン先生!」
後ろで兄妹をなだめていた先生は呼ばれてこちらの方を向いた。


「今から治療します!!手伝ってもらえませんか」
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

めるめるめー

ふっつーに面白いと思う
頑張ってください
(語彙力消失)

2019.10.30 四六くま

ありがとうございます!
更新全くしていなくてごめんなさい!!

解除
八神 風
2019.02.24 八神 風
ネタバレ含む
2019.02.27 四六くま

思いつきで書き進めているので読んだ話に影響(良い言い方するとインスピレーション)うけて似た展開の在り来りな展開になってると思います(´ー∀ー`)
独自性を何処かで開花させなければ...とは一応思ってます(๑¯﹀¯๑)

解除

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。