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第0章 これが始まりの物語
1.人生で一番凹んだ日
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「はぁ~。なんで俺の髪ってこんなに真っ黒なんだろうな…。」
学校からの帰り道、昼休みにクラスの女子から言われたことを思い出して一人ぼやいていた。
昨日の授業参観の時、皆の母親が後ろに並ぶ中で俺の母親だけが目立っていた事が俺を凹ませていたのだ。
ダークブロンドのキラキラした髪、すらりと伸びた四肢に高い身長。
日本の量産型オバちゃんともいえる様なたくさんの母親たちの中に居るとその様相は一際目立っていた。
「遠見君ってさ~、本当にあの母親の子供なのって信じられない程名前以外は日本人100%だよね~。」
昼食の時間、皆それぞれに友達同士でグループを作り和気あいあいと弁当を食べていた中で、俺が居たグループは授業参観に来ていた母親達で誰がキレイだったかという話で盛り上がっていた。
中学1年生の終わりぐらいの時から、昼休みも休日に遊びに行く時も、何故かいつもこの男女数名で集まっていた。
その仲間内の女友達の一人がなんとなく思った疑問が不意に口から出てしまったかの様に何の気なしに、そう俺に話を振ってきたのだ。
俺は見事に典型的日本人である父親の血を100%受け継いでいる様な見た目をしていた。
その為か、初めて会う人には俺は父さんの連れ子で、イタリア人の美人のお手本の様な母さんとは俺は似ておらず継母に思われることがしばしばある。
「真っ黒でおまけに剛毛だし、身長もこれからたいして高くなりそうもないし…。」
世間の思うダブルのイメージにある様なものが俺には何もなく、がっかりされることも何度かあった。そういう経験をしてきたせいか、見た目にずっとコンプレックスを抱えてきていたのだ。
今までの人生の中で何度も言われた様な事なので慣れてはいたが…、好きな女の子に言われたことでその日は一日、帰ってからも夕飯の時もお風呂の時も、布団の中に入ってからもずっと凹んで落ち込んでいた。
別にあの子に悪気があったわけじゃない、たいしたことじゃないのかもしれないが俺には痛かった。
更に新月である今日は部屋の電気を消すと真っ暗で、闇に包まれて気持ちが一層ブルーになっていた。
あの子に聞かれた時は傷付いた事を隠そうと笑って誤魔化していたが、それが乾いた笑いになっていた気がする。
こんなことで俺が傷付いているなんて知られたくない…。
過ぎた事を考え込んでも仕方が無いのかもしれないが、あの子がそれに気付いていませんようにと祈りながら眠りについた。
突然、眩しい明かりに刺激されもう朝かと思い、起き上がろうと重苦しく体を動かし、まだ眠い目を開けると…。
「えっ? ここはどこ? これは……夢?」
そこは自分が手を広げた範囲ぐらいまでしか見えない程、辺り一面に靄のかかった中でぽつりと海に揺られている小舟の中だった。
俺が何が何だか分からずに戸惑っている間に、小舟はまるで誰かが操縦でもしているかの様にすうーっと陸に近寄っていき、近くの浜辺に乗り上げた。
「何なんだ一体…。」
まだ頭もボーっとしている中でそう思いながら小舟を降りていると、用が済んだとばかりに小舟は消え、それと共に辺り一面にあった靄が晴れていった。
晴れてきて辺りをキョロキョロと見渡すと、砂浜の奥にうっそうと茂る木々と、その右手の方に道らしきものが見えた。
よく見えなかったので確かめようと数m程道らしきものに向かって歩いていると、それは舗装もされていない、土の地面を人が踏み固めただけの小道であった。
視線を上げると、その先には小屋の様なものの屋根が見えてきた。
