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第3章 オフィーリア国、最初の街
6.教会って……
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「………あれっ?」
アージェから聞いたオフィーリア国に古くから伝わるという昔話に、俺は何か聞き覚えがある様な無い様な違和感を覚えて首を捻った。
「……そういえば!」
イタリアに住んでいる母方の祖母から小さい頃に聞いたことのあるローマ神話の様な、昔に本で読んだことのある天岩戸伝説の様な……、今聞いた話と似た様な話を思い出し、妙な感じはしたがどこの世界にも似た様な話はあるのかなと思った。
「ルカさん、明日はどうするの?」
俺がそんな考え事をしていると、ずっとリリアと話していたアージェが不意に俺の方を向き、予定を尋ねてきた。
「明日は………。そうだなぁ、この街に教会ってあるかな?」
「教会? あぁ、あるけど……、外から来た人がそんな所に何の用なんだい?」
「お兄ちゃん、この国で祀られている聖人様はサクラヴェール国とは別の人だよ?」
俺が教会に行こうとしたことが余程不思議らしく、アージェとリリアは「何故?」という顔をして疑問をなげかけてきた。
確かに主神が同じでも、土地に根差した神様の様に祀られている聖人が国によって違うという事は別の宗教や宗派だったりするって事なんだろうから、よく考えてみれば奇妙がられるのも当然と言えば当然だった。
そうなんだろうと思い浮かんではみたものの、生まれてからずっと日本で暮らしていた俺には、宗教や宗派が違うからダメというものの考えは希薄だった。
それが良いか悪いかは別として、神様と人間との橋渡し役であり、国そのものの創始者でもある『聖人』との距離感の近いこの世界では、俺の様な感覚をもった人は異質にしか映らない様だった。
「えっと……。…っ! 俺は孤児で生まれも分からないし、長年旅をして生きているから何処か特定の国との繋がりも無いんだ。だから全ての国が自分の故郷だと思う様にしてて、あまり違いを考えずにどこの教会でもお祈りに行っているんだ。」
苦しい言い訳だったが、生まれの分からない孤児だと言い切ってその場はなんとか誤魔化した。
俺が救世主だという正体を知っているリリアは「えっ?」という顔をしてポカンとしていたが、俺がリリアの体を突いて合図を送ると何となく察してくれたのか話を合わせてくれた。
そうしてアージェに何となくではあるが納得してもらい、教会がある場所を聞くことができた。
「教会にお祈りに行くなら何か寄付する物を持って行かないとね~。この街の人間じゃない人が手ぶらで入ろうとすると絶対に止められるから……。」
「えっ? そうなの?」
「この街はまぁ、まだましだけど……。都会の方に行くと貧乏人はお断りとか、寄付金を払っていない人は加護を受けられないって謳ってる教会もあるらしいよ。教会って国民皆を護る為に存在してるはずなのに、ケチだよね~。」
生臭坊主というか何というか……、地球でも近所に昔からやたらと金にがめつい坊さんが運営している寺があったが、ここでも宗教関連の人らは金にがめついのかと嘆息を漏らした。
「ハァ~……。じゃあ、市場で何か買ってから行くことにするよ。…って事は……、明日は何時に起きれば良いんだ?」
「俺が仕事に行く前で良ければ起こしてあげるよ。それから身支度をして出ていけば市場もまだ朝の賑わいがある頃で教会に寄付するにはちょうど良い物があるだろうし、教会も人が少ない時間帯だからトラブルにも遭い難いと思うよ。」
そして長々と話をしていて時間も遅くなっていたのでアージェももう寝なければいけない時間となっており、俺たちは元々は父親の寝室だったという部屋に案内され、大きなベッドに皆で寝転がった。
「フ~ゥ……。今日は疲れたにゃ~。」
「えぇ…、我々も……。」
ただでさえ幸運をもたらすとされている黒いコウモリ猫である見た目のパウロは目立つのに、アダムとイブも加えて3匹とも人間と同じ言葉を喋ることができる『ケットシー』へと種族変化をしてしまっている。
魔法が普通に存在する世界といえども、こんなことがバレたら新種の出現という大きなニュースがあっという間に広まり、国の然るべき機関へと連れて行かれてしまう危険性があったので言葉を話さずに普通の猫のフリをしてもらっていた。
俺たちだけでいて大丈夫な時はお喋りでよく俺に話しかけてくるパウロは黙っているという事に少し疲れたらしかった。
「この国はサクラヴェール国とは違ってかなり文明が進んでいるみたいだし、万が一があると怖いからな……。街に居る間だけだから我慢してくれよな。」
「それはこの国に入る前にも聞いていたから分かっているにゃ。でも…、お喋りができないのはつまらないにゃ~。」
俺は猫たちを代わる代わる労をねぎらう様に撫でてやった。
今日もたっぷりと歩き、更に慣れない野営と徒歩移動に疲れ切っていた猫たちとリリアをおんぶして歩いたりと俺も疲れていたのでそのまますぐに寝入ってしまった。
すべてのものが眠りについて静まり返っている真夜中、俺は疲れすぎていたのかふと目を覚ました。
その時に腕にしがみ付いていたパウロの姿が無い事に気付いたが片側の腕にはリリア、足の間にはアダムとイブが寝ていたので動くこともできず、目だけを動かすと窓辺に座って夜空をジッと仰ぎ見ているパウロが居た。
「何しているんだろう……。」
