7 / 89
第0章 これが始まりの物語
6.神様からのお願い
しおりを挟む
アルテロに人払いされ、俺一人きりとなった礼拝堂は気持ち悪いぐらい静かだった。
俺は祈りの儀式の為に跪き、神の化身となるシンボルを見上げると、教会の一番奥にある祭壇の上の壁には見慣れたマークを模したオブジェクトが掲げられていたのに驚いた。
「これは…鳥居……だよな? どっからどう見ても……。一体どういう………ただの偶然か? …まぁ、とりあえずは祈りの儀式とやらをして、神様と話してみるか…………。」
俺は先程アルテロに説明を受けた様に首から石の付いたネックレスを外し、手の平の上に乗せて頭の上まで掲げ、目を閉じて祈った。
「神様、どうしてこんな状況になったのか、俺の身に何が起こったのか教えてください。」
するとどこからともなく「おまちしておりました。」という声が聞こえたと思ったら周りが一瞬真っ暗になり、かと思えば次の瞬間には俺は温かな光に包まれていた。
目を開けると、目の前には昔話にでも出てきそうな天女の様な姿があった。
「あなたが……神、様…ですか? まさか実際に目の前で会えるとは……それに俺の見た事のある様な恰好で……和風な雰囲気がこの世界のモノじゃない様な………。」
「はい。私がこの世界で『神』と呼ばれる一人であり、君をこの世界へと呼んだ張本人です。私の姿があなたの国のモノに似ているのは、この教会で信仰されている宗教が以前お招きした貴方の世界の日本人を聖人として祀ったものなので……、その影響なのでしょう。また別の国へと行き、私を主神として祀る別の宗教の教会へ行くと私の姿も違って見えますよ。」
俺の問いかけに、目の前に現れた神様は優しくゆっくりと答えたが、話の後半の部分に驚愕した。
「以前お招きした? 俺と同じ様に? やっぱりここは異世界なのか?」
「はい、そうです。まずはこの世界『聖なる庭園』についてと、君をこの世界に呼んだ理由についてお話ししましょう。」
「その前に聞かせてくれ! 俺は死んだからこの世界に来たのか? あっちの世界で俺は今どうなっているんだ?」
俺は本題の話をする前に、非常に重要な事をまず一番初めに聞く事にした。
「いいえ、君は死んではいません。ただ魂が2つに別れたのです。その片方がこちらの世界に来たにすぎません。元の世界での君も、普通に生活して今現在も何の変りもなく人生を送っているはずですよ。」
そう言って左手の平の上からその空中に“地球での俺の姿”を映し出した。
「2つに別れたってどういうことだ!?」
「君はあちらの世界で元々双子として誕生するはずでした。それが何かの拍子に胎内で2人の体は融合し、1人の体の中に2人の魂が宿る事となって生まれたのです。ですがずっと1人の体の中に2人分の魂が居続けることはできません。そんな中で今回の私のお手伝いとしてのお招きに呼応したのが2人の内の片方の君だったのです。今ではあちらの世界とこちらの世界の体、それぞれの1つの体に魂が1つずつ宿り、本来の形に戻っているだけなので安心してください。」
思いもしなかった衝撃の事実を聞かされ、目が点になった。
「その事、俺の母さんや……あっちの世界の俺は知っているのか?」
「いいえ知りません。人間が気が付く前、分かる前に2人の体は融合したので、お呼びしたことも含めて誰も何も知らないのです。」
「そうか……それなら良いんだ! どうせ俺はあっちの世界には帰れないんだろうし、帰ったとしても居場所なんて無いんだろう? それならここで第2の人生をやり直す…、いや、生き直すまでだ!! 神様、さっき俺を手伝いの為に呼んだって言っていたな。何をすれば良いんだ?」
俺はこの神様の話に帰りたかった思いなど、なんだか心にモヤモヤとしていたものが吹っ切れ、この世界で生きていこうと決意した。