小屋があるという事は人が居るかもしれないし、今居なくともそのうち誰かが来るだろうし、その人にここはどこか聞いてみよう。
そう思ってとりあえず小屋を目指して歩いた。
「そういえば俺、何でこんな服を着てるんだろ?」
葬式の時でもなければ絶対に着ない、コンプレックスで嫌いな黒い色をした上下の服にいつの間にか着替えていたのに気が付いた。
「しかもファンタジー世界の人が着てそうなデザインとか。ローブまで着てるし……、まるで魔法使いみたいだな。」
俺はこの黒い服を脱ぎたくてこの小屋の住人が着替えを貸してくれないかなと思い、戸をノックした。
しかし返事は無く、中に人も居ない様だったのでどうしようかと思ったが、歩いてきて暑かったのもあって失礼ながらも中で待たせて貰おうと戸を開けた。
「お邪魔しま~す。」
小屋の中は大量の薪や木の蔓で編んだカゴが大小いくつかと漁網や銛などがたくさんある程度で、あとは簡素なベッドや小さな机と椅子が2つ、上部で煮炊きもできそうな薪ストーブがあるぐらいだった。
「漁師でも住んでいるのか? ひとまず椅子に座って待たせてもらうか。」
しかしここの住人がすぐには現れなかったのと、テレビも何もない中で待つという退屈さからいつの間にか机に突っ伏して寝てしまっていた。
暫くして、ギーという音が聞こえてハッとして目を覚まし、戸の方をまだ頭がボーっとしながら見やると、目線の先に待望のこの小屋の住人らしき人が入ってきた。
「だ、誰だ!?」
窓らしい窓もない薄暗がりの中で、聞こえてきたその声から男であるという事が分かった。
その男は誰も居ないはずの小屋の中に俺が居るのに気付き、驚いて叫んだ。
その男は更に戸を開け、全開にして小屋の中に陽の光を入れ、俺に浴びせて姿がハッキリと見えると再び驚き、今度は言葉を失っていた。
しかし一度目は警戒して攻撃的な雰囲気であったのが、二度目の驚きの様は一転して青ざめているかの様であった。
「こ、こ、こんな所に貴方様の様な方がいらっしゃるとは思わず…、ご無礼をお許しください!」
と、土下座をして突然俺に焦った様子でペコペコと謝ってきた。
学校からの帰り道、昼休みにクラスの女子から言われたことを思い出して一人ぼやいていた。
昨日の授業参観の時、皆の母親が後ろに並ぶ中で俺の母親だけが目立っていた事が俺を凹ませていたのだ。
ダークブロンドのキラキラした髪、すらりと伸びた四肢に高い身長。
日本の量産型オバちゃんともいえる様なたくさんの母親たちの中に居るとその様相は一際目立っていた。
「遠見君ってさ~、本当にあの母親の子供なのって信じられない程名前以外は日本人100%だよね~。」
昼食の時間、皆それぞれに友達同士でグループを作り和気あいあいと弁当を食べていた中で、俺が居たグループは授業参観に来ていた母親達で誰がキレイだったかという話で盛り上がっていた。
中学1年生の終わりぐらいの時から、昼休みも休日に遊びに行く時も、何故かいつもこの男女数名で集まっていた。
その仲間内の女友達の一人がなんとなく思った疑問が不意に口から出てしまったかの様に何の気なしに、そう俺に話を振ってきたのだ。
俺は見事に典型的日本人である父親の血を100%受け継いでいる様な見た目をしていた。
その為か、初めて会う人には俺は父さんの連れ子で、イタリア人の美人のお手本の様な母さんとは俺は似ておらず継母に思われることがしばしばある。
「真っ黒でおまけに剛毛だし、身長もこれからたいして高くなりそうもないし…。」
世間の思うダブルのイメージにある様なものが俺には何もなく、がっかりされることも何度かあった。そういう経験をしてきたせいか、見た目にずっとコンプレックスを抱えてきていたのだ。
今までの人生の中で何度も言われた様な事なので慣れてはいたが…、好きな女の子に言われたことでその日は一日、帰ってからも夕飯の時もお風呂の時も、布団の中に入ってからもずっと凹んで落ち込んでいた。
