酒池肉林王と7番目の天使~番外編集~

日向かなた

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天使の昼下がり(本編45話の省略分・前編)

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 ――1492年9月上旬の昼下がり。

 カプリコルノ国の宮廷オルキデーア城の裏に広がる庭園にて。

 中央付近に設置された大きな日傘付きの円卓に、国王フラヴィオ・マストランジェロの9人の天使たちが集まっていた。

 7番目の天使こと天使軍の元帥であり、ここカプリコルノ国の宰相であり、そして最近世界一の大国カンクロの女王に君臨したベル――ベルナデッタ・アンナローロが口を開く。

「改めてよろしいですか、天使の皆様方」

 天使たちが「はいスィー」と声を揃えて姿勢を正し、ベルに注目する。

「『天使』とは、一種の職業です。その仕事はカプリコルノ国王フラヴィオ・マストランジェロ陛下を愛し、陛下の癒しとなり、陛下の助けとなり、陛下のためにいつまでも美しくあり、陛下のために生きること、でございます。そしてこの昼下がりというのは、私たち天使にとって『いつまでも美しくあること』の仕事のためにある時間帯です」

 とベルが自身の前にあるカップタッツァを上品な手付きで持ち上げると、他の天使も続いた。

 9つすべてのタッツァが、小刻みに震える。

「こ…この『いつもの茶・改』は、前王妃ヴィットーリア陛下特製美容健康茶である『いつもの茶』に、私がカンクロ国の王妃にされているあいだに見つけた、素晴らしい美容効果を持つカンクロ国のハーブエルベを追加したもの……そう、その名の如く『いつもの茶』をより『改良』したものでございます」

「か、改『悪』の間違いやでぇぇぇっ……!」

 と8番目の天使アヤメが半泣きになって突っ込むと、ベルが「いいえ」と強い語調で返してきた。

「尚のこと美容効果が高まったのですから、改『良』でございます。あ…味はともかく……」

「そ、その味のことをもうちょっと考えてよぉぉぉっ……!」

 と、アヤメに続いて半泣きの1番目の天使ベラドンナ。

 ベルがまた「ノ」と返す。

「肌は女の命でございます。特に花や宝石のように陛下を飾る天使たるもの、味など二の次、三の次。だ、大丈夫です……もう火傷しない程度に冷めましたから、一気に喉に流し込めば」

「そうですよ、皆様」

 と、3番目の天使こと町天使セレーナの意を決したそこに顔がある。

「あたしたちは一般女性ではなく、誇り高き天使。どんなに血も涙も人情味も無い味だろうと、恐れず立ち向かわなければ」

「ああ、凄いっ……!」

 と、2番目の天使アリーチェがセレーナを見て身体を震わせる。

「流石は天使軍の最年長、42歳ながら余裕で20代の外見を保つ天使の鏡だわ……!」

「余裕?」

 と鸚鵡返しに問うたセレーナの言葉に、嘲笑が混じる。

「いえいえ、そんな……よろしいですか、お嬢様方。人間のお肌というのは、二十歳を境に坂を下り始めます。下れば下るほど、老化という名の道を進んでいきます」

「二十歳っておらだべ」

 と、4番目の天使こと村天使パオラ。

 セレーナが頷いて続く。

「そうよ、パオラちゃん。厳しい目で見れば18歳から下っているけれどほぼ平坦だし、赤ちゃんと比較すると流石に老化してるけれど許容範囲よ。でもね、二十歳にはいよいよ坂の傾斜がはっきり見え始めるの。まぁ、まだ人によっては気付かないのだけれど。二十歳の下り坂を角度で表すなら、そうね……傾斜3度くらいかしら。21歳で4度、22歳で5度。その下り坂を進むのではなく踵を返し、永遠に上り続けなければならないのが、あたしたち天使よ」

