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第8話ー4
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すっかり嫌になった。
友好国の王太子が相手故に、口に出しては言わないが。
ベルはさっきの一件――『国王失格』発言――で、マサムネが受け入れられなくなった。
マサムネとの仲は微妙らしいフェデリコとアドルフォも、はっきり言ってしまえば、良くて『苦手』、悪ければ『嫌い』なんじゃなかろうかと思う。
比べてその息子とは思えないほど礼儀正しく、しっかりとしているムサシに対しては、フェーデもアドルフォも、そしてベルも好感を抱いているが。
「先ほどは父が大変なご無礼を……」
現在、晩餐会中。
さも申し訳なさそうにフラヴィオの下へとやって来たムサシが、『とっくり』というものに入ったレオーネ酒を、『ぐい呑み』というらしいレオーネ国の陶器の器に注いでいく。
フラヴィオが、いつもの優しく明るい笑顔を返した。
「良いんだ、気にするなムサシ。テレトラスポルトのあるマサムネは、余よりもずっと、多くの国を見ているからな。忠告してくれるのは有難いことだ」
今朝と同じ顔触れにアドルフォを加えての、総勢21人の晩餐会。
席次は今朝とほぼ同じ故に、ベルはフラヴィオの左隣にいた。
ムサシがベルの元にもレオーネ酒を注ぎにやって来る。
また謝罪しながら、ぐい呑みよりも一回り小さな『おちょこ』と呼ばれる器に、レオーネ酒を注ぐ。
この国の王侯貴族の食事にはワインがお供で、酒豪のフラヴィオやフェデリコ、アドルフォはベルが2口も飲めば酔っぱらう強さのものを水のように飲む。
一方で、下戸や女子供が飲むヴィーノは水でかなり薄めて作られており、ベルは普段そっちの方を飲んでいた。
それに比べ、本日初めて口にするレオーネ酒は強いようだ。
子供たちはいつも通りヴィーノだが、ベルはあと数日で成人ということで『おちょこ』が用意された(タロウとハナはマタタビ酒)。
「刺身と合うから、飲んでみぃ。米で出来とる酒や。美味いでー」
と、ベルの正面に座っているマサムネ。
さっきの一件以降、ずっとベルの機嫌を取るように話し掛けて来る。
が、ベルは目を合わせず、素っ気なく返事をする。
只でさえ感情が表に出にくく淡々とした口調なのに、そんな言い方をされたら、厳しい残暑も、湯上りの火照りも、全て吹っ飛ばすような冷風に乗ってマサムネの耳に届けられた――
「ソーデスカ、ソレハドーモ。ワー、オイシーデスネー」
マサムネが隣のヴィットーリアに助けを求める。
「うぅ、ヴィットーリアはん、ベルがめっちゃ怖いねんけど。しかも「オイシーデスネ」って、まだ飲んでへんし」
ヴィットーリアが斜め向かいのベルを見て、少しばかり柳眉を逆立てる――「これ」「申し訳ございません」
しかしマサムネと目を合わせる気にはならず、ベルは少し俯いてレオーネ酒を一口含んでみた。
強い酒の匂いと感覚に、飲み込むまでに5秒ほど時間を要した。
喉がじわっと熱くなる。
右隣のフラヴィオが「待て」とベルの手からおちょこを取り上げ、左隣のフェデリコが使用人に向かって手を上げた――「水とぐい呑みを頼む」
今度はおちょこよりも大きいぐい呑みに、水で5倍に希釈したレオーネ酒を飲んでみる。
すると、ほんのりとした甘みが口の中に広がった。
「……美味しい」
「せやろ?」
と、マサムネが安堵したように笑顔になった。
「ほら、刺身を食べてみぃ。ワサビも、ちょびーっとなら大丈夫やで」
レオーネ国の『箸』という道具を、覚えたばかりのぎこちない手付きで使ってみる。
刺身にほんの少しだけワサビを乗せ、小皿の醤油に付けて口に入れた。
