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第3章 オフィーリア国、最初の街
2.着いて最初にする事は…
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あの俺が犯罪者扱いをされてしまった国境を過ぎ、道の傍まで広がっていた森の近くで野営をしながら歩いて2日経つと、日暮れ近くになってようやく目指していたホレイショーの街が見えてきた。
「フ~ゥ……。サクラヴェール国は国境から一番近い街や村までそんなに距離がなかったけど……、オフィーリア国の方は村も無いし、国境から街まで結構遠いな~ぁ……。」
「お兄ちゃん。私、もう疲れちゃった……。早くベッドで休みたい………。」
生まれてから一度も村から出た事の無かったリリアは最初こそ楽しそうにしていたものの、慣れない野営が2日続いたのと徒歩での長距離移動に既にグッタリとしていた。
「ワタチたちの方が疲れてるにゃよ。リリアよりも小さいからたくさん歩かないと置いて行かれちゃうし、大変なのにゃ。」
「ニャーァ。」
「ニャー……。」
俺やリリアよりもうんと小さな体の猫たちは人間に合わせてずっと必死で歩いていたので、もうだいぶ疲労困憊しており、3人揃って疲れた事を訴えてきた。
「この国での、移動するための乗り物を早く手に入れないとな~。」
友とする動物らの労働を固く禁じているこの国では独自の乗り物が発展しており、俺以外のリリアと猫たちの様子からその入手が急がされた。
「さぁ、着いたぞ!」
「わ~ぁ………。」
疲れから下を向いて歩いていたリリアと猫たちも、俺が街の門の所まで着いたと声を掛けると顔を上げ、目の前に広がるサクラヴェール国とは違う雰囲気の街の風景に驚嘆の声を漏らしていた。
国境の検問所の時の様に、この街の門の衛兵に身分証確認をしている時にもまたもや俺を不審な目で見られてしまう事はあったが、リリアの力説とここぞとばかりに見せた指輪の効力によって難を逃れる事ができた。
「体はまだ疲れていないが、俺は気力ばかりが疲れたよ……。」
「お兄ちゃん! すっごいよ~!」
「ニャッ!」
街の中に入った途端に元気になったリリアとリリアの懐に潜っていたパウロが燥いで速足で先に歩いて行っているのを、後ろから追いかける様に俺とアダムとイブはポテポテと門をくぐって街の中へと入った。
「おぉ! これは……。」
そこにあったのは数日前まで見慣れていたサクラヴェール国とは確かに全く違っていた。
俺が生まれ育った世界、地球での中世ヨーロッパ程度の見た目と文明度であったサクラヴェール国と違い、オフィーリア国に入って最初に見たこの街は19世紀のイギリス辺りを思わせる雰囲気を纏っていた。
「そういえば神様が、それぞれの聖書から受ける恩恵によってそれぞれの国が作られているから国によって文明度も文化も全く違うとか言っていたなぁ……。」
「お兄ちゃん。見て見て~! 何だろう? あれ~。」
目をキラキラさせながら少し先を歩いて街をキョロキョロと見ていたリリアに手を引っ張られ、リリアのもう片方の手の指が指し示す斜め上の方を見ると時計塔があった。
「へ~ぇ……。地理的にここは所謂『田舎』に当たるだろうに、ここまでサクラヴェール国よりも発展しているとは……。都会の方まで行ったらどうなっているんだろな……。」
目に映るもの全てが珍しく、村やアシュワガンダの街にあったどの建物よりも背の高い建物だらけのこの街にリリアはテンションが上がってパウロと一緒にキャーキャー騒いでいた。
「とりあえず両替商の所に行かなきゃ何もできないんだから。騒いでないで…ほら、行くぞ。」
「「は~い。」」
国を跨いで通貨も全く違う所に来たので、何をするにもまず最初に持っているお金を全て両替をしなければならなかった。
お金の両替には国からそれ専用の許可が与えられた両替商という者が存在し、両替する人の多い国境に近い街ではそれで儲けようと、手数料や交換比率を公式なものよりも跳ね上げてぼったくる者も多いらしいと聞いていた。
営業時間は短いが、この国では地球と似たシステムを持つ銀行が存在し、そこではぼったくられもせずに安全に交換する事ができる。
「いらっしゃい。」
「サクラヴェール国の通貨をこの国のお金に両替してほしいのですが…。」
俺は営業時間ギリギリだった銀行の中にある両替商のいるカウンターまで行き、懐に入れていた硬貨がたくさん入った布袋をそのカウンターの上に置いた。
「はいよ。兄さん、兄妹で旅をしてるのかい? 珍しいね…。計算するからちょっとそこのオフィーリア国での通貨についての説明書でも見ながら待っとくれ。」
両替商のお婆さんはそう言ってカウンター横の壁に貼られた交換レートや通貨単位などについて書かれた黒板の様な物を指差した。
「ほぉ…。この国は十進数なのか……。サクラヴェール国は十二進数だったからお金の計算をしたりするのが面倒だったから助かるな~ぁ。」
「お兄ちゃんはお金の計算が苦手なの?」
俺の独り言にリリアは横から聞いてきた。
「俺は“12”毎に単位が変わるのには慣れてないからね。長年慣れ親しんでいたのは“10”毎に変わる十進数だったし。この身に慣れて染みついたものと全く違う法則だから、どうしてもいつも混乱したりするんだよ…。」