「1度ずつ増えていくのね。じゃあ、来月で32歳になるわたしのお肌の下りは傾斜15度かしら」

 とアリーチェが言うと、「まさか」と返ってきた。

「傾斜15度は25歳で到達します。ここで努力するかしないかで、30歳になったとき外見年齢が大きく分かれます。まだ20代であることを理由に特に何もせず余裕綽々といる20代後半より、やばいと思って努力を始めた30代前半の方が若いということはよくあることです。30歳で坂は傾斜25度に達しているとはいえ」

「えっ…わたしの坂、今傾斜何度……!?」

「来月で32歳のアリー様は28度、33歳のベラ様は29.5度です。気を抜いたその刹那、坂をずるずると滑り落ちていくことでしょう」

 アリーチェとベラドンナが「えぇえぇえ」と震え上がる傍ら、セレーナの言葉は「そして」と続く。

「天使軍最年長42歳の、このあたしの坂は45度……そう、余裕など微塵もありません。あたしは気を抜いたその瞬間、坂を………」

 ごくり、と天使一同の喉が鳴る。

「ゴロゴロゴロゴローーーっ!」

「きゃーーーっ!」

 と天使一同の悲鳴が裏庭に響き渡ったとき、「はっ」と短い失笑が聞こえた。

 そちらへ振り返ってみると、いつの間にか実年齢64歳ながら外見年齢が驚異の30代後半を保っている、腹筋バキバキ家政婦長ピエトラが立っていた。

「私から言わせれば、セレーナさんを含めみーんな『お嬢さん』さ。いいかい、本当に来るのは45歳以降だよ。いよいよ本当の老化が身に染みるのさ。何、肌の下り坂? 私は傾斜80度の坂を全身の筋肉を駆使してよじ登っているのさ。天使の美しくいる仕事とはちょっとズレるけど、私は宮廷を守る身として、死ぬまで『老化』という敵と戦わなければいけないからね」

『お嬢さん』方が圧倒されてしまう中、「でも」とピエトラが続ける。

「45歳まで行かなくてもさ、『孫』が出来ると急に老け込む人たちがいるんだよねぇ。このあいだまで兄さんや姉さんたちだったのが、急に爺さん婆さんになったりして」

 ここで狼狽し出すはベル。

 手に持ったままのタッツァが再び小刻みに揺れる。

「わ…私、コラード様にお子が――ライモンド殿下が生まれてから……そう、フラヴィオ様に『孫』が出来てから、たまに『ばーさん』だの『ばーちゃん』だの呼ばれるのですがっ……!」