生の魚というのは初めてだし、ワサビは今朝のこともあって恐る恐るだった。
「……美味しい」
二度目の台詞が出た。
レオーネ酒を飲み、また刺身を食べてみる。
もう一度同じ台詞が出た。
レオーネ料理やレオーネ酒というのは、こんなにも美味だったのか。
そう感心したら、やっとマサムネの顔を見る気が起きた。
「はぁーっ、ほんまかわええ顔……」
「これはレオーネ島の魚ですか?」
「せやで。先日獲れたのを、腐らないように魔法でカチンコチンに凍らせておいたん」
「なんと便利な。ワサビもよく味わってみると上品な香りがするのですね」
「せやろせやろー?」
と自慢げに笑んだマサムネが、「けどまぁ」と北の方角を指差した。
「すぐ隣の国でも、似たようなやつ料理に使っとるけどな。うちのワサビは緑やけど、そっちは白いやつ」
この島の北隣は、サジッターリオ島だ。
東隣のアクアーリオ島よりは小さいようだが、やはりここカプリコルノ島よりは何倍も広大だ。
アクアーリオもサジッターリオも昔は敵国だったようだが、現在は友好国とはいわずとも貿易相手国だった。
「サジッターリオ国は、レオーネ国とも国交があるのですか?」
「あるで。東隣のアクアーリオとも。うちがこの国とベッタベタのイッチャイチャに仲良いことは、この近辺に周知させておかなあかん」
それは、この国はレオーネ国に『守られて』いるという風に聞こえた。
フラヴィオが北を指差し、フェデリコが東を指差して、ベルの顔を見て声をはもらせた――「負けないぞ?」
マサムネが「まぁな」と同意してから続ける。
「この国と、アクアーリオ、サジッターリオの三国やったら、この国が圧倒的に強いんやけどな。どっちも『力の王』にビビッとるし。けど、念のため、や。昔みたいに、またこの国襲ったらどうなるか分かってんなって、牽制しとかなあかん」
「どうなるの?」
と、マサムネの右隣――ベルの左斜め向かい――のヴァレンティーナが心配そうに問うた。
するとマサムネが細い目をさらに細くし、八重歯を覗かせて笑んだ。
ヴァレンティーナの頭を撫でる。
「んーとなぁ、「めっ」てするんやでー。そういう悪いことしたらあかんって、おっちゃんが男らしく「めっ」て叱ってあげるんやでー。おっちゃんが絶対守ったるからなー、愛らしい愛らしい5番目の天使」
素直なヴァレンティーナが「ありがとう」と微笑みかけると、マサムネが「あかーん」と言ってでれんでれんになった。
たぶん「めっ」とか言わないだろうし、「どうなるか分かってんな」は換言すれば「ぶっ殺す」あたりだろうと察しながら、ベルは複雑な気分になる。
魔法の必要性はもうよく分かったし、マサムネの気遣いも有難いことなのだろうが、やっぱりどうしてもこの国が弱いとは思えない。
(それなのに、わざわざフラヴィオ様の側室にモストロやメッゾサングエを迎えるなど……)
正直、言語道断だとさえ思う。
魔法の必要性は本当によく分かった。
しかし、矛盾しているようだが、モストロを完全に受け入れたわけではない。
ハナやタロウには好意も抱いているし感謝もしているが、それでもモストロはまだまだ奇怪な生物だと思っている。
それがフラヴィオの第二夫人になるということは、ベルにとって、神のような存在のフラヴィオの高貴な血が穢されるということの気がしてならなかった。
それに、ヴィットーリアだって抵抗あるのではないかと思う。
フラヴィオに側室100人できる覚悟で結婚したらしい大人物だし、コニッリョを仲間にするべきとの存意だ。
でも誰よりも何よりも愛する夫、しかも『国王』の妻にモストロやそのメッゾサングエとなったら、流石に話は別なのではなかろうか。
右斜め向かいのヴィットーリアを見ると、レオーネ食を好んでいるらしくご満悦そうだ。
誰よりも上品な仕草で箸を器用に使って刺身を食べ、おちょこのレオーネ酒を口に運ぶ。