そう思ってよく見ると、窓に差し込む月の光を浴びてお祈りをしていた。
何故パウロがそんな事をしていたのか分からなかったが、眠たくて仕方の無かった俺は再び瞼を閉じて眠りについた。
アージェから聞いたオフィーリア国に古くから伝わるという昔話に、俺は何か聞き覚えがある様な無い様な違和感を覚えて首を捻った。
「……そういえば!」
イタリアに住んでいる母方の祖母から小さい頃に聞いたことのあるローマ神話の様な、昔に本で読んだことのある天岩戸伝説の様な……、今聞いた話と似た様な話を思い出し、妙な感じはしたがどこの世界にも似た様な話はあるのかなと思った。
「ルカさん、明日はどうするの?」
俺がそんな考え事をしていると、ずっとリリアと話していたアージェが不意に俺の方を向き、予定を尋ねてきた。
「明日は………。そうだなぁ、この街に教会ってあるかな?」
「教会? あぁ、あるけど……、外から来た人がそんな所に何の用なんだい?」
「お兄ちゃん、この国で祀られている聖人様はサクラヴェール国とは別の人だよ?」
俺が教会に行こうとしたことが余程不思議らしく、アージェとリリアは「何故?」という顔をして疑問をなげかけてきた。
確かに主神が同じでも、土地に根差した神様の様に祀られている聖人が国によって違うという事は別の宗教や宗派だったりするって事なんだろうから、よく考えてみれば奇妙がられるのも当然と言えば当然だった。
そうなんだろうと思い浮かんではみたものの、生まれてからずっと日本で暮らしていた俺には、宗教や宗派が違うからダメというものの考えは希薄だった。
それが良いか悪いかは別として、神様と人間との橋渡し役であり、国そのものの創始者でもある『聖人』との距離感の近いこの世界では、俺の様な感覚をもった人は異質にしか映らない様だった。
「えっと……。…っ! 俺は孤児で生まれも分からないし、長年旅をして生きているから何処か特定の国との繋がりも無いんだ。だから全ての国が自分の故郷だと思う様にしてて、あまり違いを考えずにどこの教会でもお祈りに行っているんだ。」
苦しい言い訳だったが、生まれの分からない孤児だと言い切ってその場はなんとか誤魔化した。
俺が救世主だという正体を知っているリリアは「えっ?」という顔をしてポカンとしていたが、俺がリリアの体を突いて合図を送ると何となく察してくれたのか話を合わせてくれた。
そうしてアージェに何となくではあるが納得してもらい、教会がある場所を聞くことができた。
「教会にお祈りに行くなら何か寄付する物を持って行かないとね~。この街の人間じゃない人が手ぶらで入ろうとすると絶対に止められるから……。」
「えっ? そうなの?」
「この街はまぁ、まだましだけど……。都会の方に行くと貧乏人はお断りとか、寄付金を払っていない人は加護を受けられないって謳ってる教会もあるらしいよ。教会って国民皆を護る為に存在してるはずなのに、ケチだよね~。」
生臭坊主というか何というか……、地球でも近所に昔からやたらと金にがめつい坊さんが運営している寺があったが、ここでも宗教関連の人らは金にがめついのかと嘆息を漏らした。
「ハァ~……。じゃあ、市場で何か買ってから行くことにするよ。…って事は……、明日は何時に起きれば良いんだ?」
「俺が仕事に行く前で良ければ起こしてあげるよ。それから身支度をして出ていけば市場もまだ朝の賑わいがある頃で教会に寄付するにはちょうど良い物があるだろうし、教会も人が少ない時間帯だからトラブルにも遭い難いと思うよ。」
そして長々と話をしていて時間も遅くなっていたのでアージェももう寝なければいけない時間となっており、俺たちは元々は父親の寝室だったという部屋に案内され、大きなベッドに皆で寝転がった。
「フ~ゥ……。今日は疲れたにゃ~。」
「えぇ…、我々も……。」
ただでさえ幸運をもたらすとされている黒いコウモリ猫である見た目のパウロは目立つのに、アダムとイブも加えて3匹とも人間と同じ言葉を喋ることができる『ケットシー』へと種族変化をしてしまっている。
魔法が普通に存在する世界といえども、こんなことがバレたら新種の出現という大きなニュースがあっという間に広まり、国の然るべき機関へと連れて行かれてしまう危険性があったので言葉を話さずに普通の猫のフリをしてもらっていた。
俺たちだけでいて大丈夫な時はお喋りでよく俺に話しかけてくるパウロは黙っているという事に少し疲れたらしかった。
「この国はサクラヴェール国とは違ってかなり文明が進んでいるみたいだし、万が一があると怖いからな……。街に居る間だけだから我慢してくれよな。」
「それはこの国に入る前にも聞いていたから分かっているにゃ。でも…、お喋りができないのはつまらないにゃ~。」
俺は猫たちを代わる代わる労をねぎらう様に撫でてやった。
今日もたっぷりと歩き、更に慣れない野営と徒歩移動に疲れ切っていた猫たちとリリアをおんぶして歩いたりと俺も疲れていたのでそのまますぐに寝入ってしまった。
すべてのものが眠りについて静まり返っている真夜中、俺は疲れすぎていたのかふと目を覚ました。
その時に腕にしがみ付いていたパウロの姿が無い事に気付いたが片側の腕にはリリア、足の間にはアダムとイブが寝ていたので動くこともできず、目だけを動かすと窓辺に座って夜空をジッと仰ぎ見ているパウロが居た。
「何しているんだろう……。」
そう思ってよく見ると、窓に差し込む月の光を浴びてお祈りをしていた。
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