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第0章 これが始まりの物語
8.神様の懺悔
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「さて、ルカ君。」
神様はコホンッと1つ咳をして、話を仕切り直した。
「少し話がそれてしまいましたが……。君に与える特別な能力、神力の為の契約書を交わす前に君には言っておかなければならない事があります。祀った者によって影響が出たという話を最初にしましたが、何もそれは私の姿だけに限った事ではありません。例えばこの国は4番目の契約者であった日本人、“桜庭 命”が生涯を終えた地として祀られた事により出来た国なので、持ち込んだ日本の文化がこの国のあちこちに広まっています。その1つとして聖書を媒介として広まった日本語も、この国の信徒の証として根付いているのです。だからコミュニケーションにおいてここまで特に困りはしなかったでしょう?」
「えっ? 異世界に飛ばされたワケだし…、てっきり神様の力によってこの世界の言語を俺が自動的に喋ったりすることができる様にしてくれていたとかなのかと思っていました……。」
予想外の話に目をパチクリとさせている俺の反応を見て、神様は呆気にとられていた。
「そぅ……。先程も言いましたが…、生まれたばかりの体に無闇に力を与えるのは危険なのです。ですが今までお招きした人間とは違い、君は生まれ育った体から剥がれ落ちた自意識を持たぬ存在…。君が君であると思っているものは全部、今地球世界に居るもう一人の君だけのものなので……、およそ君が君であるという自我は君の中には存在していないのです。」
その話に、地球にいるもう一人の俺と俺自身を区別するものは確かに何もないなと思った。
「それに言語の力は私自身には必要がなく、持っていないので与える事もできないのです。そこで今までの救世主の時には何も考えずに適当な場所に降ろしていたのですが、不安定な魂の君がその体に根付く前に最初からあまり苦労して死に至る危険性が増え無い様にと思い、君と同じ言語を使っている4番目の契約者が祀られた国へと降ろしたのです。その体にこの世界の魔力や世界の全てと君の魂を馴染ませて繋がりを作る為に時間が少々必要でしたし、教会で私と話をする前に少しばかりでもこの世界に触れたりして、意識を目覚めさせておかなければならなかったので。」
そう言って神様は優しく微笑んだ。
「でも君が成人する1年後にはこのサクラヴェール国を出て、世界中を旅してもらう事になるのだから、他の国の言語も行く前までに勉強しておかないと困りますよ。」
その言葉に、俺は落胆した思いに暮れて両手で頭を掻いた。
「地球でも英語とか苦手だったんだよな~。異世界でも勉強しなきゃなんないのかよ~!」
俺は苦手なことをまたやらなければならないのかと項垂れてブツブツと本人には直接言えない文句を言っていた。
「とは言え……、その体と魂がアンバランスな状態では何をするにも負荷が大きく、体を鍛えるだけではなく新たな世界のことを学ぶ事までするのも少し大変でしょう? そこで君には契約書によって与える神力とは別に、オマケで赤ん坊の様に言語も知識も何もかもを簡単に吸収する事のできる頭脳を与えました。今はまだ負荷にしかならないのでスイッチをオフにしていますが、君の魂と体の繋がりが深まり、この世界に君の存在が根付けば負荷は軽くなるのでその能力が発現できるはずです。一週間もすれば使える様になるでしょう。」
「神様はなんでそこまで俺に、特別扱いみたいなことをしてくれるのですか?」
ふと思った疑問に俺は尋ねてみた。
「君は………、君たちの疲弊していた魂は、本当は“要らない存在”としてどちらかが地球世界の奈落、タルタロスの許へと連れていかれ、片方の魂を消される予定でした…。ですが私の分身体でもある地球世界での神が、別の世界で新たな肉体を得てなら生きることも大丈夫だろうから救おうと考えていました。」
「分身体ってどういうこと!? 地球の神様とこの世界の神様である貴方は同じなのか?」
「ええ…、同じです。どの異世界にも『神』と呼ばれる存在は居ますが、全ては我らが母という本体から生まれた分身体なのです。だから『我らが母』とは違い、分身体である我々は人間の様にミスをしたりとか、少し力不足だったりする面もあるのです……。そこでどちらか片方、神の呼びかけに答える事ができる相性の良い方の魂をこちらにタイミングを見て連れて来て転生させようとしていたのです。そう計画していた中で、こちらの世界で異変が起こってしまい……。異世界間移動をさせるには制約がたくさんあるので、今期を逃すとこちらに連れてくるのは到底無理となってしまう為に限定1人しか枠の無い所に強引に、定期的に異世界よりお招きしている『救世主』として、当初の計画よりは少々早まりましたが…こちらに連れて来ることになったのです。」
神様は少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「なので赤ん坊に転生させることができず、急遽作った大人の体へと魂を宿さねばならなくなり、不安定な状態になってしまった事が君を地上に降ろしてからも悔やまれていて……。だから世界のバランスを崩さない程度には、多少の便宜をはかろうと初めから考えていたのです。今までお招きした人間には、試練として最初からもっと苦労させていましたが……。今までに前例のない状態でこの世界に生まれてしまい、この先苦労してしまうだろう事に対する君への罪滅ぼしです。」