紅を塗った形の綺麗な唇や、繊細な指先が、同性から見ても艶っぽい。
気品に美貌、美意識、知性、教養、慈悲の心――
どれを取ってもフラヴィオの妻に相応しく、たとえ初見だろうが、着飾った貴婦人の群衆に紛れていようが、誰もが一目で『王妃』と識別できる佇まいを持つこの女に、敵うと言えるモストロやそのメッゾサングエが存在するというのだろうか。
または敵うとは言わずとも、比肩する者がいるのだろうか。
ただ魔力を持ち、魔法が使えるというだけでフラヴィオの側室に選ばれようとしているのなら、ベルはそれはもう異論があった。
フラヴィオの意向はまだ聞いていないが、もしマサムネの意見を受け入れようとしているならば、今この場で異議を唱えてしまおうか。
出しゃばりだとは思うが、幸いこの国ならではの『天使』という一種の職業に選ばれた。
つまりそれは、不服なことがあれば国王に申し出ても良い身分であることは分かったし。
だって、穢されてしまうのだ。
顔を傾けたベルの視線の先にいる、高貴な金の髪と整った横顔を持つこの男が。
国王が。
フラヴィオ・マストランジェロが。
ベルの尊い神が。
なんとも許し難き、冒涜だった。
「なーんだ、ベル」
と、視線を感じて振り返ったフラヴィオが「ふふふ」と笑う。
「抱っこか?」
「ノ」
と答えたにも関わらず、その膝の上に抱っこされてしまったベルの頬が染まる。
実はちょっと思っていることを、小声でフラヴィオに伝える。
「あ…あの、ティーナ様の前でこういったことはお控えいただきたいのですが……」
何故なら、ヴァレンティーナの前では『大人』で居たい気持ちが強い故に。
こうされると幼く映る気がして恥ずかしかった。
ベルの心境を察しながらも、残念に思ったフラヴィオが「むう」と口を尖らせてベルを元の椅子に座らせる。
ベルとフラヴィオの顔を交互に見たヴァレンティーナに「ふふ」なんて笑われ、ベルは小さく咳払いをしてレオーネ酒の水割りを喉に流し込んだ。
友好国の王太子が相手故に、口に出しては言わないが。
ベルはさっきの一件――『国王失格』発言――で、マサムネが受け入れられなくなった。
マサムネとの仲は微妙らしいフェデリコとアドルフォも、はっきり言ってしまえば、良くて『苦手』、悪ければ『嫌い』なんじゃなかろうかと思う。
比べてその息子とは思えないほど礼儀正しく、しっかりとしているムサシに対しては、フェーデもアドルフォも、そしてベルも好感を抱いているが。
「先ほどは父が大変なご無礼を……」
現在、晩餐会中。
さも申し訳なさそうにフラヴィオの下へとやって来たムサシが、『とっくり』というものに入ったレオーネ酒を、『ぐい呑み』というらしいレオーネ国の陶器の器に注いでいく。
フラヴィオが、いつもの優しく明るい笑顔を返した。
「良いんだ、気にするなムサシ。テレトラスポルトのあるマサムネは、余よりもずっと、多くの国を見ているからな。忠告してくれるのは有難いことだ」
今朝と同じ顔触れにアドルフォを加えての、総勢21人の晩餐会。
席次は今朝とほぼ同じ故に、ベルはフラヴィオの左隣にいた。
ムサシがベルの元にもレオーネ酒を注ぎにやって来る。
また謝罪しながら、ぐい呑みよりも一回り小さな『おちょこ』と呼ばれる器に、レオーネ酒を注ぐ。
この国の王侯貴族の食事にはワインがお供で、酒豪のフラヴィオやフェデリコ、アドルフォはベルが2口も飲めば酔っぱらう強さのものを水のように飲む。
一方で、下戸や女子供が飲むヴィーノは水でかなり薄めて作られており、ベルは普段そっちの方を飲んでいた。
それに比べ、本日初めて口にするレオーネ酒は強いようだ。
子供たちはいつも通りヴィーノだが、ベルはあと数日で成人ということで『おちょこ』が用意された(タロウとハナはマタタビ酒)。