「あれ? つまり陛下の後釜で、王子殿下たちの継母のわたしもおばーちゃんですね」

 と、9番目の天使こと王妃ルフィーナが苦笑する。

「大丈夫だろう、ベルもルフィーナ王妃陛下も。要はきっと、意識の問題なのさ。まぁ、ルフィーナ王妃陛下はメッゾサングエだから何もしなくても老けにくいんだろうけどね」

「ベルとルフィーナ王妃陛下はともかく、実際に血の繋がった『孫』が出来た父上はいきなりお祖父ちゃんになったりするかしら」

 と、5番目の天使こと絶世の美王女ヴァレンティーナがベルを見る。

 それは「ノ」と首を横に振った。

 脳裏に浮かぶは、真夏の太陽のように明るく優しい笑顔の36歳児だ。

「フラヴィオ様はきっと永遠にお若いことでしょう」

「私もそんな気がするわ」

「そうね」

 と天使たちがクスクスと笑っていると、ピエトラがその手に持たれたままでいるタッツァを見て「早く飲みな」と突っ込んだ。

「口直しを持ってきたからさ。パンケーキふわふわトルタなんて出したら天使軍元帥に怒られるから、コレだよ」

 と、黒糖を絡めたクルミを円卓の中央に置く。

「『いつもの茶・改』は相当強烈なようだけど、鼻を摘んじまえば味なんて分からないよ」

 なるほどと、天使一同が鼻を摘まんだ。

 ベルがその顔々を見回し、「では」と鼻声で指示を出す。

「いざ……勇敢に!」

「いただきます!」

 と、9人一斉に『いつもの茶・改』を喉に流し込む。

 鼻を摘まんだところで、ほぼ意味が無し。

 あまりのエグさに「ごぼっ!」と逆流したり、むせ返ったり。

 まだ5歳の6番目の天使ビアンカが、金切り声に近い泣き声を裏庭に響かせる。

「ビアンカこんなの、お鼻つまんだって、お砂糖たくさん入れたって飲めないわぁぁぁっ!」

 と、口いっぱいに黒糖クルミを詰め込んで降参し、ベルとセレーナは気合ですべて胃に流し込んで本日の任務完了。

「素晴らしゅうございます。私は天使軍の元帥、セレーナさんは天使軍の大将でございますね」

「ふふ、そうかしら」

 残りの天使は、茶と黒糖クルミを交互に口にしながら任務を進めていく。

「じゃ、ワタシは中将かしら」

「ベラちゃんは少将よ。前のいつもの茶にすら文句轟々だったし、太ったってふわふわトルタ食べようとするし。天使としての意識がまだまだよ。わたしが中将ね」

「母上が中将で、ベラちゃまが少将なの? じゃあ、ビアンカは大佐なのね」

「『いつもの茶・改』に降参した子が何言ってんのよ。アンタは兵卒よ、ビアンカ。しかも一番下の二等兵」

「えっ!? やーよ、ビアンカ大佐がいいわあぁぁぁっ!」

 ピエトラが「ところで」と口を挟んだ。

 黒の上質な生地で出来た『何か』を、円卓の上に置く。

「これ誰のものか知らないかい? 一階の廊下に落ちていたんだけど」

「何この高級雑巾」

 とベラドンナが、眉を寄せながらその『何か』を手に取る。

 よく見たらまだ作り途中のようで、針が刺さったままになっていた。

「酷い縫い目ね。明らかにド素人。糸がぐちゃぐちゃだわ」

「貸して、ベラ叔母上」

 と、今度はヴァレンティーナがその生地を手に取った。

「雑巾じゃないんじゃない? だって、筒状になってるもの。ていうかこの生地って、ベルのドレスヴェスティートと同じものよね?」

 一同に注目されるベルの左眉が、ぴくりと動いた。

 たしかに『何か』をよく見たら、自身が着ている黒のヴェスティートの生地と同じものだ。

 簡素な形で裾には刺繍が少しだけ入っているのだが、「貸してください」と受け取った『何か』にもそれらしきものが入っている。

 答えが分かったベルから、溜め息と苦笑が漏れた。

「これは、トーレのために作られたヴェスティートです」

 トーレ――サルヴァトーレ・アンナローロ。

 ベルとフラヴィオのあいだに出来た、現在生後三か月のカンクロ国王太子。

「そしてこれを作ったのは――」

「ああっ!」と、ベルの声が遮られた。

 声のした方へと振り返ると、宮廷の1階の廊下と裏庭を繋ぐ扉のところにド派手な黄金の板金鎧――フラヴィオがいる。

 面頬を上げた兜の中にある顔が、狼狽しているのが分かる。

「ち、ち、ち、違うのだ!」

 と叫びながら、50kg以上ある鎧を装備しているとは思えない敏捷さで駆け寄って来る。

「それを作ったのは余じゃないのだ! 息子にヴェスティートだなんて、余はそんな可哀想なことしないのだ! だから返してくれ!」