神様は両手で俺の手をやさしく包み込んで握り、憂いの表情を浮かべていた。
神様はコホンッと1つ咳をして、話を仕切り直した。
「少し話がそれてしまいましたが……。君に与える特別な能力、神力の為の契約書を交わす前に君には言っておかなければならない事があります。祀った者によって影響が出たという話を最初にしましたが、何もそれは私の姿だけに限った事ではありません。例えばこの国は4番目の契約者であった日本人、“桜庭 命”が生涯を終えた地として祀られた事により出来た国なので、持ち込んだ日本の文化がこの国のあちこちに広まっています。その1つとして聖書を媒介として広まった日本語も、この国の信徒の証として根付いているのです。だからコミュニケーションにおいてここまで特に困りはしなかったでしょう?」
「えっ? 異世界に飛ばされたワケだし…、てっきり神様の力によってこの世界の言語を俺が自動的に喋ったりすることができる様にしてくれていたとかなのかと思っていました……。」
予想外の話に目をパチクリとさせている俺の反応を見て、神様は呆気にとられていた。
「そぅ……。先程も言いましたが…、生まれたばかりの体に無闇に力を与えるのは危険なのです。ですが今までお招きした人間とは違い、君は生まれ育った体から剥がれ落ちた自意識を持たぬ存在…。君が君であると思っているものは全部、今地球世界に居るもう一人の君だけのものなので……、およそ君が君であるという自我は君の中には存在していないのです。」
その話に、地球にいるもう一人の俺と俺自身を区別するものは確かに何もないなと思った。
「それに言語の力は私自身には必要がなく、持っていないので与える事もできないのです。そこで今までの救世主の時には何も考えずに適当な場所に降ろしていたのですが、不安定な魂の君がその体に根付く前に最初からあまり苦労して死に至る危険性が増え無い様にと思い、君と同じ言語を使っている4番目の契約者が祀られた国へと降ろしたのです。その体にこの世界の魔力や世界の全てと君の魂を馴染ませて繋がりを作る為に時間が少々必要でしたし、教会で私と話をする前に少しばかりでもこの世界に触れたりして、意識を目覚めさせておかなければならなかったので。」
そう言って神様は優しく微笑んだ。
「でも君が成人する1年後にはこのサクラヴェール国を出て、世界中を旅してもらう事になるのだから、他の国の言語も行く前までに勉強しておかないと困りますよ。」
その言葉に、俺は落胆した思いに暮れて両手で頭を掻いた。
「地球でも英語とか苦手だったんだよな~。異世界でも勉強しなきゃなんないのかよ~!」
俺は苦手なことをまたやらなければならないのかと項垂れてブツブツと本人には直接言えない文句を言っていた。
「とは言え……、その体と魂がアンバランスな状態では何をするにも負荷が大きく、体を鍛えるだけではなく新たな世界のことを学ぶ事までするのも少し大変でしょう? そこで君には契約書によって与える神力とは別に、オマケで赤ん坊の様に言語も知識も何もかもを簡単に吸収する事のできる頭脳を与えました。今はまだ負荷にしかならないのでスイッチをオフにしていますが、君の魂と体の繋がりが深まり、この世界に君の存在が根付けば負荷は軽くなるのでその能力が発現できるはずです。一週間もすれば使える様になるでしょう。」
「神様はなんでそこまで俺に、特別扱いみたいなことをしてくれるのですか?」
ふと思った疑問に俺は尋ねてみた。
「君は………、君たちの疲弊していた魂は、本当は“要らない存在”としてどちらかが地球世界の奈落、タルタロスの許へと連れていかれ、片方の魂を消される予定でした…。ですが私の分身体でもある地球世界での神が、別の世界で新たな肉体を得てなら生きることも大丈夫だろうから救おうと考えていました。」
「分身体ってどういうこと!? 地球の神様とこの世界の神様である貴方は同じなのか?」
「ええ…、同じです。どの異世界にも『神』と呼ばれる存在は居ますが、全ては我らが母という本体から生まれた分身体なのです。だから『我らが母』とは違い、分身体である我々は人間の様にミスをしたりとか、少し力不足だったりする面もあるのです……。そこでどちらか片方、神の呼びかけに答える事ができる相性の良い方の魂をこちらにタイミングを見て連れて来て転生させようとしていたのです。そう計画していた中で、こちらの世界で異変が起こってしまい……。異世界間移動をさせるには制約がたくさんあるので、今期を逃すとこちらに連れてくるのは到底無理となってしまう為に限定1人しか枠の無い所に強引に、定期的に異世界よりお招きしている『救世主』として、当初の計画よりは少々早まりましたが…こちらに連れて来ることになったのです。」
神様は少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「なので赤ん坊に転生させることができず、急遽作った大人の体へと魂を宿さねばならなくなり、不安定な状態になってしまった事が君を地上に降ろしてからも悔やまれていて……。だから世界のバランスを崩さない程度には、多少の便宜をはかろうと初めから考えていたのです。今までお招きした人間には、試練として最初からもっと苦労させていましたが……。今までに前例のない状態でこの世界に生まれてしまい、この先苦労してしまうだろう事に対する君への罪滅ぼしです。」
神様は両手で俺の手をやさしく包み込んで握り、憂いの表情を浮かべていた。
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