「刺身と合うから、飲んでみぃ。米で出来とる酒や。美味いでー」
と、ベルの正面に座っているマサムネ。
さっきの一件以降、ずっとベルの機嫌を取るように話し掛けて来る。
が、ベルは目を合わせず、素っ気なく返事をする。
只でさえ感情が表に出にくく淡々とした口調なのに、そんな言い方をされたら、厳しい残暑も、湯上りの火照りも、全て吹っ飛ばすような冷風に乗ってマサムネの耳に届けられた――
「ソーデスカ、ソレハドーモ。ワー、オイシーデスネー」
マサムネが隣のヴィットーリアに助けを求める。
「うぅ、ヴィットーリアはん、ベルがめっちゃ怖いねんけど。しかも「オイシーデスネ」って、まだ飲んでへんし」
ヴィットーリアが斜め向かいのベルを見て、少しばかり柳眉を逆立てる――「これ」「申し訳ございません」
しかしマサムネと目を合わせる気にはならず、ベルは少し俯いてレオーネ酒を一口含んでみた。
強い酒の匂いと感覚に、飲み込むまでに5秒ほど時間を要した。
喉がじわっと熱くなる。
右隣のフラヴィオが「待て」とベルの手からおちょこを取り上げ、左隣のフェデリコが使用人に向かって手を上げた――「水とぐい呑みを頼む」
今度はおちょこよりも大きいぐい呑みに、水で5倍に希釈したレオーネ酒を飲んでみる。
すると、ほんのりとした甘みが口の中に広がった。
「……美味しい」
「せやろ?」
と、マサムネが安堵したように笑顔になった。
「ほら、刺身を食べてみぃ。ワサビも、ちょびーっとなら大丈夫やで」
レオーネ国の『箸』という道具を、覚えたばかりのぎこちない手付きで使ってみる。
刺身にほんの少しだけワサビを乗せ、小皿の醤油に付けて口に入れた。
生の魚というのは初めてだし、ワサビは今朝のこともあって恐る恐るだった。
「……美味しい」
二度目の台詞が出た。
レオーネ酒を飲み、また刺身を食べてみる。
もう一度同じ台詞が出た。
レオーネ料理やレオーネ酒というのは、こんなにも美味だったのか。
そう感心したら、やっとマサムネの顔を見る気が起きた。
「はぁーっ、ほんまかわええ顔……」
「これはレオーネ島の魚ですか?」
「せやで。先日獲れたのを、腐らないように魔法でカチンコチンに凍らせておいたん」
「なんと便利な。ワサビもよく味わってみると上品な香りがするのですね」
「せやろせやろー?」
と自慢げに笑んだマサムネが、「けどまぁ」と北の方角を指差した。
「すぐ隣の国でも、似たようなやつ料理に使っとるけどな。うちのワサビは緑やけど、そっちは白いやつ」
この島の北隣は、サジッターリオ島だ。
東隣のアクアーリオ島よりは小さいようだが、やはりここカプリコルノ島よりは何倍も広大だ。
アクアーリオもサジッターリオも昔は敵国だったようだが、現在は友好国とはいわずとも貿易相手国だった。
「サジッターリオ国は、レオーネ国とも国交があるのですか?」
「あるで。東隣のアクアーリオとも。うちがこの国とベッタベタのイッチャイチャに仲良いことは、この近辺に周知させておかなあかん」
それは、この国はレオーネ国に『守られて』いるという風に聞こえた。
フラヴィオが北を指差し、フェデリコが東を指差して、ベルの顔を見て声をはもらせた――「負けないぞ?」
マサムネが「まぁな」と同意してから続ける。
「この国と、アクアーリオ、サジッターリオの三国やったら、この国が圧倒的に強いんやけどな。どっちも『力の王』にビビッとるし。けど、念のため、や。昔みたいに、またこの国襲ったらどうなるか分かってんなって、牽制しとかなあかん」
「どうなるの?」
と、マサムネの右隣――ベルの左斜め向かい――のヴァレンティーナが心配そうに問うた。
するとマサムネが細い目をさらに細くし、八重歯を覗かせて笑んだ。
ヴァレンティーナの頭を撫でる。