「ふぅ~ん……。『ジュウニシンスウ』とか、私にはちょっとよく分かんないけど…、お兄ちゃんには慣れてないから難しい事なんだってのは分かったよ。」
「フ~ゥ……。サクラヴェール国は国境から一番近い街や村までそんなに距離がなかったけど……、オフィーリア国の方は村も無いし、国境から街まで結構遠いな~ぁ……。」
「お兄ちゃん。私、もう疲れちゃった……。早くベッドで休みたい………。」
生まれてから一度も村から出た事の無かったリリアは最初こそ楽しそうにしていたものの、慣れない野営が2日続いたのと徒歩での長距離移動に既にグッタリとしていた。
「ワタチたちの方が疲れてるにゃよ。リリアよりも小さいからたくさん歩かないと置いて行かれちゃうし、大変なのにゃ。」
「ニャーァ。」
「ニャー……。」
俺やリリアよりもうんと小さな体の猫たちは人間に合わせてずっと必死で歩いていたので、もうだいぶ疲労困憊しており、3人揃って疲れた事を訴えてきた。
「この国での、移動するための乗り物を早く手に入れないとな~。」
友とする動物らの労働を固く禁じているこの国では独自の乗り物が発展しており、俺以外のリリアと猫たちの様子からその入手が急がされた。
「さぁ、着いたぞ!」
「わ~ぁ………。」
疲れから下を向いて歩いていたリリアと猫たちも、俺が街の門の所まで着いたと声を掛けると顔を上げ、目の前に広がるサクラヴェール国とは違う雰囲気の街の風景に驚嘆の声を漏らしていた。
国境の検問所の時の様に、この街の門の衛兵に身分証確認をしている時にもまたもや俺を不審な目で見られてしまう事はあったが、リリアの力説とここぞとばかりに見せた指輪の効力によって難を逃れる事ができた。
「体はまだ疲れていないが、俺は気力ばかりが疲れたよ……。」
「お兄ちゃん! すっごいよ~!」
「ニャッ!」
街の中に入った途端に元気になったリリアとリリアの懐に潜っていたパウロが燥いで速足で先に歩いて行っているのを、後ろから追いかける様に俺とアダムとイブはポテポテと門をくぐって街の中へと入った。
「おぉ! これは……。」
そこにあったのは数日前まで見慣れていたサクラヴェール国とは確かに全く違っていた。
俺が生まれ育った世界、地球での中世ヨーロッパ程度の見た目と文明度であったサクラヴェール国と違い、オフィーリア国に入って最初に見たこの街は19世紀のイギリス辺りを思わせる雰囲気を纏っていた。
「そういえば神様が、それぞれの聖書から受ける恩恵によってそれぞれの国が作られているから国によって文明度も文化も全く違うとか言っていたなぁ……。」
「お兄ちゃん。見て見て~! 何だろう? あれ~。」
目をキラキラさせながら少し先を歩いて街をキョロキョロと見ていたリリアに手を引っ張られ、リリアのもう片方の手の指が指し示す斜め上の方を見ると時計塔があった。
「へ~ぇ……。地理的にここは所謂『田舎』に当たるだろうに、ここまでサクラヴェール国よりも発展しているとは……。都会の方まで行ったらどうなっているんだろな……。」
目に映るもの全てが珍しく、村やアシュワガンダの街にあったどの建物よりも背の高い建物だらけのこの街にリリアはテンションが上がってパウロと一緒にキャーキャー騒いでいた。
「とりあえず両替商の所に行かなきゃ何もできないんだから。騒いでないで…ほら、行くぞ。」
「「は~い。」」
国を跨いで通貨も全く違う所に来たので、何をするにもまず最初に持っているお金を全て両替をしなければならなかった。
お金の両替には国からそれ専用の許可が与えられた両替商という者が存在し、両替する人の多い国境に近い街ではそれで儲けようと、手数料や交換比率を公式なものよりも跳ね上げてぼったくる者も多いらしいと聞いていた。
営業時間は短いが、この国では地球と似たシステムを持つ銀行が存在し、そこではぼったくられもせずに安全に交換する事ができる。
「いらっしゃい。」
「サクラヴェール国の通貨をこの国のお金に両替してほしいのですが…。」
俺は営業時間ギリギリだった銀行の中にある両替商のいるカウンターまで行き、懐に入れていた硬貨がたくさん入った布袋をそのカウンターの上に置いた。
「はいよ。兄さん、兄妹で旅をしてるのかい? 珍しいね…。計算するからちょっとそこのオフィーリア国での通貨についての説明書でも見ながら待っとくれ。」
両替商のお婆さんはそう言ってカウンター横の壁に貼られた交換レートや通貨単位などについて書かれた黒板の様な物を指差した。
「ほぉ…。この国は十進数なのか……。サクラヴェール国は十二進数だったからお金の計算をしたりするのが面倒だったから助かるな~ぁ。」
「お兄ちゃんはお金の計算が苦手なの?」
俺の独り言にリリアは横から聞いてきた。
「俺は“12”毎に単位が変わるのには慣れてないからね。長年慣れ親しんでいたのは“10”毎に変わる十進数だったし。この身に慣れて染みついたものと全く違う法則だから、どうしてもいつも混乱したりするんだよ…。」
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