「なるほどねー」

 と、天使たちが理解する。

 この一見して高級雑巾のような『何か』はサルヴァトーレのヴェスティートで、そしてフラヴィオお手製らしい。

 どうやらベルとお揃いのヴェスティートを作っているようなのだが、間違いなく裁縫なんて初めてで、縫い目はよれよれだし刺繍はぐちゃぐちゃ。

 袖は付けられなかったらしく、胸から下を覆うだけのものだった。

「フラヴィオ様、トーレは王女ではなく王子だと何度申し上げれば――」

「分かってるのだ!」

 と、フラヴィオがベルの手からお手製ドレスを奪って、背に隠す。

「こ、これは余が作ったのではないのだアモーレ! 嘘じゃないのだ! 捨てないでくれ!」

「本当のことを仰ってください、フラヴィオ様。捨てたりしませんし、私は怒っておりませんから。このトーレのヴェスティートは、フラヴィオ様がお作りになったのですね?」

 と問うてきたベルの顔を、フラヴィオが恐る恐る覗き込む。

 どうやらその言葉通り怒っていないようだと分かると、「うむ」と認めた。

 お手製ヴェスティートを、後ろから前の方に持って来る。

「トーレにどうしてもアモーレと同じヴェスティートを着せてみたくて、本当は余が作ったのだ……すまん。でも最後の糸の止め方が分からなくて、困っていたのだ」

 ベルが「貸してください」と、フラヴィオからお手製ヴェスティートを受け取った。

 手早く針に糸を巻き付けて玉留めを作り、糸を歯で切って処理する。

「はい、どうぞ」

「おお、流石アモーレなのだ! ありがとう、助かった」

 とフラヴィオが早速お手製ヴェスティートを持って、「トーレーっ!」と乳母の部屋へと向かって駆けて行く。

 天使一同も付いていく。

 途中、フラヴィオが廊下から『中の中庭』を覗き込み、フェデリコに「描いてくれ!」と頼んでから乳母の部屋に入っていった。

 ちょうど乳母におむつを替えてもらったばかりのサルヴァトーレに、いそいそとお手製ヴェスティートを着せ付けていく。

「母上とお揃いのヴェスティートだぞ、トーレ。父上が作ったのだ。嬉しいか? そーかそーか、嬉しいか」

 ということにされたサルヴァトーレが、唇を除く顔中に父のキスバーチョを食らう。

「可愛いな、トーレ可愛いな。おまえは本当に余のアモーレそっくりだ。おまえが男だなんてやっぱり気のせいだ」

 とデレデレのフラヴィオを見ながら、ベルは複雑な気持ちで苦笑する。

 我が子が父親お手製の服を着せられている図は微笑ましく見える。

 でも、サルヴァトーレはフラヴィオから譲り受けた金髪碧眼を持つ、ベルそっくりな顔立ちの王太子だ。

 あくまでも『王子』だ。

 だから『力の王』の息子として強く逞しく育てたいのに、フラヴィオの目にはどうしても『王女』に映るらしい。

「フラヴィオ様……」

「うん?」

「トーレにヴェスティートを着せるのは、これで最後にしてくださいね?」

「もっちろんなのだ、アモーレ!」

 その台詞が大法螺だったことは、3ヶ月後のフラヴィオの即位18周年祝賀パラータで知ることになる。

 少しして画材を持ってやって来たフェデリコに、親子3人の絵を描いてもらう。

 そのフェデリコも、複雑そうな表情で甥っ子を見ていた。

「トーレは将来、この絵を見て何を思うのか……」

「ん? 何か言ったかフェーデ?」

「い、いえ兄上、何でもありません」

 とフェデリコが、絵を描きながら「ところで」とベルを見た。

「もうすぐカンクロ国女王ベルナデッタ陛下の19歳の誕生日だな」

「スィー、フェーデ様。嬉しい半面、多忙な1日になりそうで……」

「そうだな、宰相で女王陛下となったら流石にな。全部終わったら兄上と2人でカンクロ国の宮廷に泊まって来たらどうだ? トーレが心配だろうが、トーレには乳母も皆も付いているんだから心配しなくて良い。いつもこっちに寝泊まりしてることだし、向こうに泊まるのはちょっとした旅行気分になって、仕事や子育ての気分転換になるんじゃないか?」

 とフェデリコが提案すると、フラヴィオが「おおっ」と声を上げた。

「2人で旅行するの、去年の新婚旅行もどき以来なのだ! そうしよう、アモーレ!」

 そういうことになった。


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