「んーとなぁ、「めっ」てするんやでー。そういう悪いことしたらあかんって、おっちゃんが男らしく「めっ」て叱ってあげるんやでー。おっちゃんが絶対守ったるからなー、愛らしい愛らしい5番目の天使」
素直なヴァレンティーナが「ありがとう」と微笑みかけると、マサムネが「あかーん」と言ってでれんでれんになった。
たぶん「めっ」とか言わないだろうし、「どうなるか分かってんな」は換言すれば「ぶっ殺す」あたりだろうと察しながら、ベルは複雑な気分になる。
魔法の必要性はもうよく分かったし、マサムネの気遣いも有難いことなのだろうが、やっぱりどうしてもこの国が弱いとは思えない。
(それなのに、わざわざフラヴィオ様の側室にモストロやメッゾサングエを迎えるなど……)
正直、言語道断だとさえ思う。
魔法の必要性は本当によく分かった。
しかし、矛盾しているようだが、モストロを完全に受け入れたわけではない。
ハナやタロウには好意も抱いているし感謝もしているが、それでもモストロはまだまだ奇怪な生物だと思っている。
それがフラヴィオの第二夫人になるということは、ベルにとって、神のような存在のフラヴィオの高貴な血が穢されるということの気がしてならなかった。
それに、ヴィットーリアだって抵抗あるのではないかと思う。
フラヴィオに側室100人できる覚悟で結婚したらしい大人物だし、コニッリョを仲間にするべきとの存意だ。
でも誰よりも何よりも愛する夫、しかも『国王』の妻にモストロやそのメッゾサングエとなったら、流石に話は別なのではなかろうか。
右斜め向かいのヴィットーリアを見ると、レオーネ食を好んでいるらしくご満悦そうだ。
誰よりも上品な仕草で箸を器用に使って刺身を食べ、おちょこのレオーネ酒を口に運ぶ。
紅を塗った形の綺麗な唇や、繊細な指先が、同性から見ても艶っぽい。
気品に美貌、美意識、知性、教養、慈悲の心――
どれを取ってもフラヴィオの妻に相応しく、たとえ初見だろうが、着飾った貴婦人の群衆に紛れていようが、誰もが一目で『王妃』と識別できる佇まいを持つこの女に、敵うと言えるモストロやそのメッゾサングエが存在するというのだろうか。
または敵うとは言わずとも、比肩する者がいるのだろうか。
ただ魔力を持ち、魔法が使えるというだけでフラヴィオの側室に選ばれようとしているのなら、ベルはそれはもう異論があった。
フラヴィオの意向はまだ聞いていないが、もしマサムネの意見を受け入れようとしているならば、今この場で異議を唱えてしまおうか。
出しゃばりだとは思うが、幸いこの国ならではの『天使』という一種の職業に選ばれた。
つまりそれは、不服なことがあれば国王に申し出ても良い身分であることは分かったし。
だって、穢されてしまうのだ。
顔を傾けたベルの視線の先にいる、高貴な金の髪と整った横顔を持つこの男が。
国王が。
フラヴィオ・マストランジェロが。
ベルの尊い神が。
なんとも許し難き、冒涜だった。
「なーんだ、ベル」
と、視線を感じて振り返ったフラヴィオが「ふふふ」と笑う。
「抱っこか?」
「ノ」
と答えたにも関わらず、その膝の上に抱っこされてしまったベルの頬が染まる。
実はちょっと思っていることを、小声でフラヴィオに伝える。
「あ…あの、ティーナ様の前でこういったことはお控えいただきたいのですが……」
何故なら、ヴァレンティーナの前では『大人』で居たい気持ちが強い故に。
こうされると幼く映る気がして恥ずかしかった。
ベルの心境を察しながらも、残念に思ったフラヴィオが「むう」と口を尖らせてベルを元の椅子に座らせる。
ベルとフラヴィオの顔を交互に見たヴァレンティーナに「ふふ」なんて笑われ、ベルは小さく咳払いをしてレオーネ酒の水割りを喉に流し込んだ。
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