「この世界は、君の世界にはない『魔力』という力で満たされています。魔力は生まれる前から誰もが持っており、母親の胎内にいる間は安定していますが生まれた瞬間から乱れ、感情の乱高下によって魔力が爆発し、それによって自分自身の一部や周りにあるあらゆる物を破壊します。それを防ぐ為に人間たちは“聖なる天空”という石を生まれた時から肌身離さず身に着け、自らの意思でコントロールできるようになる年齢になるまで石に魔力を封じ込め、その後も死ぬまでいざという時の為に貯め続ける事ができます。そして石は最初に身に着けた持ち主以外の魔力はその後も吸収せず、持ち主以外の人に使う事も出来ません。その副作用として持ち主の個人情報を記録し、持ち主自身の記憶をも記録し続けるのです。なのでこの世界に住まう人間はほぼ全て、1人1個は必ず持っている物なのです。事情により、他の人間以外が身に着けていることもありますが……。」
「へ~ぇ。それで俺の首にもこの石のネックレスがかかっていたのか。……この身に覚えのない黒い服は何故着ていたの? 黒髪と合わせて俺の事を皆『神官様、神官様』って呼ぶんだけど………?」
「生まれた時は少ないので最初は誰もが色は薄いのですが…、体内に溜め込む事のできる魔力が多ければ多い程髪の色は黒く染まるのです。この世界ではそれを“夜空色”と言い、魔力が多すぎると瞳も黒くなるのですが、夜空の様に星が瞳の中に見えることもあります。そして黒く染まる程の魔力の持ち主は皆、神官の職に就いて各国の大神殿に奉納されている…君の世界で言う所の『聖書』を他の国から守るのです。その神官が着る式服が今君の着ている服なのですよ。私の着せたその服のおかげで無事、この世界の人間達に教会まで連れて来てもらう事ができ、こうして私と話をすることができたでしょう?」
そういうと神様はニッコリと笑って話を続けた。
「そしてこの世界にある宗教は全て私を主神とし、私の子供たちである火の精霊王・水の精霊王・大地の精霊王・風の精霊王を共に祀ったものです。それが今まで人間に与えた4つの契約書、『聖書』の契約者によって4人それぞれを神と人間とを繋ぐ聖人として祀った宗派へと発展し、4つの大きな国ができました。今、その聖書が何者かによって一部破壊され、世界中で異変が起こっているのです! それを調査し、元に戻すのを手助けしてください。」
―――――はぁ!?
俺は祈りの儀式の為に跪き、神の化身となるシンボルを見上げると、教会の一番奥にある祭壇の上の壁には見慣れたマークを模したオブジェクトが掲げられていたのに驚いた。
「これは…鳥居……だよな? どっからどう見ても……。一体どういう………ただの偶然か? …まぁ、とりあえずは祈りの儀式とやらをして、神様と話してみるか…………。」
俺は先程アルテロに説明を受けた様に首から石の付いたネックレスを外し、手の平の上に乗せて頭の上まで掲げ、目を閉じて祈った。
「神様、どうしてこんな状況になったのか、俺の身に何が起こったのか教えてください。」
するとどこからともなく「おまちしておりました。」という声が聞こえたと思ったら周りが一瞬真っ暗になり、かと思えば次の瞬間には俺は温かな光に包まれていた。
目を開けると、目の前には昔話にでも出てきそうな天女の様な姿があった。
「あなたが……神、様…ですか? まさか実際に目の前で会えるとは……それに俺の見た事のある様な恰好で……和風な雰囲気がこの世界のモノじゃない様な………。」
「はい。私がこの世界で『神』と呼ばれる一人であり、君をこの世界へと呼んだ張本人です。私の姿があなたの国のモノに似ているのは、この教会で信仰されている宗教が以前お招きした貴方の世界の日本人を聖人として祀ったものなので……、その影響なのでしょう。また別の国へと行き、私を主神として祀る別の宗教の教会へ行くと私の姿も違って見えますよ。」
俺の問いかけに、目の前に現れた神様は優しくゆっくりと答えたが、話の後半の部分に驚愕した。
「以前お招きした? 俺と同じ様に? やっぱりここは異世界なのか?」
「はい、そうです。まずはこの世界『聖なる庭園』についてと、君をこの世界に呼んだ理由についてお話ししましょう。」
「その前に聞かせてくれ! 俺は死んだからこの世界に来たのか? あっちの世界で俺は今どうなっているんだ?」
俺は本題の話をする前に、非常に重要な事をまず一番初めに聞く事にした。