別にあの子に悪気があったわけじゃない、たいしたことじゃないのかもしれないが俺には痛かった。
更に新月である今日は部屋の電気を消すと真っ暗で、闇に包まれて気持ちが一層ブルーになっていた。
あの子に聞かれた時は傷付いた事を隠そうと笑って誤魔化していたが、それが乾いた笑いになっていた気がする。
こんなことで俺が傷付いているなんて知られたくない…。
過ぎた事を考え込んでも仕方が無いのかもしれないが、あの子がそれに気付いていませんようにと祈りながら眠りについた。
突然、眩しい明かりに刺激されもう朝かと思い、起き上がろうと重苦しく体を動かし、まだ眠い目を開けると…。
「えっ? ここはどこ? これは……夢?」
そこは自分が手を広げた範囲ぐらいまでしか見えない程、辺り一面に靄のかかった中でぽつりと海に揺られている小舟の中だった。
俺が何が何だか分からずに戸惑っている間に、小舟はまるで誰かが操縦でもしているかの様にすうーっと陸に近寄っていき、近くの浜辺に乗り上げた。
「何なんだ一体…。」
まだ頭もボーっとしている中でそう思いながら小舟を降りていると、用が済んだとばかりに小舟は消え、それと共に辺り一面にあった靄が晴れていった。
晴れてきて辺りをキョロキョロと見渡すと、砂浜の奥にうっそうと茂る木々と、その右手の方に道らしきものが見えた。
よく見えなかったので確かめようと数m程道らしきものに向かって歩いていると、それは舗装もされていない、土の地面を人が踏み固めただけの小道であった。
視線を上げると、その先には小屋の様なものの屋根が見えてきた。
小屋があるという事は人が居るかもしれないし、今居なくともそのうち誰かが来るだろうし、その人にここはどこか聞いてみよう。
そう思ってとりあえず小屋を目指して歩いた。
「そういえば俺、何でこんな服を着てるんだろ?」
葬式の時でもなければ絶対に着ない、コンプレックスで嫌いな黒い色をした上下の服にいつの間にか着替えていたのに気が付いた。
「しかもファンタジー世界の人が着てそうなデザインとか。ローブまで着てるし……、まるで魔法使いみたいだな。」
俺はこの黒い服を脱ぎたくてこの小屋の住人が着替えを貸してくれないかなと思い、戸をノックした。
しかし返事は無く、中に人も居ない様だったのでどうしようかと思ったが、歩いてきて暑かったのもあって失礼ながらも中で待たせて貰おうと戸を開けた。
「お邪魔しま~す。」
小屋の中は大量の薪や木の蔓で編んだカゴが大小いくつかと漁網や銛などがたくさんある程度で、あとは簡素なベッドや小さな机と椅子が2つ、上部で煮炊きもできそうな薪ストーブがあるぐらいだった。
「漁師でも住んでいるのか? ひとまず椅子に座って待たせてもらうか。」
しかしここの住人がすぐには現れなかったのと、テレビも何もない中で待つという退屈さからいつの間にか机に突っ伏して寝てしまっていた。
暫くして、ギーという音が聞こえてハッとして目を覚まし、戸の方をまだ頭がボーっとしながら見やると、目線の先に待望のこの小屋の住人らしき人が入ってきた。
「だ、誰だ!?」
窓らしい窓もない薄暗がりの中で、聞こえてきたその声から男であるという事が分かった。
その男は誰も居ないはずの小屋の中に俺が居るのに気付き、驚いて叫んだ。
その男は更に戸を開け、全開にして小屋の中に陽の光を入れ、俺に浴びせて姿がハッキリと見えると再び驚き、今度は言葉を失っていた。
しかし一度目は警戒して攻撃的な雰囲気であったのが、二度目の驚きの様は一転して青ざめているかの様であった。
「こ、こ、こんな所に貴方様の様な方がいらっしゃるとは思わず…、ご無礼をお許しください!」
と、土下座をして突然俺に焦った様子でペコペコと謝ってきた。
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