「いいえ、君は死んではいません。ただ魂が2つに別れたのです。その片方がこちらの世界に来たにすぎません。元の世界での君も、普通に生活して今現在も何の変りもなく人生を送っているはずですよ。」
そう言って左手の平の上からその空中に“地球での俺の姿”を映し出した。
「2つに別れたってどういうことだ!?」
「君はあちらの世界で元々双子として誕生するはずでした。それが何かの拍子に胎内で2人の体は融合し、1人の体の中に2人の魂が宿る事となって生まれたのです。ですがずっと1人の体の中に2人分の魂が居続けることはできません。そんな中で今回の私のお手伝いとしてのお招きに呼応したのが2人の内の片方の君だったのです。今ではあちらの世界とこちらの世界の体、それぞれの1つの体に魂が1つずつ宿り、本来の形に戻っているだけなので安心してください。」
思いもしなかった衝撃の事実を聞かされ、目が点になった。
「その事、俺の母さんや……あっちの世界の俺は知っているのか?」
「いいえ知りません。人間が気が付く前、分かる前に2人の体は融合したので、お呼びしたことも含めて誰も何も知らないのです。」
「そうか……それなら良いんだ! どうせ俺はあっちの世界には帰れないんだろうし、帰ったとしても居場所なんて無いんだろう? それならここで第2の人生をやり直す…、いや、生き直すまでだ!! 神様、さっき俺を手伝いの為に呼んだって言っていたな。何をすれば良いんだ?」
俺はこの神様の話に帰りたかった思いなど、なんだか心にモヤモヤとしていたものが吹っ切れ、この世界で生きていこうと決意した。
「この世界は、君の世界にはない『魔力』という力で満たされています。魔力は生まれる前から誰もが持っており、母親の胎内にいる間は安定していますが生まれた瞬間から乱れ、感情の乱高下によって魔力が爆発し、それによって自分自身の一部や周りにあるあらゆる物を破壊します。それを防ぐ為に人間たちは“聖なる天空”という石を生まれた時から肌身離さず身に着け、自らの意思でコントロールできるようになる年齢になるまで石に魔力を封じ込め、その後も死ぬまでいざという時の為に貯め続ける事ができます。そして石は最初に身に着けた持ち主以外の魔力はその後も吸収せず、持ち主以外の人に使う事も出来ません。その副作用として持ち主の個人情報を記録し、持ち主自身の記憶をも記録し続けるのです。なのでこの世界に住まう人間はほぼ全て、1人1個は必ず持っている物なのです。事情により、他の人間以外が身に着けていることもありますが……。」
「へ~ぇ。それで俺の首にもこの石のネックレスがかかっていたのか。……この身に覚えのない黒い服は何故着ていたの? 黒髪と合わせて俺の事を皆『神官様、神官様』って呼ぶんだけど………?」
「生まれた時は少ないので最初は誰もが色は薄いのですが…、体内に溜め込む事のできる魔力が多ければ多い程髪の色は黒く染まるのです。この世界ではそれを“夜空色”と言い、魔力が多すぎると瞳も黒くなるのですが、夜空の様に星が瞳の中に見えることもあります。そして黒く染まる程の魔力の持ち主は皆、神官の職に就いて各国の大神殿に奉納されている…君の世界で言う所の『聖書』を他の国から守るのです。その神官が着る式服が今君の着ている服なのですよ。私の着せたその服のおかげで無事、この世界の人間達に教会まで連れて来てもらう事ができ、こうして私と話をすることができたでしょう?」
そういうと神様はニッコリと笑って話を続けた。
「そしてこの世界にある宗教は全て私を主神とし、私の子供たちである火の精霊王・水の精霊王・大地の精霊王・風の精霊王を共に祀ったものです。それが今まで人間に与えた4つの契約書、『聖書』の契約者によって4人それぞれを神と人間とを繋ぐ聖人として祀った宗派へと発展し、4つの大きな国ができました。今、その聖書が何者かによって一部破壊され、世界中で異変が起こっているのです! それを調査し、元に戻すのを手助けしてください。」
―――――はぁ!?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる